Saturday, May 28, 2016

オバマの訪問は原爆が投下された日を思い起こさせる【A5面(国際面)】

527のオバマ大統領の広島訪問について、翌28日の国際面で速報した。



式典の様子を詳しく伝えた後、様々な人の見方を紹介している。オバマ大統領は核不拡散を唱えてはいるが、核不拡散に向けた具体的な方策が描けていない。オバマ大統領本人も核不拡散への彼の努力が十分な成果に結びついていないことを認めている。多くの人々が2年間で核不拡散はむしろ後退したと考えている。そして、何と言っても、核不拡散を訴えるオバマ大統領本人が、今後30年間で1兆ドルを投資して、アメリカの核兵器を近代化する計画を練っている。これは自己矛盾だと言っている様に読める。

***** 以下本文 *****
「オバマ大統領は、194586日の原爆の広島投下によって亡くなられた方々の慰霊式典で、アメリカの日本への原爆投下による犠牲者の冥福を祈った。オバマ大統領は広島を訪れた最初の現職大統領となった。」
「その厳かなスピーチの中で、オバマ大統領は広島と長崎に投下され、20万人以上を殺戮した米国の原爆について、謝罪も正当化もしなかった。その代りに、核なき未来について焦点を当てた。太平洋のいずれの側においても激情が膨れ上がることを避けるためのアプローチだ。」
「広島の平和記念公園に献花を行った後、オバマ大統領は『空から死が降ってきた』日のこと、そしてアメリカの第二次世界大戦での決断が、どの様に戦争を終わらせ、そして同時に世界を永遠に変えてしまったのかに思いを馳せた。」
「『我々はこうして市の中心地に立っていますが、こうしていると原爆が投下されたその瞬間を想像せざるを得ません。』とオバマ大統領は安倍首相の横に立って述べた。」
「『我々はこの戦争において、犠牲となった全ての罪の無い人々のことを記憶にとどめます。』とオバマ大統領は述べた。『我々は、歴史を直視しなければなりません。また、原爆による苦しみを人類が二度と経験しないためは、これまでと異なったやり方をする必要がありますが、そのやり方を一緒に考える責任があります。』」
「難しい質問に対する回答は歴史に委ねたいと述べた後で、オバマ大統領は犠牲者と生存者と核戦争の恐怖にフォーカスしたが、このアプローチは日本では好意的に見られた。」
「『夢が叶った様です。』と79歳のモリ・シゲアキさんは述べた。2人の原爆被害者が、オバマ大統領との短い面談を行ったが、モリさんはそのうちの一人だ。また、彼は広島で犠牲になったアメリカ人捕虜のために慰霊碑を建てた。オバマ大統領は、モリさんとの面談の間、モリさんを抱きしめていた。『私はとても苦しんできました。今日はアメリカから頂いた最良の日です。』」
安倍首相もオバマ大統領が広島を訪問されるのは勇気が必要だっただろうと述べた上で、次の様に発言した。『今日になっても、耐えがたき苦しみに耐えている被爆者がいるのです。こうした悲劇は二度と繰り返してはなりません。』」
「オバマ大統領にとってこの訪問は取扱いの難しいものだった。原爆に関する軍事的、道義的問題質問は、アメリカにおいて第二次世界大戦終結後の70年間、議会でも、また一般国民の間でも激しい議論を巻き起こしてきた。1990代に起きたスミソニアン国立航空宇宙博物館でのエボラゲイの展示に関する激しい議論などがその例だ。」
「アーカンソー州選出の共和党上院議員であるトム・コットン氏は外交政策についてホワイトハウスと頻繁に衝突してきた。彼は今回はオバマ大統領を批判しなかったが、異なった見方を提示した。」
「『第二次世界大戦で核兵器を使用したのは間違いではなかった。それは暴政を止めさせ、多くの生命を救い、歴史上最も破壊的な戦争を終わらせるために、必要なことで道徳的にも正しいことだった。』と彼は述べた。」
「日本だけではなくアメリカでも、軍縮推進者は、オバマ大統領の訪問について複雑な受け止め方をしている。彼らは、オバマ大統領の今回の対応について歓迎しているが、行動を起こそうという高邁な呼びかけと彼の政府の兵器削減に関する冴えない実績との間のギャップを感じている。」
「これまで謝罪を引き出すことにではなく、他の人々が原爆に苦しまないことに人生を捧げてきた被爆者たちにとって、オバマ大統領の訪問はとても有意義でした。」とワシントンの核不拡散推進団体である軍縮協会上級ディレクターのダリル・キンボール氏は言う。」
「オバマ大統領は、彼の2期の大統領任期において、核不拡散への努力があまり進展しなかったことを認めている。この間、オバマ大統領は2つの戦争を終わらせが、2つの新たな紛争に巻き込まれた。昨年のイランとの交渉について、オバマ政権は核不拡散の大きな進展だと見ているが、批判家は疑問視している。オバマ政権は、この交渉に多くの時間を取られ、ロシアとの関係悪化は、軍縮交渉をスローダウンさせた。」
2009年、オバマ大統領はプラハで演説を行った。そこで、彼は、核兵器開発を止めさせるための具体的方策の実施を呼びかけた。しかしながら、核実験禁止条約への上院の批准や、核物質製造禁止への努力が止まっているなど、具体的方策の実施は進んでいない。」
「その一方で、オバマ大統領は、今後30年で1兆円を使って、アメリカの核兵器を近代化し最新のものにする計画を描いている。
「この計画は、金曜日のコメントと矛盾するため、新たな非難を呼んでいる。『もし、アメリカが他国に核兵器の削減を迫るなら、アメリカ自身の核戦争計画を縮小すべきだ。アメリカが率先して進めねばならない。』とマサチューセッツ州選出民主党上院議員のエド・マーキー氏は言う。『バーに座ったまま、核を削減する様に説得することは出来ない。』」
「式典参加者の中には、長崎の被爆経験者である84歳のタナカ・テルミさんがいた。彼女は、オバマ大統領のスピーチを称賛したが、核兵器を削減するための具体的な方策が示されなかったのは残念だと述べた。」
「広島市のデータによれば、194586日に広島に投下された人類初の原爆によって、その年の終わりまでに約14万人の方々が死亡した。その3日後、2発目の原爆が投下され、7万人以上が犠牲となった。」