Friday, August 31, 2018

*** 8月のまとめ ***

8月にWSJに掲載された日本関係の記事は7件たった。17月の月当り平均掲載数は6.0/月だったので、平均を少し上回った。

テーマ別では、政治関係が4件、経済関係が3件、社会関係が0だった。

政治関係は4件。
12日に安倍首相が憲法改正案を秋の国会に提出することを明言したとするニュースを翌日の国際面で速報。世論の支持が広がらず実現は困難とした。17日には、かわぐちかいじ氏の漫画「空母いぶき」が、安倍首相の空母建造計画という現実とダブってしまうと報道。22日には石破茂氏へのインタビューを掲載。安倍首相を支持するのはゴルフ好きの企業幹部だけで、国民は石破氏を支持していると報じた。全体として、安倍首相に批判的な報道姿勢が目立った。
また、28 日に北朝鮮に拘束されていた杉本倫孝氏が帰国したことを29日の国際面で速報した。


経済関係は3件。
日銀が1日に公表した展望レポートで、低賃金で働く女性や高齢者の労働参加が賃金の上昇ペースを緩めていると分析したことを2日の国際面で速報。31日の日銀政策決定会合の結果についても「大枠では政策に変更なし。」として、併せて報じた。
6日には、ホンダが自動運転車の開発に当たって、自前主義を捨てて、他社との協業を推進しているという記事を1面に掲載。ホンダが自前主義を捨てるという苦渋の決断に至る物語を、分かりやすく伝えた。
内閣府が10日に発表したGDP速報値を同日の国際面で速報。日本経済が好調であることを伝えた。
経済は、企業の構造改革があるものの、全般的には好調。但し、労働者には十分にその好調さが行き届かないというところか。

掲載箇所では、国際面が4ヶ所だった。

Wednesday, August 29, 2018

北朝鮮は「犯罪」で拘束された男性を解放【A18面(国際面)】

北朝鮮に拘束されていた男性が28日に帰国したが、WSJはこのニュースを翌29日の国際面で速報した。

北朝鮮による拘束の理由が不明なこと、解放の理由を人道的理由としていることなどをコンパクトに報じている。

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日本の政府関係者や報道によれば、理由不明のまま拘束されていた日本人男性が釈放され、日本に帰国した。
杉本倫孝氏は、8月に逮捕されたが、犯罪の取り調べのために北朝鮮に拘束されてきた。
北朝鮮の朝鮮中央通信によれば、同国は人道的な理由から同氏を追放することにした。これまでの報道によれば、杉本氏は港湾都市である南浦で逮捕された。

Wednesday, August 22, 2018

日本でアベノミクスへの新たな挑戦が巻き起こる。【A9面(国際面)】

WSJは自民党の石破茂氏へのインタビュー記事を22日の国際面に掲載した。



「アベノミクスは安倍首相が好んでゴルフを共にする大企業のトップには恩恵をもたらしたが、その他の多くの人を取り残している。」と言う石破氏のコメントから始まるこの記事、なかなか面白い。アベノミクスの結果、日本は借金まみれになっており、今や安倍首相を支持するのはゴルフ好きの大企業幹部だけ。世論の過半数は石破氏を支持しているし、自民党議員の中にも石破氏を支持する者は少なくないと報じている。但し、自民党議員は、安倍首相に表立って歯向かえないし、その自民党議員が投票するので、石破氏当選の確率は極めて低いともしている。

