Monday, March 31, 2014

**3月のまとめ**

3月は、ウォールストリートジャーナルに、日本の記事が20回掲載された。1月が12件、2月が20件だったので、2月と同数。

ウォールストリートジャーナルは、安倍首相の政策への評価が高く、継続的に報じている。特に「東アジア政策」「アベノミクス」の2つの政策に対しては評価が高く、今月も前者に関する記事が4件、後者に関する記事が5件と、この2つでほぼ半分を占めた。東アジア政策への評価は高いが、靖国訪問については、不必要な軋轢を生んでいるとして批判的。また、アベノミクスについても評価が高いが、金融緩和や財政出動に頼りすぎで、抜本的な構造改革無しには失速すると手厳しい。

その他の記事では、「トヨタと国税庁の和解」「TPP」「STAP細胞」「原発」がそれぞれ2件で、ここ数ヶ月連続して報道。残りの3件(「ソフトバンクのスプリント買収」「ビットコイン」「佐村河内氏」)も、先月からの続報である。あまり、新しいニュースが無いのは、平和の裏返しか。

掲載箇所では、一面が3回(二面含む)、国内面が1回、国際面が12回、社説を含む意見欄が4回で、先月とほぼ同じ割合。一面は、「ビットコイン」「ソフトバンクのスプリント買収」「アベノミクス」、意見欄は、「アベノミクス」2回、「東アジア政策」「トヨタと国税庁の和解」と多岐に及ぶ。

テーマ別では、政治関係が6回、経済関係が9回、社会関係が5回と、これも先月とほぼ同じ割合。

消費者の買い物の浮かれ騒ぎの後に日本は経済的な二日酔いに備える【A2面】

消費増税がアベノミクスに与える影響をA2面で取り上げている。多くの客観的指標をあげて、丁寧に説明しており、好感が持てる。「消費増税が、アベノミクスにどの程度悪い影響を与えるかはこの時点では不明だが、金融緩和策に頼って本格的改革を怠ると、アベノミクスは遅かれ早かれ失速する。」というのが結論の様だ。

まず、典型的な日本人の消費増税に対する対応を述べる。
「東京に住む野田英夫さんは最近せっせと買い物をしている。息子のためのスマートフォン『ギャラクシー』やロボット掃除機『ルンバ』、衣料品、食料品などだ。」
「野田さんは4月1日に消費税が5%から8%に引き上げられるのを前に買いだめをしているのだ。NPOのマネジャーを務める彼は、増税後は支出の引き締めを覚悟しており、今年の冬休みは恒例の家族旅行もあきらめなくてはならないと考えている。」

そして、「消費増税は、アベノミクスを推進する安倍政権にとっては、タイミングが悪い。」ことを述べる。
「この増税は、膨れ上がる社会保障費を補い、日本の経済規模の倍以上に膨張し、先進国の中で最大となっている公的債務を減らすことが目的だ。しかし、15年以上にわたるデフレのあと、日本の慎重な消費者が支出を続けると期待している政府にとっては時期が悪い。」

その後、この記事は、「アベノミクスは、当初はうまくいっていたのだが、ここにきて、そのインパクトが弱まっている。」ことを、多くの事例を用いて丁寧に述べている。この部分を要約する。

当初うまくいっていた例として、次の3つの指標をあげている。
(1) 日銀の金融緩和策と財政出動により、2013年上半期の日本の経済成長率は約4%と、先進国では最高を記録。
(2) 金融システムに大量の資金を注入する政策「黒田バズーカ」により、円が下落、輸出業者の利益改善、輸入価格の上昇でインフレ誘発。
(3)消費者物価指数は、2月は3カ月連続で前年比1.3%の上昇を記録。

次に、アベノミクスのインパクトは弱まっている例として、次の3つの指標をあげる。
(1)今年に入って、円の対ドル為替レートは3%上昇
(3)今年に入って、株式が今年に入って10%下落。
(4)13年下半期の経済成長率は1%に満たなかった。

その上で、この記事は、インパクトが弱まったアベノミクスが、消費増税を乗り越えられるか否かを占う。プラスとマイナスに働く指標をあげている。

まず、マイナスに働く指標。幾つかあげているが。その内、2つを要約する。
(1) エコノミストは、今年第1四半期(1-3月)の成長率は駆け込み買いで4%以上になるが、第2四半期はその反動で約4%縮小すると予想。
(2) 共同通信の世論調査では、支出を減らすと答えたのは回答者の66%に上り、80%近くの人は景気見通しに不安を抱いている。

そして、プラスに働く、明るい材料として、次の2つをあげている。
(1) 春闘では多くの大手企業がベースアップを決定。
(2) 2月の失業率は3.6%と、98年以来の低い水準。

最後は、次のようなコメントで締めくくっている。
「景気を押し上げられなければ、アベノミクスへは強い反発を招く可能性がある。アベノミクスは既に、一般の日本人を犠牲にした緩和策でバブルを生み出しデフレ脱却を図ろうとする政策だ、との批判に直面しているのだ。」

最後の文章から判断して、この記事は、「アベノミクスは、金融、財政両面の緩和策により、一時は成功していたが、ここにきてそのインパクトが弱くなっている。それは、安倍首相が経済成長への本格的な政策を打ち出さないからだ。」と言っている様に思える。

そして、「消費増税が、アベノミクスを押しつぶすか否かがは、プラスとマイナスの指標が出ており、この時点では不透明だが、消費増税の影響如何にかかわらず、安倍首相が本格的政策を打ち指さない限り、アベノミクスの失速は続く。」と言っている様だ。

Friday, March 28, 2014

トヨタ、GM、そして正直な政府【A12面(読者投稿欄)】

「意図しない加速(Unintended Acceleration)問題」に関する、トヨタ自動車と米司法省間の和解についての、読者からの声を掲載している。これは罰金というより、司法省によるゆすりだとして、辛らつな言葉で司法省のやり方を批判している。短い記事なので全文掲載する。

「ウォルター・オルソン氏の『司法省の不当なトヨタへの罰金』(3月24日付、専門家意見欄)について。司法省がトヨタから手に入れた罰金は、罰金というより司法省によるゆすりだ。犠牲者から脅しによって金を搾り取ることに他ならず、まったく法的根拠は無い。」
「司法省はその行為がもたらすであろう結果から目をそらしている。司法省が、『トヨタは、アメリカが投資先として魅力的だとした過去の評価をそのまま維持する。』と考えているのなら、それは白痴的思考だ。司法省は、日本人が日本人同士の間でアメリカについて、どう言っているかについては、知りたくもないのだろう。日本企業と同様に、他国の企業も、アメリカへの投資を減らすことになる。更には、米国の企業によるアメリカへの投資も減ることになるだろう。司法省は、何故、この様な無法に身をさらすのか?」
「誰がこの罰金を払っているか考えて欲しい。ジョー・トヨタさんなんて人がいる訳ではない。お金は株主からもぎ取られているのだ。つまり、何百万人ものアメリカ人が老後資金として貯めている貯蓄を含む、世界中の人々の貯蓄から搾取されているのだ。」

この問題は、2009年のサンディエゴでの事故の際には、テレビで連日報道され、米国全体を恐怖に陥れたが、今回の和解の件については、一般市民の間では話題になることも少ない。従って、上記の意見が、必ずしも米国民を代表した意見とは思わないが、自動車産業に対するオバマ政権の対応には、批判的な見方がかなりあるのは事実だ。

Wednesday, March 26, 2014

多くの摩擦の後で、アジアのライバルが会った【A8面(国際面)】


ようやく実現した日韓会談について国際面で報じている。表題で、日本と韓国を「ライバル」としている。記事を読んだ印象では、「安倍首相と朴大統領を比べると、朴大統領の方が、リーダーとしては格上。」と言われている様な気がするが、皆さんはどう思うだろうか?私の穿った見方だろうか?気になる点、3点を中心に紹介する。

気になる点の1点目は、この記事の、最初の部分。非常にマイナーな点で恐縮だが、冒頭の「韓国と日本のリーダーが」という箇所で、韓国が先にきているのが、まずひっかかった。ABC順なら、日本が先でも良いのでは?
「韓国と日本のリーダーが、一年以上前に権力の座について初めて会談した。オバマ大統領がアレンジした会談に加わったもので、歴史問題を避け、北朝鮮問題にフォーカスした会談だった。」
「脅威を強調するかの様に、オランダで3者会談が行われるその時間に合わせて、北朝鮮は弾道ミサイルを発射した。首都・平壌の北にある発射場から打ち上げられ、400マイル離れた朝鮮半島の東側の海上まで飛んだ。」

