Saturday, April 30, 2016

** 4月のまとめ **

4月にWSJに掲載された日本関係の記事は13件。1月、2月が5件、3月が9件と、このところ日本関係の記事の掲載回数は1桁で低迷していたが、4月は、昨年の9月以来半年ぶりの2桁達成となった。

テーマ別では、政治関係が6件、経済関係が4件、社会関係が3件だった。政治関係の記事は、2月、3月とゼロだったが、4月は久しぶりに政治関係の記事が多く掲載された。

掲載箇所では、1面が1件、社説が2件、国際面が10件だった。日本関係の記事が同じ月に2回も社説に取り上げられるのは珍しい。


政治関係の記事では、日米軍事同盟関係が3件、核問題が2件、北朝鮮問題が1件だった。
トランプ次期大統領候補が日米軍事同盟を軽視する発言をしているが、WSJは6日付で日米同盟を擁護する安倍首相のインタビュー記事を掲載すると同時に、翌日7日付の社説で同盟の重要性を強調し、この問題についての立場を明確にした。
また、トランプ次期大統領候補が日本の核武装化を容認する発言をしているが、2日付でオバマ大統領がトランプ氏の発言を批判したこと、同日付で日本に蓄積されているウランやプルトニウム(核兵器を作るために必要となる。)を海外の安全な場所へ移送する日米合意が締結されたこと(日本が核武装する意図がないこと意味する。)を報道し、さらに12日にはケリー国務長官の広島訪問を取り上げ、核不拡散を擁護する立場を繰り返し示唆した。

経済関係の記事では、マイナス金利関係が2件、アベノミクスの焦点が労働市場における2極化解消に移行したという記事が1件だった。
2ヶ月前に導入されたマイナス金利政策について、15日付の1面で大きく取り上げ、黒田総裁でさえ予想できなかった影響を経済に与えているとして、期待通りの効果が得られていないことを報じた。更に、同日の社説でもこの問題を取り上げ、金融緩和とサプライズに頼るアベノミクスは失敗であったとする意見を掲げた。

社会関係記事では、熊本大地震関係が2件、日本では弁護士が余っているとする記事が1件だった。

熊本大地震については、14日の震度7の地震の際には報道しなかったが、16日の2度目の地震については速報し、19日の紙面で被害状況についての続報を掲載した。

4月は、トランプ氏の「日米軍事同盟軽視・日本核武装化容認発言」に端を発した記事が5件も掲載され、トランプ氏の発言が日本にも影響を与えていることが鮮明になった1ヶ月だった。

Thursday, April 28, 2016

日銀は政策を変更せず【A10面(国際面)】

日銀は28日に現状の金融政策の維持を決定したが、WSJ28日の国際面でこのニュースを速報した。



熊本大地震の影響で更なる経済停滞が懸念される中、日銀の追加緩和策実施への期待は大きい。そうした中、日銀が政策変更を見送った理由は、もう少し時間をかけてマイナス金利の影響を見極めたいのだろうとしている。

***** (以下本文) *****
「日銀は木曜日、更なる緩和策を求める市場の声がある中、主要政策を変更しなかった。円は上昇し、株式市場は下落した。」
「日銀は通貨の流通量を増やすことによって成長とインフレを誘発することを目的とした資産買取プログラムの目標を、現状の年間80兆円(7180億ドル)で維持するとした。日銀の政策委員会は投票の結果81で政策維持を決定した。」
「日銀はまた商業銀行の預金に課される金利の水準をマイナス0.1%で維持することを、72の投票で決定した。マイナス金利は2月に導入された。これは種々の借入コストを引き下げることにより、経済活動を活性化させ、価格を引き上げることを目的にした日本による更なる努力の一つだ。」
「日銀が前回3月中旬に政策会合を行って以来、日本の経済状況は悪化しているが、そうした中でも日銀は政策を変更しなかった。世界第3位の規模を誇る日本の経済は、今月、九州を襲った地震により、今四半期縮小するリスクがある。」
「日銀の決断における唯一の新しい要素は、地震によって被害を受けた地域に援助を行うための施策だ。」
3年間にわたるデフレ終息のための努力の後で、弾薬切れだという認識があるが、そうした認識を和らげるために多くのエコノミストは日銀が追加の緩和策に踏み切ることを期待していた。しかし、日銀は行動を取ることに積極的ではないとの態度を示した。彼らは、もう少し時間をかけて、マイナス金利の効果をみたいのだ。」


Tuesday, April 19, 2016

日本の災害は何千人もの人々を行き詰らせる【A16面(国際面)】

414日、17日の熊本大地震による影響について、19日の国際面で伝えた。


 建物の倒壊により多くの犠牲者が出たこと、多くの住民が避難所での生活を余儀なくされていることに加えて、経済紙らしく、この地震が多くのメーカーでの生産に影響を与えていることを、トヨタやソニーの例をあげて詳しく伝えている。