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安倍首相の政策は、首相のお気に入りのゴルフ相手である経済界の大物たちにとって利益があったが、何百万人もの多くの国民を置き去りにしたと、元防衛大臣は述べた。彼は、与党のトップになるための勝ち目の薄い戦いを繰り広げている。
石破茂氏には、安倍首相を首相の座から引き下ろすチャンスがあまりない。しかし、彼は、与党内部にもいるより大きなグループのために発言しているのだ。こうしたグループは、安倍首相のもとで実現した健全な経済指標をあまり重要視せず、金融緩和や政府による強力な財政出動などのアベノミクス政策にリスクがあるとみている。
「輸出業者は円安や金融緩和の恩恵を受けている。そして、彼らはみな、安倍首相の別荘でゴルフに興じている。」と石破氏は東京の事務所でのインタビューで発言した。彼の事務所は、プラモデルの飛行機や軍事政策、経済政策の本で一杯だ。
「こうした人々は幸せだが、そうでない人々も沢山いる。こうした人々にも幸せをもたらさない限り、この国の経済は維持出来ない。」と彼は述べた。
熱心なゴルファーである安倍首相は、キャノンや富士フィルムといった企業の幹部たちとしばしばゴルフをする。元ビジネスマンのトランプ大統領とも3回ゴルフをしている。
61才の石破氏は、920日に行われる自民党総裁選で、63の安倍首相に挑戦する。自民党総裁は、与党についているときには、これまでは首相になってきた。自民党は今、与党の座にあるので、石破氏は実質的に日本のリーダーに挑戦することになるのだ。安倍首相は、自民党議員の票をほぼ固めた。
2012年に安倍首相が首相の地位に就いて以降、安倍首相の政策と日銀の金融緩和際策が、企業の記録的な利益に貢献し、ここ数10年で最も強固な労働市場を形成することを助けてきた。ここ2年ほど、経済は堅調に成長しており、この4-6月期にも、年率で1.9%成長した。
7月の記者会見で安倍首相は、中小企業の賃金上昇レベルがここ20年で最高値となったとする調査結果など、好調な数値をとりあげた。「日本経済は、確実・堅調に前進している。」と彼は言った。
選挙民は、そうは思っていない。今週公表されたANNの世論調査によれば、アベノミクスがうまくいっているとする選挙民は全体の23%にすぎず、57%はそうは思っていない。同じ世論調査によれば、世論全般は若干ではあるが、安倍氏より、石破氏に対して好意的だ。なお、この世論調査の誤差の可能性は公表されていない。
金融危機からのゆっくりした回復の中で、多くの政治家が、経済指標の改善が必ずしも強固な人気につながらないことを見てきた。
米国の民主党は、2014年に上院与党の地位から転落した。そして、2016年にはホワイトハウスも明け渡した。ドイツのメルケル首相率いる政党はは、強い成長や低い失業率、財政黒字などを実現したにもかかわらず、昨年の総選挙で1949年以来最悪の結果を記録した。
石破氏は日銀にすぐに金融緩和政策を止める様には言わないとしながらも、その政策には「多くの影の部分」が露呈していると述べた。
黒田日銀総裁は、2013年に、多くの人がバズーガと呼ぶ政策を開始し、金利を下げるために大規模な国債の買い入れなどを実施した。石破氏は、日銀は、手遅れにならないうちに、日本の借金を削減する方策を模索すべきだと述べた。日本の借金は既に1,000兆円(約10兆ドル)を超えているが、安倍首相はこの話題を避けている。
こうした借金はほぼ国内から借りているが、石破氏によれば、日本人の預金が全て引き上げられ、海外から借金をせねばならない日が来るかもしれない。そうなれば、金利は急上昇するだろうと彼は言う。「お金を借りる能力があるうちに、対応を考えておくことが重要だ。
こうした発言には、与党内でも同調する人が増えている。とはいえ、多くの議員は直接安倍首相に逆らうことには躊躇している。将来の首相候補と目される岸田元外務大臣も、今年、党の特命委員会で財政再建に向けた議論を開始している。

Friday, August 17, 2018

漫画が日本の軍隊のついての議論を喚起【A6面(国際面)】

WSJは17 日の国際面で、かわぐちかいじ氏の漫画「空母いぶき」について取り上げた。


この漫画は、日本が南シナ海の島々を中国の侵略から守るために、空母いぶきを出動させて軍事行動をとると言うもの。安倍政権は、空母の建造を計画しており、最近の南シナ海情勢と合わせて、現実の世界とダブってしまう。