この後、この記事は、米国が、中国への対抗勢力として、日米韓の友好関係が重要と考えていて、そのために、今回の会談をアレンジしたことを説明した上で、 オバマ大統領の発言をあげる。
「これまで私は朴大統領と安倍首相と緊密に連携してきたが、われわれが直面する共通の重要課題を3人で議論するのは初めてのことだ。本日の会談は、アジア太平洋地域における米国の重要な役割を反映するものだが、その役割は米国と日韓との同盟関係の強さによって決まる」

その後、気になる点の2点目が登場する。朴大統領と安倍首相の発言を引用しているのだが、朴大統領が先に引用されている上に、朴大統領発言の引用の方が長い。
「今回の会談は、核安全保障サミット終了後、ハーグにある駐オランダ米国大使公邸で開かれた。朴大統領と安倍首相は共に、ようやく会談の機会を得た重要性について言及した。」
「朴大統領は『この会談がわれわれ3カ国の協調体制や、核分野での強みと協力関係を確認できる機会になることを心から願っている。』と述べた。」
「その後、安倍首相は、記者団に対し今回の打合せは『非常に意義深い。』とした上で、3首脳が北朝鮮問題を含む地域の安全保障問題について、緊密に協力していくことで合意したと述べた。」

気になる点の3点目は、最後の文章である。会談を拒否しているのは朴大統領として、日韓関係においては、朴大統領が主導権を握っている様な印象で、記事を締めくくっている。
「戦時中の朝鮮半島における日本軍の行為に関する歴史認識の相違がもとで、日韓関係は緊迫している。日本政府は過去の行為に対してすでに謝罪しており、さらなる謝罪を求める韓国政府の要求を退けている。朴大統領は昨年2月の就任以来、安倍首相との公式な会談を拒否してきた。」

上述の3点に加えて、もう一つ気になるのは、この記事には写真が掲載されている写真だ。朴大統領が真ん中に位置している。

この記事を書いている記者は、ホワイトハウスの番記者の様だが、ワシントンでは朴大統領の方がリーダーとしては格上と見られているのか?安倍首相も、かなりもリーダにふさわしい行動をしていると思うが、米国人から見ると、ちょっと物足りないのだろうか。

Monday, March 24, 2014

司法省の不当なトヨタへの罰金【A15面(専門家意見欄)】

いわゆる「意図しない加速(Unintended Acceleration)問題」についての、トヨタ自動車と米司法省間の和解について専門家意見欄で取り上げている。「この問題は、トヨタに非は無く、ただ単に司法省が企業イメージを重視する国際企業から巨額の金を巻き上げようとしただけに過ぎない。」という記事。2011年の米高速道路交通安全局のレポートを根拠にして、その理由を丁寧に説明していて、好感がもてる。

この記事は、まず読者への下記の様な問いかけから始まる。
「トヨタは、米国司法省と、『12億ドル(約1,200億円)を支払い、3年間連邦政府の監視を受けること』で合意し、同省と和解した。同省は、2009年に全国規模でのマスコミの熱狂が最高潮に達した際に、トヨタが情報を隠したとしていた。これは、安全性の勝利だろうか?それとも、攻撃的な連邦検事が比較的マイナーな間違えにとらわれ、企業イメージを重視する会社を巨額の支払いへと追いやっただけなのだろうか?」

その上で、トヨタには非がないことを証明するために、いくつかの事実を紹介する。

まず第一に、2011年の米高速道路交通安全局のレポートのレポートを紹介している。要約すると下記の通り。
同レポートは、「意図しない急加速(Unintended Acceleration)」の原因は、殆どの場合、「べダルの操作ミス(Pedal Misapplication)」によって発生していることを詳しく説明している。
58件の事故の内、データ入手が可能な40件について調査した所、フロアマットがひっかかることが原因の事故は1件しかなく、残りの39件はペダルの操作ミスが原因だそうだ。
また、マスコミの熱狂のきっかけとなった2009年のサンディエゴの事故は、確かにフロアマットのひっかりが原因だが、トヨタ車の事故でフロアマットのひっかりが原因のものは、これ以外に1件しかないとしている。

第二には、今回の事件で、司法省が問題とした2つの点を挙げ、それらに反論する。この点も要約すると下記の通り。
司法省が指摘する問題点の第一は、マット問題の改善をレクサス以外の車に適用するのが数ヶ月遅れた点。これについては「マット問題の改善が重大事故を防げたという証拠は無い。重大事故を防ぐためには、マットを敷くことそのものを禁止するか、ペダルをフロア以外の位置に設置するしかない。」と反論。
もう一つの問題は、特定の条件下でペダルが戻りにくくなる問題(Sticky Pedal)を隠していたとする点。トヨタはこの問題を2009年10月に開示しが、もう数週間早くレポート出来たはずというもの。この点について「上述の米高速道路交通安全局のレポートは、このペダル問題が事故を引き起こしたという証拠は無いし、そもそもにブレーキをかければこのペダル問題そのものが回避可能と述べている。」として反論している。

第三にトヨタ車が非常に安全であることをデータで示している。
「トヨタの車は非常に安全だ。例えば、2001-2004年モデルで見ると、死亡率が低いとされる12車種の内、5モデルがトヨタかレクサスだ。逆に、死亡率の最も高い12車種の中に、トヨタやレクサスは入っていない。にもかかわらず、企業イメージが利益に直結する国際企業にとっては、巨大市場である米国における司法トラブルを過去のものとする必要があった。」

最後は、下記の様な辛辣な言葉で締めくくっている。
「司法の大袈裟で自己満足的な記者発表は、意図しない加速が、アクセル踏み込みとは関係ない、車の設計上の何か神秘的な現象によって発生するという観念 -- こうした観念が既に一部のマスコミでは受け入れられているが--を植えつけるためには、どんな苦労も厭わないという司法の態度を示している。しかし、2011年の米高速道路交通安全局のレポートが、意図しない加速の原因について、知っておくべき点をより良く示しているのだ。」

確かに、2009年のサンディエゴの事故の際には、連日、テレビで恐怖を煽る報道がなされ、異様な雰囲気があった。突然、自分の車が急加速し、ブレーキを踏んでも減速しないというのは、想像しただけでも恐ろしい。しかし、そうした世の中の雰囲気が、司法省やマスコミを含む国民全体に冷静さを失わせ、異常とも言えるトヨタバッシングに繋がってしまった様だ。

Wednesday, March 19, 2014

輸出の伸びが貿易赤字の減少を助ける【A14面(国際面)】

A14面(国際面)の小さな囲み記事で、「2月は20ヶ月連続の貿易赤字だったが、赤字幅は大きく減少した。」ことを伝えている。短い記事なので全文掲載する。

「2月の日本の貿易赤字は、過去最高だった1月から大きく減少した。輸出が強さを取り戻し、輸出がスローダウンする兆しが見えてきたことが貢献している。」
「輸入の伸びが最近の貿易収支に大きな影響を与えてきた。これは、国内の輸入業者が、4月1日の消費税率引き上げを前に、高級車やiPhone,高級家具の輸入に走ったことによる。」
「輸入の伸びが鈍ってきたということは、こうした輸入の急増が自然に無くなってきたことを意味する。」
「1月の2兆8千億円の赤字に対して、2月は8,003億円(79億ドル)の赤字だった。貿易赤字はこれで20ヶ月連続となる。」

日本の貿易赤字については、興味がある様で、継続的にレポートしている。

ハネムーンの後、日本の安倍はテストに直面している【A8面(国際面)】

A14面(国際面)に発足後2年目に入った安倍政権が、経済政策、外交政策で大きな課題に直面していることを伝えている。見出しには、"Japan's Abe"という表記があり、日本の首相には珍しく名前が出ているが、わざわざ"Japan's"と付けているところをみると、米国民の中に安倍イコール日本の首相という認識が十分に行き渡ってないということか。

「発足1年目は非常に大きな成功を収めた安倍政権だったが、側近の1人が指摘するように、ここにきて『最も重大な局面』を迎えている。」
「国内では経済指標が軟化し、株式市場は大きく下げている。近隣諸国は日本に対する強硬姿勢を強め、盟友である米国の政府高官から懸念の声が上がる。最近は安倍晋三首相の側近や友人の物議を醸す発言がテレビや紙面をにぎわすようになった。」

