10月31日に発表された黒田日銀総裁の金融追加緩和策が一面トップで報じられた。
この記事は、次の様な書き出しで始まる。
「日本銀行と主要政府年金ファンドが、金曜日に数兆円を日本の疲弊した経済に注入すると述べた。これはリスクのある新しい刺激策であり、グローバル市場に激震を与えた。」
「安倍首相がデフレとの長い戦いに終止符を打つために実施している政策にゆらぎが見えているという事実に直面し、この2つの機関は、日本の経済政策を今まで経験したことのない極端な刺激策の領域までもっていこうとしている。この刺激策は、ここ数年他の先進国が取った過激な刺激策の更に先を行っている様に見える。日銀の取締役会はこの過去に例が無い政策について、意見が真っ二つに分かれた。」
非常に長い記事なので、暫く要約する。
投資家は、米連邦準備銀行が金融緩和策を終了するという予測に神経質になっていたが、日銀のこの発表により、ダウ平均とS$P500は最高値を更新した。東京でも日経株価が急上昇し、円安が進行した。日銀と年金ファンドの発表が同じ日になったのは、偶然だというが、いずれにしても、これらの発表が、ここ数ヶ月アベノミクスに関して懐疑的にあっていた市場に対し、リセットボタンを押す効果はあった。
日銀は、資産買取プログラムの規模を33%増やし、国債だけでなく、株式や不動産ファンドも買う。この歴史的な実験において、日銀は新規国債発行額の2倍に当る買い付けを行う。
一方、厚生労働大臣は、1.2兆円にものぼる年金壇度の投資ポートフォリオの詳細を明らかにした。それによれば、国内外の株式の比率を10%以上にする。
黒田日銀総裁の政策は、日銀の取締役会の支持をかろうじて得たが、賛成5に対し、反対4で過去に例が無い程の僅差だった。日銀内の意見対立の深さと、突然の政策変更は、黒田氏への信頼を損ねるものだと言う意見もある。
年金ファンドの政策変更にも様々な見方がある。政府は、年金受給者を守るよりも、株式を値上がりさせることを選んだという意見もある。
こうした政策変更は、日本の経済にとってだけでなく、政治にとっても微妙な時期に発表された。安倍首相は、アベノミクスの3本の矢の成功により高い支持率を誇ってきたが、消費増税による経済の冷え込みによりその支持率も下がっている。日銀は今年度の経済成長率の予測を0.5%に下方修正した。政府は、9月のインフレ率が1%で、目標の2%、今年前半の1.5%を下回ったと発表した。
この記事は、次の様なコメントで締めくくられている。
「日銀と年金ファンドの動きに市場はショックを受けているが、黒田総裁と安倍首相はアベノミクスの当初のシナリオへと戻りつつある様だ。つまり、円を他の通貨より安くすることにより、時間をかけずに経済的、財政的な利益を得るというシナリオだ。」
「金曜日の動きは、日本をかつて先進国が経験したことのない領域へと運び込む。この決断の前においても、既に日銀の資産保有長は日本経済の60%近い規模にまで達していた。これは。米連邦準備銀行や英国銀行が到達したレベルの2倍を越えているのだ。」
黒田総裁の発表は、グローバル市場に大きな影響を与え、久しぶりに日本発の記事が1面トップを飾った。