ソニーが「ジ・インタビュー」の公開を決めたというニュースがA1面に掲載された。
この記事は次の様な書き出しで始まる。
「ソニーピクチャーズは火曜日に方針を変更し、ジ・インタビューをクリスマスの日に公開するとした。しかし、この話題の渦中の作品を公開することを決めている劇場の数は少ない。劇場は、ハッカーからの報復の恐怖とソニーピクチャーズの短納期での方針変更に対するフラストレーションの最中にいるのだ。」
「ソニーピクチャーズの映画を公開し、またビデオオンディマンドでの公開も検討するとう決断は、ソニーの子会社である同社が、米国が北朝鮮によるものとしている破壊的なサイバー攻撃を受けたことにより、映画の公開を中止すると発表してから6日たってなされた。オバマ大統領は、映画を中止したことを受けてソニーピクチャーズを非難していたが、火曜日の動きについては歓迎の意を表した。」
長い記事なのでしばらく要約する。
大手の映画チェーンは公開しない。ソニーピクチャーズは、ビデオオンデマンドのパートナー確保に奔走した。製作費44百万ドルのこの映画は全国公開を予定していたが、普段はニッチな芸術作品を公開している200の映画館での公開に限定される。ソニーピクチャーズはこの限定公開は最初の一歩に過ぎないこと、また25日にビデオオンデマンドでの公開にも踏み切ることを劇場側に伝えたとされるが、劇場側はソニーの日替わりでの対応に不満を抱いている。劇場側は25日に公開するためには、ハードディスクに入った映画の出荷との関係から、火曜日には公開を決めねばならなかった。ソニーピクチャーズは公開を決めた劇場について、FBIへ通知する。
この記事は、その後、この事件の経緯をまとめた上で、次の様に続ける。
通常、映画収入の60~70%は、ビデオオンデマンドからあげられるが、DirecTV, Comcastはビデオデマンドでの放映を計画していないと述べ、Verizon, Apple, AT&T, Amazon.comからはコメントをもらえなかった。
劇場での限定公開は、少しはソニーにとって金銭的な助けになるだろうが、当初の計画からすると少ない。小規模な劇場は公開を希望しているが、大規模な劇場チェーンとの関係は、ソニーピクチャーズが公開を断念した際に、その理由を劇場のせいとしたこともあり、冷え切っている。
ソニーはCrackleというストリーミングサービスを持っているが、このシステムがジ・インタビューの様な大容量の映画の配信に向いていないこと、無料配信を想定していること等の理由から、このシステムでの配信は予定していない。
公開前にこれだけの注目を集め、それにもかかわらず非常に少ない劇場でしか公開されない映画というのは、過去に例が無いので、この映画がビジネスとして成功するかは不透明だ。
ビジネスとして成功するかしないかという議論以外にも、ソニーの社内では多くの議論が続いている様だ。ソニーの平井社長は、金主席の頭が吹っ飛ぶ最後の場面の刺激を和らげる様に指示し、またこの場面を国際版からは削除する様に指示したとされる。ソニーは、この映画を米国以外で公開するかどうかまだ決めていない。
この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「直前になっての上映決定により、劇場主は、忙しいクリスマスの時期にスクリーンを確保することに奔走した。アラモドラフトハウスシネマの創業者のティムリーグ社長は、19の劇場の出来るだけ多くで上映したいとしている。出来れば午前11時のマチネや深夜の上映も含めて。そのためには他の映画の上映をキャンセルせねばならない。」
「彼はジ・インタビューの事前販売は非常に強いと火曜日の午後に語った。多くの上映時間帯が既に売り切れ状態だ。」
これだけ注目を集めたのに、公開劇場数が少ない映画は過去に例が無い。経済紙らしく、そうした映画が興行的に成功するか分析している。上映を決めた小劇場でのチケットほぼ完売の様だが、大劇場チェーンによる上映の見通しがつかないこと、映画収益の60~70%を占めるビデオオンディマンドでの上映が不透明であること等から、成功は不透明というのが結論の様だ。
一方、ソニー社内での様々な議論も取り上げている。平井社長が金主席の頭が吹っ飛ぶ場面を国際版からは削除する様に命令したこと、ソニーが国際版の公開を決めていないことを取り上げ、ソニーの言論侵害、弱腰の対応について、暗に批判している様にも読める。