陸上自衛隊の石垣基地建設について、WSJは12月21日の国際面で取り上げた。
対中国防衛は、現状は沖縄の米軍に任せられているが、石垣島に自衛隊基地を作って対中国紛争時に自ら防衛しようとする安倍首相の方針を支持している様に読める。一方で、サトウキビ畑に囲まれたのどかな島に突然基地が建設される島民の感情や、平和憲法ゆえに戦後の平和が守られたと信じる国民感情にも一定の理解を示している。
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日本の軍隊は、サトウキビに囲まれた静かな石垣島の谷で、地対艦、地対空ミサイルの砲台を作る準備を進めている。日本が長期的な脅威になるとみなす中国に対峙するためだ。
石垣島は日本列島の遥か南西に位置する亜熱帯の列島にある島の1つだ。近いところでは、中国から200マイルしか離れていない。そこで、軍隊の駐屯地や武器、レーダーを設置することによって防衛力を強化している。
中国はより力を強め、強硬な姿勢を示し、北朝鮮は核兵器を開発した。こうした状況の中、日本は防衛政策を見直し、第二次世界大戦後遵守してきた厳格な平和主義からの転換を模索し始めた。
金曜日に安倍内閣は年間軍事費支出を2.5%増やす方針を固めた。新しい施設や、日本で最初の巡航ミサイルや新型の弾道ミサイル防衛システムの購入が含まれる。小野寺防衛大臣は、巡航ミサイルは島を侵攻から守るためにあると発言した。
日本の防衛予算は2013年以降増え続けている。米国にとって最も重要な同盟国である日本は、最先端のジェット戦闘機を購入し、監視能力を強め、新たに水陸両用軍を整備して訓練を行っている。
経済規模との比較で見ると、日本の防衛支出は、中国の半分、米国の1/3にすぎない。しかし、米国の支援と、ゴリ押しによって、日本の軍隊は世界でも最も有能な軍隊の1つになりつつある。
石垣島とその近郊の島々は、中国が第1列島線と呼ぶ列島群の1つだ。第1列島線は、ロシア領樺太から南シナ海に伸びる列島群で中国が海軍による支配を狙っているところだ。
石垣島の当局は、尖閣諸島と呼ばれる小さな無人島の管轄も行なっている。中国と台湾もこの諸島の領有権を主張しており、彼らは魚釣島と呼んでいる。近年、中国は大きな監視船を尖閣諸島周辺に送っている。1部の船は武装している。石垣島ベースの監視船10隻が中国船と追いかけっこをしている。
石垣島監視部隊司令官のトウヤマ少将は、衝突を避けるため、日本の船は中国船と無線で交信していると言う。「中国船は、より大きく、より近代的になっている。その意味で、彼らは問題を大きくしている。」
陸上自衛隊と呼ばれる、日本陸軍の報道官は、ミサイル用に500から600人の軍隊を配備する予定だ。
南部の島々における日本の軍備増強についてコメントを求めたところ、中国外務省は、「歴史的な理由により、日本軍とその安全保障政策は、アジア諸国と国際社会から大きな懸念を持たれている。我々は、日本が平和の道を遵守し、地域の平和や安定を脅かすいかなる行為も回避することを希望する。」と述べた。
ここ数10年、この地域での唯一の主要な軍事拠点は、沖縄の米軍基地だった。そこには日本に駐屯する50,000人の米軍の約半数が駐屯している。
安倍首相は、日本は自分自身の防衛力を増やし、米国への依存を減らすべきだと主張してきた。その過程の1つが、平和憲法を改定して、日本が軍隊を持つ権利を公式に認めることだと安倍氏は言う。
安倍氏が主張する憲法改正が、議会やそれに続く国民投票で必要となる票数を得られるかどうかは微妙だ。世論調査によれば、多くの日本人が戦後の平和を憲法と結びつけて認識しているからだ。
一方で、安倍内閣は、軍備の調達や基地の建設は、防衛を目的としたものなので、合憲だと主張する。石垣島の防衛力拡大は、50,000人の島民を2分し、抗議運動も起きた。基地反対派のオオタシズオ氏は、基地があると島が将来の攻撃の的になりかねないと言う。「我々は、一瞬にして抹殺されるだろう。」
しかし、石垣の中山市長は、強力な支持者だ。彼は、次の市長選がある3月までに、基地建設の動議を地方議会で可決させたいとしている。