Sunday, May 31, 2015

** 5月のまとめ **

5月にWSJに掲載された日本関係の記事は9件だった。2014年の平均15件より少ない。

テーマ別では、政治関係が1件、経済関係が5件、社会関係が3件だった。

政治関係では、「安倍首相の訪米の総括」の1件。この記事は、安倍首相の訪米の成果を総括すると共に、安倍首相のスピード感ある行動が、アジアで覇権を握ろうとする中国の動きを牽制する役割を果たしているとして、安倍首相を絶賛している様に読める。

経済関係では、「日銀の消費者物価指数見通し引下げ発表」「サントリーの世界戦略」「2015年第一四半期GDP速報値発表」「タカタのリコールが米国史上最大のリコールになる見通し」「安倍首相によるアジア向けインフラ投資増額発表」の5件。
日本の経済については、4月30日の日銀の発表を受け、インフレ目標の達成の遅れを指摘する一方で、5月20日政府発表を受けて、GDPの伸びはこの1年で最も早いペースになったことを報道。一進一退状態のアベノミクスを伝えている。

社会関係では「日本が韓国をWTOに提訴」「韓国が産業革命遺産の世界遺産登録に反対」「日本の歴史家団体が慰安婦問題で声明発表」の3件。いずれも韓国絡みだ。「東北地区の野菜は危険だ。」として輸入規制を続ける韓国、「産業革命遺産では韓国人が残虐な扱いを受けた。」として世界遺産登録に反対する韓国を取り上げ、日本との関係悪化を懸念している。また、慰安婦問題では日本の16の歴史家団体が、慰安婦問題での自由な議論の保証を求めた声明を発表したというニュースを取り上げた。(このニュースは日本では朝日新聞以外は取り上げなかったそうだ。)

掲載箇所では、1面が2回、国際面が7回だった。
1面を飾ったのは、「サントリーの世界戦略」「タカタのリコールが米国史上最大のリコールになる見通し」の2件。WSJの特定企業の戦略を深堀した記事は、独自取材に基づいており、面白く読みごたえがある。

ところで、今月は9件中5件が、中国や韓国との対立を描いた記事だった。米国との軍事同盟強化、AIIBへの対抗措置表明等により、中国との対抗姿勢を益々強める安倍首相。過去の歴史問題に関する取扱いで韓国との軋轢を生む安倍首相。WSJは、基本的には安倍首相を擁護する立場だが、歴史問題、特に慰安婦問題については、国際世論に支持を失いつつあることも併せて報道している。

Wednesday, May 27, 2015

歴史家は性的奴隷についての議論を求める【A14面(国際面)】

「日本の16の歴史学団体が5月25日、慰安婦の強制連行を認めるべきだという声明を発表した。」というニュースが27日の国際面に掲載された。


安倍政権とマスコミについて、彼らが歴史歪曲をしているとして批判しているが、確かにこのニュースは日本では殆ど報道されていない。今月初めに世界の歴史学者187人が安倍首相の歴史歪曲を批判する声明書を発表しており、このニュースは米国のみならず、中国、韓国でも関心が高い様だ。

***** 以下本文 *****

「日本の数千人の歴史家を代表するグループが、第二次世界大戦における日本の性的暴力に関する国家の役割について自由に議論出来ることを確実にする様に、政治家やマスコミに強く要求した。」
「歴史学者や歴史の教育者で構成される16のグループが月曜日に共同声明を出し、戦時中にアジアで女性が性的奴隷にされたことについての政府の関与について、一部の政治家やマスコミがそれが無かったかことにしようとして動いていることを批判した。」
「声明は、安倍首相の下で、学問や言論の自由が侵されているとする一部の人々の懸念を示している。」

Friday, May 22, 2015

日本はアジアの大型プロジェクトへの投資を狙う【A7面(国際面)】

安倍首相が、アジア向けインフラ投資を大幅に増やすことを表明したというニュースが、国際面に掲載された。



安倍首相は、日本の資金拠出は、日本の技術力を活かした質の高いインフラへの投資を目的とするとして、中国のAIIB構想に真っ向から対応する姿勢を見せているとする。その一方で、日本の拠出だけでは、旺盛なアジアの資金需要には応えられないとしている。WSJは、安倍首相の取り組みを評価しながらも、AIIBも支持する立場だろうか?

