これらの180件の記事、特に1面に掲載された記事を詳細に分析し、「WSJが選んだ2014年日本の十大ニュース」を、独断と偏見で選んでてみたい。
1面に掲載される記事には、連載物やインタビュー記事などのいわゆる「企画もの」と、重大性や緊急性を考慮した「重大ニュース」がある。今年1面に掲載された記事25件のうち、「企画もの」は9件、「重大ニュース」は16件だった。
重大ニュース16件は下記の通り。順位は回数と掲載時期(掲載時期が早いもの程上位)で決定した。複数回掲載された記事を一つにまとめると10件となった。まあ「WSJが選んだ2014年日本の十大ニュース」というところか。
1位: 衆議院総選挙(3件 - 11月、12月)
2位: ソニーへのサイバー攻撃(3件- 12月)
3位: マウントゴックス破綻(2件 - 2月、3月)
4位: ソフトバンクのT-Mobile買収交渉(2件 - 3月、6月、2件)
5位: サントリーのビーム買収(1件- 1月)
6位: 安倍首相のインド訪問(1件 - 1月)
7位: トヨタ車リコール和解へ(1件 - 2月)
8位: 佐村河内氏の盗作事件(1件 - 2月)
9位: 消費税増税(1件 - 3月)
10位: 日銀金融緩和追加対策(1件 - 11月)
経済紙だけあって、10件の中の5件が企業関係。ソニー、マウントゴックス、ソフトバンク、サントリー、トヨタの5つの企業の名前が一面を飾った。
ソニーのサイバー攻撃は、主に攻撃を受けたのがソニーの米国子会社だったこともあり、日本では海外ニュースとして扱われることが多い。マウントゴックスも、経営人や被害者の多くが米国人だったからだろうか、日本ではあまり日本のニュースとしては扱われなかった。これらのニュースは、サイバー攻撃とビットコインという、新しいトレンドを象徴する事象が絡んでおり、新しいもの好きなアメリカ人には受けるのだろう。従って上位に入った。しかし、日本では、こうしたニュースが2位、3位に入っていることには違和感を感じる方も多いのではないだろうか。
サントリーのビーム社買収は、同社がアメリカの酒であるバーボンの会社であるからこれだけ大きく取り上げられたのだろう。米国企業が、日本の代表的酒蔵を買収する様なものだ。
ソフトバンクは、孫さんが、類まれなる日本の経営であることから、これだけ大きく取り上げられており、日本人としては嬉しい限りだ。どの記事にも、孫さんの大きな写真が掲載されていて、彼はアメリカでも人気者だ。
トヨタの記事は、トヨタに同情的に書かれており、WSJはこの問題については、米国当局に対して批判的だ。
安倍首相関係では、消費税増税や衆議院総選挙に加えて、インド訪問が6位に入っている。11月の習主席との電撃会談の方が上位に来てもよさそうだが。米国が中国との対抗姿勢を強める中で、アジアの2大民主主義国家である日本とインドが同一歩調を取って、中国を牽制したことが、よほど嬉しかったのか?
よくわからないのは、佐村河内氏の盗作問題が8位に入っていることだ。WSJは、小保方氏の事件もくり返し大きく取り上げたが、さすがに一面では取り上げなかった。
ちなみに、読売新聞の読者が選んだ2014年の十大ニュースは次の通り。
1位: 御嶽山噴火で死者57人、行方不明者6人
2位: 消費税8%スタート
3位: ノーベル物理学賞に青色LEDを開発した赤崎勇、天野浩、中村修二の3氏
4位: 全米テニスで錦織圭が準優勝
5位: 「アベノミクス」の評価を問う衆院選
6位: 広島市北部の土砂災害で74人が死亡
7位: STAP細胞論文に改ざんなど不正
8位: ソチ五輪で日本は金1、銀4、銅3
9位: 世界文化遺産に「富岡製糸場」
10位: 高倉健さん死去 WSJ,、読売双方のベスト10に入っているのは、衆議院総選挙(WSJ 1位、読売5位)
消費税増税(WSJ9位、読売2位)の2件だけだ。
ちなみに、読売の十大ニュースの中で、4位の錦織圭、9位の富岡製糸場、10位の高倉健の3つは、1面以外でもWSJでは全く取り上げられなかった。
アメリカから見た日本と、日本からみた日本には、微妙な違いがあり、面白い。