衆議院選挙では、安倍首相が圧勝するだろうが、それは他に選択肢が無いからだという記事が、13日の国際面に掲載された。
この記事は次の様な書き出しで始まる。
「トヨタ自動車の地元では、着物はトヨタカローラの中古車と同じ位の値段がするが、そこにある着物店では、安倍首相が2012年にその地位について以来、売上は10%伸びた。」
「つい数年前、豊田市は非常に深刻なスランプにあったので、デトロイトと比較する人がいた位だ。今や、40万人の人口を擁するトヨタの城下町は、安倍首相の経済政策の最大の受益者の一つであるトヨタの記録的な利益のおかげで、蘇るつつある。」
暫く要約する。
しかしアベノミクスの効果は全体に行き渡っている訳ではない。例えば、豊田市の部品メーカーは円安によるエネルギー価格の高騰に苦しんでいる。その他の地方でも同様で、とても景気が浮揚している訳では無い。また、安倍政権や自民党の支持率は低迷している。この様な状況でも、各種世論調査によれば、自民党の圧勝が予測されている。今回の選挙は、アベノミクスへの国民投票と言わているのにである。これは、多くの国民が、政権が安定しないと、経済が安定しないと考えているからだろう。これまで日本の首相は毎年の様に変わって来たが、選挙結果が世論調査の通りだとすると、安倍政権は長期政権となる。
名古屋地区はもともと民主党が強い地域だ。2009年に民主党が政権を取り、その後自民党が取り返した。現在、名古屋市や豊田市を擁する愛知県の失業率は2009年の5.1%から2.4%へと半減している。国際的な企業はアベノミクスの恩恵を受けている。トヨタは2009年に4,370億円の損失を計上したが、昨年は1.8兆円の利益を計上するまでに回復した。
しかし、中小企業はあまり恩恵を受けていない。同様の格差が、都会と地方、高齢者と若年層でも起きている。豊田市でも、新たに生み出された雇用の内、フルタイムの仕事は半分にも満たない。民主党は、安倍首相の政策は価格を上昇させ、賃金の良い仕事を増やすことに失敗しており、庶民を苦しめていると訴えている。
確かに、トヨタの下請け部品業者は、売上は増えているが、エネルギー輸入価格の高騰で、利益は縮小している。それでも、多くの部品業者は、トヨタの業績好調が継続すれば、長い目でみれば、必ず自分たちも恩恵を受けられると信じている。
この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「豊田市のホテル豊田城では、ある月は、80%以上のビジネスが海外顧客によって占められたと、同ホテル社長のアライトシカズ氏は言う。同ホテルの稼働率はほぼ100%だ。」
「観光ブームも起きてはいるが、彼は安倍首相を信用はしている訳ではない。安倍氏は選挙には勝つだろうが、それは彼の政策に対する熱狂からくるものでは無い。『アベノミクスは問題だらけだ。しかし、野党である民主党も対抗案を明らかにしていない。』とアライ氏は言う。」
自民党を好きで無い国民は多いが、かといって、民主党は何をしたいのか分からずこうした国民の受け皿になっていない言っている。その通りだろう。
アベノミクスは分かりやすくパワフルな政策だが、第3の矢である成長戦略で何をしたいのかさっぱり分からない。せっかく東京オリンピックを誘致したのに、何か国民的な盛り上がりに欠けている。このあたりに民主党が具体的な政策を立て、国民に夢を与えて欲しい。
確かに中間層に富が十分に配分されていないかもしれないが、かといって中間層は、民主党が言っている様なばら撒きによる施しを期待している訳ではない。中間層が、将来に希望を持てる様な社会、中間層が一生懸命に働いて自らの手で豊かさを勝ち取れる様な社会を具体的に描いて、自民党との違いを鮮明に打ち出してもらいたい。