***** 以下本文 *****

この記事は、次のような書き出しで始まる。
「安倍晋三首相はアジアのインフラ整備プロジェクトに向けた日本の資金供給を30%増やすという計画を発表した。これは、新しい地域投資銀行設立に向けた中国の動きに対する日本の対抗策だ。」
「安倍首相は、およそ1,100億ドルを今後3年で拠出するとした。これは、幾つかのチャネルを通して、アジアの高品質インフラ投資への資金供給をするものだ。チャネルとしては、アジア開発銀行による貸出額増や、日本政府による円借款等が考えられる。」

暫く要約する。
安倍首相は、中国が新銀行を通じて大量の資金供給を目指すのに対抗して、省エネ技術や公共交通システム等を使った質の高いプロジェクトへの資金供給を目指す。一方、中国は世界銀行やIMFなどの多国籍組織は、欧米に支配されていると非難されている。

この記事は次のようなコメントで締めくくられている。
「安倍首相は、日本の投資は、地下鉄や橋の建設など、お金はかかっても、耐久性があり、環境に優しく、災害に強い地下鉄や橋の建設などへの資金に重点的に充てられると述べた。」

「しかし、安倍首相が表明した資金の額は、アジアのインフラ整備に必要となる金額には遠く及ばない。アジア開発銀行は今後10年で約8兆ドルの資金需要があるとみている。」

歴史問題での衝突がアジアのアメリカの同盟国を分断する【A7面(国際面)】

明治日本の産業革命遺産の世界文化遺産登録申請が、日本と韓国の間の新たな紛争の火種となっているというニュースが国際面に掲載された。





韓国は、これらの施設では韓国人が強制労働させられたとしている。WSJも日本の行為が如何に残虐だったかを報じており、韓国側に同情的だ。併せて、日本はこの問題を政治化しないこと、米国も日韓両国の建設的関係を求めていることを強調しており、韓国への冷静な対応を求めている様にも読める。
(この記事は、ウォールストリートジャーナル日本語版に殆ど同じ内容の記事が掲載されていたので、以下の翻訳の大半はその記事から借用しました。)

