米国と日本がサウジアラビアのアラムコ石油の株式が中国に売却されることに強い懸念を表明しているが、WSJはこのニュースを14日の国際面で取り上げた。
アラムコ石油は当初ニューヨーク株式市場を含む国内外の株式市場でIPOを行う計画だったが、私募方式により中国へ同社株式が売却される計画が進んでいる。中国の中東での権益拡大を懸念する日米両国が、この計画に猛烈に反対しているとしている。
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米国と日本は、サウジアラビアに対し、オイル巨大企業であるアラムコの国際上場を強く要求した。関係者によれば、両国は、株式が中国に売却され、中国が中東において過度な影響力を持つことに懸念を持っている。
アラムコは、世界最大となる新規株式公開(IPO)を来年実施し、国内外で上場する計画としていた。だが事情を知る複数の関係者によると、サウジ政府は最近、中国の国有企業連合に株式を割り当てる私募方法への変更を検討している。
このところ中東ではサウジとその同盟諸国がイランと対立し、サウジ政府は国内の政治的な混乱も抱えている。
関係者の1人の話では、中国政府がアラムコへの出資を通じて安定的な大口取引先としての地位を盤石にし、米国に長年寄り添ってきたサウジ政府との関係を強化することに、米国は不安を感じている。
中国は世界最大の石油輸入国で、経済成長が続く中、揺るぎない原油供給源の確保を目指している。アラムコは世界全体の確認埋蔵量の約16%を占める油田を保有し、輸出量でも世界有数の規模を誇る。
石油供給の3分の1余りをサウジに頼る日本政府は、中国が優先的にサウジ産原油へアクセスできるようになる可能性を警戒している。
「もしアラムコへの資本参加がうまくいけば、中国はペルシャ湾地域により大きな影響力を持つことになるだろう。」とボストンのESAI ENERGY LLCの主席コンサルタントのサラ・エマーソンは言う。
中国の外務省は、アラムコがパートナーを探しているのは、通常のビジネス行為だと述べた。
近年、中国とサウジアラビアは急速に関係を構築してきており、中国は、エネルギーなどの分野で両国間の実務的な連携を強化し、国際的なエネルギー市場の安定性を保持していくことを希望していると、声明の中で中国外務省は述べた。
国内政治がアラムコの計画をひっくり返した。関係者によれば、IPOの計画は、王室内の権力を統合しようとするムハマンド・ビン・サルマン皇太子による努力の最中に、中止となった。
複数の関係者によると、サウジが中国への株式割り当てを検討していることが表面化した10月中旬以降、米政府が懸念を伝えたほか、日本の経済産業省はサウジ政府関係者と数回にわたり協議を行った。
アラムコは、5%を上場する計画だった。これは、約750億ドルに相当する。香港、ロンドン、ニューヨークで上場する予定だった。
11月4日にトランプ大統領はツイッターで「サウジアラビアがアラムコのIPOをニューヨーク株式市場で行うことをとても歓迎している。米国にとってとても重要なことだ。」と述べた。
アラムコの将来計画に関与している複数の関係者は、このツイッターのコメントは、サウジアラビアと中国の間の対話に関するトランプ大統領のコメントと見ていると述べた。
アラムコのCEOであるアミン・ナッサーは11月に、同社が国内のタダウル取引所以外のどこに上場するかについて、近い将来決定すると述べた。
サウジアラビアのエネルギー省にコメントを要求したが返答は無かった。
今回のアラムコの件は、中国が中東で積極的に権益を拡大していることに対する米国の懸念を示すものだ。イラン、エジプト、サウジアラビアなどの国々はドローンなどを中国から購入し始めており、米国にとって戦略上、通商上の頭痛のタネになっている。これを受けて、トランプ政権は、中東やアフリカ諸国がアメリカの最先端のドローンを買えない様にしているルールを緩和することを検討している。
「米国での上場は、米国とサウジアラビアのエネルギー分野での協力関係の進展と進化の象徴だ。」と今週、米国務省の官僚は述べた。