4月に消費増税、オバマ大統領訪日を控えており、こうした難しい課題の取扱いに失敗すると、経済や外交に大きなインパクトがある。
「4月1日には、安倍首相のトレードマークである経済再生計画『アベノミクス』が最大の試練を迎える。同日の消費税引き上げを受け、首相が導入した大規模な景気対策の効果は薄れかねない。」
「安倍首相は4月下旬にオバマ米大統領を日本に招く。停滞する自由貿易交渉や、韓国には挑発的と映る日本の行動などの問題をめぐり、日米間の緊張が高まるタイミングでの来日となる。米国にとっては、韓国も日本と同じアジアの主要軍事同盟国だ。」

消費増税、オバマ大統領訪日だけでも、大変なのに、更に憲法解釈変更まで4月に推進しようとしている。
「4月にはさらに、安倍政権が戦後『平和憲法』の解釈を見直し、厳格に制限されている自衛隊の役割を大幅に拡大する計画を推進するとみられる。この計画は同政権の政策綱領の中で特に物議を醸している。」
「この問題をめぐっては、17日に自民党内から珍しく慎重論が噴出した。ある議員は、首相の閣議決定に基づいた解釈変更は「言語道断」だと述べ、党の長老からも「姑息(こそく)」との声が聞かれた。」

こうした難しい課題も、高支持率や議会での過半数維持を背景に乗り切れるかもしれない。
「安倍首相は非常に高水準の政治資本を維持している。世論調査での支持率は、2012年末の就任から1年2カ月以上にわたり50%近辺を保っている。首相の在任期間が短いことで知られる日本では、これほど高い支持率を維持できることはまれだ。国会では自民党が幅をきかせ、少数政党が乱立する野党の力は弱い。」

安倍首相の経済政策については、一定の評価をしながらも、根本的な対応には消極的と言っている様だ。
「安倍首相の人気と実力は、就任当初から経済に狙いを定め、直ちに結果を出せたことに裏打ちされている。だが今年に入り、日経平均株価は10%余りも下落し、世界の株価指数の中でも下落率は群を抜く。内閣府が10日発表した13年10-12月期の国内総生産(GDP)改定値は前期比年率0.7%増にとどまった。」
「足元では個人消費が加速しているが、4月から消費税率が5%から8%へ大幅に引き上げられるのを前にした駆け込み需要によるところが大きい。」
「消費増税による景気への悪影響を軽減するため、日銀が年内に経済への資金供給を拡大すると広く予想されている。日銀は昨年、マネーサプライを劇的に拡大させることに成功した。」
「安倍首相の側近は、増税の影響を相殺するために金融緩和と景気対策が実施されることで、日本は前進を続けられるだろうと述べた。甘利明経済産業相は先週、国内の大手製造業企業が少なくとも6年ぶりのベースアップ(ベア)実施で合意したことを受け、『経済の好循環が回り始めた。』との認識を示した。」
「安倍首相の経済政策チームも長期的な成長の礎を築くことに重点を置き、6月に新たな提案を発表する見通しだ。国会では現在、企業統治(コーポレートガバナンス)の改善策や、企業による雇用・解雇の柔軟性を高める策が議論されている。」
「勇ましい響きのあった提案の多くは骨抜きにされているとの批判がある。米国の貿易交渉担当者は安倍首相の側近について、厳重に保護された日本の農業市場をこれ以上開放することには消極的だと非難している。日銀政策委員会審議委員の佐藤健裕氏は最近の講演で『海外投資家は(中略)かなり失望している。』とし、『特に目を引くような展開はほとんど見られない。』と述べた。」

外交政策については、様々な努力を認めながらも、靖国神社訪問など、自ら撒いた種で、東アジア情勢を混乱させていると批判している様だ。
「一方、安倍政権の2年目は、中国や韓国との緊張が急激に高まり、オバマ政権もそれに対する批判をあまり隠そうとしなくなったという特徴がある。中国の場合、世界中の外交官を動員して、安倍首相は軍国主義者とのイメージを植え付けるキャンペーンに出た。一方、韓国で最近行われた世論調査では、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記よりも安倍首相のほうが好感度は低かった。」
「安倍首相は昨年12月下旬、側近の反対を押し切って靖国神社に参拝したため、こうした反応はある程度予想されていた。靖国神社には、大戦後に連合国主導の極東国際軍事裁判で死刑に処された政治・軍指導者(いわゆるA級戦犯)14人をはじめ、数百万人の戦死者が祀(まつ)られている。」
「首相は、20年前に従軍慰安婦問題に対する謝罪として発表された『河野談話』の正当性に疑問を唱える側近らの発言の火消しを余儀なくされている。」

2年目に入った安倍首相の課題について、バランス良く、分かり易く説明している。 

Saturday, March 15, 2014

幹細胞の論文は重大な誤りを含んでいると研究所は言う【A14面(国際面)】

理研の中間報告の記者会見について、国際面の小さな囲み記事で報じている。

この事件へのあまりの感心の高さに困惑する理研の姿を淡々と報じている。「記者会見での理研のトーンは『自分達は被害者で、悪いのは小保方氏。』と言っている様に感じた。」と暗に言っている様に思うがどうだろうか。短い記事なので全文を掲載する。

「ある日本の研究機関は、非常に注目を浴びている幹細胞に関する2つの論文についての論争に巻き込まれて混乱しているが、その研究に『重大な誤り』があったとして、謝罪した。」
「理化学研究所の野依良治理事長は、東京で行われた満員の記者会見の冒頭で、深く
頭を下げた。その上で、同研究所は論文を取り下げるか否か調査中であると述べた。その論文は、幹細胞の生成に関する新しい方法を提示したかにみえた。」
「野依博士は、30才の筆頭著作者である小保方晴子氏について、『未熟』で『ずさん』と指摘した。」

同じ経済紙である日本経済新聞でも、この記事は、ここ数日一面で扱われている。

ところで、ウォールストリートジャーナルでは、マレーシア航空機失踪事件が、発生以来連日、一面で扱われている。北京から「中国人搭乗者の家族の様子」について、クアラルンプルから「機長の人物像」について、ニューデリーから「インド洋での捜索状況の詳細」について等、同紙の取材に基づく各地からの詳細な状況を連日多くのスペースを割いて掲載している。
海外で起きた惨事に関する米国紙の丁寧な報道と、米国当局の対応の早さ(偵察機やFBIを派遣して、捜査に協力している。)そして募金活動等自分で出来る支援活動に迅速に動く米国民暖かい対応にはいつも感心させられる。
日本では、マスコミも政府当局も、そして私を含む国民も、海外で起きた悲惨な事故への感心が、米国に比べると低い様に感じる。


Thursday, March 13, 2014

日本企業は賃上げを誓う【A8面(国際面)】

国際面で日本の大手企業がベア実施に動いていることを報じている。

まず、大手企業が、安倍首相の要求に応えて、ベア実施に踏み切ったことを報じる。
「手元に豊富なキャッシュを抱える自動車メーカーが先陣を切り、日本の多くの主要企業が12日、相次いでベースアップ(ベア)実施を発表した。ベア実施は世界的な金融危機以来初めてで、安倍晋三首相が掲げるデフレ脱却のための政策を支えることになろう。」

しかし、中小企業には、安倍首相の要求に応える余裕は無い。
「だが安倍首相にはまだ口説かなければならない相手がいる。茨城県日立で操業する関プレスの関正克社長のような経営者だ。トヨタ自動車や日立製作所などがベア実施を発表した一方で、従業員85人のこの精密プレス専門メーカーは賃上げを行わない予定だという。」
「関社長は『賃金は大事だ。よくわかっている。』としたうえで、『だけど、実際に売り上げや利益、収益が伸びたときにしか上げることができない。』と話す。」

大手企業、中小企業の対応を説明した後、もう一度安倍首相及びそれを支える大手企業の見解をまとめる。
「安倍首相は昨年、下がり続ける物価と上がらない給料に悩み、企業経営者に賃金の引き上げを訴えた。これは企業寄りの政策で知られる自民党の政治家として驚くべき行動だった。」
「トヨタ自動車で総務・人事を担当する宮崎直樹専務役員は12日、4月から始まる新年度の賃金がベアと定期昇給で2.9%増える賃上げを発表した際、『経済の好循環に向けて果たすべき役割がある。』としたうえで、『賃金引き上げの流れが各方面に及んでいくことを期待している。』と述べた。」
 