***** 以下本文 *****
「数十人の犠牲者が出た2回の地震によって、日本の南部の島である九州では、何万人もの人々が避難所で暮らしていて、トヨタ自動車を始めとする企業は生産の縮小を余儀なくされている。」
「木曜日のマグニチュード6.5の地震とその28時間後の土曜日に起きたマグニチュード7.3の地震の震源地である熊本県では48人の死亡が確認された。県によれば、日曜日の午後現在で約11万人の住民が避難所で暮らしている。」
「日本の気象庁によれば、木曜日の夜以降、444回の体に感じる地震が九州地区で発生した。同庁によれば、地震で地盤が緩んでおり、雨により土砂崩れが発生する恐れがあるとのことだ。」
「度重なる地震により、被害状況を確認し、熊本での操業を正常に戻そうとする企業の努力は、台無しにされている。」
「トヨタ自動車によれば、熊本地震後の部品の不足により、同社の日本の殆どの工場での車の生産が次第に止まりつつある。レクサスが生産されている福岡工場では操業停止が続いている。同社によれば、プリウスを生産している堤工場などの中央日本にある工場も、火曜日から日曜日にかけて生産を止めることになるだろう。」
「『九州の2つの工場では、壁が崩れ、窓が割れ、自動機の位置はずれ動いている。』とドアやエンジンの部品を作ってトヨタに納入しているアイシン精機のスポークスマンは語った。従業員は日曜日に被害状況の確認を始めたが、工場がいつ稼働を再開出来るかは不明だ。同社は日本の他の地域や海外の工場での生産を増やし、影響を最小化する予定だ。」
「本田や日産など他の自動車メーカーも同地域の工場での生産を停止した。ソニーは熊本の工場で、アップルのiPhone用などのスマートホンに使われるイメージセンサーの生産を行っているが、被害状況を調査中だ。同社スポークスマンによれば『工場の壁にはひびが入り、窓は割れている。』余震が続いているため、従業員は帰宅している。『12日以内に工場が再稼働する可能性は低い。』」
「『地震活動がおさまる兆候は無い。』と気象庁のアオキゲンは記者会見で述べた。強い余震が少なくとも数週間続く可能性があるとして警戒を呼び掛けた。」
「熊本県によれば、この地震による41名の犠牲者の約半数は、倒壊住居の下敷きになって亡くなられた。東海大学によれば、同大学の生徒3名が南阿蘇村のアパートの倒壊によって死亡した。」
「熊本県によれば、11名が行方不明になっているが、これらの方々は小さな住居の集落である南阿蘇村で行方不明になっている。行方不明者の捜索は継続している。」

「安倍首相は、記者団に対し、米軍から救援物資輸送の支援の申し出があり、米軍とも協力していくと述べた。政府は月曜日までに25,000人の自衛隊員を現地に送り込む予定だ。」

Saturday, April 16, 2016

28時間で2回目の大地震が日本の南の島を直撃【A12面(国際面)】

4月16日未明に発生した熊本大地震の本震について、同日の国際面で速報した。


新聞紙を体に巻いて暖を取る避難民の写真を大きく掲載し、事実を簡単に伝えた。木曜日の1回目の地震は報道しなかったが、28時間後に発生した土曜日の本震は取り上げた。

***** 以下本文 *****
「強い地震が日本の南の島である九州を土曜日の早い時間に襲った。この地域は28時間前にも地震に襲われた。報道によれば、少なくとも9人が死亡した。」
「NHKの放送は、熊本県南阿蘇村の倒壊したアパートの建物を写していた。そこでは、住民が下敷きになっている。NHKによれば、この地震によって9人が死亡し、数百人が怪我をして治療を求めている。」
「前回の地震に比べると、今回の地震は、九州のより広い範囲に影響を及ぼした。テレビ放送は、土砂崩れが山岳地帯の橋を押し流しているのを伝えた。ANAのオペレータによれば、熊本空港は閉鎖されている。」
「日本の気象庁によれば、新たな地震は現地時間の午前1時25分に発生し、マグニチュード7.3だった。気象庁は津波注意報を出したが、1時間以内に解除した。」
「午前中に何十回もの地震が発生し、多くの人が建物から出て避難している。」
「菅官房長官は23人が生き埋めになっていると伝えた。政府は、現地で活動する自衛隊員を20,000人に増やす準備をしていると彼は伝えた。」
「この地域は木曜日の夜にマグニチュード6.5の地震に襲われた。この地震では少なくとも9名が死亡した。」

Friday, April 15, 2016

円は危険を光らせている【A10面(社説)】

WSJは、アベノミクスは失敗だったとする社説を4月15日に掲げた。



規制緩和や減税をせずに金融緩和・財政支出に頼る安倍首相の政策や、市場のサプライズに頼る黒田総裁の政策は、消費者の困惑をもたらし、結果として家庭に眠るお金の額を増やし、安倍首長が黒田総裁が狙った家計支出に結びついていないとしている。

