Monday, July 3, 2017

日本の与党は地方選挙でよろめく【A6面(国際面)】

72日の東京都議会議員選挙について、WSJは翌3日の国際面で速報した。


米国のトランプ大統領、フランスのルペン国民戦線党首、Brexitを指導した英国のボリス・ジョンソン前ロンドン市長など、世界中でポピュリズムを標榜する政治化の台頭が目覚ましいが、この記事では、小池都知事をこうしたポピュリズムを駆使した政治家として位置づけ、既成政党への民衆の不満をうまく掬いあげて勝利したとしている。小池氏が国政に進出するのは東京オリンピックの後になるだろうという見方も紹介しているが、当面はあまりに既存野党が弱小なので、安倍首相の安泰が続くだろうと見ている様に読める。


**** 以下本文 ****
日本の安倍晋三首相が珍しく選挙で大敗した。この大敗により、平和憲法改正などの政治目標の達成に黒雲が立ち込め始めた。
安倍首相率いる自民党は、日曜日に行われた東京都議会議員選挙で最大会派の地位を失い、テレビの元ニュースキャスターが率いる新政党にその地位を譲った。新政党の党首は、ある意味グローバルに広がるポピュリストたちが取った手法を使った。
小池百合子氏が率いる都民ファーストの会とそのパートナー政党が、東京都議会議員選挙で127議席中78議席を獲得した。一方、自民党の獲得議席は23で、同政党にとって史上最悪の結果となった。
東京での選挙が、国政に直接影響を与えるわけではないが、2018年末までに実施される衆議院選挙を前に、安倍首相に新たな懸念をもたらした。自民党は2009年に東京都議会選で敗退した後の衆議院選挙で地滑り的な敗退を喫した。
月曜日に安倍首相はこの敗退を受け、「国民の信頼を取り戻すために努力する。」と語った。
安倍内閣は、最近起きた数々の失言やスキャンダルの影響を受け、支持率が落ちている。最近、強行採決した、テロリズム防止法も、一部の国民に言論の自由を侵害するものと受け取られ、これも支持率悪化の要因となっている。
安倍首相は、ライバルとなる政治家や官僚から、友人が商談に勝てる様に不適切な影響力を行使したと非難されているが、そうした非難を繰り返し否定している。
こうした不利な状況にはあるものの、アナリストたちは、野党が弱小であり、安倍首相は党内にしっかりした影響力を持っているため、来年の選挙後も政府を率いることになるだろうとみている。
「多くの国民は安倍首相を熱狂的に指示している訳ではないが、野党はもっと悪いと考えている。」とコロンビア大学名誉教授で長年にわたり日本の政治を観察してきたジェラルド・カーティス氏は言う。
安倍氏は、2012年に首相に2度目の選出を受け、先進国の中で、最も長くその地位にいるリーダーの一人だ。今年、自民党は党のルールを変更し、安倍首相がもう一期党首を継続出来ることとしたので、2021まではその地位を維持するだろう。
東京都議会議員選挙での敗退により、自民党内でも安倍首相の政策に異を唱える勢力が増えてくるだろう。特に、憲法改正について。5月に、安倍首相は自衛隊を憲法の中で正式に認める様に提案した。日本国憲法は、第二次世界大戦後に日本が戦争を放棄して以来、一度も変更されていない。
安倍首相は、自民党に今年中に改正案を提出する様に求めている。しかし、党内の幹部に中には、憲法改正には慎重であるべきだとする者もいる。世論調査でも憲法改正についての世論は2分されている。多くの国民が平和憲法を改正することには慎重だ。
今回の選挙で大勝したのは、元防衛大臣で、元ニュースキャスターである小池氏だ。アナリストたちは、2020年の東京オリンピックの後、彼女が国政に進出するとみている。
将来の首相候補についての世論調査の中で、安倍首相以外で名前があがるのは小池氏だけだ。しかし、彼女は将来の政治的野心について語ることを拒否してきた。
出口調査が彼女が率いる政党が大勝しそうだとの予測を示すと、小池氏は「私は感激すると同時に、責任の重さを強く感じています。」と語った。
カーティス氏によれば、日本はこれまで幾つかの西側諸国に吹き荒れたポピュリズムの嵐をうまく避けてきた。世界的に既成政党への不満が広がっているが、小池氏は、こうした不満について声をあげることになかった民衆にうまく入り込むことができた。