そして、中小企業の厳しい実態を日立市の例を幾つかあげて説明する。
「それを実現するための課題は、日立製作所の社名の由来となったことで知られるこの工業都市で歴然としている。日立の従業員は月額2000円のベアと気前の良い一時金がもらえることになったが、日立市で働く他企業の労働者の多くが同じような待遇を受けるにはまだ時間がかかりそうだ。」
「日立向けにネジやボルトなどの留め具を供給している赤津工業所の赤津浩志常務取締役(33)は、日立と同じ水準のベア実施はできないと話す。同社の6人の従業員がもらえるのは多くともその半分くらいだという。」
「この地域は過去数年間、こうした待遇の不均衡に苦しんできた。日立の工場は原子力発電を含む発電設備の製造に特化している。だがこの事業は2011年3月の東日本大震災以降、大部分が干上がってしまった。大震災では関プレスの工場の車寄せに深い亀裂が生じたほか、震災で発生した津波は、日立から北へ160キロも離れていない福島第1原発を壊滅させた。」

ウォールストリートジャーナルは、安倍首相の経済政策が、円安に頼りすぎていることを再三批判しているが、この記事では、円安は大手企業を潤しているが、中小企業にはむしろマイナスとしている。
「アベノミクスの『3本の矢』の1本――円安につながった金融緩和――は自動車メーカーをはじめとする輸出企業の利益を押し上げた。だが円安は実際、大手製造業の多くのサプライヤーを痛めつけてきた。原材料の輸入費用が高くつくからだ。こうした企業は顧客からの値下げ圧力にも常にさらされている。」
「さらに懸念されるのは、消費税率が4月から8%に引き上げられることだ。」

そして、日立市の例をもう一つ加える。
「日立市の中心部で女性用衣料店を営む前澤邦夫さん(72)は近くにある日立の工場の従業員の賃上げで受ける恩恵はあまりないと見ている。」
「前澤さんは『私が思うに、(消費に)変化はないだろう。』と話し、『銀行にお金を持っている人はいる。でも将来への不安から使わない』と続けた。」
 
更に、2008年以降ベアが無かったが、定期昇給があったため、一般社員の給与はそれ程悪くは無かったことを説明する。これは、ベアを企業に要求する安倍首相の政策の誤りを指摘しているのだろうか?
「日本の雇用主は基本給の引き上げに特に二の足を踏んできた。正規社員の解雇が難しいことや、労働組合に加入する従業員はすでに年功序列による自動昇給を得ていることもその一因だ。トヨタではこの定期昇給にあたる『賃金制度維持分』を組合員1人平均月7300円とし、ベアは平均月2700円と回答した。定昇とベアで2.9%の賃上げだ。」
「ほとんどの企業の場合、最後にベアを実施したのは08年かそれ以前にさかのぼる。雇用主はこれまで、業績が厳しいときはより容易に撤回できる一時金の引き上げを実施する傾向があった。」
「ただ、この定期昇給があったために、多くの一般社員の給料は、基本給が示唆する水準よりは良かった。」
「経団連の調査によると、一般社員の給料は一時金を除き、この10年間は年率約2%ずつ上昇してきた。一方、この10年のほとんどの期間で物価は横ばいか、もしくは下落した。」

最後は、安倍首相は企業の基本給引上げに対応して、法人税率引下げ等で応えているが、多くの経営者が来年以降について不安を感じていることを示唆して、記事を締めくくっている。
「安倍首相は企業の基本給の引き上げを後押しするため、復興特別法人税の1年前倒しの撤廃を決定し、法人税の負担軽減に動いた。法人税率は4月に38.01%から35.64%に下がる。」
「甘利明経済再生担当相は記者団に対し『雪だるまの最初の一押しができつつある」と述べ、「期待以上に企業側に応えていただいた。』と発言した。」
「だが、安倍首相の賃上げ要請に応じた経営者の中にさえ、来年以降について不安を感じている人はいる。」
「ローソンの新浪剛史社長は『今年はベースアップ、ボーナスアップはできる。問題はこれがサステイナブルかどうか。』だと語った。

結論として、安倍首相の賃上げにより景気高揚策に対して、懐疑的な目を向けているように感じた。

Wednesday, March 12, 2014

日本と米国は輸出のギャップを埋めるために努力している【A14面(国際面)】


TPP日米実務者協議に関する記事が国際面に掲載された。TPPは米国にとって非常に重要であり、日本に妥協をしてでも合意に向け一歩踏み出すべきだと言っていると読めるがどうだろうか?全文を掲載する。

この記事は、まず、日米合意が、TPP合意にとって極めて重要である点を強調する。
「日米両国は11日、ワシントンで、米国の農家とデトロイトの自動車メーカーが日本市場に全面的に入れないという数十年来の問題を解決するため、再び実務者協議を始めた。」
「両国の合意は、12カ国が参加する環太平洋連携協定(TPP)交渉をまとめ、米議会のいら立ちを抑える上でカギとなる。」
「米国と日本が長年の市場アクセス問題―昨年12月にバイデン副大統領と安倍晋三首相が東京で会談して以来行き詰まっている―を乗り越えられれば、12カ国が知的財産や環境規則などもっと複雑な問題での相違点を解決する道が開ける可能性がある。」
その上で、日米合意には農産物での妥協が必須だが、この点に関するオバマ政権の取組みに懐疑的な目を向ける。
「オバマ政権の通商担当者や議員は、米農産物の対日輸出を拡大できるように合意できれば、農業に依存する一連の州の支持を得られ、TPPも議会に受け入れられやすくなるとみている。下院と上院の民主党指導者は最近、政府に通商権を一任する大統領貿易促進権限(TPA)法案への反対を表明した。」
「民主党のサンダー・レビン下院議員(ミシガン州)は『市場アクセスで日本との間の極めて基本的な点で突破口が開かれない限りTPPが成功するとは思えない。』と語った。同議員はオバマ政権の通商政策に懐疑的だ。」

さらに、TPP合意に向け、既に日本はかなり妥協しているのに、オバマ政権が何もしないのは、臆病だとも言っている様だ。
「日本は昨年、TPP交渉に参加する前、米国産牛肉の輸入を増やし、米金融業界の主たる目標である保険市場へのアクセス拡大という若干の譲歩をした。しかし、両国の交渉はそれ以降、ほとんど進展をみせていない。」
「クリントン政権下で米通商代表部(USTR)代表を務めたミッキー・カンター氏は『これは臆病者のための交渉ではない。』と語った。同氏は1990年代に、米国の自動車、農産物、ガラスを日本が輸入する際の規則を緩和させるのに努力した。」

そして、TPPはアメリカにとっても重要なのだから、妥結に向けて努力すべきという、オバマ政権に対する期待を表明。
「地政学的な要素もある。日本はTPP交渉に参加していない中国との間に緊張関係を持ち、一方で米国は戦略的、経済的重心をアジアに移そうとしている。米当局者は、環太平洋諸国の関係強化は同時に中国を孤立させ、その結果同国が市場を開く可能性があるとみている。」
「また、現在日本と経済連携協定(EPA)交渉をしている欧州連合(EU)が先に合意すれば、米国の企業は不利益を被ると警告している。

最後に両国の首脳が、TPPの重要性を強調するコメントを掲載している。
「バイデン副大統領は2月、民主党議員グループに対して、米国製自動車の市場アクセスを拡大するため、いかに安倍首相に強く働きかけたかを語り、TPPの戦略的重要性を強調した。」
「甘利明TPP担当相は11日、今週の協議から『大きな進展』」を期待していると述べた。この協議は4月のオバマ大統領の訪日を前に突破口を開くチャンスとみられている。」

TPPに関するニュースは、米国ではあまり目にしないが、この記事はその重要性と、米国の妥協の必要性を強調していて、好感が持てる。


 

Tuesday, March 11, 2014

日本の関税へのサポートは衰退している【A12面(国際面)】

国際面で、日本の農業保護政策について、日米双方からその方針転換を迫る動きがある一方で、その固持を求める勢力もあることを報じている。

まず、この記事は、日本政府が長年固持している農業保護政策について、農業セクターの内部からすら批判が出ていることを紹介する。
「秋田県大潟村で農業を営む小林肇氏(46)は日本政府が長年続けてきた農業セクターの過度な保護をやめるべきだと考えている。」
「こうした小林氏の姿勢はちょっと異例だ。同氏は大潟村農業協同組合(JA大潟村)の組合長を務めている。JAは大きな影響力を持ち、日本の農業における価格競争を長年阻止してきた。」
「しかし今、小林氏のような農業セクター内部の人を含め、輸入価格の約9倍に上る関税や生産調整(減反)、複雑に入り組んだ補助金をはじめとする保護政策の妥当性に疑問を持ち始める人が増えている。」

