Wednesday, August 22, 2018

日本でアベノミクスへの新たな挑戦が巻き起こる。【A9面(国際面)】

WSJは自民党の石破茂氏へのインタビュー記事を22日の国際面に掲載した。



「アベノミクスは安倍首相が好んでゴルフを共にする大企業のトップには恩恵をもたらしたが、その他の多くの人を取り残している。」と言う石破氏のコメントから始まるこの記事、なかなか面白い。アベノミクスの結果、日本は借金まみれになっており、今や安倍首相を支持するのはゴルフ好きの大企業幹部だけ。世論の過半数は石破氏を支持しているし、自民党議員の中にも石破氏を支持する者は少なくないと報じている。但し、自民党議員は、安倍首相に表立って歯向かえないし、その自民党議員が投票するので、石破氏当選の確率は極めて低いともしている。

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安倍首相の政策は、首相のお気に入りのゴルフ相手である経済界の大物たちにとって利益があったが、何百万人もの多くの国民を置き去りにしたと、元防衛大臣は述べた。彼は、与党のトップになるための勝ち目の薄い戦いを繰り広げている。
石破茂氏には、安倍首相を首相の座から引き下ろすチャンスがあまりない。しかし、彼は、与党内部にもいるより大きなグループのために発言しているのだ。こうしたグループは、安倍首相のもとで実現した健全な経済指標をあまり重要視せず、金融緩和や政府による強力な財政出動などのアベノミクス政策にリスクがあるとみている。
「輸出業者は円安や金融緩和の恩恵を受けている。そして、彼らはみな、安倍首相の別荘でゴルフに興じている。」と石破氏は東京の事務所でのインタビューで発言した。彼の事務所は、プラモデルの飛行機や軍事政策、経済政策の本で一杯だ。
「こうした人々は幸せだが、そうでない人々も沢山いる。こうした人々にも幸せをもたらさない限り、この国の経済は維持出来ない。」と彼は述べた。
熱心なゴルファーである安倍首相は、キャノンや富士フィルムといった企業の幹部たちとしばしばゴルフをする。元ビジネスマンのトランプ大統領とも3回ゴルフをしている。
61才の石破氏は、920日に行われる自民党総裁選で、63の安倍首相に挑戦する。自民党総裁は、与党についているときには、これまでは首相になってきた。自民党は今、与党の座にあるので、石破氏は実質的に日本のリーダーに挑戦することになるのだ。安倍首相は、自民党議員の票をほぼ固めた。
2012年に安倍首相が首相の地位に就いて以降、安倍首相の政策と日銀の金融緩和際策が、企業の記録的な利益に貢献し、ここ数10年で最も強固な労働市場を形成することを助けてきた。ここ2年ほど、経済は堅調に成長しており、この4-6月期にも、年率で1.9%成長した。
7月の記者会見で安倍首相は、中小企業の賃金上昇レベルがここ20年で最高値となったとする調査結果など、好調な数値をとりあげた。「日本経済は、確実・堅調に前進している。」と彼は言った。
選挙民は、そうは思っていない。今週公表されたANNの世論調査によれば、アベノミクスがうまくいっているとする選挙民は全体の23%にすぎず、57%はそうは思っていない。同じ世論調査によれば、世論全般は若干ではあるが、安倍氏より、石破氏に対して好意的だ。なお、この世論調査の誤差の可能性は公表されていない。
金融危機からのゆっくりした回復の中で、多くの政治家が、経済指標の改善が必ずしも強固な人気につながらないことを見てきた。
米国の民主党は、2014年に上院与党の地位から転落した。そして、2016年にはホワイトハウスも明け渡した。ドイツのメルケル首相率いる政党はは、強い成長や低い失業率、財政黒字などを実現したにもかかわらず、昨年の総選挙で1949年以来最悪の結果を記録した。
石破氏は日銀にすぐに金融緩和政策を止める様には言わないとしながらも、その政策には「多くの影の部分」が露呈していると述べた。
黒田日銀総裁は、2013年に、多くの人がバズーガと呼ぶ政策を開始し、金利を下げるために大規模な国債の買い入れなどを実施した。石破氏は、日銀は、手遅れにならないうちに、日本の借金を削減する方策を模索すべきだと述べた。日本の借金は既に1,000兆円(約10兆ドル)を超えているが、安倍首相はこの話題を避けている。
こうした借金はほぼ国内から借りているが、石破氏によれば、日本人の預金が全て引き上げられ、海外から借金をせねばならない日が来るかもしれない。そうなれば、金利は急上昇するだろうと彼は言う。「お金を借りる能力があるうちに、対応を考えておくことが重要だ。
こうした発言には、与党内でも同調する人が増えている。とはいえ、多くの議員は直接安倍首相に逆らうことには躊躇している。将来の首相候補と目される岸田元外務大臣も、今年、党の特命委員会で財政再建に向けた議論を開始している。