A10面(国際面)に日本が戦後、アジア諸国に謝罪し続けてきたことにうんざりしているとの記事を、昨年12月に中国が行った南京大虐殺の式典の写真付で、掲載している。「中国の世界」と題するレポートではあるが、内容は日本についての記事。
この記事は、「日本を普通の国にしよう。」という、安倍政権の動きは歓迎するが、「その過程で、近隣諸国を敵に回す様なやり方には反対する。」という米国の立場を明確にする。その上で、最近の日本人を覆う、「もう近隣諸国に謝罪するのはうんざりだ」という感情に一定の理解を示しつつも、そうした感情が、戦前の日本の思想美化や、近隣諸国を敵に回す様な行為の容認に、つながる危険性を指摘している。もう謝ったのだから何でもして良いという、やけっぱちな雰囲気が日本を覆っていて、そういった世論が、安倍首相の靖国神社訪問の様な、近隣諸国を敵に回すやり方を結果として助長していて、大変に危険と言っているのではないか。日本人に、やけっぱちになるのではなく、地域の安定化のために、もっと戦略的に考えて欲しいと訴えている様に感じる。
記事の冒頭、「日本は、戦後何年もの間『良き敗者』の役割を演じ、頭を下げ続け、永遠に国家として萎縮続けることを受け入れてきたが、そうし続けることにうんざりとしている。」という秋山信将のコメントを紹介している。その上で、こうした考え方は特に若年層の間に浸透していることを紹介する。
「安倍首相が国家主義者であることは間違いない。過去の日本に誇りを取り戻し、将来の日本に自信を持とうという、安倍首相のピッチは、日本の若年層の心に響いている。」
「例えば、元航空幕僚長の田母神俊雄氏が、週末に行われた東京都知事選において、20代の若者票をびっくりする程沢山獲得した。」
「田母神氏は、日本が、韓国を植民地化し、中国の一部を占領したことを賞賛し、日本はアメリカの罠にはめられて戦争に突入したとする、エッセイを2008年に発表した。それにより、彼は航空幕僚長を解雇された。」
安倍首相は普通の国になるために、靖国神社訪問を行い、近隣諸国を敵に回しているばかりでなく、米国からさえ非難されている。しかしながら、安倍首相のそうしたやり方を、若者を中心とした近隣諸国には謝罪するのはもううんざりという国民感情が支持していることを、丁寧に説明している。
「米国政府は、安倍首相の日本の憲法を見直そうという動きを広く支持している。また、日本が自国の防衛により多くの責任を持つことも歓迎する。しかし、同時に米国政府は、安倍首相の近隣諸国を敵に回す様なやり方には警鐘をならしている。」
「『我々の問題は、我々が安倍首相とはどういう人物か知らないし、ましてや彼の戦略的目標がどこにあるかも分からないことにある。』とワシントンの外交カウンシルの日本研究の上級フェローであるスミス氏は言う。安倍首相は『権力を感じている。』と彼女は述べる。『しかしながら、彼がゲームプランを持っているかどうか、分からない。』」
安倍首相には、「謝罪は十分にした、だからこれまでタブーとされてきたことをやっても大丈夫。」というやけっぱちな世論に支えられ、靖国神社訪問の様な米国からすら支持されないことをするのでは無く、もっと戦略的な動きをして欲しいとの強い思いで記事を締めくくっている。