5月6日に予定されている安倍首相のロシア訪問について、5日の国際面で報道した。
安倍首相のロシア訪問は、ロシアに対する経済制裁を呼びかける米国との関係を悪化させると言う見方もあるが、むしろ日本がロシアと接近することは台頭する中国への牽制になるとして歓迎している様に読める。
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「米国がロシアに対し強い制裁を加えている時に、米国の最も強固な同盟国のひとつがロシアのプーチン大統領とのより緊密な関係を模索しているのは普通ではない様に見えるかもしれない。しかし、それが日本の安倍首相がやってのけようとしているバランス術だ。」
「安倍氏は、金曜日にロシアのソチで、プーチン大統領と13回目の会談を行う。一方、安倍首相とオバマ大統領の会見回数は7回だ。この会談回数をみても、安倍首相がその外交の核に据えている日露関係に新しい息吹を吹き込もうと努力していることが明らかになる。」
「2013年、安倍首相は日本の首相としては10年振りにロシアを訪問し、台頭する中国と対抗するためにロシアとの関係を強化することを宣言した。」
「両国は、共通の潜在的な経済的興味を持っている。エネルギー資源の乏しい日本は常に石油やガスの調達先を多様化しておきたい。一方、ロシアは世界のコモデティ市場が低迷する中、新しい投資を必要としている。」
「安倍首相はまた、その在任中にロシアとの間の領土問題について解決したいという強い希望も表明している。この領土は、第二次世界大戦の最終日にロシアが占領した小さな列島のことを指す。安倍首相はこの問題を解決するための数年間にわたる交渉を開始させるために、今年プーチン大統領の訪日を実現させたい。」
「安倍首相にとっての問題は、プーチン大統領との友情を強化すると、彼自身が米国とロシアの対立に巻き込まれてしまうことだ。プーチン大統領は、ロシアへの経済制裁を中止して欲しい。一方で米国はロシアがウクライナとの停戦協定を遵守するまでは経済制裁を維持したい。」
「『我々は21世紀には力で国境が変更されることを許すわけにはいかない。』と4月25日にオバマ大統領はドイツで述べ、ロシアへの経済制裁の継続を呼びかけた。」
「プーチン大統領との会談は、安倍首相にとって非常に微妙な時期に行われる。なぜなら、安倍首相はオバマ大統領や先進7ヶ国の首脳達を5月26~27日にサミット(G7)のために招くからだ。何年もの間この会合はG8として、ロシアも含めて開催されていたが、ロシアが2年前にクリミアを併合して以来、プーチン大統領は招待されていない。」
「米国報道官のマーク・トナーは、安倍首相とプーチン大統領との会談について尋ねられ、米国は、日本とロシアの関係が強化されることにより何かを失っているとは考えていないと述べた。『我々は日本の様な国は我々と強い関係を持つと同時にロシアとも強い関係を持つことが出来ると信じている。』」
「安倍首相は、サミットを民主主義と法による統治の重要性を再確認する場と位置付けている。ソチ訪問に先立ち、安倍首相はG7のメンバーである欧州諸国を歴訪する。」
「20世紀とは異なり、法による統治について語る際の最大の脅威は、ロシアではなく北朝鮮や中国だ。中国は、南シナ海に人工島を建設している。」
「ロシアはベトナムや中国に武器を供給しているが、この2国は南シナ海の島の領土権で対立している。『日本はロシアに、地域のパワーバランスを変更する可能性のある武器供給を止めて欲しいと考えている。』と東京ファウンデーションのアビルタイスケ研究員は述べる。」
「プーチン大統領にとって、安倍首相との会談は、国の内外に対して、ロシアは孤立していないことを占めるための良い機会だ。」