Tuesday, February 28, 2017

*** 2月のまとめ ***

2月にWSJに掲載された日本関係の記事は15件。2016年の1月当りの平均が9.6件、2017年1月が12件だったので、かなり多かった
テーマ別では、政治関係が10件、経済関係が3件、社会関係が2だった。

政治関係では、2月3日のマティス国務長官の来日が2件、2月10-11日の安倍首相の訪米が実に8件だった。マティス国防長官の来日は、4日に速報した後、7日の社説で取り上げた。安倍首相の訪米については、4日、7日、10日に計4件もの事前記事を掲載、10日には香港のジャーナリストによる事前の論評を掲載、11日には2件の会談速報記事を、更に13日には社説を掲載した。異例ともいえる力の入れようだ。

経済関係では、1日に日米欧でデフレ脱却の兆しがあるという楽観的な記事を出しておきながら、27日には日銀の金融緩和政策は失敗に終わり日本はデフレから脱却出来ないという悲観的な記事を掲載した。9日には、社説で、円の上げ下げに一喜一憂するのはおかしいとの主張を展開した。

社会関係では、4日に、1月22日に亡くなられたナムコ創設者中村雅哉氏について取り上げ、25日には、24日に初めて行われたプレミアムフライデーについて取り上げた。

掲載箇所では、1面が2件、社説が3件、専門家投稿欄が1件、死亡記事面が1件、国際面が8件だった。

Monday, February 27, 2017

日本の過激な金融緩和の失敗【A1面】

WSJは、228日の国際面で、日銀の金融政策は失敗に終わったというショッキングなニュースを1面に掲載した。



この記事によれば、日銀は国民の消費を増やすことを目的に金融緩和策を続けてきたがバブル崩壊後に生まれた世代はデフレしか知らないので将来に悲観的でやる気も無く、彼らに対して幾ら金融緩和を行っても、消費を増やさない。たまに、やる気のある若者が一念発起して起業しても、マイナス金利で利益を確保出来ない銀行は、担保を持たない若者には貸し渋るので、やる気があっても若者は起業すら出来ない。日銀の金融緩和政策のもう一つの目的は、銀行の貸出額を増やすことにもあったはずなので、皮肉な話だ。

***** 以下本文 *****
日本の行け行けの1980年代に、シバタヒロミさんは一月分の給与を全て投じてカシミアのコートを購入し、数回着ただけで、後は着ないといったことをやっていた。今日、彼女の娘さんにとっての楽しい買い物とは、県庁所在地である静岡にある母親のクロゼットを漁ることだ。
「私の持っている服の1/3が母親からのおさがりです。」と東京に住む26歳のシバタナオコさんは言う。112マイルの里帰り費用を節約するために、彼女はかつて日本の繁栄の象徴であった新幹線ではなく、バスに乗る。」
世界では、中央銀行が、「低金利やマイナス金利」と「成長を加速させ価格下落を防ぐための刺激策」に依存する時代が長く続いてきたが、アメリカはそうした時代から世界に先駆けて抜け出そうとしている。連邦準備銀行はアメリカの金利を上昇させ、欧州中央銀行は刺激策の緩和を検討している。一方で、日本は完全に行き詰まっている。超低金利による過激な実験を長期間にわたって行ったにもかかわらずだ。バブル崩壊から四半世紀が経過し、「経済不振」「低迷する賃金」「価格上昇ではなく価格低下が継続するデフレ」しか知らない、節約世代が成人を迎えた。
デフレは継続するという考えが非常に強く浸透してしまい、それが金融政策に対する大きな障害となってしまっている。これは、同様の道を進む他の国々にとっての教訓でもある。
「デフレマインドを変えるのは、過激な政策をもってしても、難しい。」とHSBCのアジア経済の共同代表であるフレデリックニューマン氏は言う。「日本は落ち込んだ状態にとどまり、それは今後何年も続くだろう。」
日本で中央銀行による景気刺激策が開始されてからほぼ4年が経過した。この政策では、何兆円もの紙幣が印刷され、金利はマイナスとなった。今世界で行われている政策の中で最も過激なものだろう。日銀の黒田晴彦総裁による、ショックとサプライズの景気刺激策は、20134月に開始されたが、暫くの間成長と価格上昇が見られた後、萎んでしまった。日本は昨年はデフレ状態に陥った。最近では、インフレ率は、ほぼ0%に低迷している。
11月には黒田氏は2%のインフレ達成時期を遅らせた。これは、彼がアイデアが尽きたことを認めたのと同じだ。彼は、昨年、幾つかのスピーチの中で、非常に強く刻まれたデフレマインドによって、価格や賃金が上昇するという希望尾が萎み、その結果金融政策の効果が限定的なものとなったと述べた。黒田氏にコメントを求めたが、スポークスマンを通じて拒否してきた。
日本のインフレ率はここ数ヶ月ゼロを超えているが、エコノミストによれば、これはドナルトトランプ氏が大統領に選出されたことや、ドル高、原油高が影響しているもので、日本の経済ファンダメンタルが強くなったことによるものではない。日本が強い成長と価格上昇に戻るとみている人は殆どいない。
デフレは、経済成長を阻害するという意味で、経済にとて悪い影響を与える。企業の収益がは下がるので、彼らは、投資を控え、賃金をカットし、採用を止めてしまう。経済の先行きが不透明な中で、消費者は支出を止めてしまうので、負のスパイラルが更に推進される。
超低金利を導入した背景には、インフレを起こすことにより、消費者や企業に支出を促そうとう考えがある。しかし、デフレマインドが非常に強いので、消費者や企業は、どんなに中央銀行が金利を下げても、支出を控えたままだ。実際のところ、金利を下げたことが、逆に消費者の不安を煽り、「支出する」のではなく、「経済状況が悪化した際に備えて貯蓄する」という現象を招いた。
中央銀行が即効性のある対応をする時代にあっても、ここまで過激なことをやった国は日本以外にいない。日銀は、1999年に金利をほぼゼロまで引き下げたが、これは欧州やイギリス、米国が2008年の経済危機に対応するために導入するよりずっと前だった。2001年には日本は金融市場にキャッシュを投入し、インフレと成長を喚起しようとしたが、これは量的緩和と呼ばれ、のちに西側諸国でも導入された。
黒田氏は、2013年に大量のキャッシュを金融市場に投入し始めた。その額は年間7,000億ドルに及んだ。多くの投資家が、ハイパーインフレが起き、資産バブルが起きることを懸念した。しかし、それは起きなかった。昨年、日銀は欧州中央銀行に追随してマイナス金利を導入した。銀行がお金を借りないと損する様にして、銀行にもっとお金を借りさせようとする過激な試みだ。
日本の今日の苦境は、1980年のバブル期には考えられなかった。その頃、日本の大企業はニューヨークのロックフェラーセンターの様な有名不動産を買いあさり、東京の不動産価格は世界で最も高かった。日本は金利を上昇させていったが、それが不動産と株式市場のバブル崩壊へとつながった。
それ以降、年間成長率は1%以下となり、周期的にリセッションを経験した。1990年代後半には価格下落も始まった。経済規模では、中国が日本を抜いて第2となり、日本は第3位に下落した。日経株式市場の平均は、1989年のピーク時の半分だ。不動産価格は広い範囲で、ここ4半世紀下落を続けている。
冷凍デザートメーカである赤城乳業は、昨年25年ぶりに9セントの値上げを行い、謝罪広告を出した。日本の企業には、約2兆ドルのキャッシュが眠っている。こうしたお金は投資にまわるべきだと政府要人は考えている。
デフレの世界は、価格下落が始まってから成長した20歳から34歳までの2,000万人に頭に深く刻まれている。賃金が上昇することや、株価があがることや、銀行が預金に対して魅力的な金利を支払ったりすることは、彼らにとっては単なる仮説にすぎない。彼らは、今日買ったものが、明日にはもっと安くなっている世界に生きてきた。彼らは本能的に安全な行動を取るし、節約家だ。
彼らは親の世代の消費主義を否定する。ルームメイトとグループホームに住む者もいる。日本では新しい現象だ。そして、3ドルの牛丼をたべる。何かにお金を使うとすれば、旅行だ。買ったものの価値は下がって行くが、経験の価値は下がらない。
戦後の貧困の時代を経験した高齢者世代にとっては、今の若者世代のやる気のなさが心配だ。日本には「ニート」という言葉があるが、これは学校にも行かず、働きもせず、職業訓練もしない若者のことを表現する言葉だ。また、「フリーター」というのは、パートや契約社員の様な、安定しない職についている若者のことを言う。「パラサイトシングル」は親元を離れない若者のことだし、「草食男子」とは女性に興味を示さない若い男性のことだ。
「彼らの問題は、彼らの暮らしがあまりにも快適なことにある。」と元経済財政担当大臣の竹中平蔵は言う。「彼らの期待は低い。我々は格好良い車を持ちたいと思ったものだが、彼らはそうしたものには興味がない。」
多くのエコノミストが、日銀の2013年の景気刺激策は、低成長と価格下落のダウンスパイラルから日本を脱出させるために十分な対策だと考えた。黒田氏と安倍内閣の官僚たちは、刺激策実施直後のインフレ傾向や成長が、この刺激策が最終的には機能することを示していると考えた。金融政策は、2014年の消費税増税によって邪魔されるまでは機能していたと言う人もいる。
10月の日銀の世論調査によれば、来年に支出を増やすとした回答者は全体の5%に過ぎず、実に48%が支出を削減すると回答した。
香川県の公務員であるカメヤマケイタさんは、ここ数年間40,000ドルの給与の約25%を貯蓄し、遂に長い間交際してきたガールフレンドと結婚した。かれは、母親と一緒に住み、古いホンダ車を運転し、殆ど買い物はしない。中央銀行の経済刺激策は、カメヤマさんの消費行動に殆ど影響を与えない。彼は、未だに彼のお金を普通預金に塩漬けにしている。彼は、日本の長期にわたる経済不振により年金を受け取れないのではないかと恐れているし、彼の母親の面倒を見るために十分なお金がないのではないかと心配している。20歳から34歳の人口に比べて、60歳以上の人口が倍になっている日本では、こうした心配が増大している。
彼は、マイナス金利の中で、殆ど利子のつかない、銀行口座が唯一の貯蓄方法だと考えている。香川県最大の銀行である百十四銀行の金利は0,05%で、1995年以降ずっと1%以下のままだ。
「香川県の人々は貯蓄をするのが好きです。」とカメヤマさんは言う。「日銀が人々にお金を使わせようと必死になっているのは知っています。でも、私は財布を開かないだろうと思います。」
多くの日本の若者が節約しているのは、お金が無いからだ。低賃金で福利厚生の無い非正規従業員の数が増えている。
「多くの企業は成長していないし、解雇出来ない多くの高齢者を抱えている。」とエコノミストでリサーチ会社ジャパンマクロアドバイザーズ創設者の大久保豚史氏は言う。「従って、若者を雇う余裕は無い。」
「自動車、ビール、化粧品の会社は、若者向けの広告を減らし、代わりに退職者向けの広告を増やしている。」と博報堂の若者向けマーケティングを担当するハラダヨウヘイ氏は言う。「親と子供の役割が反対になっている。バブル世代の親たちは未だに子供の様に暮らし、格好良い車を買いたがる。バブル後に生まれた子供たちは親たちの無駄遣いを心配している。」と彼は言う。
サイトウタカシさん(23歳)は未婚の起業家だ。2015年に彼が起業を決断した時、彼は東京のグループアパートに住んでいた。彼のアイデアは、沢山の服を着たいけど、服を買うお金のない女性をターゲットにしたオンラインでの服のレンタル会社だ。45ドル払えば、月に3着の服がレンタル出来る。
サイトウさんは、日銀は銀行の貸出増を誘導するために低金利政策を取っているのだから、小さいビジネスでも簡単にお金が借りられると思っていた。ところが、そうではなかった。
彼は、小さなビジネス向けのローンを行うために国が設立した日本政策金融公庫に行き、$200,000のローンを要求した。沢山のお願いをさせられた割には、彼が得られたのは$50,000以下だった。1年後、ビジネスが大きくなったので、ローンの増額を依頼したが、断られた。この件について、日本政策金融公庫にコメントを求めたが断られた。
銀行アナリストは、日本の銀行はより保守的になっていると言う。低金利のせいで利益が減少しているので、担保を持たないスタートアップ企業に対しては及び腰にならざるを得ない。マイナス金利になった後の11ヶ月間、日本政策金融公庫のローンポートフォリオは縮小した。
斉藤さんは貯金を取り崩し、家族からお金を借り、今はベンチャーキャピタルに望みをかけている。
日本の衣料ブランドであるユニクロは、デフレの時代にあって、ヒットを飛ばしている。低価格の衣料が、節約家に受けているからだ。しかし、2015年にユニクロが値上げをした際には、お客がユニクロの購入を止めた。ユニクロは仕方がなく、再び価格を下げて、売上を戻した。
ユニクロの創設者である柳井正氏は、マイナス金利や量的緩和などの政策は、消費者を心配させるだけだと言う。「それは、未来に対する不安を抱かせる。」と彼はインタビューの中で発言した。「彼らはマイナス金利を止めるべきだ。ばかげている。」
JPモルガンチェースのエコノミストであるカンノマサアキ氏は、デフレマインドが深く刻まれているのは当然のことだと言う。25年間も賃金が変わらないのだから、若者は将来収入が増えるということを信じていない。
エコノミストの中には、政府は更なる財政政策と金融緩和を行うべきだと主張する人もいる。一方で、景気刺激策の結果、日本はGDP230%という大きな国債を抱えており、このままでは経済崩壊につながるという人たちもいる。
東京に住むシバタさんは、母のクロゼットを漁っているが、最近、職業斡旋の仕事を週3回に縮小した。そのために、彼女は以前の半分の賃貸料で済むアパートに引っ越し、買い物も止めた。彼女は、自分のキャリアのために時間を使うことに意味を見いだせなくなったのだ。代わりに、彼女はモダンダンスを楽しんでいる。
「企業に自分の時間を吸い取られてしまうのは、割に合わないと思います。」とシバタさんは言う。「だって、幾ら働いても、昇給は期待できないのだから。」

