ソニーの決算発表時期に合わせて、ソニーが復活のために最近行っている変革を、一面で紹介した。
この記事は1面と12面のほぼ全ページを使った力作だ。平井氏とCFOの吉田氏の下で進むソニーの改革を詳細に報じている。イメージセンサービジネスが主役に躍り出たり、ゲームビジネスは配信料売上に依存し始めたりと、これまでの家電のソニーとは違った会社になりつつある。しかし一方で平井氏は技術者が技術屋魂を燃やせるプロジェクトは昔通りやらせるとう懐の深さも見せており、そうしたバランスが今日のソニーの活気をもたらしていると言っている様に読める。読んでいてワクワクする記事だ。
***** 以下本文 *****
「ソニーはスマートフォン戦争で敗退したが、アップルのiPhone6や、サムソンのGalaxy S6が売れるたびに売上が計上される。」
「この日本の会社は、デジタルカメラのイメージセンサー世界最大のサプライヤーだ。ソニーは今年初めにイメージセンサー工場に9億ドル投資すると発表したが、需要の急増に対応するため、更に3億7,500万ドルの追加投資を計画している。」
非常に長い記事なので、暫く要約する。
いまやソニーは、トランジスターラジオやコンパクトディスクやウォークマンでブームを築いたソニーでは無い。時代の最先端をいく画期的な製品を生み出してきた同社は、54歳の平井氏とパワフルな参謀である吉田CFOによって変革され、iPhone6の様な他社のイノベーションから利益をあげようとしている。こうした変革により、木曜日に発表される2014度決算では営業利益が680億円となる見通しで、以前発表した200億円から上方修正した。
2月にソニーは、将来性や投資のプライオリティを考慮して、事業を3つのレイヤーに分けた。トップレイヤーは、イメージセンサー、ビデオゲーム、映画、音楽だ。カメラ、ビデオ、音響製品は中位レイヤー。下位レイヤーには携帯電話とテレビを置いた。
Playstation 4は3月に出荷台数が2,000万台を越えマイクロソフトのXbox Oneを大きく引き離しているが、小さなスマートフォンの部品であるイメージセンサーがそれと同じカテゴリーに入れられたのだ。ソニーは、既にパソコン事業を売却したが、平井氏は、スマートフォンかテレビ事業も売却したいと言う。吉田氏は2013年度に比べて、本社費用を30%も削減した。
使い古されたイメージ
ソニーは消費者向け家電メーカーという使い古されたイメージから決別せねばならない。その過程は多難だ。多くのエリート意識をもった技術者が会社を離れた。株価はピーク時から70%下落。売上はアップルの半分にすぎない。その上、ソニーエンターテイメントはハッカー事件に揺れた。
ハイエンドの音響製品や超高解像度の壁掛けプロジェクターの話になると目を輝かせる平井社長は、ニッチな家電製品から撤退する計画は持ち合わせていない。しかし、プレイステーションですら、将来伸びが期待できるのはコンテンツで、この部分は他社から供給を受けている。
ソニーの変革を実現するのはイメージセンサーだ。ソニーにはカムコーダーで培ったノウハウがある。2012年にソニーは2枚のチップを重ね合わせる画期的な技術を開発した。これにより、薄いスマートフォンの中に、高性能のイメージセンサーを搭載出来ることになった。この技術はソニーの企業秘密であり、サムソンでさえ、真似出来ない。ソニーはイメージセンサー市場で40%のシェアを持ち、市場の規模も2009年から80%も伸びて86.5億ドルに達した。ソニーはアップル依存のリスクを避けるために、イメージセンサーを中国企業にも販売を開始した。また将来の有望市場である無人運転市場でもイメージセンサーが使用される。
また、キャッシュカウであるビデオゲームビジネスでも新たな収入源を開拓している。今後の売上の伸びは主にソニーのエンターテインメントネットワークの月額使用料から生じる。このために、最近Spotify ABの音楽配信、Netflixの映画配信を加えた。アメリカの一部の地域では、PlayStation Vueというサービスによりテレビ番組が見られる。ソニーは、PlayStation専用の最初の番組として犯罪ドラマPowersをリリースした。これはソニーピクチャーズテレビが作成したものだ。
よりNetflixの様に
ソニーのPlayStation Networkの無料加入者は約6,400万人、年間50ドルの加入者が1,000万人いる。ソニーは近いうちに、パナソニックと比較されるのではなく、Netflixと比較される様になるだろう。
平井氏は2012年の社長就任時に'One Sony'という戦略を打ち出したが、どうやってソニーを一つにしていくかという考え方は提示していない。平井氏は技術者が、持っているアイデアを実現出来ないことにイライラしていることを知って、技術者にアイデアを上申する様に促している。ソニーの東京本社には'Creative Lounge'と呼ばれるエリアがあり、シリコンバレーの様な雰囲気の中で、新しいアイデアが実現している。こうした動きが功を奏したのか、平井氏は具体的戦略を打ち出していないが、家電関連部門は、ここ10年で初めて、スマートフォン部門を除いて黒字を計上する見通しだ。平井氏は147インチの超高精度壁掛けディスプレイの開発を許可し、日本で4万ドル以上で売り出した。高音質のウォークマンも開発し、12万円で販売している。
平井氏は、ソニーのテレビ部門と音響部門を子会社にすると言った時、取締役会は信用してくれなかった。ソニーの映画部門、音楽部門、モバイル部門は以前からずっとその様に経営されてきたのにだ。
この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「社長は昨年、東京の近くの温泉保養地である箱根で取締役と合宿を開いたが、その後も自分の言ったことを行っている。彼は、取締役会にソニーにおいて自ら遠心力と求心力のバランスを取ると言った。」
「彼は今はこう言う。『日本語で言った様に、糸の無い凧があちこちに飛んでいる状態は良くないと思う。しかし、同時に、私は、彼らが自分たちのビジネスを自分たちで経営し、説明責任を果たせる程度の風を確実に吹かせたいと思っている。』」