Thursday, July 31, 2014

**7月のまとめ**

7月までにウォールストリートジャーナルに掲載された日本に関する記事は、116件だった。


7月は、13件。2月から4月まで、20件を越えていたので、随分と少ない。7月は特に後半の掲載数が減少した。イスラエル情勢の緊迫等、重大な国際ニュースが多かったので、あまり日本関係に紙面が避けなかったのが、掲載数減少の一因だろう。

テーマ別では、政治関係が11件、経済関係が2件。政治関係の記事が圧倒的に多かった。

なかでも、集団的自衛権の容認及びその後の日本の動き(水陸機動団の演習公開、インドとの共同演習等)については、6回も報道されており、この件に関する同紙の関心の高さが目を引く。アジア地域で、中国に対抗できる勢力の出現を歓迎しており、安倍政権の動きを支持している様だ。

後は、原発関係が3件とこの件に関する関心も高い。滋賀県知事選での自民党の敗退とその影響、そして川内原発の安全基準クリア等を詳細に報道した。同紙は、原発推進と取れ、この点でも安倍政権の動きを歓迎している。

残りの2件は、河野談話再検証と北朝鮮に対する制裁緩和のニュースだ。これらについては、大変に微妙な問題で、同紙は必ずしも、安倍政権の動きを歓迎しているとは言えない。

経済関係では、法人税率引き下げのニュースが取り上げられた。同紙は、米国政府に、法人税率引き下げを強く迫っており、その意味で、この件への感心が高いのだろう。後は、富士通などのハイテク企業が工場の余剰設備を利用して野菜を作り出しているという、面白い記事が取り上げられた。

掲載箇所では、1面が1回、国際面が9回、社説・意見欄が3回だった。
1面を飾ったのは、ハイテク企業の農業への進出。同紙はこうした面白い記事を1面下部で連日取り上げている。
社説取り上げられたのは、集団的自衛権容認と法人税率引下げの2件。集団的自衛権は、専門家意見欄でも取り上げられている、この件に関する大きな感心が目を引く。

全体として、経済問題よりも政治問題が大きく取り上げられている。これは良いことだろうか?

Wednesday, July 23, 2014

日本は海軍演習でインドに加わる【A7面(国際面)】

米印合同演習に日本に参加したというニュースが、国際面に掲載された。ウォールストリートジャーナル日本語版にも同じ記事が掲載されていたので、借用した。

「インド、日本、米国の軍艦による合同演習が24日、日本に近い太平洋上で始まる。中国の海洋進出が強まる中でアジアの民主国家間の海上協力が拡大される兆しがうかがえる。」
「インドと日本との結び付きは、アジアの地政学的緊張が高まる中で強まっており、日本は今年1月、主として米国とインドの海軍が毎年行っているマラバル合同演習に参加するよう招かれた。」
「米国を中心とした封じ込めを恐れる中国は、日本とオーストラリア、それにシンガポールが2007年に同演習に参加すると反発した。日本は09年にも参加したが、同演習にはその後第三国は参加していない。」
「インドと日本は中国との領土紛争に巻き込まれており、いずれも中国の軍事的台頭に不安を抱いている。インドのアナリストは、同国が今年の演習に日本を招くことを決めたことからは、インドのより自信のある、強力な海上政策がうかがえると述べている。」
「元インド海軍将校で、現在は政策研究ソサエティー(ニューデリー)に勤務するウダイ・バスカル氏は『これは、中国の行動に関してインドやその他の国に不安が見られるという新しい戦略的環境を反映したものだ。』とし、『インドは中国の台頭に対処するため、集団的機能を構築することでこの環境を具現化しようとしている。』と語った。」
「しばらく第三国を交えた演習をしてこなかったインドの判断を批判していたバスカル氏は、インドは今や多極的アジアを求めているとし、この目標を達成する上で海上協力は『賢明な方法』だと述べた。」
「インドと日本は12年に2国間演習を始め、今年1月には両国の沿岸警備隊はアラビア海で合同演習を行った。両国間のつながりは、安倍晋三首相と親密な関係にあるインドのモディ新首相の下でさらに強化されると見られる。」
「今年のマラバル演習に日本が参加することに関する中国当局者のコメントは得られていない。」
「米国の支援を受けている日本は、他のアジア諸国を引き入れて中国に対して一致団結するために外交攻勢をかけている。中国は東シナ海と南シナ海での領有権をめぐって周辺諸国と紛争を起こしていて、インドと国境を接する西部やインド洋でも活発な動きを見せている。」
「インドは中国軍がヒマラヤのインド支配地域に繰り返し侵入していると非難している。両国は1962年、ヒマラヤ国境をめぐって衝突した。」
「インドの当局者は、インド洋での中国のプレゼンス拡大に懸念を強めている。インドはインド洋は自国の影響力の範囲内にあると見ており、この海域にはまた、中東産石油のインド、中国、日本、その他の東アジアの国への重要な輸送ルートもある。中国はパキスタンとスリランカでの港湾建設に資金を提供し、中国海軍はこの海域でこれまでになく活発な動きを見せている。」
「中国としてはインドとの経済関係を改善しようとしている。中国の当局者はモディ首相に手を差し伸べており、両国を含む新興5カ国(BRICS)は最近、西側諸国を中心とした世界銀行と国際通貨基金(IMF)に対抗して、新しい開発銀行を設けることを決めた。」
「元インド海軍幹部で現在は平和・紛争研究所のアナリストを務めるK・ラジャ・メノン氏は『インドは中国と日本の両国との関係を維持することでヘッジをかけている。』と述べるとともに、『これは賢明な外交だ。』と指摘した。」