***** 以下本文 *****
「崔さん(86)は第2次大戦末期、13歳の時に強制徴用され、日本の炭鉱で働かされた。」
「韓国生まれの崔さんは他の少年たちとともに、鉄道と船を使って長崎県端島(軍艦島)に送られた。そこで、縦坑が崩れないように埋める作業に従事した。落盤事故などにより暑くて湿気のある坑道内で毎月数人が死亡したという。」
「端島は、第2次大戦敗戦による日本の朝鮮半島占領の終わりから70年たった現在、日韓の歴史問題の新たな火種の1つになっている。日本政府は、端島を含む23施設を『明治日本の産業革命遺産』として、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録申請している。」
「これに対し韓国は、23施設のうち7カ所で朝鮮人が強制徴用されたとして、登録に反対を表明した。日本と韓国の関係者は金曜日にユネスコへの申請について話合うことになっている。」
「この問題は、すでに歴史問題をめぐってぎくしゃくしている北東アジアの米国の2大同盟国の関係を一段と悪化させている。韓国の朴槿恵大統領は過去2年間、慰安婦問題を理由に安倍晋三首相との首脳会談を拒否してきている。」
「日韓両国が手を携えられないことから、米国のアジアにおける軍事的・経済的な影響力拡大の取り組みが阻害されており、米政府当局者は繰り返しため息をついている。日韓亀裂への懸念が深まる中で、中国は歴史問題で韓国に足並みをそろえていて、日本の文化遺産登録問題でも、中国人の強制徴用があったとして反対している。」
「米外交問題評議会の米韓政策プログラムのディレクター、スコット・スナイダー氏は、『日韓関係は、米国のアジアへのリバランス(再均衡)にとって環太平洋連携協定(TPP)以上に重要な問題である。』と指摘する。」
「ケリー米国務長官は18日韓国を訪問した際に、『日韓の建設的な関係は地域の平和と繁栄のために極めて重要だ。』と訴えた。」
「世界遺産登録をめぐる対立は数年前からくすぶっていたが、5月に入ってユネスコの諮問機関が、軍艦島などを6月下旬に開催される世界遺産委員会で正式に承認するよう勧告したことで燃え上がった。韓国は、日本が約8,000人の強制労働者をこれらの場所で使用したとして、反対のためのロビー活動を強化している。」
「ユネスコのボコバ事務局長は19日韓国で、日韓が対話を通じて合意に達するよう希望すると述べた。」
「一方、菅義偉官房長官は韓国の対応について『政治的な主張を持ち込むべきではない。』と非難した。」
「日本は、登録申請の対象となっている施設は、外国人が強制徴用されていた第2次大戦末期よりずっと以前の18501910年に建設・開所されており、建築物としての申請は議論を引き起こすものではないと主張している。」
「韓国は、1910年で区切る日本の主張は強制労働の責任を回避しようという動きだと批判している。韓国は、この問題を、日本の過去の歴史をごまかそうとする安倍政権の取り組みの良い例だとみている。」
(中略)
「端島を含む22の観光地を訪れる観光客は、ユネスコの諮問機関が文化遺産への登録を勧告した後急増している。近くの長崎市では勧告を支援する旗が街中に掲げられ、中央駅ではボランティアが端島など登録申請している施設に関する説明のパンフレットを配っていた。」
「端島は、ニューヨークのリバティー島と同じ位の大きさで、採炭の最盛期の1950年代には5000人以上が暮らしていたが、74年に閉山となった。その形状が軍艦に似ていることから『軍艦島』と呼ばれている。2012年のジェームズボンドの映画、スカイフォールでも使用されている。」
「ツアーグループは、コンクリートで覆われたこの島には植物が殆ど無かったので、住民が壁を緑色に塗ったとう説明を聞く。最近、ガイドは観光客に海底の炭鉱で亡くなった、外国人労働者を含む方々のことを思い出して下さいとお願いしている。韓国は、端島では600人の朝鮮人が強制徴用され、うち28人が死亡したと推定している。」

「崔さんは、徴用中に大きなけがはしなかったが、『肉に食い込むほど金属の針金で打たれ』、空腹から自殺を考えたこともあったという。そして、19458月に長崎に原爆が投下され、戦争が終わり、彼は自由の身となった。終戦後韓国の自宅に戻った時は、ほとんど無一文だったという。」

東京は貿易に関してソウルに挑戦する【A7面(国際面)】

日本が5月21日に韓国の輸入規制めぐりWTOに提訴したというニュースを22日の国際面で速報した。

この輸入規制は、東日本大震災の直後から、放射能汚染が懸念される食品に課されているものだ。国民の安全性確保を理由に規制を正当化する韓国と食品は安全であり韓国は国際ルールに違反している主張する日本の立場をコンパクトに伝えている。

***** 以下本文 *****


日本は韓国が日本の食品にかけている輸入規制は国際貿易ルールに違反するとして、韓国をWTOに提訴した。」
「韓国は福島第一原子炉をメルトダウンさせた2011年の津波の後、この規制を実施した。この規制は、放射能汚染の恐れがあるため、幾つかの製品の輸入を禁止し、日本の食品に追加のテストや証明書の提出を要求している。韓国の貿易省は『貿易規制は国民の安全を確保する目的で実施されている。』と述べた。」
「日本は国々にこの様な規制を廃止する様に圧力をかけてきた。2014年までに、福島地域の食品の中で、日本の安全基準を上回る放射能汚染が測定されたのは1未満だった。」

Wednesday, May 20, 2015

史上最大のエアバッグのリコール【A1面】


タカタのリコールが全米で3,400万台に達する見込みだとするニュースが一面で報道された。



タカタのリコールについて、規制当局、タカタ、自動車メーカそれぞれの視点から、詳細かつ公平に報道している。いつ頃自分が保有する車がリコール対象だと分かるのか、いつ頃修理してもらえるのか、どの自動車メーカが修理に応じてくれるのか等、消費者目線の論点もカバーしていて、アメリカらしい。

