「中国の世界」というシリーズ記事に、また日中関係の記事が掲載された。ハルビンの安重根記念館には、「共に米国の友好国である日韓の関係を悪化させ、米国の北アジアでの同盟政策を混乱させよう。」という、中国の意図が見え隠れするというもの。
まず、安重根がどういう人で、日韓でどの様な人物として認識されているかを説明する。
「安は1909年にこの駅のプラットホームで日本の政治家・伊藤博文を暗殺した。」
「当時、伊藤は中国を公式訪問中だった。伊藤は近代日本の建国の父であり、当時は朝鮮半島(大韓帝国)で最も高い立場(初代韓国総監を務めた)にあった日本の高官だった。日本が朝鮮半島全体を併合する直前だ。韓国人にとって安は国家の英雄だが、日本は安をテロリストと呼ぶ。安は隣り合わせの日韓両国の永続的な確執の象徴になった。」
中国が朴槿恵大統領の提案を受け入れてオープンした記念館のおかげで、韓国人の安倍氏に対する好感度は、北朝鮮の独裁者・金正恩第1書記に対するそれを下回り、中国は日韓関係を悪化させることに成功した。しかし、中国の意図はそれに留まらず、複雑で不安定な北アジアの政治と外交における根本的な変化を作り出そうというさらに大きな意図があるとしている。
「より広い視点から見ると、安の記念館は米国の主要な安全保障上の同盟国である日韓両国間の溝を一段と広げようとする動きだ。」
「中国はアジアにおける米国の同盟構造を脆弱化させるため、できることは何でもしたいと考えている。中国はこうした同盟構造が冷戦時代の包囲網政策の遺産だとみており、この記念館建設によって同盟弱体化という政策目的を推進する中国の能力を見せつけた。」
「これら全ては米国に警告を発する動きだ。米国は日韓両国に大規模な軍事拠点を保持しており、米国の安全保障上の国益は日韓の友好な関係を土台にしているからだ。」
この記念館は、米国の北アジアにおける国益の土台を揺るがすことを目的にしていることを示唆している。
そして、そのためなら、中国は、北朝鮮との関係すら見直すかもしれないとする。
「また、北朝鮮のこともある。日韓が同意できる話題があるとすれば、それは北朝鮮がもたらす脅威、そして同国が持つ核兵器やミサイルがもたらす脅威だ。北朝鮮をめぐる緊張が高まると韓国は日本に近づく。」
「しかし、この力学も変化しているのかもしれない。中国は北朝鮮と同国の指導者である金第1書記に怒りを募らせている兆候をみせている。金第1書記は11年に指導者になって以降、中国を訪問していない。」
「峨山政策研究院のHahm氏は、朝鮮半島の次の危機が到来した際に、中国が北朝鮮に味方するのか、韓国との関係を一層強化するのかを見極める正念場になろうと指摘、『決断のときは近づいている』」と話す。」
最後は、中国の意図が、いかにうまくいっているかという事例で締めくくっている。「6才の息子が伊藤博文を殺害していたらそれを誇りに思うだろう。」という、この韓国人主婦の発言はかなりショッキングだ。
「韓国人主婦Choさんは、暗殺時の解説や、安自身が命を絶たれた絞首台の図をサムスンの携帯電話でせっせと写真に撮っていた。」
「Choさんは韓国にいる6歳の息子にこの写真を送るつもりだと話し、『もし息子がこれ(伊藤暗殺)をやっていたら、私はとても誇りに思っただろう』」と述べた。」
この記事は、日本、米国、中国、韓国そして北朝鮮の、北アジアにおける複雑な関係を、安重根記念館を例に取って、上手く表現していて、面白い。