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嵐の夜、3人の怪しげな人物が、東シナ海の無人島に上陸した。その場面から、中国が日本のいくつかの島を侵略するまで緊張はどんどん高まっていく。そして、陸海空での激しい戦闘で、第二次世界大戦以降、初めて日本によって軍備が使用された。
これは全て、空母いぶきという連載漫画に描かれたフィクションだ。日本の軍隊の将来についてのありうる話を描いて、日本で300万部以上販売されている。次は、映画版が予定されている。さらに、実際の日本の防衛計画も。この計画は、5ヶ年計画の最初の1年に行われるもので、今まで漫画の中でだけ見られた軍備のいくつかを使用可能にするものだ。
「いぶき」でも提起された疑問は、日本の防衛問題の核心でもある。「日本の軍隊は他国を攻撃できるのか?」
日本は第二次世界大戦中に他国を侵略した。そのため、日本が攻撃型の軍隊を持つことに、日本国内でも近隣諸国でもセンシティブだ。戦後日本の軍隊は、自衛隊として再組織されるまで、解体されていた。しかし、自衛隊の役割は限定され、多くの国民が災害救助が主要任務だと思っている。
安倍首相は、自衛隊に課された法的な制約の幾つかを緩和した。しかし、自衛隊の戦闘参加については、未だに多くの制約が課されている。
日本のベテラン政治家は、同盟国である米国の賛同を得て、北朝鮮や中国からの脅威が高まる中、日本は、新しい軍備に投資して自衛隊の戦闘能力を高める必要があると言う。
日本の将来の軍事支出の詳細は、年末の来年度予算までには、明らかにされる予定だ。ここには、今後5年間の新しい防衛強化計画も含まれる。
昨年、日本はいわゆる攻撃能力について一歩を踏み出し、巡航ミサイルの購入計画を発表した。政府によれば、日本の領土を侵略から守るためだが、海外の基地も攻撃目標とすることができる。
今年、与党自民党の防衛部会は、日本にとって第二次世界大戦以降最初となる空母開発のための巨額予算を申請した。その空母には、F-35Bステルス戦闘機もしくは同等の戦闘機が配備される。
同部会によれば、空母配備とそれによる空軍力増強により日本の軍備は増強され、東シナ海の南部の諸島を中国の侵略から守ることができる。
野党の政治家は、空母は他国を攻撃するために用いられるもので、日本の防衛大綱に反するとして反対している、
第二次世界大戦中、日本は世界最大の空母を保有していた。そのうち6隻が1941年の真珠湾攻撃で使用された。
中国は3隻目の空母を建造しているが、日本の軍備増強について、過去の歴史を反省する様に警告した。しかし、空母については直接的なコメントはしていない。
日本の南部の島の軍事最前線における空母の役割が、空母いぶきの話の中心だ。この漫画は2004年に開始され、年代順に出版されている。最新のものは、7月に販売開始となった。
この架空の空母は、F-35B戦闘機を配備しているが、この戦闘機は中国の戦闘機と衝突する。日本は水陸両用輸送艦を実際に開発したが、これを反映する水陸両用輸送艦も、日本の軍備全体が使用される中で登場する。
作者であるかわぐちかいじは、日本では海軍を扱った漫画で有名だが、いぶきの構想は2013年に作られた。その頃、日本は空母を建造するかもしれないと噂されていた。彼によれば、そうした空母が軍事衝突で、どの様に防衛任務を果たすか、紛争を避けるための抑止力のメッセージを送れるかをを示したかった。
「「私は、中国に対し、中国が日本を攻撃すれば、自衛隊はじっとしていないと言うことを伝えたい。」と70歳のかわぐちは言う。