***** 以下本文 *****

この記事は次の様な書き出しで始まる。
「日本の部品メーカーであるタカタが火曜日に規制当局からの圧力に屈した。これにより、米国における最大の自動車関係リコールが実施されることになり、自動車メーカーは3,400万台の欠陥エアバッグを修理することになるだろう。」
「この動きにより、リコール対象車は既に対象となっている台数の倍になる。このリコールは、エアバッグが膨れた際に、エアバッグが爆発し破片が車中に飛び散るという誤動作を修理するためのものだ。リコールは11の自動車メーカーにより実施される見通しで、あらゆる産業を通して過去最大のアクションの一つになる。1980年代にタイラノールが3,100のボトルをリコールした。」

長い記事なのでしばらく要約する。

このエアバッグは、米国を走る2億5千万台の14%にあたる車に搭載されており、あらゆるメーカーのあらゆる車種にわたる。タカタは火曜日に、米道路交通安全局(NHTSA)に対し、エアバッグに欠陥があったことを認め、今後の調査に協力することに同意した。この問題により6人が死亡し、100人以上がけがをした。
自動車のオーナーは、どの車種がリコール対象となるのかが分かるまでには数日待たねばならない見通し。更に実際に修理が行われるまでは、数ヶ月、場合によっては数年待たねばならないだろう。
タカタの高田重久会長は声明で、自動車の安全性を向上させるために当局および自動車メーカーと緊密に協力し続けるとした上で、今回の合意は「自動車メーカーと運転する大衆からの信頼の回復と安全性向上に向けた明らかな前進」だと述べた。
タカタの2104年度決算は、リコール関係の特別損失550億円を計上し、290億円の赤字となった。タカタに対しては、規制当局が既に100万ドル以上の罰金を課すとしており、オバマ政権も自動車メーカに課せられる罰金の上限を3,500万ドルから3億ドルに増やすことを求めている。タカタは更に、個人からの訴訟や法務省による更なる罰金のリスクにも晒されている。
規制当局とは別に、タカタと10社の自動車メーカーがエアバッグの爆発の原因について調べているが、原因究明には時間がかかりそうだ。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「(2002年のホンダアコードの事故について)検死によれば、エアバッグの膨張により、金属が運転手の首に突き刺さったことが死亡原因だ。」
「問題となっているこのエアバッグにより最も影響を受けた自動車メーカーは、ホンダだ。エアバッグの交換に対応しているその他のメーカーとしては、BMW, GM, FORD, TOYOTA, NISSAN, MAZDA, MITSUBISHI, DAIMLER TRUCKS, FUJI, SUBARU等があり、FCA USやFCA NVも対象となる見通しだ。」

日本経済の成長はこの一年で最も早い【A9面(経済面)】

5月20日に発表された日本の2015年第一四半期(1月~3月)のGDP速報値を、同日の国際面で速報した。



在庫の増大がGDP増加に寄与してはいるものの、事前の予測を大きく上回る数値であり、遂に日本も成長へのエンジンが再びかかったと、楽観的なトーンになっている。

***** 以下本文 *****

この記事は次の様な書き出しで始まる。
「第一四半期の日本経済はこの一年で最も早いペースで成長した。家計とビジネス支出が伸びたことによるもので、世界第三位の経済の成長へのエンジンが再びかかったことを示唆している。」
「水曜日の政府発表によれば、2015年の最初の3ヶ月における日本の実質GNPは年率で2.4%伸びた。その前の四半期の修正後の成長率である1.1%より強かった。ウォールストリートの調査による予測である1.5%よりも大きかった。」

