Monday, November 10, 2014

日銀のインフレについての決定の裏で。【A14面(国際面)】

10月31日の日銀の追加金融緩和策についての続報が国際面に掲載された。

ウォールストリートジャーナル日本語版にほぼ同じ記事があったので、引用させて頂く。
「日本銀行が10月31日に開催した金融政策決定会合の主な目的は、政策変更ではなく景気見通し改定になるはずだった。」
「だが日銀の見解に詳しい関係者によれば、政策委員がそれぞれの見通しを提出するにつれ、憂慮すべきパターンが明らかになった。委員らは物価見通しを下方修正し、少なくとも1人は2015年度のインフレ率が1%未満に落ち込むとの見方を示した。」
「日本は日銀が脱却を誓ったデフレ環境に再び向かいつつあった。さらに悪いことに、日銀はそれを公に認めざるを得なくなる状況が迫っていた。」
「2%の物価目標達成に向けて順調だと何カ月も発言していた黒田東彦総裁は、会合直前に大胆な提案を行った。それは13年4月に開始したインフレ促進策を30%程度拡大するというものだ。黒田総裁は新たな景気見通しがこの巨額の流動性供給を反映し、より楽観的なものとなることを期待した。」
「日銀職員は正式な提案の作成に日付が変わるまで取り組んだ。31日午前9時に8階会議室で金融政策決定会合が始まったとき、黒田総裁の支持者は賛成多数になることを期待しつつ、日銀総裁として初めて提案を否決される可能性もあると神経をとがらせていた。関係者によれば、その後はこれほど迅速に大規模な措置を講じることに関して幅広く意見が交わされ、議論は時に熱を帯びた。」
「開始から3時間以上が経過したとき、職員が集計用紙を回付、政策委員それぞれが賛成または反対の欄に署名した。委員の票は4対4で分かれ、黒田総裁が賛成票を投じて結論が出た。その後、物価見通しがやや引き上げられた新しい景気見通しが承認され、黒田総裁は2時間後の記者会見で、自身の物価目標がまだ達成可能だとするもっともらしい理由を述べることができた。」
「今回の措置を関係者への取材に基づき分析すると、黒田総裁の戦略の新たな面が見えてくる。総裁は断固として予防措置を講じる決意で、国民のインフレ期待や、追加措置に関する市場の期待が後退する前に動こうと心がけている。」
「この点は後手に回ることの多かった歴代総裁と対照的だ。」
「31日の決定はサプライズ要素もあり、日本株を8%近く押し上げたほか、海外市場でも株高を導いた。追加刺激はまた、賃金をめぐる大企業の労使交渉が12月に始まることをにらんで決まった面もある。賃金はインフレの『好循環』が経済成長を促進するという黒田総裁のビジョンの中心をなす。好循環とは、労働者が物価上昇を予想して賃上げを要求し、企業側もコスト上昇をカバーするだけの値上げが可能だと確信して賃上げに応じる、というものだ。黒田総裁は31日の記者会見で、デフレ脱却に向けた取り組みが重大な局面を迎えたとの認識を示した。」
「10月6~7日の政策決定会合の議事要旨によると、このときは追加緩和の議論すらされなかった。」
「それでもインフレ率低下の兆候はあった。」
「関係者によると、景気見通しと政策が日銀内部で本格的に議論されはじめたのは29日だ。政策委員会は15年度の公式物価見通しを直近では7月に公表していた。その時点での予想中央値は1.9%で、黒田総裁の掲げる2%に近かった。今回、各委員から新たな見通しが提出されるにつれ、中央値は1.5%近くに低下する公算が大きくなった。」
「これは黒田総裁にとって、追加刺激策が必要との認識を強める要因になった。」
「追加策の議論を始めるにあたり、黒田総裁を支持する向きは総裁自身と副総裁2人の計3人の賛成を確信すると同時に、少なくとも2人の懐疑派の同意は得られないこともほぼ確実だと考えていた。」
「残る4人が2対2で分かれ、黒田総裁は過半数の賛成を得るに至った。」
日銀の緩和策決定については、当日一面トップで速報した後、社説を含めて2回続報を掲載しており、今回が3回目の続報。この件に関するWSJの並々ならぬ関心の高さを感じる。この政策そのものについては、若干懐疑的な報道をしているが、黒田総裁のリスクを取る前向きな姿勢については大きく評価している様に読める。