Wednesday, March 19, 2014

ハネムーンの後、日本の安倍はテストに直面している【A8面(国際面)】

A14面(国際面)に発足後2年目に入った安倍政権が、経済政策、外交政策で大きな課題に直面していることを伝えている。見出しには、"Japan's Abe"という表記があり、日本の首相には珍しく名前が出ているが、わざわざ"Japan's"と付けているところをみると、米国民の中に安倍イコール日本の首相という認識が十分に行き渡ってないということか。

「発足1年目は非常に大きな成功を収めた安倍政権だったが、側近の1人が指摘するように、ここにきて『最も重大な局面』を迎えている。」
「国内では経済指標が軟化し、株式市場は大きく下げている。近隣諸国は日本に対する強硬姿勢を強め、盟友である米国の政府高官から懸念の声が上がる。最近は安倍晋三首相の側近や友人の物議を醸す発言がテレビや紙面をにぎわすようになった。」

4月に消費増税、オバマ大統領訪日を控えており、こうした難しい課題の取扱いに失敗すると、経済や外交に大きなインパクトがある。
「4月1日には、安倍首相のトレードマークである経済再生計画『アベノミクス』が最大の試練を迎える。同日の消費税引き上げを受け、首相が導入した大規模な景気対策の効果は薄れかねない。」
「安倍首相は4月下旬にオバマ米大統領を日本に招く。停滞する自由貿易交渉や、韓国には挑発的と映る日本の行動などの問題をめぐり、日米間の緊張が高まるタイミングでの来日となる。米国にとっては、韓国も日本と同じアジアの主要軍事同盟国だ。」

消費増税、オバマ大統領訪日だけでも、大変なのに、更に憲法解釈変更まで4月に推進しようとしている。
「4月にはさらに、安倍政権が戦後『平和憲法』の解釈を見直し、厳格に制限されている自衛隊の役割を大幅に拡大する計画を推進するとみられる。この計画は同政権の政策綱領の中で特に物議を醸している。」
「この問題をめぐっては、17日に自民党内から珍しく慎重論が噴出した。ある議員は、首相の閣議決定に基づいた解釈変更は「言語道断」だと述べ、党の長老からも「姑息(こそく)」との声が聞かれた。」

こうした難しい課題も、高支持率や議会での過半数維持を背景に乗り切れるかもしれない。
「安倍首相は非常に高水準の政治資本を維持している。世論調査での支持率は、2012年末の就任から1年2カ月以上にわたり50%近辺を保っている。首相の在任期間が短いことで知られる日本では、これほど高い支持率を維持できることはまれだ。国会では自民党が幅をきかせ、少数政党が乱立する野党の力は弱い。」

安倍首相の経済政策については、一定の評価をしながらも、根本的な対応には消極的と言っている様だ。
「安倍首相の人気と実力は、就任当初から経済に狙いを定め、直ちに結果を出せたことに裏打ちされている。だが今年に入り、日経平均株価は10%余りも下落し、世界の株価指数の中でも下落率は群を抜く。内閣府が10日発表した13年10-12月期の国内総生産(GDP)改定値は前期比年率0.7%増にとどまった。」
「足元では個人消費が加速しているが、4月から消費税率が5%から8%へ大幅に引き上げられるのを前にした駆け込み需要によるところが大きい。」
「消費増税による景気への悪影響を軽減するため、日銀が年内に経済への資金供給を拡大すると広く予想されている。日銀は昨年、マネーサプライを劇的に拡大させることに成功した。」
「安倍首相の側近は、増税の影響を相殺するために金融緩和と景気対策が実施されることで、日本は前進を続けられるだろうと述べた。甘利明経済産業相は先週、国内の大手製造業企業が少なくとも6年ぶりのベースアップ(ベア)実施で合意したことを受け、『経済の好循環が回り始めた。』との認識を示した。」
「安倍首相の経済政策チームも長期的な成長の礎を築くことに重点を置き、6月に新たな提案を発表する見通しだ。国会では現在、企業統治(コーポレートガバナンス)の改善策や、企業による雇用・解雇の柔軟性を高める策が議論されている。」
「勇ましい響きのあった提案の多くは骨抜きにされているとの批判がある。米国の貿易交渉担当者は安倍首相の側近について、厳重に保護された日本の農業市場をこれ以上開放することには消極的だと非難している。日銀政策委員会審議委員の佐藤健裕氏は最近の講演で『海外投資家は(中略)かなり失望している。』とし、『特に目を引くような展開はほとんど見られない。』と述べた。」

外交政策については、様々な努力を認めながらも、靖国神社訪問など、自ら撒いた種で、東アジア情勢を混乱させていると批判している様だ。
「一方、安倍政権の2年目は、中国や韓国との緊張が急激に高まり、オバマ政権もそれに対する批判をあまり隠そうとしなくなったという特徴がある。中国の場合、世界中の外交官を動員して、安倍首相は軍国主義者とのイメージを植え付けるキャンペーンに出た。一方、韓国で最近行われた世論調査では、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記よりも安倍首相のほうが好感度は低かった。」
「安倍首相は昨年12月下旬、側近の反対を押し切って靖国神社に参拝したため、こうした反応はある程度予想されていた。靖国神社には、大戦後に連合国主導の極東国際軍事裁判で死刑に処された政治・軍指導者(いわゆるA級戦犯)14人をはじめ、数百万人の戦死者が祀(まつ)られている。」
「首相は、20年前に従軍慰安婦問題に対する謝罪として発表された『河野談話』の正当性に疑問を唱える側近らの発言の火消しを余儀なくされている。」

2年目に入った安倍首相の課題について、バランス良く、分かり易く説明している。