そして、日本の農業が抱える問題を羅列し、その内の一つが農家を甘やかしてきたことだとする。
「日本の農業は問題が山積している。農業従事者の3分の2は60歳を超えている上、若者は都市で働きたがるため、多くの土地が未耕作のまま放置されている。農家を甘やかしてきたことで、日本の農業が価格や品質で国際的に競争できなくなっているとの批判もある。」

そして、農協がその甘やかしの一翼を担ってきたことを紹介し、その改革が必要だとする。
「JAは品質にかかわらず農産物を買い取ったり、農家への補助金や生産枠を取りまとめたりするなど日本の農業で中心的な役割を果たしている。また、農家に金融サービスを提供する国内最大規模の金融機関の1つでもあり、農業機械・用品の販売も行っている。」
「15ヘクタールの土地でコメを栽培する小林氏はJAが変化に疎く、改革に後ろ向きな年配者が多く、若い人がなかなか上に立てない組織になっていると指摘する。」
「『企業的感覚を持っている農家は、農協の資材が高かったり、農協から融資がもらえなかったりということがあって農協から離れざるを得なくなってきた。』と小林氏。米コロラド州の牛牧場で働いた経験もある同氏は、政府は生産調整をやめて農産物価格の下落を容認し、世界最大のコメ市場である中国で日本が競争するチャンスを与えるべきだと主張する。」

一方で、日本国内で農業政策に対する批判がある様に、米国でも日本政府の方針転換を求める声が大きい。
「米国も日本の農業の開放を求め、コメ農家がもっと日本に農産物を輸出できるようにしたいと考えている。現在のところ日本政府は方針を変えていない。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉行き詰まりの一因も、日本が農業関税を撤廃しようとしないとの声も多い。」

安倍首相は、方針転換に積極的である。
「安倍晋三首相は補助金や生産調整を段階的に廃止し、今後数年で日本の農業を改革する方針を表明している。」

しかし、日本では零細農家、米国では民主党のベテラン議員など、方針転換に反対する勢力も根強く残っている。
「しかし、零細農家をはじめ日本では依然多くの関係者が改革に反対しており、政府は慎重に事を進めざるを得ない状況だ。甘利明経済再生担当相は米国のTPP交渉担当官に対し、日本には交渉継続の一環として関税を撤廃する気はないと語った。」
「4月のオバマ米大統領訪日を前に、日米は今週ワシントンでTPP交渉打開に向けた協議を行う。米国では、民主党のベテラン議員による抵抗がやはりTPP交渉を難航させている。」
 
日本の農業政策の転換を強く望みながらも、その困難さも併せて強調している。


幹細胞の研究に新たな打撃【A3面(国内面)】

「理化学研究所は11日、新万能細胞『STAP(スタップ)細胞』」の作製に関する論文を取り下げるかどうか検討中であることを明らかにした。」という記事が、国内面に掲載された。ハーバード大学のバカンディ教授へのインタビューが中心なので、国内記事扱いなのか?

この事件は、多分、日本では大きな話題になっているのだろう。

論文の共同執筆者の1人である山梨大学の若山照彦教授が、「論文に掲載された画像の不自然さ」と、「他の研究者が研究結果を再生出来なかったこと」の2つの理由により、雑誌ネイチャーに掲載されたの論文の撤回を主張。

一方で、「別の共同執筆者であるチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授は研究を擁護している。バカンティ氏は10日、インタビューの中で『(論文には)いくらか誤りもあったが、結論には影響がない』」とし、『私が持っている情報に基づけば、これらの論文は取り下げなければならない理由は見当たらない。』と述べた。」
「バカンティ氏は共同執筆者の1人が撤回を求めたと聞いて驚いたと話した。」

「バカンティ氏は10日、小保方氏と話したことを明らかにし、小保方氏も自身の研究内容を固守していると述べた。」
 
皆さんは、若山教授とバカンディ教授の主張のどちらを支持されますか?

Monday, March 10, 2014

日本のデータは、経済の痛みを示している【A18面(国際面)】

2013年度第四四半期GDPの下方修正や1月の経常収支の赤字は、日本経済が不安定な時期に入ったことを示しているという、大変に暗い記事が国際面に掲載された。

「2013年第四四半期の日本経済は、当初予測されていたよりも、かなりゆっくりした成長だった。また、1月の経常収支も赤字を計上した。こうした悪い数値は、日本経済が不安的な時期に入ったことを示している。」

2013年第四四半期のGDPの年率換算の成長率は予測の1% を下回って0.7%、経常収支も1,540億ドルの赤字だそうだ。

「これらの数値は、安部首相のアベノミクスに新しい問題を突きつける。エコノミストは、つい最近まで、消費税が5%から8%に変更され経済が落ち込む前の数ヶ月は、堅実な成長が期待出来るとしてきた。」

GDPの不振は、企業投資と個人消費という2つの要因の不振によるところが大きい。

「エコノミストはこれらの2つのセクターの当面の回復は望めないと言う。エコノミストによれば、個人消費と企業投資が強いとした最近のデータは、消費税導入前に価格がより高くなる前に、車や電化製品といった高額商品を購入しておこうという駆け込み需要にすぎない。」

記事の最後は暗い事実で締めくくる。
「経常収支の赤字は4ヶ月連続で、これは最長記録だ。」

WSJは、円安頼りの安倍政権の経済運営に不満で、抜本的対策の必要性を一貫して訴えている。

津波は日本で多くの精神疾患者をもたらす【A18面(国際面)】

国際面で、東北大震災から3年を迎えたが、未だに精神疾患に悩む被害者が多数いることを伝えている。本当にやるせない記事だ。

「岩手県陸前高田市では2011年3月の東日本大震災で起きた津波で市民の10人に1人が亡くなった。岡本啓子さん(50)は肉親とともに生き延びた。」
「経理の仕事に就き、今は住まいもある岡本さんだが、多くの市民と同様に絶望感と不安感に苛(さいな)まれている。昨年の息子とのけんかをきっかけに絶望的になり自殺を考え始めたという。」
「家を流された岡本さんは現在、市内の親戚の家で暮らしている。津波で親友を亡くし、『夫や母には心配をかけてしまう』と悩みを相談できなかった。『発作的に絶望的になってしまうことがあった。でも頑張らなくては(多くを失った方たちに)申し訳ない』」と語った。」

岡本さんの例にある様に、被災地には、精神疾患に悩む人々が多数いる。この記事は、この問題について、3つの課題を挙げている。

第一に、東北人特有の我慢強さが、カウンセリングを拒んでしまうために、精神疾患を悪化させている点である。
「医療専門家によると、精神疾患につきまとう悪いイメージ加えて、地域とのつながりがなくなったことや、生き残ったことに対する罪悪感が、最も助けを必要としている人々の足を遠ざけてしまうことが多いという。」
地元の医師の鵜浦(うのうら)章さんは『震災から約1年半後に、ストレスによるとみられる腹痛や不眠、目まいの訴えを受けるようになった。』と言う。しかし忍耐強く、精神的な訴えを人にしゃべることを恥ずかしいとする風土がある陸前高田では、『カウンセリングを勧めている患者の約半数は拒む。』と話した。」


第二に、避難生活の厳しさが、精神疾患を悪化させている点である。
「震災から逃れた陸前高田市の市民約2万人の4分の1は今も仮設住宅で生活している。高齢者には不自由の多い古い家では生活しにくく、仮設住宅に戻った岡本さんの母親(78)もその1人だ。平均面積が約30平方メートルという狭い仮設住宅に住む人々は、プレハブ暮らしのストレス対処のために頼れる場所はほとんどないと話す。」
「津波で母親と52人の同僚を亡くした消防団員の菊池一男さん(54)は『壁が薄くて隣の人のいびきまで聞こえる。』と話した。仮設住宅の住人の多くは高齢で、食品や日用品の買い物は移動販売車に頼っている。菊池さんは主にコンビニの既製品を食べているという。」