Monday, August 13, 2018

安倍首相の軍備拡大案への窓は閉ざされている【A9面(国際面)】

12日安倍首相は憲法改正案を秋の国会に提出することを明言したが、WSJはこのニュースを翌日の国際面で速報した。


公明党の支持が得られるかどうか微妙なこと、世論の支持が広がらないことを考えると、その実現へのハードルはかなり高いとしている。


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安倍首相は、日本の平和憲法の改定の推進を開始したが、世論の反対などにより改定の機会の窓が閉まっていくという政治的な限界に直面しつつある。
与党自民党は、秋には憲法で、安倍首相が提案している自衛隊を正式に認める文章の草案を書き始める予定だ。憲法9条は「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。」としている。
憲法改定には、両議会で2/3以上の賛成が必要で、その後に国民投票で過半数の賛成をえねばならない。自民党は、小さい連立政党からのサポートで議会をコントロールしているが、連立与党がこの提案を支持するかどうかは不明だ。
より大きな問題は国民投票だ。自民党は、前進するためには、さらなる世論の支持を形成したいところだ。第二次世界大戦の記憶が深く刻まれている保守的なこの国では、多くの国民がその平和主義的なやり方を支持しており、世論調査によれば、多くの国民が9条の改定に向けた準備が出来ていない。
「日本の国民の間には、未だに、いかなる形の軍備拡張も認めないという根強い感情があります。」と与党で憲法改正を推進する細田博之は言う。にもかかわらず、「世界は変化している。日本は先進国だ。戦争を始めるいかなるメリットもない。」と述べた。
日本は自衛隊と呼ばれる事実上の軍隊を1950年代以来保持してきた。今回の改定の目的は、これらの軍隊を明確に認めることだ。支持者たちは、米国がその防衛コミットメントを見直し、中国が南シナ海における軍備増強を進める状況で、日本が自分自身を防衛するための準備について言及している。
政治的なカレンダーには予定が一杯で、自民党には世論を2分する様なキャンペーンを行なっている時間はあまりない。2019年5月1日には新しい天皇が即位する予定だ。2020年には東京が夏季オリンピックを主宰する。国民が一体となり、自民党は注目を浴びることは望めない。
日曜日に、安倍氏は、年内には計画を国会に提出したいとして、憲法改正について素早く動くことを党内に強く求めた。「我々は、永遠に議論ばかりしている訳にはいかない。」と彼は言った。2020年までには変更を実施したいとも述べた。
1947年に施行された憲法は、戦後の占領時代に米国によって書かれたもので、その後一切改正されていない。自民党は1950年代以来その改定を試みてきた。当時は安倍首相の叔父にあたる岸信介が首相だった。


Sunday, August 12, 2018

日本の成長は堅調【A6面(国際面)】

10日、内閣府が第二四半期(4〜6月期)のGDP速報値を発表したが、WSJは同日の国際面でこのニュースを速報した。


第二四半期のGDPの伸びが年率換算で1.9%だったことをはじめとして、幾つもの数値を紹介して、日本経済が好調であることを伝えている。WSJは、内閣府の四半期毎のGDP速報値を常に速報している。

