WSJは10日に香港のジャーナリストの安倍首相のトランプ大統領への外交姿勢についての投稿を掲載した。
この投稿によれば、トランプ大統領の過激なコメントによって日本の関係者が動揺して右往左往している中、安倍首相は冷静で前向きな態度を失わず、トランプ大統領の選挙戦勝利直後にトランプタワーまで出かけて行って会談したり、10日にはホワイトハウスで会談、11日にはフロリダでゴルフと、自信を持って対応しているとして絶賛している。
さらに、安全保障面でも日本が果たすべき役割を着々と実行に移しており、トランプ大統領もそのことは認めざるをえないだとろうとしている。
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デーヴィット・フェイス氏の投稿
「日米同盟を希望の同盟と呼びましょう。」 安倍首相は、2015年に異例の両院合同議会でこう述べた。この詩的な表現は、繊細な、楽観的な、リベラルな、そして透明でさえあったオバマ時代の雰囲気に合わせて、日本の首脳が選んだものだ。その6週間後、トランプ氏が大統領選への出馬を表明した。
すぐにトランプ氏は、日本や他の同盟国を、貿易で不公正な態度を取っているとか、アメリカの安全保障にタダ乗りしているとか言って、非難し始めた。新しい大統領は、反グローバリズムのレールを敷き、漠然としているが、全く感傷的ではなく、実務的な「アメリカ第一」という政策を打ち出した。今日、日本の首都を訪れるアメリカ人は、トランプ氏の就任によって同盟関係は終わるのではないかという懸念を聞くことになる。
しかし、重要な例外が安倍首相だ。彼は、トランプ氏の世界をびっくりさせた選挙戦勝利に対して、素早くそして自信をもって対応し、選挙後すぐにトランプタワーでトランプ氏と歓談し、今週金曜日にはホワイトハウスでの首脳会談への招待を受けた。土曜日には、安倍氏は、トランプ大統領の所有するフロリダのリゾートであるマー・ラ・ゴで、大統領とゴルフをする最初の外国のトップとなる。
安倍氏の楽観主義は、守られるであろうし、正当化される。まず、安倍首相はオバマ政権の終焉を悔やまなかった。オバマ大統領は、アジアがアメリカにとって重要であるとし、日本との関係を強化したが、防衛費を削減し、中国の攻撃に対峙することを拒否した。日本のリーダーは、オバマ大統領がシリアで越えてはならない一線を越えてしまったことに学んだことで知られている。
新政権については、安倍首相はあまり知られていない変化に安心している。トランプ氏は最近、日本との同盟を批判することを避けている。NATOを繰り返し責めているにもかかわらず。新大統領は、中国が、海洋において勝手な行動をし、北朝鮮を甘やかしていることを非難した。さらに、海軍の増強計画を再確認し、中国を懐疑的に見ている側近を何人か雇った。こうした事実は、トランプ大統領が、中国の攻撃を阻止することに真剣であることを示している。その点では、日本はアメリカの唯一で最も重要な安全保障上のパートナーだ。
トランプ氏が責めたてた様に、日本の防衛支出が少なすぎるということはない。安倍氏は防衛費の増強に合意していて、実際過去5年間連続して増強している。日本の年間の防衛費はGDPの1%にずぎないが、この数値にはそれに加えて支出している防衛関係費が含まれていない。日本は、駐留米軍をのために20億ドル支出しているし(この額は、他のいかなる同盟国より多い。)、中国と対立しているフィリピン、ベトナムなどの国々にさらに数10億ドルを支出している。
日本は、さらに、米軍の太平洋地域での複数の建設プロジェクトに200億ドル支出している。こうしたプロジェクトの中には、日本での2つのプロジェクトや米領グアムでの1つのプロジェクトが含まれている。もし、こうした日本のプロジェクトの模型を作ってトランプ大統領に見せれば、不動産王だった大統領は簡単に説得されてしまうだろう。
さらにこれらに加えて、日本が2年前に法制化した「集団的自衛権」があげられる。もし、日本が直接攻撃されていなくても、日本軍は、例えば北朝鮮のミサイル発射や、中国の攻撃に対抗している米軍を助けることが出来る。従って、昨年、トランプ大統領は、日本はアメリカが攻撃されても、家でゆっくりしてソニーのテレビを見ているとして非難したが、こうした嘆きはもはや時代遅れのものとなった。
さらに、日米同盟により、米軍は、韓国、台湾海峡、南シナ海などを含む「極東地域」に展開することが可能となっている。日本に駐留している50,000人の米軍兵士は、日本の防衛のために雇われた傭兵ではなく、同地域での紛争を避けるための米国にとっての最も価値のある財産なのである。駐留米軍を米国に戻すことは、戦略的な混乱を招くし、余計に費用がかかることになる。
さらに例をあげれば、先週のハワイでのドラマティックなシーンを思いだして欲しい。米海軍のジョン・ポール・ジョーンズ号は、最新鋭のSM-3 Block 1A迎撃ミサイルをテスト発射した。このシステムは、アメリカと日本が共同開発したもので、北朝鮮の中距離弾道ミサイルなどに対抗させることを目的にしたものだ。もし、トランプ大統領が、ミサイル防衛を増強したければ、日本の援助が非常に重要だ。
こうしたいかなる事実も、トランプ、安倍両氏の間の調和を保障するものではない。最も楽観的な人でも、貿易については対立があるとみている。これに対して安倍首相はデータで対抗しようとして準備をしている。日本の貿易黒字に占めるアメリカの割合は、80年代には40%を占めていたが、いまは14%を占めるにすぎない。更に重要なことは、安倍首相が日本企業のアメリカへの投資計画を数値化したことだ。理想的には、安倍首相は、アメリカのシェールガスをもっと購入したいと考えている。その最初の出荷分が先月到着した。また、日本経済の自由化をさらに進めるであろう2国間での自由貿易交渉についても前向きだ。
多くの日本人は、反対にトランプ氏に対する不安を高めている。彼があまりにも攻撃的に北朝鮮と対峙したり、台湾に関する「一つの中国」政策を変更したりするのではないかと心配しているのだ。しかし、彼らは、アメリカが中国の提案を受け入れてしまって、台湾、日本、その他の国々を売り渡してしまうのではないかとも心配している。
最近のマティス国防長官やティラーソン国務長官の言動がこうした心配を少し和らげてはいるが、トップ同士の会談が成功したとしても、こうした心配が完全に無くなることはないだろう。しかし、トップ会談の成功は、安倍氏がトランプ氏と早期にそして頻繁に面会たという熱意を示すことになるだろう。
安倍首相は、ここ10年の首相の中で、最も戦略的な大志をもっている。そして彼は、地域の安全保障という最も重要な問題について、彼とトランプ大統領が目と目を合せて話し合えるか疑っている。さらなる発表がない限り、希望の同盟は続くことになるだろう。
(投稿したフェイス氏は、香港ベースの雑誌編集者)