「インド海軍の報道官によると、24日から1週間、対海賊、対テロリストなどの訓練が行われる今回の演習にはインドからフリゲート艦、駆逐艦、補給艦が各1隻と800人の人員が参加する。この演習で各国は『各国の海軍が戦術的に共同して動かなければならない事態』に備えることになるという。」

WSJは中国を牽制する各国の動きを歓迎している様だ。

Friday, July 18, 2014

日本は水陸両用作戦のために訓練する【A8面(国際面)】

陸上自衛隊が水陸機動団構築のために行っている訓練が、記者団に公開されたが、その様子を詳細に報じている。米国の海兵隊を参考にしている様だ。

この記事の前半部分は、ウォールストリートジャーナル日本版に同じ記事が掲載されてので、そのまま転載させて頂く。

「若い陸上自衛隊員80人がこの地で、水泳、ボート漕(こ)ぎ、飛行中のヘリコプターから海への飛び込みなどの訓練を受けている。」
「これは水陸両用(揚陸)作戦に必要とされる技能で、日本の陸上自衛隊が切実に必要としている技術だ。」
「佐世保の郊外で行われた5週間の訓練は、総勢600人の西部方面普通科連隊の隊員が必ず一度は受けなければならない訓練だ。同連隊は、米海兵隊をモデルにした水陸両用部隊を構築するという日本のプロジェクトの中心となる部隊だ。」
「陸上自衛隊は今週、佐世保での自衛隊員たちの訓練を記者団に公開し、中国との海上での緊張が高まる中で、日本がいかに離島防衛を強化しているかを誇示した。」
「連隊長の国井松司1等陸佐は『米海兵隊にならったボートマンシップ、これを彼らに植え付けている。』と述べ、『海は怖いよ、海から上陸するのはそんなに簡単じゃないよ、失敗したら死ぬということを隊員たちに肌身で感じてもらいたい。』」と語った。
「安倍晋三政権は昨年12月、陸上自衛隊内に新たな水陸機動団を創設する方針を決めた。2つの師団と2つの旅団で構成される。防衛省は当時、機動団は離島への侵攻があった場合、速やかに上陸、奪回、確保することを目的とすると説明していた。」
「安倍首相は2012年12月に政権の座に就いて以降、従来以上に力を誇示する姿勢をとってきた。今月1日には、憲法解釈を修正し、攻撃を受けている同盟国を自衛隊が支援するのを容認した。これは日米同盟関係強化を狙いにしている。」
「政府はまた、戦争と平和の間にある『グレーゾーン』への自衛隊の対応を容易にする計画だ。」
「当局者は、その一例として、外国の非正規軍集団(民兵など)が係争中の離島に上陸したシナリオを指摘した。」
「安倍首相は15日の国会答弁で、沖縄には多くの離島があると述べ、武力攻撃に至らない侵害に対し、継ぎ目のない十分な対応ができる態勢を整備することが一層重要だと語った。」
「首相の動きは、中国を怒らせている。中国は、安倍首相が第2次世界大戦以前に日本がとった軍国主義的な姿勢を復活させようとしていると述べている。憲法解釈の変更は、国内でも不人気で、半分強の日本人が反対している。」
「日本政府は、自前で水陸に対応できる能力を育むことによって、離島を独力で防衛できるようになるかもしれない。そうなれば米海兵隊はその任務から解放される。」
「ホノルルのシンクタンク、『パシフィックフォーラムCSIS』の上級アソシエイト、ケリー・ガーシャネック氏は、自衛隊に水陸両用戦力がないままであれば、『日本は、自分たちが行動できないミッション(というか、どうやらやりたくないミッション)を、若い米国人兵士に押しつけ、日本の防衛のため死んでほしいと依頼することになっていただろう。」と述べ、『それは日米同盟にとって政治的に悪影響を及ぼしていたはずだ。』と語った。」
「ガーシャネック氏は、米海兵隊の退役軍人でもあり、自衛隊の水陸両用能力の構築に関与してきた人物だ。同氏は、『日本は、初歩的だが効率的な水陸両用部隊の設置で重要な進鮎歩』を遂げたと述べている。」

非常に長い記事なので、暫く要約する。

佐世保では、隊員達が遠泳や160キロもあるゴムボートを運ぶ訓練を行っている。彼らは黄色いTシャツを着ているので、「ひよこ」と呼ばれている。こうした訓練の様子は、今週初めて、記者団に公開された。