***** 以下本文 *****
「強い円は投資家同様に政治家も困惑させている。円の価値は12月1日以降12.8%上昇し、17か月ぶりの高値となっており、株式市場は下落している。1月29日に日銀がマイナス金利を発表したにもかかわらずだ。」
「データはこの傾向は一時的なものでないことを示している。最近の調査によれば、日本の企業と消費者は経済への自信を失い、インフレは起きないだろうとみている。」
「デフレへ予測は自己実現的になりうる。なぜなら円建て資産のからの名目的なリターンが少ないとしても、実質的なリーターンへが増えることが期待されるので、貯蓄は増え、結果として悪い循環が起きてしまうからだ。言い換えれば、日本は未だにデフレの罠にとらわれており、安倍首相の金融政策に依存したデフレ脱却策は機能しなかった。」
「日銀のマイナス金利の実験も、期待を操作することは逆効果になりうることを示している。原則に従うなら、預金に対する低金利は、企業の投資や消費者の支出、投資家の海外投資を誘発するはずだ。数日後には、そういう期待から、株式市場は回復し、為替は円安に振れた。しかしその後、逆噴射が起こった。」
「銀行株がすぐに影響を受けた。なぜなら、マイナス金利が利益に悪影響をもたらすことが明白だからだ。企業や家計はただ単に借入をしたくないのだ。そうなると銀行は準備金を更に積み上げて、ペナルティーを払うしかないのだ。銀行は既に貸付に対する利益が最少となってやけっぱちになっている。もしリスクの高い投資に走れば、損失に至るおそれがある。」
「投資家たちは、日銀が金利を更にマイナスの領域に持ち込むと言ってはいるが、金融市場を不安定化させることなくそうしたことが出来る可能性は低いことに、すぐに気が付いた。政策策定委員のシライサユリは日銀が購入する国債は2018年中ごろには無くなり、更なる金融緩和は不可能になると述べた。日銀の黒田総裁は最後のバズーガを放ったのだ。」
「日本の家計もマイナス金利で不安定になった。発表の8日前に、黒田総裁は国会で、普通でない政策は考えていないと証言した。彼は市場への効果を最大化するためにサプライズ効果を使いたかったのだろう。しかし、一般的な日本人の間では、突然の方針変更はパニックを生み出したのだ。」
「黒田総裁の政策により、日本人は、マイナス金利や銀行の失敗から身を守るために、より多くのお金を家に貯めた。金庫の売上はうなぎのぼりに増え、財務大臣によれば最高額紙幣の印刷量が今年は17%増えた。あるエコノミストによれば、家に貯めてあるお金はこの1年で460億ドル増えて、3,670億ドルにのぼった。」
「安倍首相がデフレを征服すると約束してから3年が経過したが、日本はそれを開始した地点に戻ってしまった。しかし、負債は増えている。前のIMFのチーフエコノミストのオリバーブランチャード氏は、高齢化に伴い、どこかのタイミングで、日本政府は海外の国債バイヤーを惹きつけるために国債の利率を上げる必要が出て来ると警告する。」
「日本の実験は、リーダーが金融政策や財政支出によって、必要以上の規制や課税に守られた社会をびっくりさせることに依存することが、どの様な結末をもたらすかを如実に表している。安倍首相は成長を助ける改革を行うと約束したが、実際の実施した政策は少なすぎる。規制緩和によって新たな投資の機会を生み出さない限り、日本はデフレからは脱却出来ないだろう。」

日本のマイナス金利は市場を冷え込ませる【A1面】

WSJは4月15日の1面に、日銀のマイナス金利政策が、黒田総裁が予想していなかった意外な結果を生み出しているとする特集記事を掲載した。


マイナス金利導入により、銀行が貸し出しを増やし、企業が投資を、消費者が支出を増やし、結果としてインフレが誘発され、デフレが終結するはずだった。ところが、日本の銀行が海外債権を買い漁る方向に向かって、肝心の日本国内での貸し出しが思った様に増えなかったり、ゼロ金利というかつてない政策に消費者が不安を抱いて逆に財布の紐が固くなったりと、黒田総裁が予測していたのとは逆の現象が起きている。
マイナス金利政策という壮大な実験は、デフレ脱却どころか、逆に日本の市場を冷え切らせてしまった。

