Wednesday, May 14, 2014

トヨタのカリフォルニアからの逃亡【A11面(専門家意見欄)】

トヨタが、北米本社をカリフォルニアからテキサスに移転することを決断した主な理由は、カリフォルニア州の指導者達にうんざりしたことだとする意見が、専門家意見欄に掲載された。
カリフォルニア州上院議員、ロサンゼルスタイムズ、カリフォルニア大気資源委員会らの、トヨタに対する対応はあきれるばかり。
翻訳が難しかったので、ニューズウィーク日本語版サイトの和訳をそのまま引用させてもらった。

「カリフォルニア州の一部メディアのだまされやすさは笑えるほどだ。米国本社を5000人分の雇用とともにテキサス州ダラス郊外に移転するというトヨタの決断は、カリフォルニアのビジネスや政治環境を反映したものでは決してないとする主張だ。」
「トヨタの北米事業を統括するジム・レンツ氏はロサンゼルス・タイムズ紙に『カリフォルにアに本社をい置かない理由は地理的なものだ。』と強調した。」
「もちろんカリフォルニアから立ち去る真意はトヨタにしか分からない。現在米国で販売されているトヨタ車のほとんどはミシシッピやテキサスなどの国内で生産されており、もはやロングビーチ港経由で輸入されているわけではない。しかし、トヨタの顧客はカリフォルニアに偏在している。その代表的なハイブリッド車(HV)『プリウス』については特にそうだ。それに、他の企業は人員をさまざまな場所に拡散させる方が有益だと判断している。ボーイングは1000人分の技術職をシアトルからロングビーチに移したばかりだ。」
「本社を置く場所としてはともかく、自動車生産地としてのカリフォルニアへのトヨタの態度は過去にもきっぱりと表れている。トヨタは2009年、フリーモントのGMとの合弁組立工場を維持することを拒否した。ビル・ロッキャー州財務官率いる特別委員会をはじめ、カリフォルニアの政治家から容赦ない圧力を受けたにもかかわらずだ。本社をテキサスのような共和党色の強い州に移転したことは象徴的な行為かどうかは分からない。しかし、トヨタがカリフォルニアの政治にほとほとうんざりする理由は他にもいくつかある。」
「1つはヘンリー・ワックスマン上院議員だ。09年、代車として使用していたレクサスの悲惨な事故で4人が死亡した。サンディエゴのディーラーは、その代車の前の使用者からフロアマットがアクセルペダルに引っかかることを警告されており、不運とも言える事故だった。ワックスマン議員はこの全米に報道された悲劇を下院公聴会のお膳立てに利用し、別の全く異なる欠陥について詰問した。電子システム上のバグで車が暴走する事態が生じていると主張したのだ。ワックスマン氏の公聴会は進行中だったが、米政府はトヨタ車の事故は『ペダルの設置ミス』が原因であることを示す証拠を積み上げていた。電子的欠陥は発見されなかった。バグ原因論は訴訟弁護士の間でだけ支持されており、ワックスマン議員の取り組みの背後にそれら弁護士の利害があったことは明白だ。」
「さらに、やはりカリフォルニアを地元とするロサンゼルス・タイムズ紙がサンディエゴの悲劇を独自の『調査』で追跡取材し、苦情データの短絡的な分析を基に電子的欠陥を主張した。トヨタは同社史上最も深刻で費用の高くついたスキャンダルで基本的にカリフォルニアの重要な指導者や組織の餌食にされたようなものだ。しかし、彼らは自分たちの過ちを認めるどころか、内省さえせず、当事者間でいまだにこの職業的な腕前をたたえ合っている。」 
「そしてもう1つが、カリフォルニア大気資源委員会(CARB)だ。トヨタはガソリンと電気を利用したHVを成功させた草分け的存在。しかし、トヨタはカリフォルニア最大の自動車ブランドとして、州内でのゼロ排出車(ZEV)の一定比率の販売を義務づける空虚な規制によって、最も多額のコストを負担することにもなっている。つい先週、トヨタがテスラとの3年間の契約を静かに終わらせる計画であることが明らかになった。この契約はトヨタの小型スポーツタイプ多目的車(SUV)『RAV4』の電気自動車(EV)版2600台の部品をテスラから調達するというもの。テスラの各種文書によると、部品の開発・供給のためにトヨタが負担する費用は1億6000万ドル(約160億円)と見込まれていた。1台当たり6万1000ドル以上だ。」
「RAV4のガソリン車の値段は2万5000ドル前後。EVモデルの1回の標準的な充電での走行距離はわずか92マイル。この実質ハンドメイドの『規制順守車』が、5万0610ドルというかなり譲歩した価格がつけられているにもかかわらず、売れ行きが芳しくないのも不思議ではない。2年たってもまだトヨタは来年9月までに義務を達成するために、多額の損失をのんで1000台をEVにシフトしなければならない。」
「RAV4のEVモデルは途方もなく高い。その一因は、豊田章男社長がここ20カ月でEV車開発プロジェクトを直接主導し、盛り上げてきたことにある。アクセルペダルの欠陥問題が突発するなか、テスラに有益な恩恵を与える見返りに、カリフォルニアの政治家が多少は愛情を示してくれることを豊田氏が期待していたのは明らかだ。その恩恵には、テスラへの直接出資や巨大なフリーモント工場の魅力的な条件でのテスラへの譲渡なども含まれていた。しかし、目立った形で愛情が示されることはなかった。一方、ZEV規制は見え透いたまねごとの温暖化対策にほかならない。」
「リチウムイオン電池パックの製造と継続的な充電コストを加味した場合、EVの排出抑制効果は誇張されている。液体水素燃料電池車については間違いなくそうだ。液体水素燃料電池車はカリフォルニアの規制でEV以上に大きな恩恵を受けている。また、トヨタは規制順守コストを引き下げようと液体水素燃料電池車に力を入れている。ZEV規制は排気管からの排出のみに配慮し、全体的な環境効果は無視している。なぜなら、そうすることで宣伝になるような自動車の導入が促され、政治家は環境に配慮するイノベーターとして振る舞うことができるからだ。」

「当然ながら、トヨタはカリフォルニアで車を売り続けるために、この皮肉に参加し続けるだろう。カリフォルニアの指導者たちは無思慮の権利意識をかざして業界資本を偽りのポーズに無駄に費やしている。しかし、そうした権利意識に自動車メーカーの経営者が嫌悪感を抱かずにいられるはずはない。少なくともトヨタとカリフォルニアが思い描くものは今や異なっている可能性がある。トヨタがテキサスにピックアップトラック工場を建設したのは米国の非都市部に近い場所に拠点を置きたかったからだ。全米自動車競争協会(NASCAR)に加盟したのも同じ理由だ。米国本社のカリフォルニアからの移転が何を象徴するかをトヨタが慎重に考慮しなかったと思い描いているのであれば、トヨタを分かっていないということだ。」