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日本の4-6月は、堅調な成長へと戻った。エコノミストによれば、米国との貿易摩擦が悪化したとしても、賃金上昇と消費者支出に支えられて、この成長は継続しそうだ。
世界第3位の経済大国の経済は、第二四半期に年率1.9%のスピードで成長した。第一四半期は0.9%の縮小で、28年ぶりの最長の成長期間に終止符を打っていた。
バークレーのアナリストであるヤマカワテツフミによれば、この新たな数値によって、第一四半期の縮小が、単なる短期的な柔らかい期間であって、ビジネスサイクルの転換期ではないことが示された。
安倍首相は、2012年に彼が政権に就いて以来のGDPの伸びを、彼の最大の成果の一つとしてあげた。彼は、来月行われる与党自民党の総裁選で再選される見通しだ。総裁選に勝利すれば、首相継続となる。
アナリストたちによれば、海外からの悪いニュースがなければ、国内需要によって、経済は堅調を保つだろう。
GDPの約60%を占める個人消費は、第二四半期に0.7%伸びた。生鮮食料品の価格高騰や大雪といった第一四半期に短期的に成長の重荷となったものが、第二四半期には取り除かれたからだ。
「堅調な賃金の上昇傾向が、個人消費を支えるでしょう。夏のボーナスは、企業の堅調な収益に支えられて増加したので。」とソシエテジェネラルのエコノミストのアイダタクジは言う。
従業員の名目給与は、一年前から4.3%上昇して、第二四半期に最高を記録した。資本投資も1.3%上昇した。
しかし、金曜日に発表されたデータによれば、賃金上昇は今の所価格上昇にはつながっていない。インフレの指標であるGDPデフレーターは、その前の3ヶ月の0.5%から0.1%へと減速した。これは、日銀が目標とする2%にはほど遠いことを示している。
みずほ証券のエコノミストのスエヒロトオルによれば、消費者は、高賃金にもかかわらず、将来の懸念から、たくさん使うことに躊躇している。
4-6月の輸出は0.2%増加した。2017年下期の2%増加よりも減速している。エコノミストは、輸出の不振が成長に蓋をするかもしれないと言う。
より大きな脅威はトランプ政権だ。同政権は、自動車と自動車部品に最大25%関税をかけることを検討している。SMBC日興證券のエコノミストであるマルヤマヨシマサによれば、最近トランプ大統領が経験しているEUとの貿易紛争を見ていると、米国は関税を回避するかもしれないが、日本にとって最大のリスクであることには変わりない。。



Monday, August 6, 2018

研究開発費削減のためホンダは技術神話を捨てる【A1面】

ホンダが自動運転車の開発に当たって、自前主義を捨てて、他社との協業を推進しているという記事が6日の1面に掲載された



 ホンダの自動運転システムのコア部分は、中国やドイツ企業の製品だ。創業者本田宗一郎は、全ての技術を自ら開発することにこだわり、その自前主義がホンダの誇りだった。そのホンダが、「自前主義を捨て、他社技術に依存する。」という、苦渋の決断をするに至るまでの物語を、分かりやすく、そして詳しく説明している。ホンダが直面したこの問題は、日本のどのメーカーにも当てはまる難題であり、多くの人に読んでもらいたい。

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半自動運転のホンダのSUVが昨年3月にテストトラックを時速20マイルで走行していた。その時、子供サイズのテスト用人形が、道路に侵入してきた。ホンダはその子供をひき殺してしまった。
その日は、日本政府のテストがあったのだが、ホンダにとっては苛酷な日だった。ホンダの車は、カメラとセンサーを備えていて、障害物を検出し、衝突を避けるためにブレーキをかけるはずだった。そのSUVは、歩行者テストの部で、2.5点満点中、0.2点だった。試験を受けた車の中で最低だった。
技術に優れた巨人として長い間君君臨してきたホンダは、毅然として改善に乗り出した。そして改善したのだ。しかし、改善を実現したのは、ホンダの技術ではなかった。ホンダは、ボッシュから、出来あいのセンサーを購入してきたのだ。ボッシュの技術を使ったホンダのシヴィックは11月に同じテストを受けて、25点中24.4点を取った。
ホンダが外部から技術を買ってくるという決断をしたということは、日本が誇る優良企業の1つに大きな企業カルチャーの変化が起きているということを物語っている。ホンダの創業者である本田宗一郎は1960年代に「我々は、他人に依存することを否定する。」と述べた。起業家として成功するまでの苦闘は、世界のテクノロジーリーダーとして、日本人の胸に深く刻まれている。
以前は、ホンダでは、自社の技術者が、エンジンからサスペンションアームの形に至るまで、新しい技術を開発していた。今日、ホンダは、その様に全てを自分で開発するというやり方では、スピードについていけないと感じている。
いわゆる「パワーポイントエンジニアリング」に不満をもつ社内の人々の間には、怒りを露わにする人達もいる。パワーポイントエンジニアリングとは、技術者がスライドを適当に組み合わせて、自分で技術を開発するのではなく、他人が作った技術を組合わせるやりかたを言う。
「ホンダは変えてはいけないことを変えてしまっている。」と2016年に退職するまで、20年に渡ってホンダの研究部門で働いたツル・ヒデアキさんは言う。独創性のある製品を作ることが「ホンダ精神」だと彼は言う。
世界の自動車メーカーは、電気自動車や自動運転に使われる新しい技術を開発するために必要な、莫大な投資に大きなプレッシャーを感じている。こうしたコストを削減するために、多くのメーカーが、ボッシュ、コンチネンタル、デンソーといった大手サプライヤーやインテルの子会社のモバイルアイの様な小さいけれど尖った技術をもったサプライヤーに依存している。
「我々は、最も優れた技術をもったサプライヤーと協業したいのです。彼らが、日本企業か米国企業か欧州企業かは、関係ありません。」とホンダのCEOである八郷隆弘はインタビューで発言した。

