Friday, May 20, 2016

ワシントンと東京が円で対立【A12面(国際面)】

日本が円安誘導を目的にした円相場への介入を行うと、日米間の政治問題になる可能性があるという記事が、520日の国際面に掲載された。



ドナルドトランプが「中国や日本が自国通貨安誘導を目指した為替市場介入を行うことにより、アメリカ市場に大量の製品と失業を持ち込んでいる。」と主張し、貧困に苦しむ有権者から狂信的ともいえる支持を得ている。彼は、自由貿易についても反対で、TPPについては明確に「ノー」と言っている。そうした中、かつてはTPP推進派であったヒラリークリントンも、TPPに反対せざるを得なくなくなっている。一方、日本では円高に苦しむ大企業が、政府に円安誘導を要請している。政府も参議院選挙を控え、そうした要求に応えざるを得ない。両国とも政治的要因から、米国は円高、日本は円安を実現せねばならず、状況は行き詰まっている。
(分かりにくい部分は思い切って意訳しています。)

***** 以下本文 *****
「円高により、アメリカと日本の為替についての立場が行き詰まっている。日本が更に円安政策を推し進めると、アメリカにおける反自由貿易の炎を掻き立て、不安定な世界経済に更なる問題を発生させる可能性がある。」
「日本の企業は、円高による輸出額の低下を懸念しており、政治家に円安実現を迫っている。一方、アメリカでは労働組合や企業が、円安は多くの失業と工場の閉鎖を引き起こすと心配している。」
「アメリカのエコノミストとワシントンの政府関係者は、日本当局の円安誘導を目的にした円相場への介入が、中国を含む国々による通貨価値引下げの連鎖につながることを懸念している。財務長官のジェイコブ・ルーは、今週、仙台で、日本や他のG7各国の財務関係首脳と会談する予定だ。」
「こうした対立はグローバル経済の弱さの兆候を示すものだ。リーダー達は、低金利に依存する経済を活性化させることに苦労しており、自由貿易に反対する動きもある。」
「日本銀行と財務省の高官は、外貨を購入して、円を売ることにより、円安を誘発すると脅しをかけている。」
「『こうした状況は、グローバル経済が低成長に苦しむ中、共食いをしていることに他ならない。』とフォード自動車副社長であるスティーブン・ビーガンは言う。同社は、今年日本市場から撤退することを決定したが、その理由は日本の円政策にある。」
「日本では、株価は円の動きに連動している。トヨタやその他の自動車会社は円高は利益を食い潰すを警告している。こうした動きは、選挙を目前に控え、日本の政治家たちに圧力をかけている。今年夏に予定されている参議院選挙は、安倍首相のより広範な政治目的を助けることもあれば後退させることもある。
「アメリカでは円安はアメリカ国内のTPP反対派にホワイトハウスが推し進める貿易交渉を失敗に終わらせるための政治的な武器を与えることになる。」
「『鉄鋼業だけで、19,000人もの人が解雇されたのです。』と鉄鋼労働者組合のプレジデントであるレオ・ジェラルドは言う。『中国と日本が、米国に彼らの製品を大量に輸出し、米国の企業や労働者を不安定な状況に陥れていますが、それは通貨操作によって実現されているのは明白です。』」
「過去2年間でドルの価値は主要通貨に対して20%上昇した。結果として、アメリカの製品は海外のバイヤーにとってより高いものとなり、アメリカの成長をスローダウンさせた。経済回復に時間がかかっていること、一部の富裕層に偏っていることも相まって、中国と日本の通貨政策は、アメリカ大統領選挙において反自由貿易の世論を形成してしまった。」
「『我々は通貨操作を厳しく取り締まる必要がある。』と民主党の次期大統領最有力候補のヒラリー・クリントンは言う。彼女はもともとTPP推進派だったが、彼女の対抗馬が反自由貿易を打ち出して人気を集めているのをみて、最近TPP反対派へと鞍替えした。共和党暫定次期大統領候補であるドナルトトランプは、中国が元安政策を推し進めるなら、45の関税をかけるとの脅しとも取れる発言をしているが、こうした発言は中国の台頭によって経済的に痛めつけられている地域を中心に大きな支持を得ている。」
2012年から2015年後半にかけて、日本企業は大きな利益を享受することが出来た。この間、円の価値は一貫して円安方向へと向かっていたからだ。しかし、今や多くの企業が円高により利益が圧迫されると警告している。2016年に入って、円の価値はドルに対して9.4%上昇した。」
「『このところの非常に速い円高への動きは、投機目的の投資によるもので、実態経済とは連動していない。』と日本最大の経済団体である経団連の榊原会長は言う。」
「アメリカは緊張を和らげたいとしている。ルー氏はG7各国に貿易を有利に進めるために通貨操作はしないという以前の約束を再確認する様に強く求めると表明した。」