第三に、行政の対応の悪さが、精神疾患を悪化させている点である。
「陸前高田市の2014年度(14年4月〜15年3月)予算は約1300億円。約18メートルに達した津波で中心部が壊滅的な被害を受けたため、同市は沿岸地区の300ヘクタールの標高を最大12メートル高くする計画を立てている」
「予算には、カウンセラーの雇用など精神面のケアの費用として約2600万円が計上されている。」
「同市の久保田崇・副市長は『適切な措置を講じている。』と述べた。市の職員たちは、これほどの大災害への対応は生涯にわたるもので、市ができることには限りがあると話す。」
「米国で臨床心理学博士を取得した佐藤文子さんは、市の努力は決して十分とは言えないとし、『被災者は出入りの激しいカウンセラーを相手に、自分の悲惨な体験を何度も話したがらない。』と述べた。佐藤さんは12年に市に採用されてから、仮設住宅で100人余りの患者の一部と共に暮らしている。」

行政の対応不足を指摘しながらも、行政に携わる人々もまた犠牲者であるという、やるせない現実にも目を向ける。
「職員の3分の1を津波で失った陸前高田市は、国内各地から派遣された公務員に大きく依存している。地元メディアによると、12年には、その中の1人の応援派遣技師が、復興にあまり貢献できなかったことをわびる遺書を残して自殺した。」

「津波で妻を亡くした戸羽太市長は『ほとんどの職員自身が被災者となっており、家族を亡くし自宅を流されている。多くの市民が悲しみち将来への不安、あるいは後悔が人々の心から離れない現状』と語った。」

東北人特有の粘り強さも、避難生活の厳しさも、行政の対応の悪さも、すぐに解決する課題では無い。精神疾患を克服するためには、厳しい様だが、被害者に、精神的な強さを持ってもらうしかないのだろうか?そんなメッセージで、記事は締めくくられている。

「2000人近くの小中学生を管轄する同市教育委員会の山田市雄教育長は『負の部分ばかりに目をやると絶望的になる。』と述べた。」


「同市の小中学生のうち171人が震災で片方の親、または両親を亡くした。山田教育長は『われわれは、生徒たちに悲しみを乗り越えるための強さと自信を持たせなければ。』と話した。」

何ともやるせなくなる記事である。


Saturday, March 8, 2014

福島の最も難しい洗浄の段階がやってくる【A9面(国際面)】

「福島原発の溶融核燃料の取り出し開始までにはまだ6年はかかるだろう。」というショッキングなニュースがA9面に掲載された。

融解核燃料の取り出しは、現状の方法では困難な可能性が高く、新しい方法を考えねばならないかもしれない。それ以前に瓦礫の除去も必要で、その工数も考えると、融解核燃料の取り出し開始はかなり先にならざるを得ない。
それ以前に、汚染水の保管が限界になる。明確に書いていないが、浄水した上で、海へ流し出すことになるのだろう。

記事は、まず、溶融核燃料の取り出し開始は2020年になり、現段階ではどの様な方法で取り出すかすら分からないという、東京電力のショッキングな見解から始まる。
「原子炉の封じ込め容器は漏れている。それが意味するところは、封じ込め容器に水を入れられないということだ。水なしに放射性物質の拡散を防ぐことは困難だ。従って、核燃料の除去は現在のやり方では不可能だ。しかし、東京電力は遠隔操作のロボットが漏れを防ぐことにより、現在のやり方で対応可能と考えている。それでも、もし、ロボットを使う方法も駄目だった場合には、水の無い状況で核燃料を除去する新たな方法を考えねばならないと、東京電力福島第一プロジェクトチームの核燃料除去戦略マネジャーのムラノケンジ氏は言う。」

核燃料除去前に、汚染水への対応も大きな問題だ。
「東京電力は、政府と共に、発電所の下を流れる水が、地下水に流れ出すのを防ぐために、地下冷却シールドという未検証の手段を使うことを考えている。また、東京電力は、原子炉の近くのタンクに保管されている汚染水が増大することによるリスクを軽減することの出来る浄化システムの開発を急いでいる。」

そしてこの記事は、問題解決には、3つの段階を踏む必要があるとする。第一段階は、瓦礫の除去。これには10年かかり、500億ドルの費用が必要。第二段階は融解核燃料を含む危険な物質の除去。そして第3段階でようやく綺麗な土地が取り戻せる。

しかし、こうした作業は容易では無く、専門家は、チェルノブイリでやった様に、原子炉をコンクリートの壁や屋根で囲むべきだと言う。

東京電力のやり方では、時間がかかり過ぎ、結局汚染水を海に流しだすことにならざるを得ないので、チェルノブイリの方法を採用すべきと言うことか?記事は次の様なコメントで締めくくられている。

「融解した原子炉の下を流れる地下水は、一日に400平方トンもの汚染水を生み出す。6日でオリンピックプールが満杯になる量だ。事故現場には、既に340,000平方トンもの汚染水が、1,000のタンクに保管されている。これだけの量を保管し続けるのは不可能だ。東京電力は放射性物質の除去をすることが出来る改良型水洗浄機の運用を開始する。」

福島から流れ出す汚染水は太平洋を渡って米国にもやって来る。汚染水を浄化して流す可能性がある点について、米国民は不安に思うだろう。

日本はその過去を認めるべきだ【A12面(読者投稿欄)】

「日本は、第二次世界大戦におけう過去の過ちを認めるべきだ。」という、3人の読者からの投稿を掲載している。


まずは、日本人が過去の過ちを否定する限り、その傷口が癒えることは無いという意見。

「『中国の世界: 歴史の恐怖を生かし続ける』(国際面、2月26日付)は、中国が第二次世界大戦の傷口を開け続け様としているという点を指摘している。私は、日本が傷があったことを認めれば、傷口はより綺麗に閉じるだろうし、傷跡もそれ程痛まないだろうと思う。」

「元東京都知事の石原慎太郎の様な日本の公人が、南京における婦女暴行の様な残虐行為の存在を繰り返し否定続けるり、痛みは残り、プロパガンダを流そうとする人々にうまく利用されてしまうだろう。
(アラバマ州、ジョン・コールドウェル)

二人目は、アジアの人々は、ユダヤ人が過去の記憶を生かし続けているテクニックを真似て、日本人の残虐行為を風化させない様にすべきという意見。
「日本は、その浅ましい虐殺行為について、何故弁解し続けるのだろう。それは悲しむべき謎だ。答えは、フィリピン人、インドネシア人、シンガポール人、ビルマ人、そして数え切れないほどの他の国々の人達が、ユダヤ人のテクニックを真似する必要があるかもしれないということだ。ユダヤ人は、虐殺や集団殺害による死の記憶を生かし続けるために、適切で効果的なテクニックを使用してきたのだ。」
(カリフォルニア州、マイロン・ガナニアン)

最後は、日本人の行動を見ていれば、安倍首相の最近の行動が、周辺諸国への脅威と捉えられるのは当然という意見。
「日本の歴史の教科書に南京事件が殆ど登場しない。彼らの行動はその言動よりも真実を語っている。中国やその他の国々が、安部首相の靖国神社やその他のコメントを、脅しととらえるのは、決して何の根拠もなく出てきたことではないのだ。」
(ニューヨーク州、ソニア・ウォン-ゲリグ)

名前から想像するに、アングロサクソン系、フィリピン系、韓国系の米国人の投稿だと思う。居住地は、西海岸、東海岸、中部。背景の異なる、様々な人達の意見を集めようと努力をした跡が伺える。

Friday, March 7, 2014

作曲家がキャリアを偽っていたことを謝罪【A8面(国際面)】

佐村河内氏の記事がA8面に掲載された。ウォールストリートジャーナルは、経済紙であるにも係わらず、芸能記事に近いこのニュースが何故か好きで、既に3回取り上げている。

「『日本のベートーベン』として知られ、不名誉な状況に陥った作曲者が、金曜日に、キャリアを偽っていたことを初めて公の場で謝罪した。」
「別の男性が佐村河内さんの作品の多くを実際は自分が作曲していたと告白したことで、佐村河内さんの評判は崩壊した。ゴーストライターだったことを告白した新垣隆さんは、佐村河内さんとの18年間にわたる交流の中で、聴力には問題がなさそうにみえたと語った。」
「桐朋学園大学で非常勤講師を務めていた新垣さんは、長年にわたる偽装を今になって告白したのは、フィギュアスケートの高橋大輔選手がソチ冬季五輪で新垣さんの楽曲のひとつを使用することになっていたからだと述べた。」
「トレードマークの顎ひげは消え、髪は短く刈り込まれ、佐村河内さんは大勢の報道陣の前で何度も繰り返し頭を下げて謝罪した。しかし、聴覚障害については、断固した態度をとり続けた。」
「『殆どの環境において、私は話された会話を正しく聞き取ることが出来ません。』彼は、金曜日の記者会見が、彼の最後のテレビへの登場になるだろうと語った。」