関係者によれば、水陸機動団は、その14万人を擁する陸上自衛隊の一部とで、規模は3千名になる予定だ。本拠地は、佐世保で、西太平洋最大級の米海軍基地とは6マイルしか離れていない。米軍基地に停泊しているアメリカの水陸両用船が、日米の共同演習に使われることもある。また、陸上自衛隊と海上自衛隊が共同演習をしたりして、これまであまり協力関係の無かった3軍の協力関係も見られる様になってきている。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「日本はまた数十の水陸両用車と数十のオスプレイの購入を計画している。オスプレイは羽の着いた飛行機の様に飛ぶが、ヘリコプターの様に着陸可能だ。」

日本のこうした動きが、米国の軍事費負担に寄与することを、手放しに喜んでいる様に読める。





Thursday, July 17, 2014

日本の監視者は、2つの原子炉の稼動を認めた【A14面(国際面)】


川内原発が安全基準をクリアしたというニュースが国際面に掲載された。

この記事は、次の様な書き出しで始まる。
「日本の原子力監視者は、水曜日に、日本の南部に位置する鹿児島県の2つの原子炉の再稼動について、福島第一の事故の後の、より厳格な基準を満たしているとして、安全の面で問題が無いことを認めた。」
「この決定は、48の原子炉のうち、幾つかを稼動させようとする日本の努力が進展していることを示す一方で、再稼動を推進してきた2つのユニットの発電会社と政治家達は、まだお祝いをするには至っていない。誰が再稼動の最終判断をするのか、その判断にどの程度の時間を要するのかが、いまだに不明確だからだ。」

長い記事なので暫く要約する。

2011年3月の福島第一の事故以降、日本の全ての原子炉の運転は止まったままだ。発電は、輸入される天然ガスや石炭に依存しており、企業や個人は夏の間は消費の自粛を供給されている。事故の前は、発電の30%は原子力に依存していた。輸入資源に頼っているため、電力コストが上昇し、経済に悪い影響を与えている。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「安倍内閣は、エネルギー政策として、原子炉の再稼動を熱望している。首相は、再稼動の最終決断をしたのは、彼だという印象を与えたくない。日本の軍隊というデリケートな政策に取組んでいるため、彼の内閣の支持率は低下している。彼は、原子力にかんする強い感情を考慮した時、原子炉に係わる決断に踏み込むことにより、人気が落ちるきっかけをすることには気乗りしていない。」
「承認が得られた原子炉は、薩摩川内市にある、川内第一と第二で、九州電力によって運営されている。」

Tuesday, July 15, 2014

日本の選挙は原発再稼動のスピードを緩める【A11面(国際面)】

滋賀知事選での自民党惨敗が、原発再稼動に与える影響について、国際面で論じている。

この記事は次の様なコメントで始まる
「地方選挙における反原発候補の勝利は、日本の原発の再稼動の難しさを示している。現在、日本にある48の原発の全てが停止しているが、その再稼動には新しい安全基準を満たすと同時に、再稼動に向けた地元の合意を得る必要がある。」
「日本の原発規制当局は、月曜日に、南日本の鹿児島県にある2つの原子炉のの調査結果を水曜日にも発表すると語った。この問題については、賛成派も反対派も。技術審査には合格するだろうとみている。しかし仮に技術審査に合格したとしても、地元の合意を得るのが困難で、すぐに再稼動できるかは不透明だ。その他の原子炉に至ってはもっと待たねばならない。」

長い記事なので暫く要約する。

福井原発がある福井県の隣の県である滋賀県の知事選挙で、自民党候補を破って反原発候補が当選したことにより、原発再稼動は難しくなった。2011年3月11日の震災前には、実に電力の30%は原子力発電によって賄われていたにもかかわらず。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「安部首相のエネルギー政策は、今年採用されたばかりだが、原子力発電が重要な役割を果たすとしている。菅官房長官は、月曜日に、この選挙結果は、安倍首相のエネルギー政策に影響を与えないだろうと語った。政府は今後共、原子力規制委員会が安全とみなした原子炉の再開を支持すると付け加えた。」
「しかしながら、規制当局は、その決定について、当局のお墨付きと見なさないで欲しいと言っている。」

WSJは原発推進派だと思うが、この記事では慎重な態度を示している。

Monday, July 14, 2014

日本の選挙は首相にとって痛い一発だ【A11面(国際面)】

滋賀県知事選のニュースが国際面で大きく取り上げられた。この結果が、安倍政権に与える影響を分析している。

この記事は次の様な書き出しで始まる。
「日本の与党は地方選挙における驚くべき敗北を経験した。安倍晋三首相にとっては、彼が推進する日本の軍隊への制約緩和の後に新たな政治的な弱点を露呈する結果となった。」
「西日本に位置する滋賀県で空席となっている知事を選ぶための選挙は日曜日に実施されたが、安倍首相率いる自民党はこの選挙にに敗北した。対抗候補は首相の支持率低下に乗じて、激しい選挙戦が展開された。対抗候補は、軍事問題ばかりでなく、福島第一の災害から3年経過して、原発再稼動を推進しようという安倍首相の人気のない計画をうまく利用した。」

