Saturday, November 1, 2014

日本の「イーズ」の魔法使い【A12面(社説)】

10月31日に発表された、日銀の金融緩和策の追加について、11月1日の社説で取り上げた。WSJ日本語版に同じ記事が掲載されていたので、借用させて頂く。


「日本銀行の黒田東彦総裁にショーマンシップがあることは認めよう。10月31日に日銀が追加緩和策を打ち出すと、東京株式市場は即座に7年ぶりの高値を付け、円の価値は対米ドルで6年ぶりの低水準となる112円に下がった。しかし、この緩和政策の魔術の舞台裏はのぞかない方がいい。」
「黒田総裁は、これまでの緩和政策にもかかわらず依然として低迷している経済を救う必要があると感じた。エコノミストは2014年度の成長率を0.2%と予想している。4月の消費増税の影響を除くインフレ率は1%前後で、日銀が目標としている2%に届いていない。個人消費は低下し、雇用市場が軟化しているという兆候もある。」
「マネタリーベースを従来の年間60兆〜70兆円から年間80兆円に増やすために、より多くの日本国債、上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)を購入するというのが日銀の解決策である。救いがたい国家財政、改革が進まない労働市場、甘やかされた国内産業、高齢化する人口といった材料が入っている日本のデフレの大釜から魔法でインフレを引き出そうという勇敢な試みである。」
「黒田総裁と安倍信三首相はいまだに、国際通貨基金(IMF)によって公布された呪文の書を詠唱している。そこには、国家財政の悪化や債務の拡大という犠牲を払って日本政府が20年間取り組んできたようなケインズ主義の過度な財政出動、それを賄うための増税(たとえば、4月に5%から8%に引き上げられた消費税)、その増税が成長に与えるダメージに歯止めをかけるための金融緩和と通貨の切り下げといった秘訣が書かれている。」
「日本が2013年に実施した最初の金融緩和は長期に及んだデフレを断ち切るためにほぼ間違いなく必要だった。ところが今では、安倍首相が約束した経済改革の『3本目の矢』の遂行を回避するための支えになってしまっている。」
「日本により多くの競争をもたらすはずだった自由貿易という課題は行き詰ってしまった。雇用や解雇の柔軟性を高め、生産性の向上を促進する労働市場改革は、人口減少による景気の低迷を防ぐための移民増加と同様、引っ込められてしまった。この話が欧州中央銀行(ECB)を威嚇しながら、改革を全く実施していない欧州の指導者たちのように聞こえたとしたら、それは暗号が解読できた証拠である。」
「金融政策だけで、まずい財政政策や規制政策を克服することはできない。通貨の切り下げは輸出業者の円建ての収益を押し上げるが、投資の増加や効率化を促すような経済改革なしでは、日本企業は世界の市場シェアを他国の競争相手に奪われ続けるだろう。少なくとも外国人株主は量的緩和が生み出す資産価格バブルで大儲けするだろうが。」
「そういうわけで投資家は黒田総裁の最新の手品を歓迎したが、しばらくするとまた次の奇跡を要求することだろう。安倍首相が来年に予定されている消費税の10%への引き上げを実施しなければ、そうした声は特に大きくなるはずだ。安倍首相と黒田総裁の金融政策が尽きるのも、投資家が舞台の煙の後ろには経済成長がないということに気付くのも時間の問題だろう。」

日銀が決めた政策に関して、日本が根本的な経済構造改革を行わずに金融政策に頼り続けることへの懸念を明確に示している。これだけ、明確に黒田総裁の政策を否定してしまうと、狙った効果も半減だ。
市場は31日はひとまず、日銀の政策を好意的に受け止めたが、こうした報道を踏まえて、連休明けの明日以降どの様に反応するのだろうか?