総務省が12月1日公表した10月の全国消費者物価指数は、指標となる「除く生鮮、コアCPI」が前年比0.8%上昇したが、WSJはこのニュースを翌日の国際面で速報した 。
これまでの物価上昇は、中国や米国市場の需要という「海外事由」によってもたらされる場合が多かった。しかし、最近の物価上昇は、労働市場が堅調なことにより賃金を上昇させざるを得ず、それが物価上昇を招くという「国内事由」によってもたらされている。これは日本経済が本当に強くなる兆しだとして歓迎している。 価格値上げの例として、鳥貴族やビールが取り上げられて 、面白い記事に仕上がっている 。
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ここであげるのは、日本の経済がいかに強くなりつつあるかを示す兆しのひとつだ。デフレに苦しむ日本においてすら、幾つかの企業が、価格値上げをしても大丈夫なほど経済状況が良くなっていると感じているのだ。
焼き鳥の安売りレストランチェーンである鳥貴族は、10月に30年振りとなる値上げを行った。焼き鳥 2本セットは、以前の$2.49 から$2.65へと値上げされた。同社広報によれば、パート労働者の不足に苦しんでおり、賃金を上げざるをえない。
さらに、焼き鳥と一緒に楽しむビールも価格が上がる。日本の4つのビール会社も 10年振りに価格を値上げする決定を行った。
メニューの価格が8セント値上がりしたからと言って、それがニュースになる国は他にはないだろう。しかし、それは日本では大変なことなのだ。なにしろ、 1990年後半以来15 年もの長きにわたり不況に苦しんできたのだ。安倍首相は、デフレ克服をアベノミクスの中心に据えている。
金曜日に発表されたデータによれば、10月のコア消費者価格は、1 年前に比べて0.8%上昇した。9月の0.7%に比べて上昇している。 2016年12月にはその数値はマイナスだった。
日本の物価は、グローバル経済のひとつの指標だった。なぜなら、日本の経済は、中国や米国といった貿易相手国からの需要に大きく依存しているからだ。米国では、第 3四半期のGDPは3.3%上昇している。
日本経済は直近の四半期にわずかではあるが成長した。これは輸出によるところが大きい。メモリーチップやバッテリー部品のメーカーは製造を強化している。
労働人口は減り続けているので、海外からの需要は、深刻な労働者不足を生み出している。金曜日に発表されたデータによれば、 100人の求職者に対して、155 の仕事があるといった状況だ。これは、43年振りの強い数値だ。
「価格上昇への圧力が強いのは、賃金上昇が大きくなっているからだ。」と日銀の黒田総裁は 11月に述べた。改善してはいるが、日本の物価上昇は、黒田氏の長い間唱えている目標値 2%には遠く及ばない。
日本の物価は、少し上がったかと思うと、すぐに下がるといった状況を繰り返してきた。しかし、日本経済と労働市場の広い分野で改善が見られ、今回の物価上昇は長く続く可能性がある。
「これまでと大きく異なる点は、今回の物価上昇が国内の圧力によって生じている点だ。労働市場はひっ迫しており、さらにひっ迫する見通しだ。」とパンセオンマクロエコノミクスの主任アジアエコノミストであるフレヤビーミッシュ氏は言う。彼は、日本のインフレは 2018年に向けて更に強まるとみている。
日本経済はここ3年ほど、1%程度の成長を続けてきた。IMFによれば、今年は日本経済は 1.5%程度の成長が期待できる。
価格は、日銀が継続している強気の金融政策に反応してさらに押し上げられるだろう。世界の経済大国が高金利への舵を切り、経済刺激策を終息させようとする中、日本だけは強気の経済政策を継続しているのだ。
何人かのエコノミストは、先進国における共通の要因として、Eコマースやグローバルサプライチェーンをあげている。
しかし日本での問題はもっと深刻だ。長期間にわたって不景気が続いたために、企業や消費者の心理の中に諦め感が深く刻まれてしまっている。
焼き鳥チェーンである鳥貴族は、価格を維持するためにあらゆることを行った。ウェイターの数を削減するために、テーブルにタッチスクリーンを設置したりもした。
アサヒグループホールディングズは、値上げを行うビール4社のうちの 1社だが、同社社長の小路 明善は、日本の消費者は値上げが最後の手段であることを納得しないと、多く支払うことはしないと言う。「企業は、過剰なサービス費用を削減するなどして、価格が公正であることを消費者に納得させねばなりません。」と小路氏は言う。