長い記事なので暫く要約する。

前民主党衆議院議員の三日月大造氏(43才)が当選した。選挙戦では、三日月氏は安倍首相の平和憲法の解釈変更を激しく攻撃すると共に、原発再稼動を阻止することを公約した。半分開票が終わったところで、三日月氏が46%、自民党候補が44%の票を獲得している。
自民党の敗退は、安倍氏が集団的自衛権行使の容認を閣議決定したことにより、安倍内閣の支持率が50%を下回った直後に起こった。安倍首相の政治力が強固で、地方選挙でも敗退はあまり影響を与えないと思われる。

この記事は次のようなコメントで締めくくられている。
「『この敗退は、必ずしも、政府の力の衰退にはつながらないだろう。経済は好調だから。』と東京の学習院大学の野中直人政治学教授は述べた。『しなしながら、この結果は政府が安倍首相の新しい防衛プログラムを承認するに際して取った性急な対応に対する有権者達の疑問を繁栄していると思われる。』と彼は付け加えた。」
「安倍首相は政権をとってから1年半になるが、これは、安倍首相にとって政治力が不安定になってことを示す最初の兆候であり、粉砕され弱体化された民主党にとって息を吹き返した最初の兆候だ。安倍首相率いる自民党はこの選挙を重要な選挙と位置づけ、元経済産業官僚の小鑓隆史氏(47)の支援のために幹部を送り込んでいた。」

Monday, July 7, 2014

日本のハイテク工場はいまや野菜を作る【A1面】

富士通をはじめとする大手電機メーカが、余剰となった工場で野菜の栽培に乗り出したというニュースが、一面下部のコラム欄で紹介されている。

この記事は次の様な書き出しで始まる。

「ミヤベハルヤスさんは、会津若松の富士通の工場でコンピュータチップの生産管理を担当してきた。昨年のある日、工場長はミヤベさんに仕事の変更を命じた。」
「『明日からレタスを作って下さい。』彼はそう言われたのを思い出す。」
「日本の電機業界が不振に悩む中で、富士通は同工場のチップ生産の3ラインのうち、1ラインの稼動を2009年に止めた。かつてはハイテク機器の頭脳部分を作っていた、消毒され塵一つ無いクリーンルームで、ミヤベさんと30人程のスタッフはレタスの世話をしている。」
「我々はデータセンターやコールセンターといった仕事を考えましたが、承認を得るのは困難でした。とミヤベさんは言う。彼は新しい製品について自分でやったという自負を持っている。『私は、レタスが成長するにつれ、愛着を感じるようになります。』」
「回路基盤を鍬に持ち替えたのはミヤベさんと富士通だけではない。テレビや携帯電話といった分野での韓国や中国との競争に悩まされ、日本の大手電機企業の多くが、余剰となっている工場を農業への転換させている。」

長い記事なので暫く要約する。

富士通は先月会津若松工場産のレタスの販売を開始した。東芝は、東京郊外の余剰となっている工場で野菜の生産を開始した。パナソニックはほうれん草などの野菜を生産するためのコンピュータ制御の温室の販売を予定している。シャープは、同社の光や空気浄化技術を使って、室内で苺を栽培する試験を開始した。

安倍政権は、農業への大企業進出による価格低下を期待しており、こうした動きを歓迎している。富士通は最初は福島県から補助を受けていたが、最近は政府が全国規模での補助金制度を導入し、富士通の様にハイテクを利用した農業プラントの数が過去3年で4倍となり、380に達している。

富士通の工場では研究用の上着とマスクに身をつつんだ従業員が、土ではなく、肥料や栄養素が入った水を使って、レタスを栽培している。こうした栽培法により、カリウムの量を減らし、高齢者が食べやすいレタスを作ることがで出来る。また、バクテリアの無い空間で作られるため、長く保存が可能で、冷蔵庫にいれておけば2ヶ月がもつ。従って、輸出も可能だ。しかし、価格が問題だ。富士通レタスがスーパーマーケットで3ドルで販売されており、これは通常のレタスよりも1ドル高い。

東芝は、利益をあげるには規模が重要とみており、2015年までにレタスの生産量を3百万個にまで増やし、年間2百9十万ドルの売上を見込む。これらのレタスをアジアや中東へ輸出する計画だ。富士通は、現在は一日3千5百個の生産だが、軌道にのれば、年間4百万個まで生産を増やす計画だ。

全ての人がハイテク農業を目指している訳ではない。土を使ったオーガニック市場が伸びているという人もいる。パナソニックは、ハイテク農業と従来からの伝統的な農業を組み合わせた方法を模索している。同社ののタニザワタカヨシ氏(40才)は3年前にマッサージチェアの生産から、ほうれん草の栽培へと配置転換された。

「この配置転換は、そんなにドラマチックなものではありません。とタニザワ氏は言う。マッサージチェアは内部のボールを動かすためにモータを使うが、温室では日光を遮るために天井のカーテンを動かすためにモータを使う。足をマッサージするためにバッグに空気を送り込むためにポンプを使う代わりに、温室ではほうれん草に水をやるためにポンプを使う。」
「もう一つの良い点は、野菜は、マッサージチェアを使う人ほど気難しくない点だ。『マッサージチェアは難しいです。ある人にとっては気持ちが良くても、他の人にとっては正反対だったりします。』とタニザワ氏は言う。『野菜はけして文句を言いません。従順でとても良い子です。』

