日本では、労働市場が逼迫するのに連れて、終身雇用制を維持するのが益々難しくなっているとする記事が、12日の国際面に掲載された。
求人倍率1.44倍、失業率2.5%と労働市場が逼迫しており、転職すれば給与が上昇することが期待できるとしている。その一方で、キャリアの途中で転職する人の数は全体の5%に過ぎず、1つの企業で働く年数は米国の4.6年に対し、日本では12年で、大企業を中心にまだまだ終身雇用制度が根付いているともしている。トヨタ自動車が、富士通やNECの技術者を狙って、南武線内に「シリコンバレーの技術者よりも南武線沿線の技術者が欲しい。」とする広告を打ったと言うエピソードなどを紹介していて、面白い記事に仕上がっている。
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日本の大企業での終身雇用制度は、不況の20年の間も、生き残ってきた。しかし、今、この制度は最大の試練に直面している。タイトな労働市場だ。
多くの人々が、より高い収入や、より短い労働時間を求めて、仕事を変えている。
「私も、以前は、最初に入社した会社で一生働き続けると言う日本的な考えを持っていました。」と43才のブラウン・ヨウコさんは言う。彼女は、電機メーカーで17年働く特許スペシャリストだ。仕事の将来性への懸念が大きくなった際に、彼女は仕事を変えた。そして、転職後の会社が週末の労働を強いた際には、彼女は再び仕事を変えて、昨年、日本タバコに入社した。
総務省によれば、仕事を変えた人の数は7年連続で増えており、2017年には317万人に達した。2月には、100人に対し、158人の求人があった。これは、過去44年間で最高であり、失業率も2.5%の低さだ。
求人企業のリクルートの調査によれば、企業間の競争の激化を反映させて、2017年度は、求人をした人の、29.7%が以前の勤務先よりも、10%以上収入が増加した。
今月、ファッションサイトZozotownを運営する日本企業が求人広告を出したが、7人の天才を採用し、それぞれに100万ドル支払うとしている。テクノロジー部門幹部のカナヤマ・ユキは、数10人からの応募があったと言う。「ITやソフトウェア企業では、一人の人間がビジネスの大きな影響を与える。」と彼は言う。「グーグルやアップルといった海外企業では、日本企業では考えられないほどの金額の報酬が、才能のある人々には提示される。」
終身雇用制のもとで、日本の殆どの大企業は毎年春に新卒者を採用し、厳しい不況時を除いて、定年までほぼ確実に働ける終身雇用を保証している。ソニー、ホンダ、パナソニックなどの大企業のCEOは、その会社で雇用されてきた生え抜きの従業員だ。
この制度は、会社での出世が保証され解雇の心配がなく、長期的な視点で従業員を教育しようと言うインセンティブが働くが、一方で、停滞と低い生産性が問題視されてきた。
さらに最近になって、日銀の超緩和政策をはじめとする安倍首相の経済政策が8四半期連続の経済成長をもたらしている。一方、人口が減少しているため、労働者の働く場所も限定されてきている。
日本タバコは、ライバルのフィリップモリスやアメリカンブリッティシュタバコが、燃やすのではなく温めるだけのタバコの販売で先行する中、2017年の中途採用者の数をほぼ倍増させた。このタバコは、タバコを温めてニコチンを含んだ水蒸気を発生させる。
日本タバコは、自社で開発したプルームテックと言う装置によって、その劣勢をひっくり返そうとしている。ブラウンさんは、プルームテックなどの技術に関連した同社の知的財産を守るために採用された。
「今日のスピーディーに変化する競争環境の中では、初日から競争に参加できる人が必要です。」と日本タバコのスポークスマンのシラス・マサヒトは言う。
昨年、トヨタ自動車は、東京南部の巨大な研究センターで働く人たちがよく利用する電車の中で広告を出した。こうした研究センターは、富士通、NEC、東芝などのセンターで、そこで働く従業員にトヨタへの転職を促した。「私たちは、シリコンバレーの技術者よりも南武線沿線の技術者が欲しいのです。」とトヨタのポスターは言う。
しかし、多くの企業が未だにキャリアの途中で転職をすると言う考えに抵抗している。大垣共立銀行は昨年177人の新卒と2名の中途を採用した。同社のスポークスマンは、新卒を採用して、広範な教育を施したいと言う。「そうすれば、大垣共立銀行の考えと文化を踏襲させ、さらに発展させることが出来ます。」
転職者の雇用者全体に占める割合は、まだ5%程度に過ぎない。2016年において、日本の平均的な労働者は一つの企業で12年間働いている。英国では8.6年だ。米国の労働統計局は、平均雇用年数についてのデータを公表していないが、2016年の米国での平均値は4.6年だった。