Thursday, May 1, 2014

トヨタの出発は市を揺さぶる【A3面(国内面)】

トヨタが北米本社をカリフォルニア州トーランス市から、テキサス州プラノ市に移転させるという記事。
私が住む、南カリフォルニアでは、トヨタの存在感は大きく、このニュースは地元もメディアでは大々的に取り上げられ、人々の間でも大きな話題となった。
トーランス市には、多くの日本人が居住し、日本食レストラン、日系スーパーマーケット、日本人向け病院等々が集まる。南カリフォルニアに住んでいる日本人なら、誰でも行ったことのある町だ。

この記事は次の様な書き出しで始まる。

「5週間前、カリフォルニア州トーランス市のフランク・スコット市長は、トヨタ自動車の幹部とともに、新市営競技場の開会式を、祝った。トーランス市にとって、最大の雇用主であり、主要な後援者であるトヨタ自動車は、このプロジェクトに50万ドルを寄贈した。」
「今週、スコット市長は、あまり嬉しくない仕事をせねばならなかった。トーランス市が、巨大自動車メーカーであるトヨタが残していく101エーカーもの巨大な空き地をどの様にして再活用するかを考えねばならないのだ。トヨタは。その広大な敷地から引越し、3,000人分の職をテキサスの新しい本社に移す計画だ。」
「2017年までにその米国オペレーションの殆どを、テキサス州プラノ市に移すという、トヨタの決断は、月曜日に正式に発表され、スコット市長を驚かせた。トヨタの従業員への発表は、スコット市長に儀礼の電話があった後に、実施された。カリフォルニア州の役人達は。トヨタが昨年から模索していたこの計画を全く知らされていなかった。」
「『これはショックです。』とスコット市長は言う。彼は、移転の噂は聞いていたが『まさかこれ程の規模になるとは思ってもみなかった。』」」
「関係者によれば、トヨタは、新しい北米本社の場所探しを秘密裏に行ってきた。トップレベルの会社幹部ですら、発表の一日前まで、全く知らなかった。」

その後、この記事は、トヨタがどの様な考え方で、ダラス郊外に白羽の矢を立てたのかを詳細に述べる。長いので要約する。

米国トヨタのレンツCEOによれば、カリフォルニアを離れることになったのは、そのビジネス環境とは関係ない。現在部門本社がある場所は新本社候補地からは外す方針で、そうした方針がらカリフォルニア、ミシガン、ケンタッキーが最初に候補地からはずされた。
便利な空港、良好な生活環境、トヨタの他のオペレーションへの近さ、デトロイトの影響が無いこと、適切な住宅価格、水準の高い学校等が、考慮され、アトランタ、シャーロット、デンバー、ダラス郊外が最終候補として絞られた。
最後は、空港の便利さが決め手となって、ダラス郊外に決定した。レンツCEOは、テキサス州がビジネスフレンドーであること、個人所得税が無いこと等を決定の決め手としてあげている。

そして、カリフォルニア州の主要な人物のコメントを引用する。この部分も要約する。

カリフォルニア州のブラウン知事は、同州には企業が直面する難しい課題があることを認める一方で、「アマゾン等がオペレーションを拡大している。」とも言っている。
一部の批評家は「これを機会にカリフォルニアは、企業のカリフォルニア離れに歯止めをかけ、ビジネスを呼び込み、生活費を安くする対策を至急とらねばならない。」と言う。
カリフォルニア商工会議所長は「カリフォルニア州の訴訟の多さや、税金の高さが、企業の場所選びに影響を与えている。」と言う。

記事は下記の様なコメントで締めくくられている。

「トヨタの米国販売部門は、1957年以来、南カリフォルニアにベースをおいている。最初は、日本からの車が陸揚げされる、ロングビーチ港の近くにあった。その当時は、従業員の殆どが日本人だったこともあり、日本から近いことは、重要だった。1982年に、101エーカーある現在のトーランスキャンパスに移転した。」
「それ以降、トヨタは、この15万人の人口を擁する、ロサンゼルス南部の市にとって、無くてはならない存在だ。慈善事業や学校関係の活動でも非常に活発だ。トヨタ・ミーティング・ホールは、結婚式や誕生会の会場として最も人気がある会場のひとつだ。これは、市の文化センターの一部を占めるボール・ルームだ。」
「『市の役人は、トヨタ移転の影響の全貌を把握するのに精一杯だ。』と市の経済開発部長のフラン・フルトン氏は言う。」
「最新のビジネスライセンス申請によれば、トヨタは3,929名の従業員をトーランス市で採用しており、120万ドルの税金を納めている。トーランス市で次に大きい雇用主は、ライバルのホンダ自動車で、1,615名雇っている。」
「スコット市長は、市がすぐにやらなければならないのは、トヨタの広大なキャンパスの借り手を探すことだ。発表後、市が準備したセールストークの一番は『トーランスはビジネスフレンドリーな市です。』だ。」

私の様な、メーカーの米国駐在員には他人事とは思えない記事だ。「米国に散らばる事務所を統合しようとか、その統合先がダラスが良い。」というのは、トヨタ駐在員以外でも、在米の様々なメーカーの駐在員の間で話されたことがあるのではないか?