しばらく要約する。

この数値は政府や日銀の見方と一致しているものの、消費が生産に追い付いていないという数値もあり、手放しでは喜べない、安倍首相は2012年に政権に就いて以来金融緩和策を推し進めて来たが、昨年の消費税増税により日本経済はこの10年で4回目の不況に陥っていた。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「最新のデータは、消費が回復し始めたことにより、経済のスランプからの脱出が加速していることを示している。家計支出はこの4半期は0.4%伸びた。エコノミストが予測した0.2%よりも高い数値だ。」
「しかし、一方でこの拡大はまた、民間企業の予想以上に大きい在庫の増加によってもたらされたものだ。消費者が購入した商品よりも多くの商品が倉庫に積まれているということは、今後の経済が弱含みであることを示している可能性もある。」

Monday, May 4, 2015

ジン・ビームの新しいオーナーはグローバルカクテルを混ぜる【A1面】

サントリーのジン・ビーム経営戦略について一面で報道した。

サントリーはアメリカのジン・ビームを昨年買収し、アメリカでも大きな話題になったが、買収後の状況と今後の戦略について、サントリーの新浪社長やビーム・サントリーのシャトック社長らの発言を引き合いに出して詳細に報じている。大変に読み応えのある記事だ。同社は、日米文化の融合に苦労する一方で、戦略が明確でその一部がうまく行きだしているとしており、その挑戦する姿勢を好意的に描いている。

***** 以下本文 *****

この記事は次のような書き出しで始まる。
「昨年の夏、東京六本木のエンターテインメント街に仮設のバーが出現した。長いカウンターに収められていたのは、ジム・ビームのバーボンのボトル700本だった。」
「若者がこのジム・ビームバーのターゲットだ。メニューにある30種類のカクテルはジム・ビームを使っている。それらは、異端者であるアメリカのバーボン愛飲家も魅了する様な作り方だ。人気のカクテルの一つにシトラスビームハイボールがある。その名の通り、ケンタッキーバーボン、クラブソーダ、絞りたてのレモン、オレンジまたはグレープフルーツで作られている。」

非常に長い記事なので暫く要約する。

サントリーは昨年ジンビームを買収した。それにかかった費用を回収するために、2020年までに蒸留酒の売上を倍にする計画だが容易ではない。蒸留酒の2大市場のうち、アメリカはバーボンの消費が活発だが、日本ではそうでもない。一方、日本のウィスキーである山崎や角瓶はアメリカではまだまだ知名度が低い。その上に、サントリーとジムビームという2つの企業文化を一緒にするのは簡単ではない。

「日米のメンタリティの違いを克服するのは容易なことではない。」とハーバードビジネススクール出身の新浪社長は言う。彼は、サントリーの創業家以外から出た最初の社長だ。ジムビームのマスター蒸留者のフレッド・ノウは、ジム・ビームの創業家出身で、ハンク・ウィリアム・ジュニアのマネジャーをやっていたこともあるが、彼が最近東京の拡販イベントに参加した際、サントリーの幹部をBuddieと呼び、やたらと幹部にハグをして、幹部達を当惑させた。
サントリーの世界進出のタイミングは良かった。2009年~2014年に蒸留酒市場は5%伸びているし、アメリカではビール市場からシェアを奪っている。新興国での伸びも期待出来る。しかし、サントリーは、世界2大蒸留酒メーカーであるイギリスのDiageo PLC、フランスのPernod Ricardに後れを取っていて苦戦が予想される。

世界への野望
サントリーは1930年に創業された。当初はウィースキーで成功したが、その後多角化して様々な飲料を扱う様になった。また2009年にOrangina Schweppers Groupを買収して海外進出も果たした。しかし蒸留酒の売上の90%以上が日本市場からの売上だ。そのための対策としてジム・ビームを買収したのだ。
サントリーはジン・ビームの本社を米国に置き、日本のブランドを含む全ての蒸留酒のグローバルオペレーションを任せることにした。経営陣には、イギリス人のマット・シャトック率いるアメリカの経営チームを充てた。「補完的な地域、補完的なポートフォリオを一緒にして、成功へのシナリオを作る。」とシャトック氏は言う。
3,200人のジン・ビームの社員は、サントリーの家族経営的社風が、ウォールストリートからの圧力を弱めてくれるものと期待したが、現実は違った。サントリーは日本の経営慣行である月次財務報告システムを導入し管理強化を行ったのだ。
また、文化の違いにも苦労している。日本では、謙虚、詳細、コンセンサスが重んじられるが、アメリカでは率直、柔軟、スピードが重んじられる。新浪社長は遠慮が無く正直なアメリカ式の方が好みだ。
買収後すぐにサントリーは数名の社員をジン・ビームに送り込んだ。彼らは会議に参加したが、発言はしなかった。その後、彼らだけで打合せをした。ジン・ビームの幹部は彼らはスパイだと思い当惑した。新浪社長は、優秀な米国人幹部から学ばせるために彼らを送り込んだと説明した。
ジン・ビームの蒸留所では、日本式のユニフォームや一貫したテイスティングのプロセスが導入された。現在、改善プロセスを導入すべく準備中だ。

