Saturday, May 28, 2016

オバマの広島の精霊【A10面(社説)】

WSJは、オバマ大統領の広島でのスピーチを非難する社説を掲載した。


オバマ大統領のスピーチは、人々の心を打つが、その中身は理想論を掲げているだけで、彼がスピーチで表明した考え方では、混沌とした世界で現実に起きている問題を解決出来ないとしている。イラン、ロシア、シリア、イラク、中国、北朝鮮そして今回の広島に対するオバマ大統領の弱腰外交により、米国の同盟国は、「米国は本当に自分たちを守ってくれるのか?」と不安になっている。こうした理想だけを追求する弱腰外交姿勢は、逆に核拡散を進めることになるとしている。オバマ大統領のことを際限の無いお人よしだとし、次の大統領にはスピーチが巧いだけの人は不要としている。
(一部分かり難い文章は思い切って意訳しました。)

***** 以下本文 *****
「核の精霊を瓶の中に戻すという考え方以上に国家安全保障に関するフレーズで良く知られたものはないだろう。オバマ大統領は、金曜日の広島でのスピーチでそのような奇跡を提案したしまった。『我々の国の様に、沢山の核兵器を持っている国は、恐怖の論理から逃れ、核無き世界を追求する勇気を持たねばなりません。』」
「精霊は核兵器という存在であるだけでなく、それらを製造するための技術的知識である。北朝鮮は世界でも最も貧しい国のひとつであるが、核爆弾やミサイル発射システムを作り出すための知識を獲得した。そして、核兵器を開発し、自分自身のために使用したり、他国への輸出したりすることを止める兆候は全く見せていない。」
「こういたことは核拡散として知られており、核の時代にあってもっとも困った問題だ。核拡散は、広島、長崎以来70年の間、多くの政治家が飽くことなく取り組んできた課題だ。広島や長崎への爆弾投下は、第二次世界大戦を終結させることにより、何百万にもの命を救ったにもかかわらず。」
「オバマ大統領の任期終了間近の貢献は、戦争を呪うことだ。『我々は戦争そのものについての考え方を変えねばならない。外交を通して紛争を避けるために。そして始まってしまった戦争を終わらせるために。暴力的な競争では無く、平和的な協力を引き起こすための相互依存関係を発展させるために。国家を、破壊出来る能力では無く、何を築きあげるかで定義するために。そして多分それ以上に、人類のメンバーとしてお互い繋がっているということをもう一度想像せねばならない。』」
「こうした演説は、オバマ大統領の世界観の理想として歴史に残るだろう。しかし、そうした考え方は、オバマ大統領の外交政策の批判に対する批判を形作るものだ。そして、そうした外交政策を推進するオバマ大統領は、際限の無いお人よしだ。その信念は、その信念が実現可能であることの十分な証拠のないものだ。」
「オバマ大統領の所感は疑いもなく高貴なものだ。しかし、そういった彼の感傷的な考えは、彼の後任が引き継ぐことになる、地球上にある無秩序を解決できるものではない。そうした無秩序は、現在実際に起こっていて、更に将来さらに拡大するであろう。引き継ぐことになるもので不確実なものは、同盟だ。全ての戦前の大統領が理解していた様に、戦争や核の拡散をいかに限定的なものに出来るかは、他の国々が参加してくれるかどうかにかかっている。」
「オバマ大統領のイラン、ロシア、シリア、イラク、中国、北朝鮮への対応は、、同盟国に、アメリカは本当に自分たちをサポートし防衛してくれるのか?という疑問を抱かせた。」
「オバマ大統領が広島で行った様に我々も言いたい。この核の時代に、オバマ大統領が成し遂げようとしている核拡散防止をなしとげるためには、道徳的な解決方法は十分ではない。オバマ大統領のスピーチは人に感動を与えるが、次の大統領はそれを超えるものでなければならない。」