*****(以下本文)*****
「日本の2ヶ月にわたるマイナス金利の実験は意外な結果を生み出しつつある。」
「マネーマーケットでは、通常、大手銀行などが金利を得るために余剰の現金を預金している。日銀はマイナス金利政策がより多くの経済活動を促すための起爆剤になると予測しているにもかかわらず、金融市場での取引は萎んでいる。一方で、国債への需要は、金利がほぼゼロにもかかわらず増えている。」
「日本円は、値下がりするどころか、ドルに対して18ヶ月ぶりの高値となっている。」
「それでも、日銀の黒田総裁は、水曜日にニューヨークで、経済成長を後押しするために、国債買取プログラムを更に拡大させ、金利を更なるマイナス方向に切り下げる準備があると語った。『日銀は、必要と判断すれば、質、量そして金利について、追加の緩和策を行うことに躊躇はしないだろう。』」
「日本市場で取引している人達は、以前の様に黒田氏の言うことを信じていない。インタビューの中で彼らは、マイナス金利政策によって混乱を増している銀行や財政システム、そしてそれが引き起こした結果について語っている。」
「『毎日がアリスの不思議な国にいる様だ。』とBNPパリパ証券日本のフクイトモヒサ氏は言う。『金利の水準は借入需要に殆ど影響を与えていない。市場の機能は低下している。全てが計画通りにいくとは限らない。』」
「1月に日本は、銀行が日銀に預金している準備金への金利を2月からマイナス0.1%にすると発表して、世界を驚かせた。そうした動きは、銀行の貸出を増やし、支出を増やし、インフレを誘導するために行われた。しかし、今までの所ではその様にはなっていない。」
「低金利は、通常では、その国の通貨の価値を低下させ、輸出者を助ける。それが、安倍首相の景気刺激策であるアベノミクスの主たる目的だ。」
「しかしながら、世界経済が不透明になる中、日本円が緊急避難的な通貨として再浮上していること、更に、米国連邦準備銀行が金利引上げを遅らせる中でドルが弱まっていることから、日本円は強くなってしまっている。」
「需要は今までにないところから来ている。海外投資家だ。彼らはこの2年間、日本の低金利を嫌って、日本市場での取引を避けてきた。ところが、円が安い金利で提供されるため、国債からのリターンが増加したので、最近この市場に戻ってきた。」
「また、投資家は、日銀がこれ以上の緩和策を取る余地は無いとみて、円買いに走っている。」
「『金利引き下げが、企業投資を活性化させたり、家計の貯蓄を消費に向かわせたりするという保証はない。』と日本最大の銀行である三菱UFJ金融グループのヒラノノブユキ氏は述べた。マイナス金利政策は、将来への不安を増幅させ、家計や企業の支出を減らす方向に働いている。」
「日本の銀行のコンピュータシステムにも問題がある。マネーマーケットのブローカー達が使用している取引確認システムは日銀がマイナス金利を導入してから1ヶ月以上の間、マイナス金利に十分対応出来なかった。このため、日本金融ブローカー協会によれば、マネーマーケットでの取引高は3月末に2011年以来の最低となり、1月のレベルの約10分の1にまで落ち込んだ。」
「マネーマーケットでは、銀行などの金融機関は、担保が無くても貸し借りを行うことが出来る。もし短期市場に投資する銀行が減少すれば、他の銀行オペレーションをつなぐために短期借入をすることがより難しくなる。」
「ミューチュアルファンドや年金ファンドのために資金管理を行っている信託銀行は、余剰資金を、マイナス金利をもたらしているオーバーナイト金融市場にお金を置くよりも、ここ数週間は日銀の預金口座に置いている。」
「『もし、金融市場が干上がったら、リーマンショックの様なことが起きるだろう。銀行は資金を調達するインフラを失うことになる。』と三菱UFJモーガンスタンレー証券のストラテジストであるムグルマナオミは言う。『そうなると金利は急上昇する可能性がある。』」
「中央銀行にお金をおいておくと、マイナス金利の費用を支払うことになる。この様にしてわきに置かれたキャッシュが信託銀行の目標を越えたら。」418日から三菱UFJ信託銀行は、その様な経費を、ミューチュアルファンドのマネジャーや、年金ファンドに転嫁する。金融市場への投資に使われた余剰資金に対して、0.1-0.06%の金利を課す。もう一つの大手銀行である住友三井信託銀行も同様のことを行う予定だ。」
「金融市場では黒田総裁の期待と逆の問題が起きている。先月、彼は市場のプレーヤー達はマイナス金利に慣れてしまい、マネーマーケットでの取引は増えるだろうと述べた。黒田氏は、銀行は余剰金を日銀に預けておくと0.1%の金利を払わなばならないので、より高い金利で貸すことを希望するだとうと述べた。」
「しかしながら、日本の金融機関は、国内に投資するのではなくて、より高いリターンが見込める海外に目を向け始めた。財務省によれば、日本の投資家は3月に5.47兆円(500億ドル)の外国証券を購入した。これは、2月に比べて11%も多い。」
「海外金融機関がドルを購入する日本人投資家に課す手数料は高騰している。円をドルに交換する3ヶ月契約にかかる費用は0.298円で、これは1年前の倍だ。」
「海外投資家は、日本国債に戻したお金を還流させている。ここ数週間、こうした国債の金利はマイナス、つまり、投資家は日本政府にお金を払わなばならない。しかし、米国の金融機関がドルの貸出にかける手数料があまりに高く、マイナス金利の国債を持つコストを凌駕しているので、日本円を置いておくのに最も安全な場所なのだ。」