電気エンジン
ホンダは、中国の検索エンジン大手の百度と自動運転車の地図テクノロジーで協業することを発表した。また、中国のスタートアップであるセンスタイム自動運転車用のカメラソフトウェアの開発で協業すると発表した。同社は、AIの分野で、ソフトバンクと協業している。ソフトバンクはAIを使った彼らのソフトウェアは運転手の感情を読むことが出来、将来的には、自動車は、運転者の気分に合わせた音楽を推奨するといった仕事が出来る様になるとしている。
ホンダは、何にも増して、そのエンジンに誇りを持っているが、電気モーターの開発は外注している。日立の自動車部品部門は、ホンダとの合弁会社の株の過半数を保有している。この会社は、20213月を目指して、ホンダ車用の電気モーターを開発している。2030年までには、2/3の車が、部分的もしくは完全に電気自動車となるだろうと八郷氏は述べた。6月には、ホンダは、電気自動車用バッテリーをGMから購入するとも語った。
ホンダの正式名称は、本田技研というが、こうしたアウトソーシングへの移行により、ホンダは、独創的な自動車技術の創造者という自らのアイデンティティの見直しを迫られる。ホンダの最も有名な製品の1つに、ナヴィゲーションシステムがあるが、これはGPSが民間で使用される様になる前に実現したものだ。CVCCエンジンは、燃費が良く、排出量を抑えたものだ。1972年にこのエンジンが公開された時、当時のエンジン開発トップのヤギシズオは高らかに宣言したものだ。「我々ホンダは、全てを自ら開発しました。」
多くの日本人にとって、ホンダは独創性と自信の象徴だ。こうした独創性と自信が、第二次世界大戦後の日本を工業大国へと変えたのだ。今日、日本メーカーの品質の、韓国や中国の新興企業に対する優位性は狭まるばかりだ。そして、日本の自動車産業は、複雑な自動運転車を開発するのに必要なソフトウェアの開発では、シリコンヴァレーや欧州の後塵を拝している。
ここ数年、ホンダは、トヨタの様な、より大きく、より高い利益をあげている競争相手からのチャレンジに合ってきた。こうしたより大きな企業は、開発費を吸収できるという点で優位に立っている。ホンダの昨年の研究開発費は売上の5%だった。一方、トヨタは3.5%にとどまった。
トヨタは、ホンダの2倍にあたる1,000万台の自動車を生産しているが、自動運転者の自社開発に数10億ドルを使うつもりだと述べた。トヨタは、2016年にダイハツを完全子会社化し、マツダとスバルの株を一部保有している。こうした企業は協力して次世代技術の開発に当たっており、トヨタのコスト低下に貢献している。
ルノー、日産、三菱連合は、2022年までに1,400万台の自動車を販売することを目指している。フィアット・クライスラーの元CEOであるセルジオ・マルキオーネは、年間1,500万台を販売することが出来る自動車メーカーを作るために合併を模索した。目的は、費用削減のためだ。
後になって、同社は合併無しでも生き残れるとしたが。同社は、昨年470万段を出荷した。
八郷氏は、ホンダは他の自動車メーカと合併することに興味は無いと述べた。
ホンダは、1946年に本田宗一郎によって設立された。彼は、自ら生み出した技術革新で、巨人と戦うことを愛した、機械好きだった。彼と数人の労働者は、小型発電機向けのエンジンを作って、それをバイクに付けた。それが最初のホンダの製品だ。15年も経たないうちに、マン島レースで、ホンダのバイクは、ヨーロッパのライバルたちを打ち負かした。
ちょうどその頃、本田氏は、自動車の試作車の開発を急いでいた。自動車を作った経験は殆ど無かったが。しかも、自動車市場への参入禁止を目的に準備されていた日本の法律を無視して。
今日、本田は世界中に約20万人の従業員を雇っている。大きくなるにつれて、この会社は、イノベーションよりも利益を優先させる様になってきた。経費削減戦略が品質低下を招き、ファンが反転を起こし、結果として売上に悪影響を及ぼしたと、ホンダの元幹部は言う。
2008年の世界的な金融危機と2011年のタイの洪水は、部品の供給を停滞させ、ホンダの利益を低下させた。当時のCEOの伊東孝紳はより無駄をそぎ落としたより大きな企業に改造しようとした。もしホンダがトヨタの様な規模を追求しなければ、ホンダは置いて行かれると恐れて。