時にはどなりまくり、時には抱擁し、スプリントのボスは変化をもたらそうとしている【A1面】

A1面とA12面の殆どを割いて、スプリント改革に取組む孫正義氏の奮闘振りが、写真やグラフ入りで詳細に報道されている。彼の感情むき出しの経営スタイルは、最初は理不尽に捉えられていた様だが、次第にスプリント従業員に受け入れられつつあり、従業員の意識を変えつつあるようだ。同世代の日本人経営者が1面を飾るのは、私にとっても嬉しい。

冒頭、孫氏の理不尽な言動を紹介。日本人にはよく分かるが、米国人にはよく分からない上司と写るだろう。
「ソフトバンクの孫正義社長(56)は10月に行われた傘下の米携帯電話3位のスプリントとの会議で、同社の広告では十分な新規顧客を呼び込めないとして激怒した。」
「『おまえは馬鹿か。』昨年、約220億ドル(約2兆2500億円)でスプリントを買収した孫氏はこう怒鳴ったという。その場に居合わせた3人の関係者が明かした。孫氏はスプリントに全広告代理店との契約を解除し、一からやり直すよう提案した。」
「関係者の1人によると、スプリントの一部幹部が後で、広告契約を取り消すことなどできないと孫氏に話したという。」

そして、孫氏のこれまでのスプリントの経営について詳細に説明し、彼が自分の猛烈ぶりに比べて、スプリントのやり方があまりにスローであり、スプリントのカルチャーを変えねばならないと考えている強調する。
「ソフトバンクの関係者の1人によると、孫氏はひそかに『スプリントはカンザスの大名だ。』と言い、『それでは十分とは言えない』と話している。日本の封建時代の大名は自らの領地では絶対的権力を振るっていたものの、それ以外の場所ではほとんど影響力を持たなかった。」
 
大名を例に持ち出す孫氏は、米国人からは奇妙に見えるのだろう。さらに孫氏のワークスタイルが米国人から奇妙に見える例をあげる。

「孫氏はアップルやグーグルの本社に近いシリコンバレーの都市、カリフォルニア州サンカルロスに『影の本社』を設けている。ソフトバンクの東京とサンカルロスの両オフィスを訪れたことのある人物によると、同社が借りた4階建ての2棟のビルには東京の孫氏の重役室を再現した噴水と畳部屋付きの一室があるという。」
「孫氏はまた、日本から約1000人の社員をスプリントに投入。彼らはスプリントの業績反転と、ソフトバンクが日本国内でも使用できるような新サービスの開発に努める計画だ。」
「孫氏はこれまでも厳しい発言や並外れた野心で知られてきたが、同氏の戦略は突然で、スプリントにとっては時には厄介な変化でもある。これほどオープンに課題を突きつけられることに慣れている幹部や社員はほとんどいない。」

変な日本人上司がやってきて、カルチャーショックで右往左往する従業員が目に浮かぶようだ。

その後、記事は、孫氏が、米国人に理解出来ない面と、米国的な面を両方併せ持っていることを示す事例を幾つかあげる。スプリント会長である孫氏とCEOのヘッセ氏の関係や、2人の幹部の退職等について、詳しく述べた後で、次の様な事例を紹介する。

「孫氏を支持する人々は、孫氏は批判するのと同じくらい頻繁にほめるし、時には社員を抱きしめることもあると指摘する。感情がむき出しになることはいつものことで、スプリントで続く業績反転努力はスプリントとソフトバンクからのインプットによる共同作業だ、と両社の社員たちは話す。スプリントとソフトバンクの社員によると、進展の兆候の1つは、マネジャーたちは毎回の会議で、最も恐れる質問を孫氏から尋ねられる前に準備するようになったことだ。」
「スプリントの最高技術責任者(CTO)のスティーブン・バイ氏は、『事業に深くかかわり、事業に大きな興味を抱く会長がいることは企業にとって非常にポジティブだ』」と話している。

感情をむき出しにする変な日本人ではあるが、それが意外にも米国人に良い影響を与えているようだ。

その後、この記事は、孫氏が、ソフトバンクの業績回復を達成したことを詳細に説明した上で、その猛烈な働き方を紹介する。
「ソフトバンクの法人営業部門を統括する取締役常務執行役員の今井康之氏は、孫氏は望むことを手に入れるためにはごり押しもいとわないと話す。今井氏が10年ほど前に、ソフトバンクのブロードバンドネットワーク構築のスピードアップを任されていたとき、孫氏が最新の情報を聞くため毎日午前2時にやってきたと今井氏は振り返る。孫氏は今井氏に朝までに何を完了すべきか伝えたという。約1年半の間、今井氏は月曜日には1週間分の洋服を持って出社した。今井氏が帰宅したのは日曜日だけだった。」

午前2時に部下の所へやって来て、朝までに完了することを指示するとは、すごい。そして、今では、時差を利用して24時間働くことを幸せと言っているそうだ。本当にすごい!

「孫氏は1月にツイッター上でこうつぶやいた。『幸せだなあ。何時でも仕事がバリバリ出来る。日本とニューヨークの時差が14時間、サンノゼの時差が17時間。何時に目覚めても仕事相手が24時間いる。24時間、仲間がフルスピードで動いている』」と。」

その上で、孫氏の最近の猛烈ぶりを、示す沢山の逸話を紹介する。スプリント買収を1ヶ月で買収しろと言った話、携帯通信網を丸ごと刷新しろといった話、日本からソフトバンク従業員1,000人を駐在させろと言った話、コンピュータデータを使って成績の悪い従業員を叱咤激励する話、米国の行政認可の遅さにいらだつ話等々である。

そして、ソフトバンクの独特の会議スタイルについても触れる。

「孫氏はまた、日本ではソフトバンクの特徴として知られている騒々しい会議スタイルを持ち込んだ。社員同士が注目を得るためにしのぎを削るスタイルだ。東京で行われた最近の戦略会議では、エンジニアや経理、販売の各スタッフ、さらには部外者までが大声を出し、机に拳をたたきつけた。」
「孫氏も口をはさむのが容易ではなかったと藤原氏は振り返る。会議に出席していたソフトバンクの関係者は、スプリントの幹部は当惑したように見えたと話す。最近ではスプリントの社員もシリコンバレーでの会議の際には以前より大きな声で発言するようになっている。その一方で、ソフトバンクの社員の発言は減りがちだ。孫氏やスプリントの幹部に十分対抗できるほどの英語を話すソフトバンクの社員はほとんどいない。とりわけ、米国の携帯電話市場の話となればなおさらだ。」

次第に、スプリントの米国人従業員も、孫氏の猛烈なやり方に慣れてきて、それを楽しむ心の余裕が出てきた様だ。また、孫氏が、実は極めてリーゾナブルな人間であることも、次第に分かりつつある様だ。

「カーター氏は最近の会議で孫氏と意見を異にしたが妥協点に達したと話す。孫氏は『自分がすべての答えを持っているとは考えていない。』」とカーター氏は言う。『正しい事実が提示されれば、彼は自分の考えを変えることを厭わない。』」

米国人にとって、奇異に写る、孫氏の次の様な行動も、好意的に受け取られていて、孫氏の可愛らしい側面として理解されている様にも感じる。

「スプリントの社員はまた、孫氏にとって小さなことがしばしば大きな意味を持つことを学びつつある。ある従業員が30ページを超えるプレゼンテーション資料をネットで配信した際、孫氏は素早く要点が把握できるように、もっと凝縮する必要があると指摘した。」

「米衛星放送大手のディッシュ・ネットワークによるスプリント買収案を撃退するための昨年の会議で、孫氏は株主向けのプレゼンテーション資料にあったディッシュ側の提案を表した棒グラフを赤くするよう主張した。その理由は、ビジネスの世界では、『赤』はマイナスイメージを呼び起こすからだという。孫氏の発言を聞いた関係者が明かした。」

そして、最後には、孫氏の戦う姿勢が、スプリントの従業員を変えつつあることを示唆して、記事を締めくくっている。

「バイ氏は『豊富な議論がされている。』としたうえで、『マサは勝てると信じている。彼はナンバーワンになりたいと思っている。』と述べた。それはスプリントが『自分たちの自信を取り戻す。』」ことに役立っているという。」