Saturday, February 25, 2017

日本は労働者に早く帰宅する様に促す【A6面(国際面)】

224日に実施されたプレミアムフライデーについて、WSJは翌日の国際面で速報した。



高橋まつりさんの自殺をきっけかに、労働時間見直しの動きが強まり、昨年の山の日導入に続き、今年はプレミアムフライデーが導入された。労働者が勤務時間を減らせば、「労働効率が上がり、消費も増え、過労死も減る。」と良いことづくめだが、それでも日本の労働者は働くことを止めないとしている。
 私の経験では、米国では、プレミアムフライデーはないが、それでも金曜日は午後2時頃からラッシュアワーが始まる。それぞれの労働者がボスと交渉して、早く帰宅するからだ。一方、日本の労働者はボスから早く帰る様に促されても、帰らないのは何故だろう?

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金曜日は、日本で最も重要な企業グループのトップにとって、これまでとは違った一日だった。
日本経団連の榊原定征氏は、午後2時に退社し、紫色のスポーツジャケットに身を包み、妻の恵美子さんとデパートに買い物に出かけた。この夫妻が、平日に一緒に買い物に出かけるのは、結婚以来初めてだ。4時半には、夫妻はシャンパンをのみながらオードブルを楽しみ、夜のダブルデートに備えていた。
何故、彼はその様な娯楽に興じていたのだろうか?それは、その日が「プレミアムフライデー」だったからだ。プレミアムフライデーとは、榊原氏が会長を務める企業連合と、かれのダブルデートのパートナーである経産省の世耕弘成氏が、経済を活性化させるために創設したものだ。
彼らは、毎月最後の金曜日に、労働者を午後3時に退社させる様に企業に求めている。「この制度により、消費者は確実に消費を増やす。」と世耕氏は言う。
しかし、労働者を机から引きはがすのは、未だに殆ど不可能であるというサインが日本のあちこちで見られた
「私の夫は、もしプレミアムフライデーを取得したら、その分週末に働かなければならないと言うのです。」と37歳のナカムラミチヨさんは言う。彼女は、東京のデパートのイベントで6歳の息子と共に、午後3時に足湯を楽しんでいたが、そこに銀行員の夫の姿はなかった。
プレミアムフライデーの計画は、201512月に日本最大の広告会社に勤務する24歳の女性が自殺を図ったことがきっかけになっている。当局によれば、彼女の自殺の原因は過労だ。この事件は、労働時間について国民が考えるきっかけとなった。
政治家と多くのエコノミストたちは、日本の労働者がもっとオフィスの外に出れば、経済成長を加速させるだろうとみている。勤務時間が短くなれば、効率も上がるし、消費も喚起されると彼らは言う。
警視庁によれば、2015年には、労働関係の問題で、2,159人が自殺を図った。2016年の厚生労働省の統計によれば、日本の企業のほぼ1/4が、月80時間以上の残業をしている従業員がいると言っている。
これは、政府にとって、労働者にもっと休みを取らせようとする最初の試みではない。2016年には、人々にもっとバケーションをとってもらうために、8月に山の日という新しい祝日を設定した。旅行会社であるエクスペディアによれば、日本人は調査対象の28ヶ国の中で、有給休暇の未消化日数が最大だった。

