米国は中国との貿易戦争を繰り広げているが、80-90年代の日本との貿易戦争で得た教訓はそこでは役に立たないとする記事を、9日の国内面に掲載した。
日本は、小国で、軍事面で米国に依存しており、政治的な野望もないので、交渉の相手としては御し易い。実際、日米貿易戦争でも、日本は抵抗せずに、米国の要求をおとなしく受け入れた。しかし、中国は、大国で、強力な軍隊を作りつつあり、将来の国際リーダーの地位を明確に狙っている。これまでも米国の要求を激しく拒否しており、日本との交渉でのやり方は通用しないとしている。
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ホワイトハウスは、1980年代、1990年代の日本との貿易戦争を、中国への貿易戦争への教訓として見ている。しかし、この2つの時代は、多くの共通点も持っているが、その違いも顕著だ。
米国の通商代表は、ロナルド・レーガンが、関税を駆使して、日本に半導体市場を開放させ、米国への鉄鋼製品などの輸出を制限させたことを、素晴らしいとしている。現在の通商代表であるロバート・ライトハイザーは、その当時、実務者クラスとして、レーガンの戦略の実行を手伝った。
当時の日本は、今日の中国と同様に、多額の対米貿易黒字を抱えていた。日本は、中国同様、特定の企業をグローバル企業に成長させるために通商政策を駆使したし、あらゆる手を使って米国のテクノロジーを手に入れようとしていた。
日本の方針を変更させるための主要なツールが、1974 年の米通商法301条だったが、トランプ政権は中国と対峙するために同じ条項を使用している。この条項は、貿易戦争の際に、大統領に関税やその他の手段を使って報復をするための広範な権限を与えている。
「この条項が日本に対して使われた際には、それは機能した。」とその当時からの共和党の強硬派であるクライド・プレストウィッツは言う。
プレストウィッツ氏は、そうした政策が再び機能するかどうかは疑問視している。「中国は、異なった動物だ。」と彼は言う。
日本を標的にする一方、米国はインドに圧力をかけるために301条を使用した。米国は、インドが保護された市場を自由化しないのなら、関税をかけると言って脅した。インドは激怒し、交渉を拒んだ。米国は後退した。
インドと同様に、中国は巨大で、国家主義的な国だ。そのリーダは、中国が再び世界のリーダーの地位につく様に運命づけられていると信じており、世界クラスの軍隊を構築しつつある。日本は比較的小さい国で、そのグローバルな野望は第二次世界大戦中に萎れてしまった。その安全保障は米国に依存している。
日本との交渉には時間がかかり、米国をイライラさせはしたが、最終的に日本は米国の要求をのんだ。プレストウィッツ氏によれば、日本は米国が中国から守ってくれることを必要としていた。
実際のところ、日本は、米国製品に関税をかけるなどして、報復をすることはなかった。報復をすると言って脅すことすらしなかった。
一方、中国は、トランプ政権が500億ドルの関税をかけると言って脅してから24時間経たないうちに、500億ドルの報復関税の対象となる米国製品のリストを公表した。
トランプは追加で、100億ドルの中国製品を関税の対象とした。中国通商省のスポークスマンは、「中国は強力に対抗する準備がある。」と主張した。
日本は貿易戦争をトーンダウンさせ、最も成功していた自動車メーカーや電機メーカーが米国に工場を建築した。日本は、米国の工場への投資を継続させており、今日、何万人もの米国人労働者を雇用している。そうした投資によって、多くの親日派の政治家を米国に作ってきた。特に共和党内に。
そうした道は、中国に対しては開かれていない。米国は安全保障上の懸念を理由に、中国が半導体などのテクノロジー企業を買収することに制限をかけている。
中国は、政治的にセンシティブな製品を制裁の対象にして反撃している。米国の農産物や航空機などだ。
関税をかけると言う点では、日本との貿易戦争から学ぶべき教訓がある。国内世論がホワイトハウスの計画をダメにしてしまったのだ。クリントン政権は、日本により多くの自動車部品を購入させるために、日本の高級車に100%の関税をかけようとした。
しかし、米国の自動車ディーラーが激怒し、ホワイトハウスにこの交渉をやめる様に迫った。交渉の目的は、日本企業に米国での生産を拡張させることを目指していたが、それはわざわざ交渉になくても、すでに計画されていたことだったからだ。
現在繰り広げらている中国との戦いでは、ロビーストたちは、農業従事者が被害を受ける可能性にフォーカスしている。農業従事者は、政治的な支援者であり、強力な集団でもある。トランプ大統領にとって重要な支持者たちだ。トランプ大統領は、先週、トランプ政権は、農業従事者を保護するための計画を作成中だと述べたが、詳細については言及しなかった。
1990年代の日本との貿易戦争で、クリントン政権で、日本との交渉に従事したミッキー・カンター米元通商代表は、その当時の交渉から学んだ最大の教訓は、しっかりとした目標と戦略を設定することだと述べた。
トランプ氏が中国に対して報復するとして脅しをかける一方で、彼の側近は貿易戦争など存在しないとして市場をなだめようとしている。「そうしたチグハグなやり方は、国内での信頼や、中国との信頼を失わせることになる。」とカンター氏は述べた。