Saturday, February 11, 2017

日本のリーダーはゴルフ外交に望みをかける【A6面(国際面)】

10-11日に安倍首相はトランプ首相と会談したが、WSJは11日の国際面に、日本の今回の会談に向けた戦略をまとめた記事を掲載した。


安倍首相はトランプ大統領と、意見の違いについて激しく議論をするのを避け、まず人間
関係を確立することを重視していると報じている。また、トランプ大統領も異例とも言える長い時間を安倍首相のために割いて、それに応えているとしている。
また、両首脳の政策は似ているとする。トランプ大統領は移民排斥主義を取るが、日本の移民政策の厳しさはその比ではない。トランプ大統領は親プーチン大統領だが、安倍首相は山口の自分の別荘にプーチン大統領を呼ぶ程の仲だとする。
記事の最後は、いくら安倍首相が良い関係を築いても、大統領のツイッターでの一言で全てがひっくり返ると、皮肉たっぷりで締めくくっている。

***** 以下本文 *****
トランプ大統領は、日本の貿易慣習を非難し、第2次世界大戦以降日本を守ってきた安全保障の傘を縮小することをほのめかせて、日本を震撼とさせてきた。安倍首相は、衝突するのではなく、ゴルフで関係を築いたり、2人のリーダーの夫人と一緒に親睦を深めることによって、こうした脅威を避けようとしている。
世界のリーダーたちが予測不可能なアメリカのリーダーをどう扱うか頭を悩ましている中、日本のリーダーは、まず個人的な関係を確立し、その後で政策の違いについて悩むという戦略をとっている。従って、日本の政府関係者が、安倍氏の2日間にわたるトランプ大統領との首脳会談について語るとき、金曜日のホワイトハウスでの会談よりも、パームビーチのマー・ラ・ゴへの週末の訪問の方を重要視している。
「今回の訪問のハイライトで最も重要な点は、2人のリーダーがゴルフをすることでしょう。」と安倍氏の計画に詳しい人物は語る。
異例とも言える緊密さの中、トランプ大統領、安倍首相、そして夫人のメラニア、昭恵の4人は、金曜日の夜に大統領の冬場用のリゾートに一緒に飛び、首相夫妻は日曜の朝までそこに滞在する。トランプ氏と安倍氏は、昼食の前と後にゴルフをする予定だ。アメリカの大統領が1人の海外首脳のためにそれだけ多くの時間を割くことも、同じ飛行機で一緒に移動することも、極めて異例だ。
「大統領を公然と批判する他のリーダーたちと異なり、安倍氏は日本のアジェンダがトランプ氏のアジェンダにどの様にフィットするのか説明する必要があるという態度を取ってきた。」とワシントンの保守系シンクタンク・ハドソンインスティトュートの代表であり、安倍首相と親しい、ケンエス・ウエインスタイン氏は言う。「安倍氏は強力な人間関係を築く必要があると考えている。」
安倍氏の戦略は、必然からきている。日本はアメリカにその防衛を依存しており、誰であれアメリカの大統領とはうまくやっていく以外に残された道はない。
安倍首相はまた、他の国の首脳よりは、問題の多いアメリカの新大統領の懐に入っていく余裕がある。国内政治での安定性がきわめて高いからだ。安倍政権の支持率は50%以上あって安心していられるし、与党は議会で過半数を得ている。そして野党は、アメリカの民主党に比べて、細分化されているし、弱小だ。
また、2人の首脳の政策優先度やスタイルには類似点がある。トランプ氏の移民規制は他のアメリカの同盟国との間に緊張を生んでいるが、日本にとっては問題ではない。日本はアメリカ以上に移民に対しては厳しく、この2年間で受け入れた難民は55人に過ぎない。
トランプ氏はプーチン大統領に好意的だが、これも安倍氏がプーチン氏と親しい関係を築こうとしているのをフォローしているだけだ。安倍氏は12月に山口県の雪深い田舎にある彼の別荘へ案内したが、これは安倍首相版マー・ラ・ゴだ。
トランプ氏も安倍氏もアジアの海洋での中国の動きに対して厳しい態度を取っているし、台湾との緊密な関係を望んでいる。トランプ氏は日本に対して防衛費をもっと使う様に要求しているが、日本の戦後の平和主義を変えて軍隊の拡張することを政策の中心にあげる安倍首相にとっては、野党の反撃をかわす良い理由になっている。
2011年の福島での大惨事以来、日本の原発は殆ど閉鎖されたままだ。日本は、アメリカからの液化ガスの輸入を増やしたい。日本の政府関係者は、これにより、トランプ大統領の望みである、アメリカの燃料生産の増加と日本への輸出の増加の両方を叶えることが出来るとしている。日本のグローバル経済戦略は、低金利ローンの供与による海外でのインフラ開発を重視している。日本の政府関係者は、高速鉄道システムなどのプロジェクトは、公共投資を増やしたいトランプ大統領の政策にフィットするとみている。
日本の政府関係者たちは、トランプ氏が書いた本、トランプ氏について書かれた本、日本の貿易について非難した1990年のプレイボーイ誌のインタビュー記事などを読んで、準備をしてきた。彼らは、70万人のアメリカ人の雇用を生み出すとされる、日本企業が今後予定している投資のリストを示すことによって、トランプ大統領の不満を和らげようとしている。彼らは、トランプ大統領の望む、2か国間貿易協定についても話し合う準備があるという。トランプ氏が大統領就任直後に撤退を表明したTPPの方が好みだが。
金曜日に安倍氏は、麻生副大臣がペンス副大統領と新しい対話の枠組みを創ることを始めたと語った。これは、トランプ氏の2ヶ国協定にした従うことに合意したことを示唆している。
それでも、今後日本にとっては難しい話合いが待っているだろう。先週も、トランプ大統領は、日本が不当な為替操作によって円安誘導を行っているとして非難したばかりだ。そして、トランプ大統領の側近は貿易協定には、通貨操作に対する罰金規定を入れたいと語った。それは、日本が越すことが出来ない線だ。トランプ大統領はまた、日本の$600億にものぼる貿易黒字は不公正な貿易の証拠だとしている。しかし、その数値を縮小させる妙案はない。トランプ氏がいくら日本との関係は重要と繰り返そうとも、たった一つのツイッターでのつぶやきで、トランプ氏がせっかくの調和をすべてひっくり返してしまうことに、日本の政府関係者も気づいている。