Monday, February 13, 2017

トランプのアジア外交での勝利【A16面(社説)】

10~11日に行われた、安倍・トランプ会談いついて、WSJは13日の社説で取り上げた。


トランプ大統領は9日に中国の習近平主席と電話会議をしたが、安倍首相の米国訪問は中国のリーダーとの電話会議に埋もれることなく大きく取り上げられ、その意味で安倍首相の訪問は成功だったとしている。トランプ大統領も手放しで安倍首相を歓迎したとしている。

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大統領は、アジア外交に多忙な数日をおくった。木曜日には中国の習近平主席と大統領就任後初の電話会議を行い、金曜日には日本の安倍首相とホワイトハウスで首脳会談を行い、土曜日には安倍首相と27ホールのゴルフをし、その後北朝鮮のミサイル発射について共同記者会見を行った。これまでの海外首脳との会談と異なり、今回は、節制、事前の計画、同盟国に対する尊敬が感じられた。
習主席との会談からのニュースは、トランプ大統領が、台湾に関して「一つの中国政策」を堅持する姿勢を示したことだろう。以前は、この問題について、貿易などの問題と共に、中国と交渉中だと言ってきた。マスコミの友人達は、これはトランプ大統領が「張り子の虎」であることを如実に示しているとしている。中国の政府筋は、トランプ大統領がその態度を和らげない限り、習主席はトランプ大統領と話すつもりはないと言ってきたから。しかし、トランプ大統領の豹変ぶりは、それほど驚くべきことでもないし、ドラマチックでもなかった。
オバマ大統領は、台湾が中国の一部であるとする中国の「一つの中国政策」を認めるのではなく、台湾の地位に関する中国・台湾条約を認めるという米国の政策を認めた。これにより、米国は、自らこの問題について決断する権利と、台湾の人々の同意による平和的な解決を求める権利を維持した。ここ数十年そうであった様に、このことは、これまで通り、合意してないということに合意したに過ぎない。米国は、独立国であると正式に認める方法以外の方法で、台湾を支援し続けるだろう。
また、12月の蔡英文大統領の電話会議で確認した通り、台湾との経済、外交、軍事分野での連携強化を進めることを止めることにもならないだろう。逆に、トランプ大統領が、台湾問題の様なセンシティブな問題に、中国と対決し地域の安全を損なう様なリスクは冒さないと示したことによって、台湾、日本、その他の同盟国から台湾問題に対するサポートを得られるだろう。
さて、トランプ大統領が、驚くほど友好的にもてなした安倍首相だが、中国のリーダー達に埋もれることなく、アジアを支配すようという大志を抱く中国に対して、その対抗軸なりうるという存在感を適切に示していた。「我々は、とてもとても良い関係にあるし、とてもとても良い相性だ。」とトランプ大統領は共同記者会見で述べた。「私が、安倍首相を車に出迎えた時、握手をした。でも、自然に望むがままに、彼を抱きしめていたんだよね。」このコメントは、選挙中に日本を米国にタダ乗りする同盟国と批判していたことからは、180度の大転換だ。
「米国は、日本の安全保障にコミットしている。」とトランプ大統領は高らかに宣言した。ここ数年、中国の民間船や政府船が日本が実行支配する尖閣諸島沖に集まっているが、マティス国防長官は、日米安保条約が尖閣諸島をカバーすることを認めた。トランプ大統領は、このマティス氏の立場を追認した。貿易については、ペンス副大統領と麻生副総理が2国間のワーキンググループを率いて検討することで合意した。
北朝鮮は、土曜日に中距離弾道ミサイル・ムスダンを打ち上げ、日米同盟に対抗する意思を示した。これは、トランプ氏が大統領に就任してから初めての発射だ。北朝鮮が大陸横断ミサイルの打ち上げを成功させる可能性は低いにしても、この発射は、北朝鮮の核開発があらゆる面で進展していることを印象つけた。トランプ大統領は、安倍首相とゴルフをして、安倍夫妻とキャンドルの灯る中会食をした後すぐに、談話を発表した。「アメリカは、偉大な同盟国である日本を100%サポートする。」聞いて、聞いて。

Saturday, February 11, 2017

日本のリーダーはゴルフ外交に望みをかける【A6面(国際面)】

10-11日に安倍首相はトランプ首相と会談したが、WSJは11日の国際面に、日本の今回の会談に向けた戦略をまとめた記事を掲載した。


安倍首相はトランプ大統領と、意見の違いについて激しく議論をするのを避け、まず人間
関係を確立することを重視していると報じている。また、トランプ大統領も異例とも言える長い時間を安倍首相のために割いて、それに応えているとしている。
また、両首脳の政策は似ているとする。トランプ大統領は移民排斥主義を取るが、日本の移民政策の厳しさはその比ではない。トランプ大統領は親プーチン大統領だが、安倍首相は山口の自分の別荘にプーチン大統領を呼ぶ程の仲だとする。
記事の最後は、いくら安倍首相が良い関係を築いても、大統領のツイッターでの一言で全てがひっくり返ると、皮肉たっぷりで締めくくっている。

