Monday, July 7, 2014

日本のハイテク工場はいまや野菜を作る【A1面】

富士通をはじめとする大手電機メーカが、余剰となった工場で野菜の栽培に乗り出したというニュースが、一面下部のコラム欄で紹介されている。

この記事は次の様な書き出しで始まる。

「ミヤベハルヤスさんは、会津若松の富士通の工場でコンピュータチップの生産管理を担当してきた。昨年のある日、工場長はミヤベさんに仕事の変更を命じた。」
「『明日からレタスを作って下さい。』彼はそう言われたのを思い出す。」
「日本の電機業界が不振に悩む中で、富士通は同工場のチップ生産の3ラインのうち、1ラインの稼動を2009年に止めた。かつてはハイテク機器の頭脳部分を作っていた、消毒され塵一つ無いクリーンルームで、ミヤベさんと30人程のスタッフはレタスの世話をしている。」
「我々はデータセンターやコールセンターといった仕事を考えましたが、承認を得るのは困難でした。とミヤベさんは言う。彼は新しい製品について自分でやったという自負を持っている。『私は、レタスが成長するにつれ、愛着を感じるようになります。』」
「回路基盤を鍬に持ち替えたのはミヤベさんと富士通だけではない。テレビや携帯電話といった分野での韓国や中国との競争に悩まされ、日本の大手電機企業の多くが、余剰となっている工場を農業への転換させている。」

長い記事なので暫く要約する。

富士通は先月会津若松工場産のレタスの販売を開始した。東芝は、東京郊外の余剰となっている工場で野菜の生産を開始した。パナソニックはほうれん草などの野菜を生産するためのコンピュータ制御の温室の販売を予定している。シャープは、同社の光や空気浄化技術を使って、室内で苺を栽培する試験を開始した。

安倍政権は、農業への大企業進出による価格低下を期待しており、こうした動きを歓迎している。富士通は最初は福島県から補助を受けていたが、最近は政府が全国規模での補助金制度を導入し、富士通の様にハイテクを利用した農業プラントの数が過去3年で4倍となり、380に達している。

富士通の工場では研究用の上着とマスクに身をつつんだ従業員が、土ではなく、肥料や栄養素が入った水を使って、レタスを栽培している。こうした栽培法により、カリウムの量を減らし、高齢者が食べやすいレタスを作ることがで出来る。また、バクテリアの無い空間で作られるため、長く保存が可能で、冷蔵庫にいれておけば2ヶ月がもつ。従って、輸出も可能だ。しかし、価格が問題だ。富士通レタスがスーパーマーケットで3ドルで販売されており、これは通常のレタスよりも1ドル高い。

東芝は、利益をあげるには規模が重要とみており、2015年までにレタスの生産量を3百万個にまで増やし、年間2百9十万ドルの売上を見込む。これらのレタスをアジアや中東へ輸出する計画だ。富士通は、現在は一日3千5百個の生産だが、軌道にのれば、年間4百万個まで生産を増やす計画だ。

全ての人がハイテク農業を目指している訳ではない。土を使ったオーガニック市場が伸びているという人もいる。パナソニックは、ハイテク農業と従来からの伝統的な農業を組み合わせた方法を模索している。同社ののタニザワタカヨシ氏(40才)は3年前にマッサージチェアの生産から、ほうれん草の栽培へと配置転換された。

「この配置転換は、そんなにドラマチックなものではありません。とタニザワ氏は言う。マッサージチェアは内部のボールを動かすためにモータを使うが、温室では日光を遮るために天井のカーテンを動かすためにモータを使う。足をマッサージするためにバッグに空気を送り込むためにポンプを使う代わりに、温室ではほうれん草に水をやるためにポンプを使う。」
「もう一つの良い点は、野菜は、マッサージチェアを使う人ほど気難しくない点だ。『マッサージチェアは難しいです。ある人にとっては気持ちが良くても、他の人にとっては正反対だったりします。』とタニザワ氏は言う。『野菜はけして文句を言いません。従順でとても良い子です。』