「結論。日本の国債市場は、通常海外投資家による保有高は10%以下の退屈な市場だったが、このところ海外投資家の興味が高まっている。データがある月としては最も最近の月である2月の海外投資家の中期日本国債買付高は、過去12ヶ月平均の倍になっている。」

Tuesday, April 12, 2016

ケリーは核兵器削減努力を日本へ持ち込んだ 【A10面(国際面)】

411日午後にケリー国務長官が広島での慰霊式典に出席したことを、翌12日の国際面で速報した。

ケリー氏は広島での慰霊式典に出席した米国で最初の国務長官であるとし、彼が、G7の外相と共に、そろって平和記念公園内の原爆資料館を視察し、慰霊碑に献花したことを伝えている。「原爆投下についての米国による謝罪の是非」や「オバマ大統領の任期中の広島訪問の可能性」についても触れている。

***** 以下本文 *****
「ジョンケリーは1945年にアメリカが投下した原爆による犠牲者を慰霊するこの場所を訪れた米国の最初の国務長官として名を連ねた。彼は、核兵器を削減し、戦争を避けることの必要性を改めて思い起こさせる完全で、残酷で、説得力のある場所だと述べた。」
「広島生まれである日本の岸田外務大臣は、ケリー氏をはじめとする先進7ヶ国の外務大臣を、第二次世界大戦中にアメリカが広島に投下した原爆の結果としてもたらされた恐ろしい展示へ案内した。」
「ケリー氏はツアーの最後に、原爆のグラウンドゼロのすぐ近くで、ゲストブックにサインをし、世界中の人々がこの慰霊施設を訪問し、実際に見て感じるべきだと述べた。」
「『戦争は最後の手段であって、決して最初の選択であってはならない。』とケリー氏は博物館のサインブックに書き込んだ。」
「オバマ政権は核兵器排除に優先的に取り組んできた。昨年、米国と5つの大国は制裁解除と交換にイランの核プログラムの縮小に合意した。今年になって、米国は国連で、中国や他の大国と協調して、北朝鮮が核テストとミサイル発射に踏み切った後、同国への制裁を強化している。」
「ケリー氏は、彼の訪問はオバマ政権の取組みの重要性を示すものであるが、その道のりは時間がかかるし容易ではないと述べた。『とても複雑な問題だ。』と彼は言う。『紛争を解決する方法を見つけねばならない。態度を変えねばならない。障害を一夜で取り除くことは不可能だ。』」
「米国では次期大統領候補のトランプ氏が、日本と韓国は、米国とその核の傘に頼るのではなく、核兵器をもつべきだとする発言を行っているが、ケリー氏の訪問は、その議論の行方に注目が集まる中で行われた。」
「岸田氏はG7ミーティングの後、記者団に対し、トランプ氏の発言は、役に立たないし、日本の価値観に反すると述べた。」
「『我々は核兵器を持つことは全く考えていない。』と彼は述べた。」
「前日に資料館を訪れた際に、多くの外国人訪問者は、記述、写真、広島の犠牲者の個人的持ち物などを見た際に、涙を拭いた。」
194586日の攻撃は、戦争において始めて核兵器が使用されたものだ。2回目で最後の核兵器使用は、その3日後の長崎への投下だ。数日後に日本は降伏した。米国の軍事計画者らは、原爆投下は戦争の早期終結を意図したものであって、より多くの人命が失われたであろう地上戦を避けるために必要であったとしている。」
「日曜日の朝に資料館を訪問した後、ケリー氏とその他の外相達は献花式に参加した。好天の下、彼らは各国の国旗を持った800名の小学生が囲む献花台への満ちをゆっくりと進んだ。」
「各国の外相は整列し、献花を行った。小学生が、各国の外相に折り紙で作った鶴のネックレスを贈った。」
「日本と米国は、何万人もの日本人を殺戮した原爆投下について米国が謝罪すべきか否かという問題について、注意深くバランスと取ることに腐心した。日本人の中には、米国に謝罪を要求するのは当然のことだと考える人もいる。一方、多くのアメリカ人は、謝罪することは、米国の戦争について不適切な批判を招くだけだと感じている。」
「オバマ大統領が、5月に日本で開催されるG7サミットの後に、広島を訪問するのではないかという憶測が、日米両国で飛び交っている。この点について尋ねられてケリー氏は、オバマ氏は任期中に訪問するかどうかは不明だと答えた。」
「『全ての人々が広島を訪問すべきだ。全ての人々とは全ての人々のことだ。私は、いつの日か、アメリカ大統領もここに来ることの出来る全ての人の一人になることを期待している。』とケリー氏は述べた。」