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トランプ大統領は、日本の貿易慣習を非難し、第2次世界大戦以降日本を守ってきた安全保障の傘を縮小することをほのめかせて、日本を震撼とさせてきた。安倍首相は、衝突するのではなく、ゴルフで関係を築いたり、2人のリーダーの夫人と一緒に親睦を深めることによって、こうした脅威を避けようとしている。
世界のリーダーたちが予測不可能なアメリカのリーダーをどう扱うか頭を悩ましている中、日本のリーダーは、まず個人的な関係を確立し、その後で政策の違いについて悩むという戦略をとっている。従って、日本の政府関係者が、安倍氏の2日間にわたるトランプ大統領との首脳会談について語るとき、金曜日のホワイトハウスでの会談よりも、パームビーチのマー・ラ・ゴへの週末の訪問の方を重要視している。
「今回の訪問のハイライトで最も重要な点は、2人のリーダーがゴルフをすることでしょう。」と安倍氏の計画に詳しい人物は語る。
異例とも言える緊密さの中、トランプ大統領、安倍首相、そして夫人のメラニア、昭恵の4人は、金曜日の夜に大統領の冬場用のリゾートに一緒に飛び、首相夫妻は日曜の朝までそこに滞在する。トランプ氏と安倍氏は、昼食の前と後にゴルフをする予定だ。アメリカの大統領が1人の海外首脳のためにそれだけ多くの時間を割くことも、同じ飛行機で一緒に移動することも、極めて異例だ。
「大統領を公然と批判する他のリーダーたちと異なり、安倍氏は日本のアジェンダがトランプ氏のアジェンダにどの様にフィットするのか説明する必要があるという態度を取ってきた。」とワシントンの保守系シンクタンク・ハドソンインスティトュートの代表であり、安倍首相と親しい、ケンエス・ウエインスタイン氏は言う。「安倍氏は強力な人間関係を築く必要があると考えている。」
安倍氏の戦略は、必然からきている。日本はアメリカにその防衛を依存しており、誰であれアメリカの大統領とはうまくやっていく以外に残された道はない。
安倍首相はまた、他の国の首脳よりは、問題の多いアメリカの新大統領の懐に入っていく余裕がある。国内政治での安定性がきわめて高いからだ。安倍政権の支持率は50%以上あって安心していられるし、与党は議会で過半数を得ている。そして野党は、アメリカの民主党に比べて、細分化されているし、弱小だ。
また、2人の首脳の政策優先度やスタイルには類似点がある。トランプ氏の移民規制は他のアメリカの同盟国との間に緊張を生んでいるが、日本にとっては問題ではない。日本はアメリカ以上に移民に対しては厳しく、この2年間で受け入れた難民は55人に過ぎない。
トランプ氏はプーチン大統領に好意的だが、これも安倍氏がプーチン氏と親しい関係を築こうとしているのをフォローしているだけだ。安倍氏は12月に山口県の雪深い田舎にある彼の別荘へ案内したが、これは安倍首相版マー・ラ・ゴだ。
トランプ氏も安倍氏もアジアの海洋での中国の動きに対して厳しい態度を取っているし、台湾との緊密な関係を望んでいる。トランプ氏は日本に対して防衛費をもっと使う様に要求しているが、日本の戦後の平和主義を変えて軍隊の拡張することを政策の中心にあげる安倍首相にとっては、野党の反撃をかわす良い理由になっている。
2011年の福島での大惨事以来、日本の原発は殆ど閉鎖されたままだ。日本は、アメリカからの液化ガスの輸入を増やしたい。日本の政府関係者は、これにより、トランプ大統領の望みである、アメリカの燃料生産の増加と日本への輸出の増加の両方を叶えることが出来るとしている。日本のグローバル経済戦略は、低金利ローンの供与による海外でのインフラ開発を重視している。日本の政府関係者は、高速鉄道システムなどのプロジェクトは、公共投資を増やしたいトランプ大統領の政策にフィットするとみている。
日本の政府関係者たちは、トランプ氏が書いた本、トランプ氏について書かれた本、日本の貿易について非難した1990年のプレイボーイ誌のインタビュー記事などを読んで、準備をしてきた。彼らは、70万人のアメリカ人の雇用を生み出すとされる、日本企業が今後予定している投資のリストを示すことによって、トランプ大統領の不満を和らげようとしている。彼らは、トランプ大統領の望む、2か国間貿易協定についても話し合う準備があるという。トランプ氏が大統領就任直後に撤退を表明したTPPの方が好みだが。
金曜日に安倍氏は、麻生副大臣がペンス副大統領と新しい対話の枠組みを創ることを始めたと語った。これは、トランプ氏の2ヶ国協定にした従うことに合意したことを示唆している。
それでも、今後日本にとっては難しい話合いが待っているだろう。先週も、トランプ大統領は、日本が不当な為替操作によって円安誘導を行っているとして非難したばかりだ。そして、トランプ大統領の側近は貿易協定には、通貨操作に対する罰金規定を入れたいと語った。それは、日本が越すことが出来ない線だ。トランプ大統領はまた、日本の$600億にものぼる貿易黒字は不公正な貿易の証拠だとしている。しかし、その数値を縮小させる妙案はない。トランプ氏がいくら日本との関係は重要と繰り返そうとも、たった一つのツイッターでのつぶやきで、トランプ氏がせっかくの調和をすべてひっくり返してしまうことに、日本の政府関係者も気づいている。

日本の首相は魅力攻撃を開始【A1面】

安倍首相は、10日にトランプ大統領とホワイトハウスで会談したが、WSJはこのニュースを1面で写真入りで取り上げた。


この記事の見出しは、Japan's prime minister launches a charm offensive であるが、`charm offensive (魅力攻撃)` という言葉は、「誰かが、みずからに対して問題を引き起こしている人々に対して非常に友好的な態度を取っていること」を批判的に表現する場合に使うそうで、「おべっか使い」といったニュアンスの言葉らしい。

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歓迎の挨拶:トランプ大統領は、金曜日にホワイトハウスの前で、日本の安倍首相を出迎えた。2人は、貿易や北朝鮮について議論した。土曜日は、パームスプリングにあるトランプ大統領が保有するマー・ラ・ゴリゾートで過ごす予定だ。

Friday, February 10, 2017

トランプ大統領は日本の首相にアジアでの同盟を再確認する【A6面(国際面)】

10日に安倍首相がトランプ大統領と会談するが、WSJは会談当日の国際面で会談の意義などを紹介する記事を掲載した。


イギリスのメイ首相が、トランプ大統領と会った最初の海外首脳であり、安倍首相は2人目となるが、安倍首相への対応はメイ首相への対応を越え、破格の扱いだとしている。

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トランプ大統領は、金曜日に予定されいる日本の安倍首相のホワイトハウス訪問を、アジア太平洋地域の同盟国に対して、トランプ政権が同地域の同盟国を重要視しているというということを再確認する機会にしたいと考えている。トランプ大統領のこれまでの発言によって、同盟国は彼のサポートに対する疑念を抱いている。
「新大統領は、同盟をアメリカと世界にとっての安全保障上の要と考えており、安倍首相の滞在中に、アジアの同盟国が、地域の安全保障と繁栄にとって重要と認識していることを明確にするだろう。」と政府高官は述べた。
高官は「トランプ大統領の同盟国へのコミットメントに対する疑問を、完全に払拭するには時間がかかるだろう。」とも述べた。
トランプ大統領は、選挙運動中に、アジアでの米軍のプレゼンスを低下させ、日本や韓国に核兵器を保有させ、彼らの役割を増強させることにより、アメリカのここ数10年の外交政策を変更すると述べたが、そうした発言から生じた不安を払拭するために努力が払われている。
トランプ氏の選挙戦の勝利は、特に日本において、第二次世界大戦後の平和と繁栄を保障してきた国際秩序が乱されるのではないかという心配を巻き起こした。
アメリカが、最大の輸出先であり、安全保障を与えてくれる国家であるという意味で、日本ではそうした危険が高い。日本には50,000人の米軍兵が駐留しており、アジアで最大だ。
アメリカがアジアから手を引くのではないかという心配は、1月にトランプ氏がTPPから撤退すると決定したことにより、さらに高まった。TPPは、12ヶ国にによる貿易協定で、この12ヶ国には日本を含む7ヶ国のアジア諸国が含まれる。
最近、国防長官のジム・マティスが日本を訪れ、日米関係の重要性を再確認した。彼は、新政権は、北朝鮮の核増強プログラムや中国の軍事強化に対応するために、日本を重要なパートナーとみていると述べた。日本の高官によれば、マティス氏は、日本の同盟への貢献を絶賛し、米軍の駐留費問題には言及しなかった。
マティス氏のコメントは日本の緊迫した雰囲気を和らげたが、日本の政府関係者は、トランプ大統領とその側近との間の矛盾した見解について、非常に気にしている。従って、トランプ大統領自らが、安倍首相に対して日米関係が重要であると述べることが、非常に重要だ。
安倍氏の訪問は、トランプ氏が大統領に就任して、2件目の海外首脳による訪問だ。最初は、1月末のイギリスのメイ首相による訪問だった。カナダのトルドー首相が来週の月曜日にワシントンにトランプ大統領を訪問する。しかし、日本のリーダーとの会談は、この2人よりも、広範にわたるものだ。
貿易については、この2人の首脳は、トランプ氏がTPP離脱を表明して、その代りに2ヶ国間協議をしたいと言っている中で、今後どの様な道筋があるのか話し合うだろう。
「多国間協定では、協定の最も弱い国の標準に合わせなければならなくなるが、2国間協定であれば、アメリカにとって有利な条件について交渉することが出来る。」とアメリカの高官は言う。

日本の政府関係者は、出来ればTPPを締結したいが、2ヶ国間交渉にも柔軟に対応する用意があると述べた。

大統領は安倍首相を「個人的な贈り物」としてマー・ラ・ゴで接待【A6面(国際面)】

安倍首相は、11日にトランプ大統領と、「マー・ラ・ゴ」リゾートでゴルフをするが、この接待について倫理上の疑問が出ているという記事を10日の国際面に掲載した。


マー・ラ・ゴは、トランプ大統領が経営するゴルフリゾートだ。安倍首相の滞在費等を、米国政府が払うと大統領が自分のビジネスのために国のお金を使うことになるので問題だし、日本政府が払うと憲法の規定(外国から金銭を受け取るためには議会の事前承認が必要)に払拭する。トランプ氏が自費で払ったとしても、このゴルフ外交によって、マー・ラ・ゴは注目を浴びて会員料が倍になっており、やはり問題ではないかとしている。