日本の法人税引き下げによる機会【A10面(社説)】

安倍首相の法人税率引き下げ政策を絶賛する社説が掲載された。引き下げに対する反論を、見事に切り捨てている。WSJは米国政府にも法人税率引き下げを迫っており、まず、日本の成功を強く望んでいる様だ。

WSJ日本語版にも同じ記事が掲載されていたので、そのまま転載させて頂いた。


「法人税の実効税率を引き下げることで投資と成長が促進される――主流エコノミストの間でこの理論に対する議論の余地はほとんどない。だが、なぜか日本のエコノミストらは、安倍晋三首相による法人減税が純粋な便益をほとんど生み出さず、当面は大きなコストに直面すると思い込んでいる。首相は財務省の無能な官僚を排除する「第4の矢」を放つ必要があるかもしれない。」
「政府は6月、新成長戦略を閣議決定した。ここには法人税の実効税率を向こう数年の間に現行の35.64%から30%未満に引き下げる計画が盛り込まれた。経済界の一部からは欧州諸国や韓国と同水準になる25%まで下げるべきだとの要望もあった。首相はこれに応えることができなかったが、30%未満という控えめな計画でさえ米国の35%と大きな開きを生む。」
「懐疑派は、そもそも日本企業の3分の1しか法人税を払っていないのだから、実効税率を下げても目立った効果は見込めないと主張する。この批判は当を得ていない。損失を予想して投資する企業はない。企業が予想する将来の収益に適用される新税率は、現在の投資決定に大きなインセンティブとなる。日本が本気で海外投資家から資金を集めようとしているのなら、税率が重要な問題になる。」
「財務官僚は安倍首相に対し、法人減税で見込まれる年間3兆円ほどの税収減を埋め合わせる方法を見つけるべきだと主張する。この議論は、減税が成長を刺激し、課税対象を拡大させて歳入を増やすというメリットを評価できていない。一方、減税によって、首相は日本に必要な幅広い税制改革を推進する機運を生み出すことができる。」
「こうした税制改革は現行の法人税法に潜む多くのゆがみに切り込む可能性がある。政府は長年、お気に入りの産業や事業を支援するために与信や控除、免除など多様な手段を駆使してきた。政府が2012年に徴収した法人税は10兆4000億円にとどまった。野村証券の試算によると、税法上の抜け穴がなければ16兆2000億円に達していたはずで、実際の税収はその64%しかなかったことになる。こうした政府支援の恩恵を最も多く受けているのが製造業と金融業で、小売りやサービス業は重い負担を背負ったままだ。」
「穴だらけの税制が創造的破壊の進行を阻害し、成長ペースを鈍化させている。特別支援の恩恵は効果的なロビー活動のできる大企業に偏り、そのしわ寄せは中小企業に及んでいる。大企業の利益を守る経団連が、法人減税に賛成しながら税制改革に反対するのはこのためだ。」
「安倍首相が打ち出した『日本版スチュワードシップ・コード』(機関投資家の行動指針)は、企業統治(コーポレートガバナンス)の分野で機関投資家のより積極的な役割を促している。経済界はこれに難色を示しているが、税制の簡素化はこの指針を後押しするだろう。指針の目的は、潤沢な内部留保を抱える上場企業に対し、その資金をより生産的に利用するよう圧力をかけることだ。税制改革はこのプロセスに向けたインセンティブを生み出す手段となり得る。」

「法人減税は安倍首相の幅広い経済課題から出てきた『後知恵』で、ここ数カ月の集中的な議論から生み出されたものにすぎない。ただ、労働市場改革、自由貿易協定、移民問題をめぐる国会論戦がいつも通り泥沼にはまっている中、法人減税は首相の最大の功績の一つになる可能性がある。法人税改革は他の改革と同じくらい必要なもので、うまく仕上げれば成長エンジンの速度を速めるかもしれない」

Saturday, July 5, 2014

日本の限定された防衛シフト【A11面(専門家意見欄)】

安倍首相の集団的自衛権についての閣議決定が専門家意見欄て取り上げられた。

この記事は次の様な書き出しで始まる。
「今週、日本の安倍晋三首相は、彼の祖父である岸信介から受け継いだ大志を満たすことが出来た。岸信介は戦時中の軍需品大臣であり、戦後の首相だった。首相として、岸氏は日本と米国の関係がより平等になる様に努力した。結局、1960年の相互安全保障条約の改定のために、首相職を犠牲にした。今、彼の孫は、更なる一歩を踏み出した。彼の内閣は長年確立されてきた憲法9条の解釈を変更した。日本の憲法は、日本の自衛隊が、同盟国を援助することを禁止してきた。」
「ある意味で、安倍首相の憲法解釈変更の決断は、東アジアの安全保障環境の中で、主要な役割を担おうという日本にとって、重要な一歩だ。安倍首相は、当初考えていたよりも限定的な解釈を受け入れざるを得なかったが、それでも彼は、重要で象徴的な勝利をおさめた。」