Thursday, April 7, 2016

安倍は不安定な労働市場に焦点を移す【A8面(国際面)】

安倍首相が、同一労働同一賃金の実現に向けて動き出したという記事が、4月7日の国際面に掲載された。



安倍首相はこれまで、企業の賃上げを重視してきたが、労働市場の2極分化にはあまり注意を払ってこなかったので、これは大きな政策転換だとしている。

***** 以下本文 *****

マツシタ・ケイさん(32)の苦労は、安倍晋三首相が労働市場に目を向ける理由だけでなく、労働市場が日本経済の足かせになっている状況を浮き彫りにしている。

  マツシタさんは同世代の多くの人と同じように結婚して、子どもをもうけようと思っている。つまり、安倍氏が推進する「一億総活躍社会」の市民の1人になろうと考えているのだ。ただ、マツシタさんはまだ両親と一緒に住んでいる。

  2007年に経済学の学位を取得したマツシタさんは、卒業以来、一度も正社員の職に就いたことがない。いまや有望な正社員候補ではなく、一生賃金の低い非正規社員のままかもしれないという未来に直面している。

  安倍氏の経済政策「アベノミクス」が打ち出されてから3年。ただ、成長率と物価上昇率がともにゼロ近辺にとどまるなど、アベノミクスは行き詰まり感を示している。この主な原因となっているのが労働市場だ。ここを起点に一連の本質的な問題―賃金上昇率の鈍さ、生産性と投資の低さ、そして未婚率の高さと出生率の低さ―が生まれている。

  安倍氏は今週、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで「働き方の改革は次の3年の最大のチャレンジになると思う」とし、「(労働市場の改革が)日本が持続的に成長していく鍵になるだろうと思っている」と語った。

  安倍氏は非正規で働く労働者の賃上げ幅を拡大させ、「同一労働同一賃金」の実現を目指すと述べた。同氏は仕事と子育て・介護を両立させなければならない、女性を中心とした労働者の支援を積極化させている。こうしたイニシアチブには保育所や介護施設の数を増やし、育児休業を取得しやすくするといった対策が含まれる。

  1990年代のバブル崩壊以降、企業はより柔軟に雇用や解雇ができる方法を模索し、これが非正規社員への依存を強めるようになった。過剰な生産能力と負債を抱えた「日本株式会社」は人員をカットするか賃金をカットするかという選択に直面し、後者を選んだ。ここに映し出されているのは、日本の大企業は雇用を保障する責任を持つ「公共機関」だという見方だ。

正社員を保護することで非正規社員が拡大した。事業環境が悪化した時に解雇しやすい労働者の雇用を企業が増やしたためだ。

  現在も正社員には実質的な終身雇用が保障されている。いまや非管理職従業員の38%を占める非正規労働者は、正社員と同じ仕事をしていても、正社員よりはるかに低い賃金しかもらえない。非正規社員は正式な訓練をほとんど受けず、労働組合の保護をあまり受けられず、配属が頻繁に変わり、正社員によって昇進の道がふさがれている。

  「オリエンタル・エコノミスト・リポート」のリチャード・カッツ編集長は、「非正規の仕事にしか就けなければ、30代になるころには魅力的な従業員ではなくなる」と話した。

  これはマツシタさんが置かれている状況だ。同氏は「日本では新卒カードが強い。そこで失敗すると非正規に甘んじることになる」と話した。

  経済協力開発機構(OECD)経済局の日本・韓国課長で、チーフエコノミストのランダル・ジョーンズ氏は、労働市場の二極化を改革することが、日本にとって最も重要な課題のひとつだと指摘。これは労働生産性にとっての大きな障害で、現在の日本の潜在成長率を非常に低くしている主因だと述べた。OECD加盟国の中で、日本の労働生産性は下位に位置している。

  ジョーンズ氏によると、正社員を手厚く保護することで有望企業への人材や資金の流れが制限されている。そして、必要な人材確保ができないため、革新的な新興企業はベンチャー資金を呼び込むのに苦戦しているという。

  安倍氏はかねてから賃上げの重要性を強調してきたが、当初は労働市場の二極化にあまり注意を払ってこなかった。むしろ、企業の利益を押し上げて賃上げを促す金融緩和などの政策に重点を置いていた。ただ今年は、日本銀行によるマイナス金利導入にかかわらず景気低迷が続くなか、安倍氏は政策の方向を転換させた。

  安倍氏の指示で招集された専門家による検討会が3月にスタートした。ここでは労働市場が賃金に与える影響が審議されるほか、必要な労働法の改正についての進言がまとめられる。安倍内閣は5月にも同一賃金の実現に向けたガイドラインを明らかにする見通しだ。

  一方、多くの人が抜本改革の実現に懐疑的だ。かねてからビジネス界の幹部らは正社員を解雇しやすくするべきだと主張してきたが、安倍氏の同一賃金へのこだわりには警戒感を示す。同一賃金は現在の法律ですでに求められているが、実施されることはまれだ。

  経済同友会の雇用・労働市場委員会を率いる橘・フクシマ・咲江氏は、「正社員が最も良くて企業は決して誰も解雇すべきではない」など、日本は労働と労使関係について心の持ち方を変える必要があると指摘した。

