ホワイトハウスは5月10日にオバマ大統領の広島訪問について発 表したが、WSJは12日にトルーマン大統領の原爆投下の決断は 正しかったとする専門家の意見を掲載した。
日本では「トルーマン大統領は、 原爆を投下しなくても日本が降伏するのを知っていたが、 ソ連を威嚇するために、敢えて不要な原爆投下を決定した。」 といういわゆる「原爆外交」説が良く語られるが、この投稿は、 まずこの説が全く事実と異なるとして否定している。その上で、 当時、日本人が毎月25万人のペースでアジアの罪のない人々を殺 戮していた等のデータをあげて、もし、 原爆が投下されずに戦争が長引けば、広島、 長崎での犠牲者を大きく上回る犠牲者が出ていたとしてトルーマン の決断を正当化している。オバマ大統領の広島訪問について、 トルーマン大統領の決断の良し悪しについて、 無用な議論を呼ぶだけだとして、批判している様に読める。
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「ホワイトハウスは、火曜日に、 オバマ大統領が今月末の日本訪問中に広島の平和記念公園を訪れる と発表したが、この発表は間違いなくトルーマン大統領の1945 年8月の核兵器使用の決断について様々な議論を巻き起こすきっか けになるだろう。」
「国家安全副補佐官のベン・ローズは、火曜日にオンラインで、 大統領は広島の重要性について認識を新たにすることはあっても、 第二次世界大戦の末期におけるトルーマン大統領の原爆使用の決断 について再検討することはないだろうと述べた。 この発言は不誠実だ。 広島を訪問する最初の大統領になるということは、 トルーマンの決断を再評価するきっかけを作りだし、 オバマ大統領が謝罪するのではないか、 少なくとも謝罪を示唆するのではないかという見方を助長すること になる。」
「我々はオバマ大統領が、 トルーマン大統領が直面していた状況と決断に至った理由について 正しく理解した上で、発言することを望む。オバマ大統領は『 原爆外交』 に示されている様なもっともらしい解釈からは確実に距離をおいて 欲しい。『原爆外交』 ではトルーマンが冷戦の兆しが見え始めていたソ連を脅すために、 日本がもう少しで降伏することを知っていたのにもかかわらず、2 個の原爆を落としたと主張されている。」
「オバマ大統領とホスト役の日本は、 トルーマンが重要な軍事産業拠点であった広島と長崎を攻撃するこ とに承認を与えたおかげて、 忌まわしい太平洋戦争を早期に終結させることが出来、 アメリカ人の犠牲者を最小化し、 さらには日本人の犠牲者の数を最小化することが出来たことを、 十分に理解する必要がある。」
「トルーマンの目的は日本の本土への侵攻を避けることだった。 トルーマンは、本土に侵攻すれば、『国の隅々まで沖縄になる』 ことを知っていた。確認しておくと、沖縄戦というのは、 第二次世界大戦で最も流血が多く忌まわしい戦いだった。連合軍( その殆どがアメリカ人だったが)は65,000人の死傷者を出し たが、そのうち14,000人が死亡した。 トルーマン大統領の意向と想定は正しいかった。」
「1945年中ごろまでには、 空爆や海上封鎖によって日本は大きな被害を受けていたが、 日本のリーダー達、特に軍部は、『決号作戦』 と呼ばれる本土最終決戦に強く固執した。 その目的は侵略者に罰を与え、 日本人が平和を追求出来る様にすることだった。 日本軍は多くの民間人を軍事施設に移動させ、 本土防衛を図ろうとした。 歪んだ考えをもってしまったサムライタイプの日本のリーダー達は 、万歳精神を持ち上げ、 日本の一般国民を神風キャンペーンに巻き込もうとしたのだ。」
「原爆が投下され、1945年8月8日にソ連が満州に侵攻した後 でさえ、日本の軍部の幹部たちは戦いを継続しようとした。 しかし、 広島と長崎への原爆投下は天皇裕仁に本土決戦をしても勝ち目はな いことを思い知らせた。その結果、 天皇は前例のない政治介入を行い、政府内の反対派を押さえて、 最終的に降伏を命令したのだ。」
「オバマ大統領は、 アメリカの勝利を確実にするためのあらゆる選択肢が検討されたこ とを十分に理解すべきだ。日本の都市や設備の空襲継続、 日本を締め上げるための長期にわたる海上封鎖、 多くの銃撃戦を伴う悲惨な本土上陸、いずれの場合もアメリカ、 日本双方により多くの犠牲者が出ていただろう。その中には、 本土進攻が実施されれば処刑されることになっていた連合軍の何千 人もの捕虜たちが含まれる。」
「また原爆は、アジアの罪のない人々を日本の占領から解放した。 満州からニューギニアに至る日本の殺人的な暴行により1,700 万人から2,400万人が犠牲になった。もし、 戦争が継続されていれば、毎月 25万人以上の罪のない人々が毎月殺害されていた。 オバマ大統領と安倍首相が献花する時、 こうした事実を絶対に忘れてはならない。」
「トルーマンが原爆の使用を許可したことは、 考えられる最も最小被害の手段の選択だった。彼は、 日本を降伏に追いやった明白で実行可能なアクションに背を向けな かった。トルーマンが1945年に直面していたプレッシャー抜き にして、今思い返してみても、 トルーマンを批判する人々は効果があり説得力のある代替案を提案 することすら出来ない。」
「ハリー・トルーマンはモンタナ州インディペンデンスの出身で、 十戒や山上の垂訓にベースを置く道徳観に従って生きようとした。 しかし、彼は、政治家は戦争の霧の中でも、 困難な決断をしなければならないことも知っていた。彼は後に『 人は時に悪魔の選択をせねばならない。その場合、 被害を最小にするであろう進路を選ばねばならない。』 と述べているが、これは原爆を想定した発言だろう。」
「人々はオバマ大統領が、 その政策の失敗についての批判を受けた時、 トルーマンの防衛に頼ることになると考えている人がいる。 例えば、オバマ大統領はシリア内線への対応を誤って、
40万人もの人々が死亡したし、 中東においてキリスト教徒や少数派の虐殺を止めることは出来なか った。」
「オバマ大統領が5月27日に広島を訪問する際には、 彼自身とトルーマンの間に距離を置くべきではない。むしろ、 悲惨な戦争を終結にもちこんだ大統領に敬意を表すべきだ。」
「(この文章の寄稿者であるミスカンブレ師は、 ノートルダム大学の歴史学教授であり、『最も議論を呼んだ結論: トルーマン、原子爆弾、そして日本の敗戦』の著者。)」