長い記事なので、暫く要約する。

世論はこの決断には懐疑的だ。日本が右傾化しつつあるというのも当らない。むしろ、今回の議論を通して、国民は憲法9条の改正に慎重になりつつある。また、公明党の存在も安倍首相にとってはブレーキになる。集団的自衛権の行使は、憲法9条の解釈により制限されるだろう、こうした意味で、日本は普通の国からはまだほど遠いし、ましてや再軍備した国ではない。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「しかしながら、今回の解釈変更は、取るべき最善策かもしれない。日本は軍事力についての戦後の制限を取り去ることを望んでいないことは、ワシントンと東京の同盟管理者には不便であるが、中国との地域における競争にとっては、逆説的ではあるが強みになる。中国は日本の安全保障政策やドクトリンの変更を日本の戦時中の性格が出てきたとして描こうとするが、日本国民が戦後の安全保障の枠組みの変更に際して取っている注意深いプロセスは、日本の意図が如何に善意に満ちているかを強く示すものだ。」
安倍首相は、最近記憶に残っている中で最も強い首相であり、戦争終結時に米国から押し付けられた日本の軍隊に対する制限を取り払おうとかなり前から決めていたが、その首相が解釈変更に対する制限を受け入れざるを得なかったということは特筆すべきだ。日本の政府関係者が、東アジアの状況を変えるために、軍事力を使用することには反対だと述べるている。そうしたメッセージが軍事力に関する一部のもしくは全ての制限をすぐに取り払おうとする国から発せれらるよりも、その憲法が国際紛争の解決のために軍事力を使うことを禁じていて、その国民がそうした憲法を破棄することを望んでいない国から発せられた方が重みがある。」

日本の新しい防衛姿勢【A12面(社説)】

安倍首相が集団的自衛権容認を閣議決定したことが、社説で取り上げられた。ウォールストリートジャーナル日本版にも類似の記事が掲載されたので、若干の修正を加えて使用させてもらった。

「日本政府は1日の閣議で、憲法を再解釈して集団的自衛権の行使を容認することを決めた。アジアの民主主義諸国の安全保障を強化する重大かつ長年懸案だった決定だ。だが、これと同じほどに重要だと思われるのは、この決定が中国の行動が大きなきっかけであることを北京(中国政府)に思い至らせるだろうという点だ。つまり、東シナ海での中国の侵略的な行動が、日本をこの地域でより積極的な役割を担うように決意させたということだ。」
「安倍晋三首相はタカ派であり、集団的自衛権をめぐる今回の動きを強く推進してきたが、他方で、日本の安保環境の変化がそれを必要で不可避なものにした。こうした変化には、中国の軍事力が急速に拡大していることや、係争水域の尖閣諸島の現状(ステータス・クオ)変更のため中国が力を行使していることが含まれている。 中国外務省は1日、猜疑(さいぎ)の目をもって反応した。また国営新華社通信は論評で、日本は「戦争の亡霊とたわむれている」と非難した。しかし過去5年間にわたって、この東アジア地域全体を警戒させてきたのは、中国の好戦的な発言であり、その一方的な行動だった。」
「日本が軍国主義的な過去に戻るというのは問題外である。平和主義的な日本国憲法は、第2次世界大戦後に米国が日本に課したものだが、それを弱体化することに対し日本の一般国民に依然ためらいがあることは頭にとどめておくべきだ。幾つかの主要なニュースメディアが今月実施した世論調査では、日本人の過半数が集団的自衛権の再解釈に反対していることが判明した。安倍政権はこの再解釈を可能にするため憲法改正によらずに閣議決定という形を使った。このため同政権は、今回の変更を慎重に履行しなければ、一般国民の反発によって弱体化しかねない。」
「今回の変更は日本の軍事力に課されている多くの制限を取り払うものではない。安倍氏は、平和主義的な連立パートナーである公明党の支持を取り付けるため、譲歩しなければならなかった。したがって日本の集団的自衛権は非常に限定的だ。」
「集団的自衛のドクトリンによって、日米防衛同盟における日本の役割はより対等なものになるろう。日本の自衛隊は、日本の沿岸越えた水域ではどのような紛争でも、矛先としての役目を果たす公算はほとんどないが、例えば部隊防護には参加するかもしれない。日本と米国を北朝鮮の攻撃から守るため、イージス搭載艦がミサイル防衛システムに統合される可能性もあるだろう。」
「地域的にも、日本は用意周到に足を踏み出さねばならない。とりわけ韓国に対してはそうだ。韓国政府は1日、日本が朝鮮半島における集団的防衛に韓国の招請なしで参加するのは容認されないと慎重な姿勢で強調した。」
「ただ、他の民主主義諸国との安全保障上の関係を強化する余地は増えるかもしれない。日本はフィリピンとベトナムに対して沿岸警備艇を供給すると約束しており、オーストラリアとの間では潜水艦の共同開発の取り決めに署名した。一方、オバマ政権は軍事費を削減しており、敵対勢力が一線を越えた場合の軍事行動に消極的になっている。この結果、アジアでは米国が提供する安保に対する信頼性に懸念が高まっており、日本が埋めるべきギャップができつつある。」