サントリーの負債はジン・ビームの買収によって100億ドル増加し、ムーデーィズの格付けもA3からBaa2へと下がった。負債の殆どがドル建てなので、円安により返済のためにより多くの円が必要になっている。
一方、サントリーの蒸留酒の7大ブランド(ジン・ビーム、Courvisier、Sauza、角瓶、Maker's Mark、Pinnacle Vodka、Teacher's Scotch)の売上は昨年3%しか伸びていない。ビーム・サントリーによれば、同社は、1,000万ケースのバーボンと500万ケースの日本のウィスキーを販売している。2015年までにビール、ワインを含めたアルコール飲料の売上を18%引き上げる計画だが、この実現のためには売上の50%以上を占めるウィスキーの売上増が必須だ。そのためには、ジャックダニエルに挑戦せねばならないが、同社の売上はジン・ビームの倍だ。
バーボンの売上は過去5年間で米国で35%、海外で50%増加した。ウィスキーの売上も5%伸びており、他の飲料を上回る。サントリーはジン・ビームをインド、メキシコ、ブラジルで拡販しようとしている。日本ではカクテルへの使用等により新しい需要を生み出そうとしている。サントリーは日本のジン・ビームの販売網を引き継いだが、日本での販売は27千ケースから253千ケースへと増大している。これを2020年には800千ケースへ増やす計画だ。

Lost in Translation
2003年の映画'Lost in Translation'でBill Murrayはサントリーの宣伝に出演するアメリカ人俳優に扮した。サントリーは、ジン・ビーム拡販のために、日本人モデルのローラとレオナルド・デカプリオを起用した。以前は安いお酒のイメージが強かったジム・ビームはこうした広告の効果で若者や女性の心をつかんだ。2月現在、ジム・ビームを取り扱う日本のバーの数は、一年前の4,000から10,000軒に増えた。
一方、アメリカにサントリーの日本のウィースキーを普及させることには苦戦している。2014年のアメリカにおける日本のウィスキーの市場規模は75億ドルで全体の1%以下だ。シャトック氏はスコッチに味が似ている響を拡販しようと考えている。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「サントリーは、アメリカの流通網にサントリーの日本のウィスキーを拡販してもらうための施策を推し進めている。そのためにバーやレストランでのテイスティングをアレンジしたりしている。」
「Republic National Distribution Co.のトム・コール社長は次の様に言う。『彼らは、これらのウィスキーが産声をあげることを望んでいることを明確にした。』

Friday, May 1, 2015

東京は低いインフレーションが暫く継続するとみる【A6面(国際面)】

日銀が消費者物価指数の見通しを引下げたニュースを1日の国際面で速報した。


黒田総裁が、インフレ目標達成時期をやや後退させたが、全般的なインフレ達成の状況については、これまでの強気の見方を変更しないとした。新しい施策は提案しなかったとも述べており、黒田総裁に対して、強気一辺倒では無く、何か新しい施策の実施を求めている様にも読める。

