Monday, July 7, 2014

日本の法人税引き下げによる機会【A10面(社説)】

安倍首相の法人税率引き下げ政策を絶賛する社説が掲載された。引き下げに対する反論を、見事に切り捨てている。WSJは米国政府にも法人税率引き下げを迫っており、まず、日本の成功を強く望んでいる様だ。

WSJ日本語版にも同じ記事が掲載されていたので、そのまま転載させて頂いた。


「法人税の実効税率を引き下げることで投資と成長が促進される――主流エコノミストの間でこの理論に対する議論の余地はほとんどない。だが、なぜか日本のエコノミストらは、安倍晋三首相による法人減税が純粋な便益をほとんど生み出さず、当面は大きなコストに直面すると思い込んでいる。首相は財務省の無能な官僚を排除する「第4の矢」を放つ必要があるかもしれない。」
「政府は6月、新成長戦略を閣議決定した。ここには法人税の実効税率を向こう数年の間に現行の35.64%から30%未満に引き下げる計画が盛り込まれた。経済界の一部からは欧州諸国や韓国と同水準になる25%まで下げるべきだとの要望もあった。首相はこれに応えることができなかったが、30%未満という控えめな計画でさえ米国の35%と大きな開きを生む。」
「懐疑派は、そもそも日本企業の3分の1しか法人税を払っていないのだから、実効税率を下げても目立った効果は見込めないと主張する。この批判は当を得ていない。損失を予想して投資する企業はない。企業が予想する将来の収益に適用される新税率は、現在の投資決定に大きなインセンティブとなる。日本が本気で海外投資家から資金を集めようとしているのなら、税率が重要な問題になる。」
「財務官僚は安倍首相に対し、法人減税で見込まれる年間3兆円ほどの税収減を埋め合わせる方法を見つけるべきだと主張する。この議論は、減税が成長を刺激し、課税対象を拡大させて歳入を増やすというメリットを評価できていない。一方、減税によって、首相は日本に必要な幅広い税制改革を推進する機運を生み出すことができる。」
「こうした税制改革は現行の法人税法に潜む多くのゆがみに切り込む可能性がある。政府は長年、お気に入りの産業や事業を支援するために与信や控除、免除など多様な手段を駆使してきた。政府が2012年に徴収した法人税は10兆4000億円にとどまった。野村証券の試算によると、税法上の抜け穴がなければ16兆2000億円に達していたはずで、実際の税収はその64%しかなかったことになる。こうした政府支援の恩恵を最も多く受けているのが製造業と金融業で、小売りやサービス業は重い負担を背負ったままだ。」
「穴だらけの税制が創造的破壊の進行を阻害し、成長ペースを鈍化させている。特別支援の恩恵は効果的なロビー活動のできる大企業に偏り、そのしわ寄せは中小企業に及んでいる。大企業の利益を守る経団連が、法人減税に賛成しながら税制改革に反対するのはこのためだ。」
「安倍首相が打ち出した『日本版スチュワードシップ・コード』(機関投資家の行動指針)は、企業統治(コーポレートガバナンス)の分野で機関投資家のより積極的な役割を促している。経済界はこれに難色を示しているが、税制の簡素化はこの指針を後押しするだろう。指針の目的は、潤沢な内部留保を抱える上場企業に対し、その資金をより生産的に利用するよう圧力をかけることだ。税制改革はこのプロセスに向けたインセンティブを生み出す手段となり得る。」

「法人減税は安倍首相の幅広い経済課題から出てきた『後知恵』で、ここ数カ月の集中的な議論から生み出されたものにすぎない。ただ、労働市場改革、自由貿易協定、移民問題をめぐる国会論戦がいつも通り泥沼にはまっている中、法人減税は首相の最大の功績の一つになる可能性がある。法人税改革は他の改革と同じくらい必要なもので、うまく仕上げれば成長エンジンの速度を速めるかもしれない」