「第一次世界大戦前夜のヴィルヘルム2世時代のドイツと今日の中華人民共和国との類似点について多くのことが書かれてきた。権威主義的でノン・ステータス・クオ(現状打破志向)的な大国の台頭は、双方の政治家によって対応することができる。しかし平和の究極の保証は、民主主義諸国が団結して、侵略に対抗し、ルールに基づいた国際秩序を防衛する能力があるかどうかにかかっている。他の民主主義諸国の防衛に駆けつけねばならないという日本の認識は、アジアでの平和維持に決定的に重要なのだ。」

東京はピョンヤンに対する制裁を緩和する【A8面(国際面)】

日本が北朝鮮に対する制裁を緩和したというニュースが国際面で大きく取り上げられた。

この記事は次の様な書き出しで始まる。
「日本は木曜日に、数十年前に拉致された日本人について調査を開始するという北朝鮮の決定を受けて、同国に対する制裁を一部解除すると発表した。」
「安倍首相によるこの発表は、日本と北朝鮮の間の関係改善を示している。また、この発表は、安倍首相と対立する韓国の朴大統領がソウルで中国の周近平国家主席をもてなす、まさにその日に行われた。」

長い記事なので、暫く要約する。

解除される制裁には、渡航制限、送金制限、北朝鮮籍船舶の入港禁止等が含まれる。日本は、北朝鮮の核開発阻止を目的にした国連の制裁は、引続き継続するが、一部の専門家は、日本の北朝鮮との関係改善は、北朝鮮に対する国際的努力に逆効果になるとみている。拉致問題は、日本人にとって、感情的な問題であり、安倍首相はその解決を公約している。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「国家による拉致プログラムにより、北朝鮮は、数十人もしくは数百人の日本人を1970年台、1980年代に誘拐した。北朝鮮は、海外で情報収集活動をするためのスパイ養成のために、様々な国籍の市民が必要だった。」
「2002年の日本と北朝鮮のトップ会談で、北朝鮮は、13人の日本人の誘拐を認め、5人が日本へ戻った。残りは死亡したとされている。」


Thursday, July 3, 2014

韓国は日本の謝罪検証を批判する【A8面(国際面)】

日本が河野談話の再検証を行ったことを韓国の朴大統領が非難したというニュースが、国際面で大きく取り上げられた。

この記事は次の様な書き出しで始まる。
「日本政府は、第二次世界大戦中に日本軍のために性奴隷として働くことを強要されたアジアの女性に対する謝罪について、再検証を行ったが、韓国の朴大統領は、検証することそのものが、1993年の談話を故意に破壊するものだとして、非難した。」
「『この検証は犠牲者の心と2国間の関係について、害を及ぼすものだ。』と朴大統領は中国国営テレビとのインタビューで述べた。このインタビューは水曜日に放送された。」

長い記事なので、暫く要約する。

先月、日本は河野談話の作成過程を再検証し、それが日韓の間での秘密外交交渉の産物であったことを公表した。韓国は、日本の右寄りの政治家がこれを利用して安倍首相に謝罪の撤回を迫るのではないかとの恐れを抱いている、一方、日本は、検証結果にかかわらず、謝罪は維持すると述べている。自分は性奴隷だったとする韓国人が54名生存しており、韓国政府は最近、新しい謝罪と国による保障を要求した。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「朴大統領の発言は、火曜日に予定されている中国の習近平の2日間のソウル訪問に、先立って行われた。2人のリーダーは、安倍首相の下で、日本が国家主義に偏っていることについて、共同で懸念を表明する見通しだ。日本軍の戦時中の性奴隷の多くがまた中国人であり、中国もこの問題で日本を批判している。」

Wednesday, July 2, 2014

日本は軍隊の役割の拡大を承認する【A10面(国際面)】

集団的自衛権の閣議決定のニュースが、国際面で大きく取り上げられた。

この記事は次の様な書き出しで始まる。

「安倍晋三首相は日本の軍事的役割を拡大したいという彼の決断は、侵略者を阻止することにより、平和の維持に貢献すると述べた。しかし、阻止される国の一つである中国は、その様には見ていない。」
「安倍内閣は、日本の平和憲法の解釈の変更を承認した。これにより、長い間、制限されてきた日本の領土の外での軍事的活動が、緩和される。今年の秋に開催される国会で安倍首相のビジョンを具体化するための議論が行われる。」

長い記事なので、暫く要約する。

この解釈変更により、日本は集団自衛権を行使出来る様になる。安倍首相は、この変更が抑止力として働き、平和の維持に貢献すると述べた。

この解釈変更は、日本の有権者には不評だ。中国は、日本が過去の軍国主義に戻ることにより、地域の安定を壊すものだとした。米国はこの変更を支持している。韓国は直接の批判はしていないが、不快感を表明した。東南アジア諸国、特に、中国との領土問題を抱えるフィリピンとベトナムは、歓迎している。