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ホワイトハウスは、トランプ大統領が日本の安倍首相をパームビーチのゴルフリゾートに招待すると発表した。トランプ大統領は、これは日本のリーダーへの「個人的な贈り物」だとしているが、倫理の専門家は、この旅行は誰が支払うのかということに懸念を示していた。
「これは、大統領が首相に対して行っていることだ。」と政府高官は木曜日に記者団に語った。
トランプ氏が、マー・ラ・ゴの首相の部屋について、トランプ大統領が個人的に支払うのか、無料で泊まってもらうかとの質問を受け、ホワイトハウス高官は「大統領は、滞在費用を個人的に負担する。」と答えた。
安倍氏は、金曜日にホワイトハウスを訪問し、その後、2人のリーダーは一緒にマー・ラ・ゴへ向かう。
倫理の専門家は、日本の倫理規定がそれを許すという前提で、トランプ氏が旅行費用を支払うのが最も適切な選択だと述べた。もし、日本政府が安倍首相のマー・ラ・ゴでの滞在費を支払う場合には、専門家によれば、大統領は、連邦職員は議会の承認なしに外国からお金や贈り物を受け取ってはいけないという憲法の条項に違反する。
それでも、今週末のマー・ラ・ゴへの旅行には、倫理上の疑問が指摘されている。マー・ラ・ゴは会員制クラブだが、そのメンバー料はここ数ヶ月で倍増した。トランプ大統領の今回の訪問は、リゾートにとって、ビジネスをさらに増やすことになるだろう。

木曜日に支払いにいて問われて、日本の官房長官は、安倍氏のリゾート滞在の詳細は未定だと述べた。

日米希望の同盟【A15面(専門家投稿欄)】

WSJは10日に香港のジャーナリストの安倍首相のトランプ大統領への外交姿勢についての投稿を掲載した。


この投稿によれば、トランプ大統領の過激なコメントによって日本の関係者が動揺して右往左往している中、安倍首相は冷静で前向きな態度を失わず、トランプ大統領の選挙戦勝利直後にトランプタワーまで出かけて行って会談したり、10日にはホワイトハウスで会談、11日にはフロリダでゴルフと、自信を持って対応しているとして絶賛している。
さらに、安全保障面でも日本が果たすべき役割を着々と実行に移しており、トランプ大統領もそのことは認めざるをえないだとろうとしている。

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デーヴィット・フェイス氏の投稿 
「日米同盟を希望の同盟と呼びましょう。」 安倍首相は、2015年に異例の両院合同議会でこう述べた。この詩的な表現は、繊細な、楽観的な、リベラルな、そして透明でさえあったオバマ時代の雰囲気に合わせて、日本の首脳が選んだものだ。その6週間後、トランプ氏が大統領選への出馬を表明した。
すぐにトランプ氏は、日本や他の同盟国を、貿易で不公正な態度を取っているとか、アメリカの安全保障にタダ乗りしているとか言って、非難し始めた。新しい大統領は、反グローバリズムのレールを敷き、漠然としているが、全く感傷的ではなく、実務的な「アメリカ第一」という政策を打ち出した。今日、日本の首都を訪れるアメリカ人は、トランプ氏の就任によって同盟関係は終わるのではないかという懸念を聞くことになる。
しかし、重要な例外が安倍首相だ。彼は、トランプ氏の世界をびっくりさせた選挙戦勝利に対して、素早くそして自信をもって対応し、選挙後すぐにトランプタワーでトランプ氏と歓談し、今週金曜日にはホワイトハウスでの首脳会談への招待を受けた。土曜日には、安倍氏は、トランプ大統領の所有するフロリダのリゾートであるマー・ラ・ゴで、大統領とゴルフをする最初の外国のトップとなる。
安倍氏の楽観主義は、守られるであろうし、正当化される。まず、安倍首相はオバマ政権の終焉を悔やまなかった。オバマ大統領は、アジアがアメリカにとって重要であるとし、日本との関係を強化したが、防衛費を削減し、中国の攻撃に対峙することを拒否した。日本のリーダーは、オバマ大統領がシリアで越えてはならない一線を越えてしまったことに学んだことで知られている。
新政権については、安倍首相はあまり知られていない変化に安心している。トランプ氏は最近、日本との同盟を批判することを避けている。NATOを繰り返し責めているにもかかわらず。新大統領は、中国が、海洋において勝手な行動をし、北朝鮮を甘やかしていることを非難した。さらに、海軍の増強計画を再確認し、中国を懐疑的に見ている側近を何人か雇った。こうした事実は、トランプ大統領が、中国の攻撃を阻止することに真剣であることを示している。その点では、日本はアメリカの唯一で最も重要な安全保障上のパートナーだ。
トランプ氏が責めたてた様に、日本の防衛支出が少なすぎるということはない。安倍氏は防衛費の増強に合意していて、実際過去5年間連続して増強している。日本の年間の防衛費はGDP1%にずぎないが、この数値にはそれに加えて支出している防衛関係費が含まれていない。日本は、駐留米軍をのために20億ドル支出しているし(この額は、他のいかなる同盟国より多い。)、中国と対立しているフィリピン、ベトナムなどの国々にさらに数10億ドルを支出している。
日本は、さらに、米軍の太平洋地域での複数の建設プロジェクトに200億ドル支出している。こうしたプロジェクトの中には、日本での2つのプロジェクトや米領グアムでの1つのプロジェクトが含まれている。もし、こうした日本のプロジェクトの模型を作ってトランプ大統領に見せれば、不動産王だった大統領は簡単に説得されてしまうだろう。
さらにこれらに加えて、日本が2年前に法制化した「集団的自衛権」があげられる。もし、日本が直接攻撃されていなくても、日本軍は、例えば北朝鮮のミサイル発射や、中国の攻撃に対抗している米軍を助けることが出来る。従って、昨年、トランプ大統領は、日本はアメリカが攻撃されても、家でゆっくりしてソニーのテレビを見ているとして非難したが、こうした嘆きはもはや時代遅れのものとなった。
さらに、日米同盟により、米軍は、韓国、台湾海峡、南シナ海などを含む「極東地域」に展開することが可能となっている。日本に駐留している50,000人の米軍兵士は、日本の防衛のために雇われた傭兵ではなく、同地域での紛争を避けるための米国にとっての最も価値のある財産なのである。駐留米軍を米国に戻すことは、戦略的な混乱を招くし、余計に費用がかかることになる。
さらに例をあげれば、先週のハワイでのドラマティックなシーンを思いだして欲しい。米海軍のジョン・ポール・ジョーンズ号は、最新鋭のSM-3 Block 1A迎撃ミサイルをテスト発射した。このシステムは、アメリカと日本が共同開発したもので、北朝鮮の中距離弾道ミサイルなどに対抗させることを目的にしたものだ。もし、トランプ大統領が、ミサイル防衛を増強したければ、日本の援助が非常に重要だ。
こうしたいかなる事実も、トランプ、安倍両氏の間の調和を保障するものではない。最も楽観的な人でも、貿易については対立があるとみている。これに対して安倍首相はデータで対抗しようとして準備をしている。日本の貿易黒字に占めるアメリカの割合は、80年代には40%を占めていたが、いまは14%を占めるにすぎない。更に重要なことは、安倍首相が日本企業のアメリカへの投資計画を数値化したことだ。理想的には、安倍首相は、アメリカのシェールガスをもっと購入したいと考えている。その最初の出荷分が先月到着した。また、日本経済の自由化をさらに進めるであろう2国間での自由貿易交渉についても前向きだ。
多くの日本人は、反対にトランプ氏に対する不安を高めている。彼があまりにも攻撃的に北朝鮮と対峙したり、台湾に関する「一つの中国」政策を変更したりするのではないかと心配しているのだ。しかし、彼らは、アメリカが中国の提案を受け入れてしまって、台湾、日本、その他の国々を売り渡してしまうのではないかとも心配している。
最近のマティス国防長官やティラーソン国務長官の言動がこうした心配を少し和らげてはいるが、トップ同士の会談が成功したとしても、こうした心配が完全に無くなることはないだろう。しかし、トップ会談の成功は、安倍氏がトランプ氏と早期にそして頻繁に面会たという熱意を示すことになるだろう。

