Friday, May 2, 2014

トヨタはテキサスに逃げる【A12面(社説)】

トヨタの北米本社移転問題について、社説で取り上げている。少し長いが全文掲載する。

カルフォルニア州は、労働組合が強く、税金、不動産、電気代、ガソリン等が高い。何らかの対策を打たないと、労働力やエネルギーに依存する産業は逃げていくという主旨。特に、ロスアンゼルスは、こうしたカリフォルニアの悪い面が凝縮された悪い町として取り上げられている。

南カリフォルニア在住者である私には、ロサンゼルスは、気候も良く、活気に満ち溢れ、常に世界で最も新しいことが起きている魅力的な町に移るが・・・。

「ブラウン知事のカリフォルニア復帰ツアーは、トーランス市に本社を置くトヨタがテキサス州プラト市に移転するというニュースによって、今週、突然打ち切られてしまった。トヨタのカリフォルニアからの逃亡は、商業、工業の分野で、米国南部がカリフォルニアを凌駕しつつあることを、如実に示している。」
「トヨタは、販売部門本社に加え、3,000人分の仕事をダラス郊外へ移し、機能を統合させることにより、効率改善を図る。トヨタは、南カリフォルニアの主要な港に近いという理由で、1957年に米国で最初の事務所をロサンゼルスに構えた。しかし、米国で販売されるトヨタ車の大半が、北米、特に米国南部で製造される様になるにつれ、港の重要性が低下していった。」
「2006年には、日産が、その本社機構を、トーランス市の北隣に位置するガーデナ市から、テネシー州のフランクリン市へ移転させた。カルロス・ゴーンCEOは、テネシー州では安いコストでビジネスが出来ることを強調した。テキサス州は、移転費用の一部に当たる4,000万ドルを補助金としてトヨタに支払うことを約束したが、北米トヨタのCEOであるジム・レンツ氏は、今回の移転先の決定にはこうしたインセンティブは影響を与えていないと言っている。彼は、テキサス州がビジネス・フレンドリーであること、他のトヨタのオペレーションに近いこと、大きな空港が2つあることに加え、家の値段があまり高くないこと、所得税が無いことなど生活面でのメリットも、テキサスを移転先として選んだ理由にあげている。」
「この選択を大きな視点からみると、テキサスが経済的な競争力を強めている一方で、カリフォルニア州が競争力を弱めていることを意味している。特に、エネルギーや労働力を多く必要とする事業について。幾つか例をあげよう。」
「まず、米国南部諸州で制定されている労働権法は、労働組合を作ることに規制を加えており、これが労働コストを押し下げることに寄与している。労働者に占める組合員の割合は、テキサス州ではわずか4.8%、テネシー州では6.1% であるのに対し、カリフォルニア州では16.4%だ。不動産価格も、区画規制や環境規制が緩いことから、南部の方が安い。税金もそうだ。税金ファウンデーションによれば、カリフォルニア州では、テネシー州やテキサス州に比べて、州税が50%以上も重い。テネシー州やテキサス州では。個人所得税は無いが、カリフォルニア州では最大化税率は13.3%で全米最悪だ。」
「電気代も、カリフォルニア州では再生可能エネルギーを推進しているため、南部に比べて50%高い。ガソリン代も、税金やブレンディングの要求により、1ガロン当たり、70-80セント程度高い。」
「化石燃料への敵対心から、カリフォルニア州での石油生産量は、1985年のピーク時の半分になってしまった。一方、テキサス州の生産量は、過去3年で倍増し、所得を押し上げた。経済分析協会によれば、過去3年間の所得増加という観点でみると、ミッドランド市がもっとも早く成長している都市だ。そしてその近くにあるオデッサ市が第2位だ。2008年から2012年の間の個人所得の増加率は、ミッドランド市が8.05%、オデッサ市が4.48%であるのに対し、サンノゼ市は4.48%、ロサンゼルス市は1.81%だ。3月の失業率は、オデッサ市の3.2%に対し、サンノゼ市は6.8%、ロサンゼルス市は9.7%だ。」
「こうしたカリフォルニアの悪い状況が、最も如実に現れているのがロサンゼルス市だ。冷戦後に航空機産業が無くなって以来、力を取り戻していない。1990年以降、その雇用力は3.1%も落ちてしまった。デトロイトの2.8%減少よりも、減少幅が大きいのだ。ダラス、ヒューストン、サンアントニオでは、その間に、雇用は50%以上も伸びた。」
「ミッキー・カンター、グレイ・デービス、ヒルダ・ソリスといった民主党の大物が代表を務めるロサンゼルス2020コミッションという団体がある。この団体の報告書によれば、ロサンゼルスは、1980年から2010年の間に百万人人口が増えたが、16万5千の職を失った。ロサンゼルスの貧困率は17.6%で、全米のいかなる都市よりも高い。レポートはまた、ロサンゼルスは、サンパウロの様な発展途上国に典型的にみられる『バーベル経済』と言われるものを築き上げた。そこでは、上流階級と貧困階級だけが増加し、中間階級が毎年縮小し続ける。」
「これは、この町の産業が内部爆発を起こし、中間階級が血を流しているという事実を示している。ノースロープグラマンは、その本社を、センチュリーシティからバージニア州ウェストフォールチャーチ市へ移した。レイシオンは、その宇宙航空システムを、エル・セグンドからテキサス州マキニー市へ移した。」
「2011年以降、24社以上の企業がカリフォルニアからテキサスへ移動した。例をあげれば、タイタン研究所、ぜリス薬品、スーパーコンダクターテクノロジー、パシフィックユニオンファイナンシャル、メッドロジックス等。また、ロク、パンドラ、オラクル等はテキサス州で拡張した。テックアメリカファウンデーションによれば、2012年にハイテク製品の輸出で、テキサス州はカリフォルニア州を凌駕した。来年に予定されているパナマ運河の拡張は、カリフォルニアに残されている競合優位性を更に弱めることになる。」
「何人かの人は、シリコンバレーは繁栄してるじゃないかというかもしれない。確かにその通りなのだが、その繁栄は煮えたぎる程のものではない。失業率は、セントラルバレーで13%、南カリフォルニアエンパイアで9.4%、ロサンゼルス大都市圏で8%だ。ロサンゼルス大都市圏には、ウェストサイドやオレンジ・カウンティといった上流階級が住む町が含まれているのに。一方、ナッシュビル大都市圏の失業率は5.4%、ダラスでは5.3%だ。」
「ブラウン知事は、再選キャンペーン中だが、カリフォルニアから中間層の職が逃げていくことをそれ程問題にしていない様に見える。『幾つかの問題はある。規制や税金で小さな問題が沢山ある。』と知事は月曜日に述べた。『しかし、頭の良い人たちは、どの様に解決するかを知っているのだ。』カリフォルニアの問題は、その頭の良い人たちが知っているのが、カリフォルニア以外の場所をより良くすることということだ。」