この変更は、首相官邸の外での大規模な反対デモという極めてまれな事態を招いている。安倍首相は集団的自衛権が行使される場合の幾つかのシナリオを示して国民の理解を得ようとする一方、集団的自衛権行使に関する法案を国会に提出する予定だ。この閣議決定そのものも、公明党との厳しい交渉の産物だ。米国と日本は新しい防衛ガイドラインを年末までに締結すべく交渉を続けているが、米国は今回の解釈変更が、米国軍の支援をより容易にするとみている。

この記事は、次の様なコメントで締めくくられている。
「『我々はこの解釈変更が北東アジア及び世界において、予測される困難に対し、より柔軟な対応を可能にするものとみている。』と米国政府高官は述べた。」
「日本の今年度の予算では、軍事費は4兆7千8百億円計上されており、前年に比べて2.2%増えている。火曜日の決定は、予算に目先での変更を与えるものではない。」




Tuesday, July 1, 2014

日本はアジアにおける安全保障上の役割を拡大する準備を整える【A8面(国際面)】

安倍首相が集団的自衛権を閣議決定する当日の朝刊で、この問題が必ずしも世論の支持を受けていないことを、国際面で詳細に報じている。
Yahoo Newsにほぼ完璧な和訳が掲載されていたので、借用させて頂いた。

「日本の安倍晋三首相は1日、60年にわたって続いてきた日本の平和主義政策の歴史的変更を正式に発表する。これにより、安倍氏が抱き続けてきた個人的な目標は実現するが、一方で有権者を遠ざける可能性もある。」
「安倍内閣は1日、日本を取り巻く安全保障環境が『根本的に変容』していると指摘して、憲法解釈の変更を発表し、攻撃を受けている同盟国を自衛隊が支援できるようにする。」
「日本政府はこれまで、米国が作った戦後憲法では、自衛のための限定的なケースを除いて軍事力を行使できないとしてきた。」
「憲法解釈を拡大して、いわゆる集団的自衛権を可能にすることで、日本は米国との同盟関係においてこれまでより重い軍事的負担を受け入れることになるだろう。」
「ウォール・ストリート・ジャーナルが入手した閣議決定案は、新しい憲法解釈によって自衛隊は『密接な関係にある他国』が攻撃された場合に軍事力を行使できるとしている。」
「安倍氏とその側近は、これによって日本は自国が目標になっていなくても、例えば北朝鮮がグアムなどの米軍基地に向けて弾道ミサイルを発射した場合、これを撃ち落とすことができると述べている。」
「閣議決定案は『日米安全保障体制の実効性を一層高め、日米同盟の抑止力を向上させることにより、武力紛争を未然に回避し、わが国に脅威が及ぶことを防止することが必要不可欠である。』としている。」
「オバマ大統領ら米国の当局者はこの解釈変更を是認している。」
「日本戦略研究フォーラム(JFSS)の防衛研究者グラント・ニューシャム氏は『米国はその時期が来たとみている。』とし、『日本の影響力拡大は、米国の国防予算が縮小し、アジアでのプレゼンスを高めるよう(米軍が)強く求められている時に大いに役立つ。』と述べた。」
「しかし、世論調査ではこの問題での日本人の見方は割れている。日本の三つの新聞―日経、毎日、朝日―が過去1週間に行った調査では、回答者の少なくとも半数が集団的自衛権の行使という考え方に反対し、賛成しているのは3分の1かそれ以下だ。」
「この調査では、憲法改正をせず解釈の変更によって大転換を図る安倍氏の手法に国民が不安を抱いていることが示された。」
「回答者の半分以上は、この政策変更は単なる閣議決定で行われるべきではないとし、目的達成のために受け入れ可能なやり方だとしているのは30%以下だった。」
「安倍氏は2006―07年の第1次政権の時に軍事力の拡大を目指した。同氏は憲法を修正しようとしたが、リベラル派からの反対や国民の不信感に直面し、1年後には退陣に追い込まれた。12年12月に復帰した際、安倍氏は憲法改正を容易にすることを提案したが、弾みはつかななった。」
「安倍氏は、1947年に施行された憲法の文言を修正するというほとんど不可能な作業の代わりに、集団的自衛は憲法の再解釈によって実現できると宣言する道を選んだ。」
「これは連立相手の公明党の反発を招いた。同党は解釈変更は早計であり、不必要だとしていた。しかし、同党の執行部はここ数日の間に主張を後退させ、安倍氏の自民党とともに解釈変更を容認する用意のあることを示唆するようになった。」
「自民党は、集団的自衛権の発動には新しい法律が議会で承認される必要があると指摘している。衆参両院で過半数を制し、16年までは国政選挙がないとみられることから、現政権は政策に広範な裁量を行使できる。」
「テンプル大学現代アジア研究所のジェフ・キングストン所長は『このような大きな政策変更において世論に向き合わなかったことで安倍氏は日本の憲法と民主主義を冷笑しているのだ。』とし、『有権者が彼を選んだのはイデオロギー面での政策ではなく景気政策に期待したからだ。景気が勢いを失えば、人々の忍耐も限界に来るかもしれない。』と語った。」