Monday, May 9, 2016

日本と韓国は近い内に核武装するかもしれない【A15面(専門家意見欄)】

日本と韓国が核武装する可能性があるという専門家の意見を掲載した。


日本は再処理工場でプルトニウムを作り続けており、既に核爆弾2,000個以上を作れる量のプルトニウムを備蓄している。この動きを止めるためには、米国もサウスカロライナに建設を予定しているプルトニウム工場の建設を中止すべきだと主張している。(WSJ日本語版に同じ記事が掲載されていましたので、下記に引用させて頂きました。)

***** 以下本文 ***** 
北朝鮮の金正恩第1書記は6日、最近の水素爆弾の実験と衛星の打ち上げについて、革命に最後の勝利をもたらす「前例のない」成果だと称賛した。こうした自画自賛は目新しいものではない。しかし、日本では、北朝鮮の核開発プログラムと、安全保障に関する米国との取り決めが十分ではないかもしれないという感覚を背景に、タブー視されてきた核兵器議論が出てきている。安倍晋三首相は41日、「憲法9条は一切の核兵器の保有および使用をおよそ禁止しているわけではない」とする答弁書を閣議決定した。

 一方、韓国の与党は周辺諸国に対する軍事的な保険として「平和」利用目的のプルトニウムを貯蔵しておくよう朴槿恵大統領に求めた。韓国の保守系主要紙、朝鮮日報は219日付の記事で、既存の民間核施設を利用して1年半で核爆弾を製造する方法を詳細に報じることまでしている。

 日本と韓国は核不拡散条約の加盟国であり、日本の反核姿勢の原点は広島と長崎に原子爆弾が投下された1945年に遡る。だが仮に両国が、米国の「核の傘」が畳まれつつあると感じれば、そうしたスタンスはどちらの国にとっても核保有国という核クラブへの参加――もしくは少なくとも喫緊にそれを目指すと表明すること――を必ずしも妨げるものではない。

 日本はすでに、原子力発電所の使用済み核燃料から抽出された11トンのプルトニウムを国内に保有している。核爆弾1個に必要な量は約5キロだ。「発電所レベル」のプルトニウムでは兵器には不向きだという、原子力業界ではよく知られている古い言い伝えは技術先進国では通用しない。日本はさらに、年間約8トンのプルトニウムを分離できるフランスの設計による再処理工場の建設を進めている(ただし、稼働はしていない)。

 2011年の東日本大震災で日本の原発は稼働停止した(訳注:その後、一部が再稼働)。これはプルトニウムを再利用できる稼働中の原発がないことを意味する。それでも日本は再処理工場の実用化への取り組みを進めると表明している。恐らく、高速増殖炉を利用した新世代の核燃料サイクルという、あまり見込みのない事業に可能性を残しておくためだ。日米原子力協定は米国が供給する核燃料についてこれを認めている。一方、米韓の合意では、韓国は米国の承認なしには再処理ができない。自国を日本と対等だとみなしている韓国側は、これに不満のようだ。日本が2018年上期に完成予定の六カ所村の再処理工場を稼働させれば、韓国に日本の後に続くなと言うことは政治的に不可能だ。

 一方、中国は日本のものに似た再処理工場を建設するためフランスと協議中だ。これについて、安全保障面での重大性を割り引いて考える人もいるかもしれない。中国はすでに核保有国だからだ。しかし、大規模な再処理工場が建設されれば、現在の量をはるかに凌ぐ核兵器の製造が可能になる。中国はすでに、名目上は民間利用とされるプルトニウムの軍事的な重要性を明確に理解している。日本が保有するプルトニウムに対し、繰り返し声高に不満を訴えている点を考えてみるといい。

 プルトニウムを燃料にした新世代の発電所である高速増殖炉を実現するためにプルトニウムを蓄積するというアジアの目標は、欧米諸国の原子力推進派も目指しているものだ。だが、高速増殖炉はウランを利用した従来の原子炉よりはるかに費用が高いため、経済的に見合うものでは決してない。それに必要な使用済み燃料の再処理事業についても同様だ。日中韓の3カ国にはこの点とプルトニウムの商業化に伴う安全保障面のリスクを理解している政府関係者や助言者がいる。だが、彼らの懸念はプルトニウム関連技術で後れを取るまいとする国家主義的な要求にかき消されてきた。

 これら3カ国に経済的な利益をもたらす明らかな解決方法は、プルトニウムの民間利用へ向けた拙速な動きを揃って中断することだ。米国が説得力のある姿勢を示すためには、サウスカロライナ州で完成を予定していたプルトニウム工場の建設を中止するとしたエネルギー省の2月の決定を連邦議会が支持する必要がある。この計画は予算を数十億ドル規模で超過し、すでに何年も遅延している。

 米政権や議会内部には、アジアと米国によるプルトニウム再利用の中断を支持する声もある。エネルギー省のアーネスト・モニツ長官は3月初旬、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の取材に対し、「大規模な再処理を支持しない」と述べた。中国の大規模な再処理工場は「不拡散という意味で前向きな動きでないことは明らかだ」と語った。

 3月の公聴会で上院外交委員会のボブ・コーカー委員長(共和、テネシー州)とエド・マーキー議員(民主、マサチューセッツ州)は東アジア諸国のプルトニウム再利用計画の「一時中止」を支持するという認識で一致した。国務省のトーマス・カントリーマン次官補も同意見で、「すべての国がプルトニウムの再処理事業から撤退することを望む」と述べた。下院ではブラッド・シャーマン議員(民主、カリフォルニア州)、ジェフ・フォーテンベリー議員(共和、ネブラスカ州)、アダム・シフ議員(民主、カリフォルニア州)が賛同する。

 彼らはプルトニウムの再利用を揃って中断すれば東アジアの状況は鎮静化し、アジアの同盟諸国や中国、そして米国も多額の資金を節約できることを理解している。オバマ大統領は安心してこの提案を支持していい。核不拡散に関して長期的な貢献をするために残された任期は1年もないのだから。

(筆者のヘンリー・ソコルスキー氏は米シンクタンク「核不拡散政策教育センター」の代表で、近著に「Underestimated: Our Not So Peaceful Nuclear Future」がある)