アメリカの東アジアでの安い買い物【A14面(社説)】

WSJは日米同盟がアメリカ国民に大きな利益をもたらしているという主張を、47日の社説で掲げた。



トランプ氏が、日米同盟によって米国は日本の面倒をみているが、米国民はその見返りとして何も得ていないとして、日米安全保障条約の破棄を訴えているが、日本は、多額の金銭と政治的犠牲(安倍首相が、国民の反対を押し切って、安全保障関連法を成立させ、施行された。)を払っており、米国民は十分な見返りを得ていると主張している。また、日韓同盟についても同様だとしている。
(WSJ日本語版に同じ記事が掲載されていたので、以下に掲載させて頂きました。)

***** 以下本文 *****
日本で先週、集団自衛権の限定行使などを可能にする安全保障関連法が施行された。これにより、たとえ日本が標的とされていない場合でも、米軍が攻撃を受ければ日本の自衛隊が防衛で協力することができるようになった。これは、共和党の大統領候補指名争いでトップを走るドナルド・トランプ氏が米国の同盟諸国を非難し、西太平洋からの米軍撤退を提案する際に見落としている重要な事実のひとつである。

 トランプ氏は先月、米国は日本と韓国の「面倒をみているが、(その見返りとして)何も得ていない」と発言した。同氏は米国が日韓両国とそれぞれに締結している安全保障に関する条約の再交渉もしくは破棄を訴えている。これらの条約は5万人規模の在日米軍と28000人規模の在韓米軍を配備する根拠となっている。

 だが、これらの条約は一方的なわけでも、米国が負担しきれない取り決めでもない。日本と韓国は現在、駐留米軍経費の半分近くを負担している。年間で日本は約20億ドル、韓国は約9億ドルだ。仮に日韓から駐留米軍が撤退すれば、米国の納税者の負担は増えるだろう。しかも、壊滅的な戦争が起きてきた地域の平和と繁栄を数十年間にわたって持続させてきた価値を抜きにしてだ。

太平洋における米軍の4大建設プロジェクトは日韓両国が300億ドル超を負担しているため、米国の納税者の負担はわずか70億ドルに過ぎない。トランプ氏は建設に関わる人間として、そのことを知れば関心を持つかもしれない。米太平洋軍の20154月の記録によると、韓国のキャンプ・ハンフリーズ(韓国平澤市)では2017年までに在韓米軍のほぼすべてを集約させるために拡張工事が進められているが、110億ドル近くに上る建設費用の93%を韓国側が負担している。 

 日本は岩国の米海兵隊航空基地の必要経費約50億ドルのうち94%を負担しているほか、普天間基地の移転にかかる約120億ドルを全額負担している。日本はさらに、米領グアム島の新基地に必要な経費30億ドルの36%をあらたに負担している。

 韓国は国内総生産(GDP)の約2.5%を防衛費に充てている。米国の3.5%を下回るものの、GDP比で世界トップ10に入る。徴兵制を採用している韓国軍は北朝鮮の核兵器や長距離ミサイルを阻止するための最前線に立っている。冷戦時代、日本は西側諸国にとって、太平洋を潜航するソ連の潜水艦に対する防衛の要だった。今日では、東アジアにおける中国の台頭に対抗するうえで重要な砦(とりで)となっている。

 GDP1%という防衛費はあまりに少ないが、日本は4年連続で防衛予算を増やしている。改革論者の安倍晋三首相は米国、東南アジア、オーストラリア、インドとの関係を築いてきた。これがなければ中国は地域の覇権を楽に掌握することになろう。

 多大な政治的犠牲を払ったうえで、安倍政権は憲法解釈を変更し、集団的自衛権の限定行使を可能にする新たな法律の施行に道を開いた。日本は今や、北朝鮮のミサイルから米国を守ることができる。南シナ海で米軍の艦船がパトロールを行っている際には、中国の政策立案者らは常に日本の海上自衛隊のことも念頭に置かなければならなくなった。

 安倍首相とシンガポールのリー・シェンロン首相はここ数日の間に、アジアにおける米国の役割を称賛し、近視眼的な撤退がもたらすダメージについて警告した。米国民はこれらの国がフリーライダー(ただ乗りする人)ではないことと、アジアでの前方展開が米国の安全保障にとって重要であることを理解しなくてはならない。



Wednesday, April 6, 2016

安倍は米日軍事同盟を擁護【A16面(国際面)】

WSJ45日に行った安倍首相への単独インタビューの記事が、翌6日の国際面に掲載された。



米大統領選で、トランプ氏が在日米軍撤退の可能性に言及し、共和・民主両党の有力候補がTPPを批判する中、安倍首相は日米同盟を強く擁護し、TPPを推進する方針を示したとしている。記事の最後には、アベノミクスの効果に疑問を示し、伊勢志摩サミットにおいて新たな財政支出を提案するのではないかと予測している。
(WSJ日本語版に同じ記事が掲載されていたので、以下に掲載させて頂きました。)

