WSJは10月26日の国際面に、増大する外国人労働者が、日本の平均賃金を押し下げているとする記事を掲載した。
日本は表向きは移民を受け入れていないが、現実には100万人を超える外国人労働者(前労働人口の2%にもなるそうだ。)が人手不足の労働市場を支えている。安倍首相は、賃金上昇や労働生産性の向上を重点政策に掲げるが、外国人労働者の増加はこうした目標の阻害要因となっており、いつまでも放置する訳にはいかない。日本でも、移民の問題について、今こそ本格的な議論が必要だと言っている様に読める。
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この43年間で最も逼迫した労働市場に直面して、がってん寿司は2人の中国人のキッチン労働者と1人のフィリピン人のウェイターを雇用した。ウェイターは顧客に「いらしゃいませ。」と声をかける。どちらの仕事も時給は10ドル程度だ。
「私はここで働く経済的なメリットを感じます。多分、将来はもっとそう感じるでしょう。」と、大学生で卒業後も寿司ビジネスを学ぶために日本に留まることを希望しているシェン・ジガンさんは言う。
日本は戦後初めて、低賃金の外国人労働者に門戸を開いた。これは重要な意味を持つが、規模としてはまだ小さい。そして、これは、日本の短期的な目標と長期的な目標がぶつかり合うことを意味する。労働人口を増やす一方で、支出や成長を促すために、賃金を上昇させようとしているのだ。
日本の産業界のリーダーやエコノミストは、移民を増やすことを訴えてきた。それが、高齢化と少子化に直面する国にとって、労働者を増やす唯一の手段だからだ。しかし、その様な人々は、賃金を下げることに貢献してしまう。これは、安倍首相の提示する、賃金と生産性の向上と矛盾する。
「もし、労働コストが上昇すれば、企業は生産性を上げざるを得ないだろう。」と第一リサーチインスティトゥートのホシノタクヤ氏は言う。「しかし、外国人労働者の増加は、そのような動きにブレーキをかけてしまう。」
労働省のデータによれば、2016までの4年間で、日本の外国人労働者は40万人増加した。初めて100万人を超え、労働者人口の2%を占めるまでになった。米国では海外生まれの労働者が全体の17%を占めるので、これには及ばないが、東京の様な大都市では、労働市場に変化を起こすのに十分な数値だ。
「外国人の助けが無ければ、私たちのレストランの幾つかは閉鎖せざるを得ないでしょう。」とがってん寿司などの寿司チェーンを運営するRDCの採用マネジャーのフクイ・ヨシテル氏は言う。
日本では、15才から64才までの人口は毎年60万人以上減少しており、外国人労働者は日本の労働力強化に貢献している。しかし、15年にわたって経済を停滞させてきたデフレからの脱却にとって、賃金を上昇させることも重要だ。経済は6四半期連続で成長。これは、ここ10数年で最長だ。失業率はわずか2.3%で、ここ23年で最低だ。この様な成功が、安倍氏が率いる連立政権に、日曜日の選挙で勝利をもたらした。
しかし、インフレと賃金の上昇はスローだ。8月のインフレ率は0.7%にとどまり、賃金は1年前の同月に比べて0.1%下落した。
日本の最低賃金は、日本生まれの多くの労働者を惹きつけるには低すぎるが、多くのアジアからの労働者にとっては十分だ。第一のデータによれば、日本の最低賃金は、ベトナムの21倍、ネパールの12倍、中国の3倍だ。
多くの外国人労働者は語学を学ぶ学生として来日し、週28時間まで働くことを許されている。しかし、ほとんどの労働者は、入国ルールによって、永遠に滞在することは出来ない。安倍氏は、長期的にみて、低賃金の移民が多く入ってくることを望まないと繰り返し述べてきた。
しかし、他のアジアの国々からの労働者を採用してでも、人手不足を解消しようとする企業の動きを止めることは出来ない。例えば、コンビニエスストアのチェーンであるファミリーマートユニーホールディングズは、海外の学生をターゲットにして、語学学校でリクルートのためのセッションを開催している。
ホシノ氏は、全体として、海外からの労働者を受け入れることは日本にとって価値があるのかどうか、意思決定を迫られていると言う。「表面的には、日本は移民を受け入れないと言っている。しかし、現実を見ると、次第に外国人に依存する様になってきている。」