安倍首相は、ここ10年の首相の中で、最も戦略的な大志をもっている。そして彼は、地域の安全保障という最も重要な問題について、彼とトランプ大統領が目と目を合せて話し合えるか疑っている。さらなる発表がない限り、希望の同盟は続くことになるだろう。
(投稿したフェイス氏は、香港ベースの雑誌編集者)

Thursday, February 9, 2017

円に取りつかれて【A18面(社説)】

WSJは9日に、日米共に円の水準に囚われすぎているとする社説を掲載した。


現在の円安(ドル高)は、米国経済の先行きへの楽観的な見方を反映したものだ。これを是正するには、規制緩和により、日本経済の先行きを明るくし、日本に投資を呼び込むしかなく、当局による為替操作は効力がないとしている。

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トランプ大統領による貿易の混乱を心配している投資家たちは、金曜日に行われるトランプ大統領と安倍首相のトップ会談に注目している。特に、トランプ大統領が、貿易交渉において、通貨操作反対の立場を示すかどうかが注視されている。安倍氏は、雇用を創設する様な投資の計画をお土産に持って行き、それによってトランプ氏が円安問題を持ち出すのを避けようとしている。貿易摩擦や日本のデフレへのより良い解決策は、金融政策に頼り過ぎず、国内経済の規制緩和へと向かうことだろう。
先週、トランプ大統領は、中国と日本は自国通貨を操作して安くしようとしているが、アメリカはそれをただ見ているだけで何もしなかったと発言したが、この発言は日本を混乱状態に陥れた。菅官房長官は、日本は為替レートを目標にしておらず、国内価格を目標にしていると反論した。
それはテクニカルには正しい。但し、安倍首相が2013年に経済プログラムを開始した時には、円安が明らかに目標になっていた。そして日本の権力者たちの為替に関するこれまでの見方は、明らかにトランプ氏の味方に近かった。官僚、政治家、経営幹部らは、円高は経済へのマイナスとなるが、円安は競争力を強化すると見ている。
しかし、この味方を裏付ける証拠は殆どない。過去をみると、日本は円高でも輸出が強かったし、経済が弱い時に円安だったこともある。為替レートは金融政策によって動くこともあるが、利率や投資の流れによる日米間の相対的な経済の強弱によっても動く。
トランプ氏の選挙での勝利の後、円は102円から112円へと下落した。このことは、投資家たちが、日本が未だにスタグネーションに陥っている一方で、アメリカ経済は明るいとみていることを反映している。米国債の利回りが上昇したが、それにより投資家たちは円高が継続するだろうという見方を変えた。
トランプ氏の発言の後、しばらくの間、円高と日本国債の利回り上昇が続いた。一部の投資家は、日銀が米国をなだめるために、国債の買付額を縮小するのではないかと考えた。日銀は、先週の金曜日に国債の買い付け額を増やし、利回りは下落した。
しかし、日銀のプログラムが機能していると信じる理由は見当たらない。インフレへの期待は1%程度にとどまっているし、国内の投資や消費は弱いままだ。労働者が不足しているのに、賃金は停滞したままだ。もし、日本のアメリカへの輸出が増えたとしても、その理由はアメリカの成長のスピードが速いからであって、円安によるものではない。トランプ氏と共和党の規制緩和と減税によってアメリカのアニマルスピリットが解き放たれたのだ。
日本経済の先行きが明るいという見方がでるかどうかは、安倍氏がトランプ氏と同じ様な政策をとるか否かにかかっている。労働法制はもっと柔軟であるべきだ。流通関連の法律は、大規模商店の競争と効率的な物流への投資を促すべきだ。農業改革によって、日本国民が食費にお金をかけずにすむ様にすべきだ。貿易障壁を無くし、日本のカルテルを破壊し、生産性をあげ、価格をさげるべきだ。こうしたことが、安倍氏とトランプ氏が会談しし、2国間での自由貿易協定について話し合うべき理由のひとつだ。
高齢化に向かう日本が、経済成長のスピードを速めれば、投資を呼び込み、円高に振れ、貿易は赤字となるだろう。これが、2国が共に繁栄し、貿易摩擦をさけるための道筋だ。通貨を巡って争っても、誰も勝者にはならない。


Tuesday, February 7, 2017

マティス国防長官の太平洋地域での約束【A14面(社説)】

234日にマティス国防長官が日本を訪問したが、WSJ7日の社説でこの訪問を取り上げた。



マティス国防長官が、日米関係の重要性を確認した上で、日米安保条約が尖閣諸島にも適用されること、日米同盟は他国が従うべき見本であることなどを述べ、トランプ大統領の選挙期間中の発言に対する懸念はひとまずおさまったとしている。しかし、トランプ氏の発言はコロコロ変わるので、トランプ大統領と安倍首相の直接会談に、日本及び近隣諸国が期待を寄せているとする。もし、トランプ大統領が、マティス国防長官と同様の発言をするなら、それは、米国が今後とも世界の警察官であり続けることを内外に宣言することになるとも言っている。

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マティス国防長官は、週末に行われた韓国と日本への訪問を無事に完了した。これは、トランプ政権の閣僚による最初の海外訪問であり、北朝鮮と中国の脅威に晒されているアジアの同盟国との強固な関係維持を示すものだ。
マティス氏はソウルにおいて「アメリカの韓国に対するコミットメントは鉄の様に強く、トランプ政権にとって北西太平洋地域に注意を払うことは優先事項だ。」と述べた。彼は北朝鮮に対し「アメリカもしくはその同盟国に対するいかなる攻撃も打ち負かされる。いかなる核兵器の使用も、有効で圧倒的な反撃に会うだろう。」と警告した。
彼はまた、今年、韓国にサードと呼ばれる最新鋭の米国製ミサイル防衛システムを展開する計画を再確認した。このシステムは、北朝鮮に対する防衛力を向上させ、韓国、日本、米国の間の協力を実現させる。中国は、この計画に反対しており、非公式な経済制裁により、韓国にこの計画を諦めさせようとしている。
トランプ政権がその足場を築き、韓国が長引く大統領弾劾スキャンダルを乗り越え、今年の後半に新しいリーダーの選挙をしようとするこの時期に、韓国が持ちこたえられるかどうかが、米国の同盟国である韓国にとって大きな試練だ。
日本では、政治のリーダーシップはより安定しているが、東シナ海での中国のいやがらせが大きな懸念となっている。マティス氏は、ここでも韓国同様、幅広い分野での同盟関係を確認した。最も重要なことは、彼が、日米安保条約が日本が統治する尖閣諸島にも適用されると再確認したことだ。中国は、尖閣諸島は自分の領土だと主張し、民間船や政府船を使って頻繁に脅しをかけている。
マティス氏はまた、日本政府が防衛支出を増強させていることを称賛した。彼は「日米同盟は、費用分担と負担分担のモデルケースであり、他の国々が従うべき手本だ。」と述べた。トランプ大統領は、選挙運動中に、日本はアメリカの安全保障への取組みにただ乗りしていると述べた。こうした見方は、日本の同地域の安全保障への貢献やアジアの多くの重要地点に米軍が安い費用で駐留出来ると言う価値を過小評価するものだ。こうした意味で、今回のマティス氏にこうした発言は極めて重要だ。
トランプ氏のコメントは未だに行ったり来たりしている。従って、今週開催されるトランプ大統領と安倍首相とのトップ会談が、日本そして他の同盟国から待たれている。この2人は、11月の選挙以来、電話やトランプタワーでの会談で、何回か将来について意見交換している。しかし、こうした意見交換では、2国間関係の限られた課題についてしか語られなかった。
もしトランプ氏が今週、マティス氏と同様に、日本領の尖閣諸島に対するアメリカのコミットメントを再確認すれば、日米同盟の心配事をなくすための大きな一歩を踏み出すことになる。それは、アメリカが権威主義の挑戦が続く中、これまで通り世界秩序の保証人で居続けるということを宣言することにもなる。

