4月29日の安倍首相の米国議会でのスピーチについて、30日の紙面で速報した。
経済紙らしく、記事の殆どをTPPに割いた。安倍首相が日本の農業抜本的改革推進を表明し、更に、知的財産権、過酷な労働条件、環境への負荷等の問題に言及して、TPP反対論が強い民主党議員の説得を試みたが、効果は疑問としている。記事の最後には、米国でも関心が高い「慰安婦問題」に安倍首相から何ら言及が無いことにも触れた。但し、安倍首相が女性の人権保護の重要性について触れたことに言及しており、その対応に一定の評価を与えた様にも読める。
***** 以下本文 *****
この記事は次の様な書き出しで始まる。
「安倍晋三首相は29日、米議会上下両院合同会議で演説を行い、環太平洋経済連携協定(TPP)の締結を通じて日米関係を強化する考えを訴えた。 米国議会では、オバマ大統領のTPP推進を支持するかをめぐり意見が大きく分かれている。」
「安倍首相は同演説で12ヶ国が参加するTPPの戦略的価値を強調したほか、自身の米国での経験を含め日米関係の幅広い発展にも焦点を当てた。演説は米議員の支持を得る狙いがある。」
「米上下両院の委員会は先週、TPPなどの交渉権限を政権に一任する大統領貿易促進権限(TPA)=ファストトラック法案を可決した。同法案が成立すれば年内のTPP締結に向け道が開かれることになるが、特に下院民主党議員の間では反対論が根強く、議会で可決されるかは不透明な状況だ。」
長い記事なので暫く要約する。
殆どの共和党議員は拍手を送ったが、民主党議員は拍手を控えた。共和党のある議員は「安倍は正しい。TPPは経済的恩恵以上のものがある。」と語った。しかし安倍首相の演説が懐疑派の説得に成功したかどうかは疑問だ。共和党のある議員は「それは大統領の仕事だ。」と語った。オバマ大統領は、農村地域の選挙区から選出された下院共和党議員などからTPPへの支持を取り付けるには、米政府はこの貿易協定によって農業利益が増加する見通しを明らかにする必要がある。
安倍首相は、日本の農業の抜本的改革を推進する決意を示した。安倍首相は「日本の農業は、岐路にある。生き残るには、いま、変わらなければなりません」と指摘した。日本は農産物の関税で譲歩する見返りとして、米国の自動車や自動車部品輸入を阻む障壁を取り除くよう求めている。だが米自動車業界は日本が為替操作と不当な貿易慣行を行っていると非難しており、極めて慎重を要する問題だ。
米下院歳入委員会の民主党トップであるサンダー・レビン議員(ミシガン州)は、TPPについては日本側に農産物市場の開放と米国産自動車の巨大な日本市場へのアクセス拡大を約束するよう求めた。
首相はこのほか、TPPが労働条件・環境基準の低下や急成長するアジア諸国での知的財産の不正利用につながるとの民主党議員らの懸念にも言及した。「太平洋の市場では、知的財産がフリーライドされてはなりません。過酷な労働や、環境への負荷も見逃すわけにはいかない」と訴えた
首相はアジア太平洋地域の領土問題について、平和的かつ国際法に基づいて解決されるべきだと主張した。
この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「安倍首相に対しては、議会演説で日本の第二次世界大戦中の行いについて謝罪するよう圧力が強まっていた。。演説前には慰安婦問題をめぐり韓国系米国人が『Never Again(二度と繰り返すな)』と書かれた横断幕を掲げて抗議活動を行っていた。」
「しかし、首相は、水曜日にもまた今週の彼の米国訪問期間中にも、新たな謝罪はしなかった。大方の予想通り、先の大戦に対する痛切な反省を表明し、アジア諸国民に苦しみを与えた事実を認めた。彼はこれまでの日本政府の謝罪を含む声明を支持したが、韓国系米国人のグループや元軍人らが求めていたが謝罪を行うことは避けた。」
「首相は『紛争下、常に傷ついたのは女性だった。私たちの時代にこそ、女性の人権が侵されない世の中を実現しなくてはいけません。』と訴えた。」
(一部、ウォールストリートジャーナル日本語版から引用させて頂きました。)