***** 以下本文 *****

 「日銀は、木曜日に、価格見通しを引き下げ、長期インフレ目標を達成する時期を後退させた。世界第三の経済に重くのしかかるデフレ圧力を取り除く戦いにおける新たな後退だ。」
「日銀は半年毎にまとめる展望レポートで、長い間維持している2%のインフラ目標は、2016年度の前半あたり、つまり、来年の4月から9月の間に達成されるだろうと述べた。これは、これまでの予測よりも、6ヶ月程度後退している。」
「日銀はまた、今年と来年のインフレ予測を0.2%引き下げた。」
「しかし、日銀の金融政策決定会合は、レポートが発行される前の打合せで、何ら新しい施策を打ち出さなかった。黒田東彦総裁は、彼のアグレッシブな緩和政策は予定していた通りの効果が出ているというこれまでの見方を変えなかった。」
「黒田氏は、2年前にバズーガと言われる大規模な資産購入を伴う金融緩和策を開始した。その際の彼の目標は2年以内に2%以上のインフレを達成することだった。」
「見通しの引き下げは、原油価格の下落と一年前の消費税引上げによる国内消費の落ち込みが強い向かい風になっていることを示している。この向かい風が数十年続いている緩やかな価格下落を反転させることを拒んでいる。」

日本のリーダはライバルのアジェンダを邪魔する【A6面(国際面)】

安倍首相訪米を総括する記事が国際面に掲載された。


安倍首相の米国上下院でのスピーチを絶賛すると同時に、彼のスピード感溢れる行動力も賞賛している。さすがに習近平国家主席も、安倍首相のスピードについて行けず、中国はその政策推進において後手に回っているとしている。

***** 以下本文 *****

「日本の安倍晋三首相は、その庶民的な魅力、キャロル・キングのラブバラードの郷愁あふれる引用、パールハーバーへの反省などにより、アメリカ上下院において最高のパーフォーマンを行った。」
「『アメリカは素晴らしい国です。』彼は、若い時にアメリカを訪問して驚いたことを引き合いに出した。彼は、スピーチの練習をした。彼のスピーチは、内容、トーン共に、昨年オーストラリア議会で行ったものと似ていた。そのスピーチは、文化への共感と戦争への反省という意味で、見本となるものだと賞賛された。」

長い記事なので暫く要約する。

安倍首相は、インドの憲法記念日に招待された最初の日本の首相だったが、今回も米国の上下院双方に対して演説をする最初の首相だった。この様に安倍首相は、止まることなく、前へと進んでいる。ライバルの中国でさえ、そのことは認めざるを得ない。習近平国家主席もここ数ヶ月で2回も会っているのだ。
安倍首相にとって、唯一予定通り進んでないのが、慰安婦問題で冷え込む、韓国との関係だろう。これは、米国にとっても問題だ。
一方、中国は、東・南シナ海の支配を強め、スリランカ、バングラディッシュ、パキスタンに港を築いてインド洋への影響も強め、AIIBでアジア諸国へ資金援助も約束している。そうした努力にもかかわらず、中国は、アジアにおけるアメリカの同盟国をアメリカから引き離すことには成功していない。
まず、中国は、同国を東アジアの大国として認める様に迫ったが、日本とインドが抵抗し、アメリカはそれを認めていない。第二に中国は、アジアの比較的小さな国、例えばフィリピンやベトナムに、アメリカを信用するなと迫ったが、アメリカはこれらの国との防衛連携を強めることにより、中国のこうした動きは成功していない。第三に中国は、米日関係のもろさも試そうとして、尖閣諸島の領有権を主張したり、ADIZを設定したりしたが、今回の安倍首相訪問に見られるように、米日関係はむしろ強まっている。
戦争の問題は、安倍首相にとって難しい問題だったが、今となってはそれ程でもない。安倍首相は今回の演説で、米国の戦死者に対して深い悔悛の意を表明し、これまでの日本の首相が表明した謝罪を支持すると述べ、米国から一定の理解を得たからだ。

この記事は、次の様なコメントで締めくくられている。
「しかし彼は『慰安婦』の扱いについて彼自身の言葉で謝罪しなかった。」
「それでも、安倍首相はワシントンで彼には言葉で解決する途があることを示した。ダートマス大学のジェニファー・リンダ教授は彼のスピーチで『日米間の和解の歴史における、画期的出来事』と述べた。」