日本的な経営スタイルでも、熱意があれば人を動かせるということか。孫氏は、同世代のビジネスマンであり、是非成功して欲しい。


Wednesday, March 5, 2014

円安の報い【A16(社説)】

社説で、安倍首相が、円安による会計上のトリックにばかり頼っていると、政権崩壊の危機すらあることを示唆している。安倍首相による本格的な構造改革の実施に期待を寄せる。

労働者の賃金と企業の設備投資が不調。1月の賃金は昨年同期比で若干上昇したが、物価上昇を考慮い入れると、大幅な減少。10-12月の設備投資は前期比0.3%減。どちらも低調であることを述べた上で、円安にばかり頼っている安倍首相の経済政策を厳しく批判する。

「こうしたことがすべて安倍首相の経済政策への大きな打撃となる。アベノミクスは輸出企業の収益を押し上げる円安をもたらした。それは実現した。だが、売上高が横ばいで推移ないしは低下するなか、円換算した利益が膨らんだという会計上のトリックが収益増の原因だ。その上、業績改善によって拡大するとみられていた設備投資と賃金の伸びはまだ実現していない。」

ウォールストリートジャーナルは、安倍首相の政策全般には好意的だが、「靖国訪問」と「円安に頼る経済政策」の2点には、一貫して批判的だ。そして構造改革の重要性を説く次の様な文章で締めくくる。

「安倍首相がこうした状況を打開できる方法は1つしかない。大胆な構造改革の公約を守り、生産性の向上につながる投資を刺激することだ。さもなければ低賃金とインフレによる害毒が広がり、公約の不履行がもたらす政治的結末への関心が高まるだろう。」

最後の文章は、「構想改革を実施しなければ、それが安倍首相の命取りになる。」という意味か? 政権崩壊という厳しい結末の可能性すら示唆している様に感じた。

殺人者の博物館におけるトーンの変化【A8面(国際面)】

「中国の世界」というシリーズ記事に、また日中関係の記事が掲載された。ハルビンの安重根記念館には、「共に米国の友好国である日韓の関係を悪化させ、米国の北アジアでの同盟政策を混乱させよう。」という、中国の意図が見え隠れするというもの。

まず、安重根がどういう人で、日韓でどの様な人物として認識されているかを説明する。
「安は1909年にこの駅のプラットホームで日本の政治家・伊藤博文を暗殺した。」
「当時、伊藤は中国を公式訪問中だった。伊藤は近代日本の建国の父であり、当時は朝鮮半島(大韓帝国)で最も高い立場(初代韓国総監を務めた)にあった日本の高官だった。日本が朝鮮半島全体を併合する直前だ。韓国人にとって安は国家の英雄だが、日本は安をテロリストと呼ぶ。安は隣り合わせの日韓両国の永続的な確執の象徴になった。」

中国が朴槿恵大統領の提案を受け入れてオープンした記念館のおかげで、韓国人の安倍氏に対する好感度は、北朝鮮の独裁者・金正恩第1書記に対するそれを下回り、中国は日韓関係を悪化させることに成功した。しかし、中国の意図はそれに留まらず、複雑で不安定な北アジアの政治と外交における根本的な変化を作り出そうというさらに大きな意図があるとしている。

「より広い視点から見ると、安の記念館は米国の主要な安全保障上の同盟国である日韓両国間の溝を一段と広げようとする動きだ。」
「中国はアジアにおける米国の同盟構造を脆弱化させるため、できることは何でもしたいと考えている。中国はこうした同盟構造が冷戦時代の包囲網政策の遺産だとみており、この記念館建設によって同盟弱体化という政策目的を推進する中国の能力を見せつけた。」
「これら全ては米国に警告を発する動きだ。米国は日韓両国に大規模な軍事拠点を保持しており、米国の安全保障上の国益は日韓の友好な関係を土台にしているからだ。」
この記念館は、米国の北アジアにおける国益の土台を揺るがすことを目的にしていることを示唆している。

そして、そのためなら、中国は、北朝鮮との関係すら見直すかもしれないとする。

「また、北朝鮮のこともある。日韓が同意できる話題があるとすれば、それは北朝鮮がもたらす脅威、そして同国が持つ核兵器やミサイルがもたらす脅威だ。北朝鮮をめぐる緊張が高まると韓国は日本に近づく。」
「しかし、この力学も変化しているのかもしれない。中国は北朝鮮と同国の指導者である金第1書記に怒りを募らせている兆候をみせている。金第1書記は11年に指導者になって以降、中国を訪問していない。」
「峨山政策研究院のHahm氏は、朝鮮半島の次の危機が到来した際に、中国が北朝鮮に味方するのか、韓国との関係を一層強化するのかを見極める正念場になろうと指摘、『決断のときは近づいている』」と話す。」

最後は、中国の意図が、いかにうまくいっているかという事例で締めくくっている。「6才の息子が伊藤博文を殺害していたらそれを誇りに思うだろう。」という、この韓国人主婦の発言はかなりショッキングだ。
「韓国人主婦Choさんは、暗殺時の解説や、安自身が命を絶たれた絞首台の図をサムスンの携帯電話でせっせと写真に撮っていた。」

「Choさんは韓国にいる6歳の息子にこの写真を送るつもりだと話し、『もし息子がこれ(伊藤暗殺)をやっていたら、私はとても誇りに思っただろう』」と述べた。」

この記事は、日本、米国、中国、韓国そして北朝鮮の、北アジアにおける複雑な関係を、安重根記念館を例に取って、上手く表現していて、面白い。

Saturday, March 1, 2014

5億ドル近いビットコインが消滅【A1面】

マウントゴックスが、民事再生法を申請したことを、A1面とA6面の大半を割いて詳細に報じている。経済誌だけあって、この問題は連日報道している、日本の記事と違って、面白いのは、被害者や専門家による、消滅したビットコインの「捜索」にも焦点を当てている点だ。

今回の事件の概要を伝えた上で、消滅したとされるビットコインが見つかるか否かについて、次の様に述べる。
「ビットコインが見つかるのか、見つかるとしたらどの様にして見つかるのかは明らかではない。開発者の間で『プロトコル』と呼ばれるビットコインの基盤になっているソフトウェアコードは、特殊なマーカーを使って全ての取引を追跡することが出来ると信じられている。マーカーはオンライン台帳を通して追跡可能だ。」
「キャッシュは、銀行の金庫から盗まれて広く分散されてしまうと追跡が困難だが、キャッシュとは異なり、ビットコインの取引は台帳に記録され、その台帳にはコンピュータさえあれば誰でもアクセスすることが可能だ。」
「何人かのコンピュータの専門家は、どんなハッカーでもコンピュータによる侵入の痕跡を隠すことが出来ると信じてきた。しかし、もし一つ一つのビットコインがマーカーを持っているのなら、窃盗犯が大きな額を他の貨幣に変換することはより困難になるだろう。これは、美術品の窃盗犯が盗んだマチスの絵を、すぐに質に入れるのが難しいとの同じことだ。」

この様な状況に希望を抱いた被害者やトレジャーハンター達が、仕事そっちのけで、失われたビットコイン探しに奔走していると述べた上で、次の様な事例を紹介する。

「ナッシュビルに住む40才のフリーランスのウェブ開発者であるデボン・ウェラー氏は『小額の』ビットコインをマウントゴックスに預けていた。彼は、金曜日の朝、通常の業務そっちのけで、無くなったビットコインの捜索に乗り出した。彼は、自分のホームオフィスから公開台帳にアクセスし、大量の取引の後を追跡し始めた。」

その後、この事件の最新状況や米国当局の対応等について詳細に報じた後、多くの人々チームを組んでがビットコインの捜索に熱狂する様子を紹介している。

「シュレム氏は、他の4人と共に捜索し、まだマウントゴックスの金庫にあると思われる90,000のビットコインを見つけたかもしれないという。マウントゴックスはこれらのビットコインは盗まれたと言っているが。シュレム氏は、見つかったというのはあくまで論理であり、まだ推論にすぎないとも言う。『我々はコミュニティーのために、捜索をしている。』」
シュレム氏は、ビットコインの熱心な擁護者だが、ビットコインを使ったマネーロンダリーの疑いで1月に逮捕され、自宅監禁中だ。

「レビン氏は、Letstalkbitcoin.comのライター。ビットコイン捜索については独学だ。彼のチームは『36時間のスカイプを利用した会議』により、捜索計画を作成したという。」
レビン氏は、その後に予定されている会議もキャンセルし、捜索に没頭するらしい。

さすがに米国は、IT先進国だし、新しいもの好きだし、何と言っても個人の活力に溢れる社会だけあって、ビットコムへの対応も日本とは随分異なる。