日本の首相は米国の批判をかわすことを狙う【A6面(国際面)】

安倍首相が2月10日にトランプ大統領と会談するが、WSJは7日に安倍首相が提案を予定している政策パッケージについて報じた。



安倍首相は、この政策パッケージによって、アメリカに70万人分の雇用を生み出し、4,500億ドルの新しい市場が創設されると主張し、それによってトランプ大統領の貿易不均衡や円安誘導への批判をかわそうとしていると報じている。また、アメリカのTPP離脱宣言によって、日米は2国間交渉へ軸足を移すが、これにより、アメリカはより厳しい要求を日本に突きつけやすくなるとしている。

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安倍首相は、金曜日にワシントンで行われるトランプ大統領との会談において、アメリカへの投資額を増やすビジョンを示す計画だ。政府高官によれば、これにより、トランプ大統領による日本の貿易に対する批判をかわそうという狙いだ。
政府高官によれば、安倍首相の5本柱計画である「日米の成長と雇用のためおイニシアティブ」では、日米は協力して、今後10年間で、アメリカにおいて70万人の雇用を生み出し、4,500億ドルの新しい市場を創設するとある。このプログラムは、特定のプロジェクトや企業投資によって実現されるが、どの様にこの数値を達成するのかという詳細については触れていない。
1月20日に大統領に就任して以来、トランプ氏は日本を何回か批判してきた。彼は、日本はアメリカのために働いておらず、その結果、日本へ自動車を販売することが不可能になっていると述べた。さらに、東京の金融市場は不公正であり、円安誘導により、日本の輸出業者がビジネスをしやすくしているとも述べた。
日本は、重要な米国との関係に悪影響があることに神経質になっており、11月にトランプ氏が大統領に当選後、ニューヨークで初めて会う海外のトップとなった。
安倍氏は、米国に進出している日本企業の投資について協調したい考えだ。2014年現在、日本企業は84万人の米国人の雇用を生み出している。また、最新の米国商務省のデータによれば、2015年までの10年間にの日本が米国に投資した金額は4,110億ドルであり、これは倍増している。
先週、安倍首相は、トランプ大統領に対し、日本企業はアメリカ製造業の競争力と生産性を高めることに貢献してきたことを訴えたいと述べた。彼は、また、米国において雇用と成長を生み出す幾つかのプログラムのパッケージを提案したいと述べた。
日本を批判するアメリカ人は、日本の米国に対する貿易黒字が約600億ドルに上っていることを指摘している。自動車と自動車部品の輸出がその多くの部分を占める。アメリカ車は日本では小さな市場シェアしか取れていない。アメリカの自動車メーカーの幾つかは、日本が目に見えない貿易障壁を設けていると主張する。一方で、日本の政府関係者は、日本は輸入車に関税をかけておらず、単純に消費者がアメリカ車に魅力を感じないだけだと言う。
日本は、12ヶ国の貿易協定であるTPPにアメリカを引き込んで、そうした批判をかわそうとした。しかし、トランプ大統領はその協定から撤退した。アメリカのリーダーは2ヶ国協定を結びたいと表明したのだ。安倍氏は、そうした考え方には柔軟に対応したいとしているが、2ヶ国間での交渉では、アメリカ車の日本での販売や、円に対するドルの価値などについて、厳しい要求がアメリカから突きつけられるだろう。
「他国間協定よりも2ヶ国間協定の方が、アメリカはより多くの譲歩を求めてくるだろう。」とブランデイス国際ビジネススクールの国際金融教授であるピーターペトリ氏は言う。
安倍氏の訪米計画にかかわった日本の高官は、5本柱パッケージを通じて、より協力的な科関係を築きたいと述べた。パッケージの1つは、貿易不均衡の是正について述べているが、これは日本製品を排斥するよりも、アメリカの天然ガスの日本への輸出を増やした方が容易に達成出来る。
パッケージは、日本が1,500億円相当のアメリカのインフラ計画に参画すると述べている。例えば、テキサスやカリフォルニアでの高速鉄道建設などだ。日本は長年にわたり、アメリカが高速鉄道のための援助と資金援助を受け入れる様に求めてきた。このプロジェクトのために、日本のテクノロジーが輸出されることを願って。

Saturday, February 4, 2017

トランプ氏の率直な物言いが各国首脳をあわてふためかせている【A6面(国際面)】

トランプ大統領の容赦ない物言いが、各国首脳を慌てふためかせているという記事が、4日の国際面に掲載された。

日本については、貿易問題を指摘され、2月10日に安倍首相が訪米することになったと記載している。

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(日本に関する部分のみ抜粋)
1月23日、トランプ大統領は、日本がアメリカの自動車メーカーに対して、非関税障壁を設けていると指摘した。「我々は、日本へ自動車を販売しているが、彼らは、我々が日本に自動車を販売出来ない様にするために、様々なことをしている。」
これに対し日本は、貿易戦争の恐怖を鎮めるために、安倍首相とトランプ大統領の会談を2月10日に設定した。「私は、経済から安全保障に至る幅広い問題について、彼と率直で意味のある意見交換をしたい。」と安倍氏は述べた。


日本の企業幹部はパックマンを大ヒットにつなげた【A8面(死亡記事面)】

ナムコの創設者である中村雅哉氏が1月22日に死去されたが、WSJは彼の死亡記事を2月4日の死亡記事面で大きく取り上げた。


中村氏がナムコを創設し、同社が「パックマン」というその後のゲーム産業の先鞭となるゲームとなったことを詳しく説明している。アメリカ人は、こうした全く新しい産業を築いたパイオニアが本当に好きなのだと思う。中村氏の死去を、日本の新聞よりも大きく取り上げ、彼の業績を心から褒め称えている。

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中村雅哉さんの会社は、アーケードゲームのキャラクターであるパックマンを生み出し、日本やアメリカの子供達の余暇時間を、おもちゃの銃や木の乗り物の時代から、家庭用コンソールとコンピュータグラフィックスの時代へと変化させた。
彼の会社がナムコ(Namco)という。これは、Nakamura Amusement Machine Manufacturing Co.の略称だ。この会社は、1980年代のアーケードゲームブームの火付け役となるビデオゲームを作った。
彼は、1月22日に91歳で亡くなった。
中村雅哉氏は、1925年12月24日に東京・神田で生まれた。現横浜国大の造船科を1948年に卒業した後、父と共に、日本橋高島屋で、空気銃の販売と修理に携わった。そこで、未来の妻となるミツコと出会う。1996年に新聞のコラムで、彼は、友人が彼女のことを「デパートでの全ての取引の中で、最大で最良のもの」だと言ってくれたと語った。
1955年にナカムラ氏は自分の会社を立上げ、横浜のデパートの屋上に、2枚のコインで動く揺り木馬を設置した。彼は、さらに他のデパートへも広げ、乗り物を開発、製造する工場を開設した。
「子供達は1回5円で乗れるが、1回乗るだけでは売上が増えなかった。」と2007年の雑誌のインタビューで彼は語っていた。「もし、母親になんて可愛い男の子でしょう!などというと、母親は子供にもう1回乗り物に乗らせてあげるのです。そうすれば、全員が幸せです。もう1回乗り物に乗れた子供も、子供を褒められた母親も、そして売上が増えた私も。」
中村氏は、1974年にアメリカのアタリの日本子会社を買収して、仮想エンターテインメントの世界へ飛び込んだ。
1980年5月22日、会社は日本でパックマンをリリースした。それは、ピーッという音と、亡霊に追われ、黄色い点を食べつくすために迷路を走り回るパックマンディスクが特徴だった。次のレベルに行くには、パックマンは全ての点を食べねばならなかった。
そのゲームは日本で人気だったのはもちろんのこと、アメリカでも大ヒットとなった。パックマン弁当、パックマンTシャツ、パックマンボードゲームなどが出現した。投資銀行は、ライバルを飲み込む敵対的買収を繰り返す会社の戦略をパックマンと呼んだ。
「パックマンは、私とナムコに世界とビジネスをするためのドアを開けてくれたキャラクターとしえ記憶されるべきです。」と中村氏は1996年に新聞のコラムに書いた。
2005年には、ギネスが、パックマンを、世界で最も成功したコインで動くアーケードマシンとした。
中村氏は有名大学からの学生をリクルートしなかった。あまり成功していない生徒の方が創造力があることを知って、彼はリクルート用のパンフレットに「成績がCだった構うもんか。」といったフレーズを入れた。
パックマンのキャラクター自体は、25歳のナムコのクリエーターのイワタニトオルが創り出したものだ。彼は、パックマンの名前を、口を動かす日本語の擬態語の「パクパク」からとった。イワタニ氏は、彼が働いている大学のスポークスマンを通して、この記事のためインタビューを断ってきた。
「この時のナムコの業績が家庭用コンソールを普及させた。それが最終的には日本のゲーム産業を築き上げた。」とゲーム雑誌の発行者であるファミ通グループの代表であるハマムラヒロカズ氏は言う。
中村氏は、ビデオゲーム以外の娯楽や行楽ビジネスに投資をした。1986年には、イタリアントマトというレストランチェーンを買収した。
日本で最も古い映画スタジオの日活が、日本のバブルが弾けた後に、破産を申告した際に、中村氏は救済に動いた。
「マルチメディアの時代には、ビデオをどう使うかという知識を持つことに、大いに意味があった。」と1996年のコラムで書いている。「それは、娯楽ビジネス全体の、広く、全体を俯瞰した視野を持つためにも役にたつ。」ナムコは2005年に会社を売却した。
同じ年、パワーレンジャーの玩具メーカーであるバンダイがナムコを買収し、バンダイナムコホールディングスを設立した。
「もし仕事を渋々やっているのなら、意味がない。楽しまなければならない。」と、バンダイナムコの会長を退任する2007年に雑誌のインタビューに答えて、中村氏は言った。