売上追求
2012年に伊東氏は、中国やインドといった新興国での販売に集中して、2017年までに自動車販売台数を600万台にまで倍増させると発言した。この戦略のカギを握るのは、刷新したフィットハッチバックだった。この車は米国や日本で販売するのに十分なほど品質が良かったし、インドや中国でも販売出来るほど安価だった。八郷氏はインタビューで「この考え方は現実には機能しなかった。何故なら、市場毎の違いがとても大きかったから。」と述べた。
伊東氏は、ホンダの強大な研究開発部門の引締めを行い、明らかなビジネス的なメリットが無いプロジェクトへの支出を切り詰めようとした。元エンジニアの幹部によれば、以前は、プロジェクトの中にゴキブリの神経システムを研究する研究員もいた。グループは、従来のパラレルマネジメント構造で運営されていたが、研究開発プロジェクトは本社の承認が必要になったと、元幹部は明かす。
売上規模の拡大を急ぐ一方で、コストも削減も進めるというやり方は、混乱を招いた。2011に販売を開始した9代目シヴィックは、その低品質部材で批判を浴びた。批評家は、ハンドルの品質の悪さや内装の安っぽさなを指摘したが、こうした指摘は以前のホンダでは考えられないことだった。シヴィックと多くの部品を共有したフィットは、2013年に市場に投入されたが、その翌年には5回もリコールされることとなった
伊東氏はその任期完了以前に方針を変更した。売上目標を下方修正し、技術者には10代目シヴィックの開発に当たり予算に余裕を与えた。結果として10代目シヴィクは好評価を得た。
ホンダ一筋で働いてきて、中国ビジネス構築で貢献した八郷氏が、2015年に後を引き継いだ。前任者の自己批判を受けついで、ホンダは成長を求めるが、あまり広げ過ぎないと語った。
この新たなトーンは、昨年の電気モーターでの日立との協業の際にも明らかだった。「一つの会社が全てをやるよりも、最も良い部品を集めて、一つの車に集約することが重要だ。」と八郷氏は語った。
潜在的に可能性のある関税やNAFTAの改定は、ホンダのビジネスにとってリスクとなり得る。ホンダは米国で販売する自動車の約75%を米国の工場で生産している。しかし、ホンダはメキシコへも展開した。セラヤにあるメキシコでの最新工場は20万台の自動車のSUV生産でき、その内半分が米国で販売される見通しだ。

