Monday, December 18, 2017

日本は金融緩和の実験を終える【A5面(国際面)】

日銀が金融緩和政策の出口を模索し始めたという記事が、1218日の国際面に掲載された。



 黒田氏は11月のチューリッヒ大学でのスピーチで金融緩和政策をあまり長く実施し続けると、銀行業界に悪影響があり、逆効果になる懸念があると発言し、その後日銀関係者が同様の発言を繰り返している。これは、日銀が金融緩和政策の出口を模索し始めた証拠であるとしている。また、黒田総裁の任期は4月までだが、彼は第2期を狙っていて、こうした発言は出口政策の実施を自分で実行しようとする意思表示だとするアナリストの見解も引用している。

***** 以下本文 *****
日本銀行は過激な金融緩和のマスコットキャラクターだった。しかし、来年はその姿勢が変わりそうだ。
日本銀行は、黒田総裁の5年近い任期の間に、金融システムに4ドルものお金を注入し、マイナス金利を導入したが、市場関係者によれば、2018年にはついに金利目標を上げることになりそうだ。
日銀の高官はそうしたことを公には発言していない。しかし、市場の期待を否定することなく、何人かの高官は日銀の大きな実験の1つに関する新しい方向性を匂わせている。
今回の金融危機は2008年に始まったが、もしこの変化が実際に起きるということになると、10年間の金融危機の終わりを告げることになる。既に、連邦準備銀行は金利を上昇させるプログラムを実施しているし、欧州中央銀行とイングランド銀行は連邦準備銀行に追随している。1990年代に始まったデフレと経済不振に悩まされてきた日本は、過激な緩和を継続する最後の国となっている。
日銀が金利上昇の決断をすれば、グローバル市場や7四半期連続で拡大し続けている世界第3位の日本経済にリスクを持ち込むことになるかもしれない。
金融引締め政策を、十分に機が熟していない段階で実施すると、円高を招き、ようやく回復しつつある消費者の気分を冷え込ませてしまうだろう。インフレ率は、黒田総裁が目標としている2%には程遠い0.8%程度で推移しており、決断を急ぐ必要はないという人たちもいる。
日銀の戦略に詳しい関係者によれば、日銀のコメントが今の段階でぼんやりとしているのは、そんな理由による。
1つの指標として、日銀は既に金融緩和を少し引締め方向に転換させている。日銀の国債買取額は、ここ12ヶ月は60兆円(約5,300億ドル)の水準だ。黒田総裁の金融緩和のピーク時には80兆円に達していた。
黒田総裁は、このこと自体は、引締めを意味しないと言う。なぜなら、20169月に日銀は、国債購入量よりもむしろ、10年物国債の金利にフォーカスすると決めたからだ。日銀はその金利がゼロになることを目標にしており、今の所うまくいっている。
黒田総裁の5年の任期は4月で完了するが、同総裁は、極端に低い利率の悪い面は、多くのアナリストが将来の金利上昇に向けた地ならしをしているとみていることだとも述べた。
11月上旬に、黒田氏は低金利によって、商業銀行の利益が縮小されている点を指摘した。11月に行われたチューリッヒ大学でのスピーチでは、リバーサル率という言葉を使って、注目を浴びた。リバーサル率とは中央銀行が設定した低金利が、銀行業界を痛めつけ、金融緩和政策のベネフィットが失われ始めるポイントを示す新語だ。市場関係者はこの新語にざわついたが、黒田総裁は新しいことは何も言っていないとして否定した。それ以降、黒田総裁を支える副総裁の1人であるナカソ・ヒロシ氏と理事のマサイ・タカコ氏が長引く緩和政策のリスクについて懸念を示した。
「チューリッヒが出発点になっている。」と野村証券のチーフ日本金利ストラテジストのマツザワ・ナカ氏は言う。同氏は、これをゲームチェンジャーである黒田総裁を特徴付けるものだともして、次のように述べた。73才の黒田総裁は、第2期目への道を着々と固めているのだろう。そして、第2期目では、以前の政策からのスムーズな転換を実行に移すのだろう。