アメリカは不安定なアジアの同盟国に寄り添うと約束【A8面(国際面)】

マティス国防長官が、2月3日に来日し安倍首相と歓談したが、WSJは翌日の国際面でこのニュースを速報した。



トランプ氏の選挙中の発言に、日本は戦々恐々としていたが、日米同盟は揺るぎないとするマティス氏の発言に日本は安堵したと報じている。

***** 以下本文 *****
トランプ大統領が、アメリカのグローバルな同盟政策を見直すと脅す中、国防長官は米国の軍事支援に頼っている2国に保障を与えた。我々は貴方たちを見捨てないと。
マティス国防長官は金曜日の安倍首相との会談の中で、日本を防衛するという約束を維持するとコミットした。彼はその前に、韓国のリーダーにも同様の保障を与えた。
「日米安保条約は、今日も、一年前や五年前と同様に有効であるし、一年後も十年後も有効だ。」と、密室での会談の前に記者の前で行った演説で、マティス氏は安倍氏に述べた。
日本と韓国は、トランプ氏が同盟国への負担増強を強いる中、動揺する国のひとつだ。オーストラリアの収容センター沖の難民を受け入れるというオバマ政権の約束をトランプ氏が批判した後、アメリカのオーストラリアとの関係は悪化していた。
トランプ氏はまた、日本と韓国に駐留する65,000人の駐留米軍の財政負担についても疑問を呈した。アメリカとその同盟国は、こうした軍隊の費用を共同で負担しているのだが、トランプ氏は選挙運動期間中にアメリカはそうした費用を支払うべきではないと言ってきた。
トランプ氏はまた、日本と韓国はアメリカに対して不公平な貿易優遇策を取っていると言ってきた。
こうした批判は、日本と韓国に懸念を生み出した。両国は、より攻撃的になる中国や、急速に高まる北朝鮮の核の危機に対抗するのに、米国の軍事力に頼っているからだ。
アメリカが日本や韓国から撤退すれば、両国は軍事力を急速に増強し、防衛のために核武装せざるを得ないだろう。
マティス氏は、撤退の計画は無いことを示唆した。
「私は、誤解が無いことを望みます。アメリカでの政権交代に際して、安倍首相や日本国民と100%一緒になって、確実にやっていきます。」とマティス氏は安倍氏に述べた。マティス氏は韓国の同僚に対して、アメリカのコミットメントは鉄の様に固いと述べた。
日韓両国の高官は安心した様だ。安倍氏は、マティス氏は最初の海外訪問地に同地域を選んだことは、新政権が日米関係を重要視していている証拠だと述べた。
アナリストは、米軍費用負担の様な落とし穴が同盟を劣化させる危険性はあると述べる。「トランプ氏は、よくこのことを述べている。」とソウルのシンクタンクであるアサン政治学院の研究員であるジェームスキム氏は言う。

Wednesday, February 1, 2017

新しい時代の兆しの中で、インフレが元気に【A8面(国際面)】

日米欧がデフレから脱却しつつあるとする記事が、1日の国際面に掲載された。



日米欧は長年デフレに苦しんできたが、エネルギー価格高騰、失業率低下、低金利政策などにより、インフレの兆しが見えているとして、様々な数値を示している。

*** 以下本文 ***

数年間デフレと戦った後、アメリカ、ユーロ圏、日本は、物価や賃金にかすかな光が示している。今までに無い程低いインフレの時代が、世界経済の風景から消えていく兆候だ。
こうした動きの背景には幾つかの要因がある。エネルギー価格が戻ってきたり、失業率が下落したり、貸出た経済成長を促す中央銀行による低金利政策などだ。
ユーロ圏では、消費者物価は1年前の1月に比べて1.8%上昇した。EU統計局によれば、エネルギー製品は復活し、2016年までの1年間の1.1%から、4年振りの高い上昇を示している。
インフレの市場ベースの測定も上昇した。トンプソンロイターによれば、ドイツでは、債券市場で測定した今後10年のインフレ期待率は11月上旬の1.1%から、火曜日には1.36%に上昇した。日本では、この時期に0.45%から0.61%に上昇した。
「我々は世界的なリフレ取引を信じます。それは日本でも起こりうるし、ヨーロッパでも起こりえます。」とジェイナスキャピタルグループのシニアポートフォリオマネジャーのライヤーマイヤーバーグは言う。
米国における賃金や価格への緩やかな上昇圧力は、先鞭をつけてきた。労働省が火曜日に述べたところでは、アメリカにおける賃金と便益コストの測定に最もよく使われる指標である、雇用コストインデックスは、20161年間で2.2%上昇した。賃金上昇のペースは2020年から2014年の年率平2%からゆっくりとではあるが上昇した。
もう一つの米国の指標である、民間部門労働者平均時給は、12に一年前に比べて2.9%上昇した。これは現在の拡大の最大に成長であり、労働者のプールが小さくなる中、労働者が賃金を上げることによって競争に勝とうとしている印である。
多くの要因がこうした傾向を逆転する可能性がある。グローバルな成長を踏み躙る経済ショックやエネルギー価格の下落などだ。インフレが低いレベルから離陸すると考えているエコノミストは殆どいない。しかし、世界的なデフレの心配は、経済的な心配事のリストの後ろの方へと移動している。
「現在は、ディスインフレメカニズムやデフレメカニズムより、インフレメカニズムが優勢だ。」とリサーチファームであるパンテオンマクロエコノミクスの主任エコノミストであるイアンシェファードソンは言う。彼は、安定した世界的なエネルギー価格、中国から輸出される工業製品の価格高騰、低いアメリカの失業率が、賃金の高騰を加速させていると指摘する。
連邦準備銀行の高官たちは、火曜日、水曜日に会合を開き、アメリカの短期金利レートを一定に保つことに期待を表明した。彼らは、アメリカの成長が止まることを恐れて、ゆっくりと金利を上げてきており、あまり激しく金利を上げることには躊躇している。
連邦銀行が好む消費者物価インフレ対策は、12月に1年前から1.6%上昇したことだ。これは、2014年以来最大の上げ幅だが、エネルギー価格の回復による。
ヨーロッパと日本では、インフレ率上昇の可能性は、欧州中央銀行と日銀の次なる手にかかっている。連邦準備銀行と異なり、欧州中央銀行と日銀は、成長を更に刺激するために大量の国債買入プログラムに従事したり、マイナス金利を維持したりしている。
インフレ率は目標の2%に近いのに、欧州中央銀行は刺激策を止めようとはしない。
火曜日に日銀はその金融政策を変更せず、インフレ目標を引き上げなかった。デフレと長年戦ってきた日本では、消費者物価を上昇させることが如何に難しいかを示している。
投資家の中には、希望の兆しを見出す者もいる。公共財価格の高騰は、インフレにカンフル剤を与えるかもしれない。円安は、輸入品の価格を高騰させ、輸出と成長を刺激することにより、重要な役割を果たす。