自動運転の計画
ホンダの半自動運転システムを担うホンダセンシングをみると、その戦略が頻繁に変更されているのが分かる。最初のシステムは、ホンダと2013年にホンダ本体から切り離された子会社ホンダエルシーが共同で開発した。このシステムの仕事に従事した人によれば、2014年までに、ホンダはボッシュと新システムの供給について交渉していた。何故なら、エルシーのシステムが、歩行者と他の物体を見分ける点で信頼たるシステムではなかったからだ。ホンダはその日本語ウェブサイトで、カメラは1メータ以下2メーター以上の物体を的確に認識できないとしていた。
ホンダは、ボッシュにホンダ向けにユニークなものを開発する様に求めていた。しかし、最終的には出来あいのものを購入することにした。関係者によれば、ボッシュは殆ど全ての自動車メーカと取引きがあり、ホンダのためにユニークなものを作ることは現実的ではないと主張した。
両社の広報官は、ホンダがボッシュの装置をホンダセンシングに使用していることを認めた。しかし、決定過程について公表することは拒否した。ホンダセンシングは、前の車との間に一定の距離を保ったり、事故を防ぐために急ブレーキをかけたりするといった行為を、運転手に代わって行うもので、多くのホンダ車で標準になっている。
ホンダの次なる挑戦は、より完全な自動運転の能力をもった車の開発だ。ホンダは、2020年までにハイウェーを自律的に走行可能な車を販売する計画だと述べた。
ホンダのライバルたちはもっと過激なスケジュールを準備している。日産は2020年までに日産車が一般公道を走れる様になると言っているし、GM2019年までにドライバー不在の大型運搬車を走らせる目標を持っている。
ホンダは、社内の研究をセンスタイムの様な企業との協業による成果とを組合わせたいとと言っている。センスタイムは、中国企業で、車に搭載されたカメラを使って人と物体を認識するソフトウェアを開発している。
昨年夏のマスコミ向けのデモで、ホンダの自動運転試作車は、ストップサインを止まらずに走り抜けた。ホンダの広報官は、その車は初期の試作車で、その性能は、センスタイムとの協業の結果、今や飛躍的に改善していると述べた。
ホンダの最終的な自動運転システムのソフトウェアの中で、ホンダの技術者が作成したソフトウェアはほんの一部分でしかない見通しだと、自動運転の主任技術者であるヤスイユウジは言う。

「自動車メーカーはあることにフォーカスし、サプライヤーは別のことにフォーカスする。」と彼は言う。「我々自身は何も変わっていません。変わったのは、ホンダにとって、全てを自分でやることが非効率になったということです。」

Thursday, August 2, 2018

女性と高齢者が賃金への歯止め【A9面(国際面)】

日銀は1日に公表した展望レポートで、低賃金で働く女性や高齢者の労働参加が賃金の上昇ペースを緩めていると分析したが、WSJはこのニュースを翌2日の国際面で速報した。



31日の日銀政策決定会合の結果についても「大枠では政策に変更なし。」として、併せて報じている。

***** 以下本文 *****
日銀は、賃金がなかなか伸びない原因となっている新犯人を名指しした。それは、女性と高齢者だ。かれらは低賃金で労働市場になだれ込んできている。

今週発表された分析の中で、日銀の調査スタッフは、雇用者はこうした新しい労働者をわすかな賃金上昇で惹きつけることが比較的容易だとみていると指摘した。同レポートによれば、こうした状況が全般的な賃金の上昇に歯止めをかけ、価格やインフレの期待を抑え込んでいる。
火曜日に、日銀は超低金利政策を大枠では変更しないことを決定した。価格上昇があまりに弱いので、米連邦準備銀行が行っている様な引締め政策は取れないとしている