Tuesday, October 24, 2017

安倍首相は選挙に勝利し、経済問題へ注力【A6面(国際面)】

1022日の衆議院選挙を受け、WSJは翌々日の国際面で、安倍首相の経済政策に関する記事を紹介した。


この記事は、安倍首相の経済政策を様々な点から論じているが、安倍首相が今回打ち出した「教育の無償化」に多くのスペースを割いている。この政策は、もともとは左寄り政党が考え出したもので、「大きな政府」を標榜するものだ。これまでの自民党のスタンスとは一線を画すものであり、安倍首相がいかなるスタンスでこの案を打ち出してきたのかはっきりさせないと、市場の混乱を招くとしている。

***** 以下本文 *****
安倍首相は、衆議院選挙での勝利を確実にした後、日本経済の構造的な問題と取り組むと述べた。
比較的好調な経済と株式市場の高騰により、安倍首相率いる連立政権は衆議院で2/3を超える議席を確保した。投資家たちはこの結果に好感し、日経株価指数は、最長期間を更新する15日間連続の上昇を記録した。
しかし、安倍首相はもっと長期的な課題に直面している。日本は高齢化に直面しているし、生産性は他の先進国の後塵を拝している。
安倍氏は月曜日に、全ての家族の幼児教育を無償化し、必要な家庭に対しては高等教育を無償にすると述べた。この政策はもともとは左寄りの野党から、少子化に歯止めをかけるために提案されたものだ。「我が国の着実な成長のカギを握るのは、高齢化や少子化にどう対応するかです。それは、アベノミクスの最大の課題です。」と彼は述べた。
安倍氏はまた、選挙によって遅れていた労働法の改定も進めるだろう。この法案は、残業時間を減らし、非正規雇用者にも正規雇用者と同等の給与を支払うことを目指している。非正規従業員は、似た様な仕事をしていても、正規従業員より低い給与しかもらえない。
改定案の一つは、特定の専門職への残業代支払を不要にすることだ。安倍内閣によれば、この改正によってコンサルタントや金融家が、米国並みの高給を取ることを容易にする。
労働組合などの反対派は、手当無しの長時間労働への道を開くものだとして、反対している。
選挙では、アベノミクスがしばしば公約として掲げ、いまだに達成していない分野も争点となった。安倍氏は、日本の組織の責任ある地位の30%が女性で占められる様にしたいと言ってきた。しかし、NHKによれば、今回の選挙でも、殆どの議席が固まった段階で、衆議院465議席のうち、女性は47人に過ぎない。
安倍首相はまた、201910月に予定されている消費税の8%から10%の増加を実施すると述べた。モーガンスタンレーMUFG証券のロバートフェルドマン氏は、財政論者の支持は得られるだろうが、教育への追加支出は気になるところだと述べた。
「安倍氏の選挙でのスタンスは、財政改革がどの様に行われるのかはっきりさせないまま、大きな政府へと緩やかにシフトすることだった。」とフェルドマン氏は顧客への説明の中で述べた。「新しい政府がそのスタンスを明確に説明するまで、投資家は、経済政策の方向性について、良く分からないままでいることになるだろう。」
市場を覆うもう一つの懸念は、北朝鮮だ。ここ数ヶ月の間に、北朝鮮は日本上空を通過するミサイルを2発発射した。安倍氏は、月曜日にトランプ大統領を電話で会談した。トランプ大統領は、来月のアジア歴訪の最初の訪問国として日本を訪問する予定だ。
日本政府関係者によれば、2人の首脳は、北朝鮮に関する集中的な討議に入る前に、プロゴルファーの松山英樹を交えてゴルフをする。
安倍氏は、間もなく、日銀総裁として、黒田氏を再選するのか、後任を任命するのか決めなければならない。いずれにしても、市場は、年間6兆円(約530億ドル)の国債購入を含む超金融緩和政策の根幹は維持されるだろうと見ている。
東京三菱UFJ銀行のストラテジストのセキドウタカヒロ氏は、日銀は、株式ファンドの購入を継続するとみられ、それはとても良いことだと述べた。

最近の動きをみると、日銀は国債の購入スピードを緩めだした。黒田氏かその後継者は、連邦準備銀行の引締め政策に、どの程度遅れて追髄するのか決定しなければならないだろう。