***** 以下本文 *****
 安倍晋三首相は5日、米大統領選で日米安全保障条約に対して疑問が呈される中、日米同盟を強く擁護し、「ナショナリズムをあらわにした行動」をけん制した。

 安倍首相はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)との1時間のインタビューに応じ、米国をはじめとする先進国は既存の貿易協定を支持すべきだとし、環太平洋経済連携協定(TPP)を推進する方針を表明した。TPPをめぐっては、米大統領選で民主・共和両党の候補が米国にとって不利益な協定だと批判している。

 共和党候補指名争いでトップを走るドナルド・トランプ氏が在日米軍撤退の可能性に言及したが、安倍首相は米軍が撤退し日本を自衛に委ねることができるかとの問いに、「今、予見しうるなかにおいて、米国のプレゼンスが必要ではないという状況は考えられない」と明言した。

 さらに、日本が米国と共に海外で武力行使することを容易にする安全保障関連法について、「日米同盟が強化されることで抑止力が強化され、それは日本のみならず地域の平和と安定に貢献」すると語った。

 米国のアジア地域における軍事政策の根幹を成してきた日米同盟をトランプ氏が疑問視していることなどから、今年の大統領選では日本などアジア諸国が異例の注目を集めている。共和党の各候補に加え、民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官とバーニー・サンダース上院議員もTPPを批判している。同協定は昨秋合意に至ったが、米議会ではまだ批准されていない。

 安倍首相は「TPPによって、世界のGDP(=国内総生産)の4割の経済圏が生まれ、自由で公正なルールによって守られた経済圏ができる」とし、「それによって米国、日本、TPPに参加した国々は大きな利益を得て、成長の可能性を得ることができる」と前向きな見方を示した。

首相は各米大統領候補の発言についてコメントすることは控えた。ただ、米国の国益を最優先する必要があると主張するトランプ氏の見方には幾度か間接的に触れる場面があった。トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)などの同盟の米国一般市民に対する恩恵を疑問視しており、最近の遊説では、米国は同盟国に「食い物にされている」と非難。「それに米国がどう対処しているのかといえば、何もしていない」と発言した。日本については「自国のことは自国で対応させなければならない」と述べていた。

米国は日本に約5万人の米軍を駐留させている。目下、米軍が抑止力の対象としているのは拡大を続ける中国の軍事力だ。周辺諸国が領有権を主張する南シナ海で中国は人工島を建設するなど実効支配を強めているが、安倍首相は中国政府が建設を中止すべきであるとあらためて表明した。

 日本は5月下旬に主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長国を務める。安倍首相はこのサミットが「ナショナリズムをあらわにした行動」を抑制するリーダーシップを発揮する機会となると述べた。また、各国はインフラ投資を拡大することで経済面の懸念に対応できるとの見方も示した。

 米国では賃金上昇の鈍さや、大統領選候補者が超富裕層に恩恵が偏っていると指摘するなど経済に対する有権者の怒りが強まっているが、安倍首相は日本国内でもこれに似た状況に直面していると述べた。首相に就任した201212月には、成長の後押しを図る経済政策「アベノミクス」を打ち出し、日本を過去20年の景気停滞から脱却させ力強い成長を促すと公約した。

 だが日本経済は過去3四半期のうち2四半期でマイナス成長となり、2015年の実質国内総生産(GDP)は0.5%増にとどまった。実質賃金は4年連続で減少した。日銀は今年、マイナス金利を導入したが効果は上がっていない。

5日の外国為替市場では円がドルに対し1410月以来の高値に上昇。これを受けて日経平均株価は前日比2.4%安となった。最近まで、企業利益が過去最高に拡大する一助となった円安はアベノミクスの数少ない実績の一つと見られていた。

 さらに、安倍首相はデフレからの脱却を約束しているが、最近の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合指数が前年比ゼロ近辺で推移しており、その達成が依然として遠いことを示唆している。

 安倍首相はアベノミクスを擁護し、成功の途上にあると述べた。トヨタ自動車のベースアップ(ベア)水準が低くなったことを認めつつも、雇用市場の力強さに加え、今春は中小企業の賃金が伸びたと指摘した。

 また、このところの国内景気の低迷は海外動向に起因するとの見方を示し、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを開始したことにも言及した。

 「中国経済、景気減速への懸念、原油価格の下落や米国の利上げ動向など」により、「市場が大きく動いていて、日本の市場も大きく変動している」と説明し、こうした中で「日本の経済のファンダメンタルズはしっかりしている」と評価した。

 ただ、エコノミストの間では今年、日銀の追加緩和と安倍政権による景気刺激策の強化が広く予想されている。安倍首相は、「先進国でも古いインフラのリハビリや、あるいは環境重視型の投資やインフラ導入が求められている」として、G7首脳会議で日本が新たな財政出動を提案し、他の先進国にも同様の措置を促す可能性を示唆した。