Saturday, May 31, 2014

日本の雇用者は賃金を多く払うことを避けている【A9面(国際面)】

日本の労働者不足、特に3Kといわれている産業での労働者不足が深刻で、これがアベノミクスの足を引っ張るかもしれないという記事。国際面に掲載された。

この記事は、次の様な書き出しで始まる。
「ウエノユウイチは、彼の勤務するトラック運送業のために、もっと多くの運転手を雇いたいと思っているが、賃金を上げることは出来ない。」
「日本経済が昨年回復しだして以来、ウエノさんはコンビ二やファストフードの店への供給の需要が高まってきているのを感じている。」
「ウエノさんが勤務する会社は、名古屋の郊外にあり、116台のトラックを保有しているが、最近料金を10%値上げした。」
「しかし、シニア・マネジャーであるウエノさんは、十分な労働者を確保できていない。多くの若い日本人は、運送業に興味を失っている。利益が少ないので、賃金を上げて労働者を確保するのは不可能だと彼は言う。そのかわりに、彼は社員達に友人や親戚を紹介する様にお願いしている。」

長い記事なので、しばらく要約する。

日本経済はアベノミクスのおかげで回復基調にあるが、ウエノさんによれば、その恩恵を受けているのは大企業だけで、彼の企業の様な小さな企業は利益を享受していない。アベノミクスの成功はこうした中小企業が雇用を増やせるかにかかっている。

日本の失業率は3.6%と、米国の6.3%に比べて低く、仕事を探している人100名に対し、募集人員は108名で、表向きは雇用状況は極めて良く見える。確かに、トヨタや日立の様な大企業は、利益が大幅に増えたおかげて、給与やボーナスを増やしているが、一方でインフレ率が日銀目標の2%に達していないとか、4月の消費者支出が消費税の影響で前年比13%減になるなどの問題点も露呈している。

そして、企業はパートへの依存を深めている。パートは解雇しやすく賃金も安いからだ。企業は昨年度、パート従業員を5%増やしたが、一般従業員は0.7%減らした。

この記事は、次の様なコメントで締めくくる。
「労働者不足は、そうした悪い状況にさらに拍車をかける。運輸業、建設業、ホテルの様な、労働集約業種において、その傾向が顕著だ。」
「この労働者不足は、一つには、日本の高齢者が、不況の間に労働市場から抜けていったことを反映している。出生率の低下により、これを補うだけの、若者がいないのだ。」
「この労働者不足は、若者がきつく、汚く、危険な仕事をするのを嫌がることも示している。」

高齢者が増え、若者が労働集約型業種への就労を嫌がり、その他の業種でもパートばかりが増え・・・と、日本の雇用状況は表向きの数値に比べ、状況は暗い。