Thursday, November 29, 2018

日産はゴーン氏が数百万ドルの繰延報酬を得ていたと主張【A1面】

1119日のゴーン氏逮捕のニュースは世界を駆け巡ったが、WSJ29日のA1面でゴーン氏が報酬の一部を退職後に受け取ることになっていたとする記事を掲載した。


 多くの人々を解雇したゴーン社長が多額の報酬を得ることには、解雇された人たちばかりでなく日本国民全体の怒りを買うだろうという配慮から、何とか報酬を少なく見せようとする苦肉の策だったとしている。特に時の政権は左寄りの民主党で、そこからの暗黙の圧力もあったのではないかとしている。
日本の司法制度が世界的に見て非常に厳しいものになっていることを指摘。このために、ゴーン氏はジェット機で逮捕されてすぐに収監され、外部に対してコメントも出来ないまま、既に収監期間は2週目に入っている。ゴーン氏本人からコメントを取ろうにも、日本の司法制度ではそれは叶わず、非常に限られた情報での推測報道が蔓延せざるを得ない。この、不可解さに当惑していることが行間から読み取れる。

***** 以下本文*****
日産の調査とその関係者によれば、ゴーン氏は日産から8,000万ドルにのぼる繰延報酬を得ていたが、どの様に支払われるかについては決まっていなかった。
今までに分かったことから判断すると、ゴーン氏は役員報酬が公衆の目に晒される時には、そのうちの一部を後払いにしたようだ。ゴーン氏の弁護人はこれは法的に問題ないとしているが、検察は日本の証券法に違反している疑いがあるとしている。
日産の調査に詳しい関係者によれば、ゴーン氏への繰延報酬が積み上がる一方で、日産は、ジェット機でと飛び回るゴーン氏のために、1,800万ドルの住居費を支出していた。
ゴーン氏は、プライベートジェットで逮捕された後、東京拘置所に収容されているが、拘置所での暮らしも2週目に入った。彼は、日産の財務報告書の中で、報酬を過少申告した疑いで逮捕された。
この逮捕は、日産、ルノー、三菱による世界最大の自動車メーカーアライアンスを揺るがせた。また、何故、多くの人の尊敬を集めた自動車メーカートップが、日本の厳しい司法システムに捕まってしまったのかという点で、世界中の人々を当惑させた。日本の司法システムでは、容疑者を、起訴しないまま、3週間も取り調べをすることが出来る。ゴーン氏は日産と三菱で会長職を解かれたが、ルノーではCEOに留まっている。#2のボレーレ氏が暫定的に代行しているが。
ゴーン氏はいかなる罪でも起訴されていない。彼にコメントを求めようにもコンタクト出来ない。日本人弁護人である大鶴基成氏の事務所もコメントを拒んでいる。日本の公共放送であるNHKによれば、ゴーン氏は容疑を否認している。
331日に終わる最も最近の会計年度に、日産はゴーン氏が73,500万円の報酬を得たと報告した。これは、今日の為替レートで650万ドルにあたる。しかし、関係者によれば、日産はまた書類ベースで、退職した後に追加で報酬を支払うことを約束しており、その額は合計で2,200万ドルにのぼる。
その関係者によれば、全てを合計すると、9年間の間に、ゴーン氏は8,200万ドルの繰延報酬を得ていたことになる。
また別の関係者によれば、ゴーン氏とその片腕であるケリー氏は、そうした報酬を退職後に受け取るための様々な手段について検討していた。例えば、コンサルティング契約という名目や非競合業務などが検討された。しかし、具体的な手段は決定されなかった。
この点は、検察側と弁護側が戦いを繰り広げる際の、非常に重要なポイントになる。ケリー氏も東京で逮捕され、収監されているが、彼の弁護人によれば、ケリー氏も将来の支払い額は確定しておらず、従って財務報告書に含める必要は無いと信じている。
日産ルートを使い、彼は外部の専門家の意見を求めたが、この繰延報酬を開示しないことに問題はないとと言われたとケリー氏の弁護士は言っている。ケリー氏の弁護人はキタムラ・ヨウイチ氏だ。ケリー氏もいかなる罪でも起訴されていない。
検察は、特定の容疑についてコメントすることを拒否している。しかし、外部の弁護士によれば、検察は、支払を約束した文書など、証拠を示し、ゴーン氏とケリー氏が繰延報酬を報告しなければならないことを理解していたにもかかわらず、していなかったことを主張するつもりだ。
ゴーン氏にかかわる今回の事件は、2020年の日本の法律変更に端を発する。この法律変更によって、役員報酬が1億円(現在の為替レートで約88万ドル)を越える場合、企業はその役員報酬額を開示しなければならなくなった。
捜査に詳しい関係者によれば、20093月期会計年度で、ゴーン氏は、日産で約175,000万円(約1,500万ドル少し超える額)の報酬を得ていた。
しかし、その金額をそのまま開示してしまうと、国民から大抗議が巻き起こる懸念があった。その頃、世界は2008年の金融危機から回復しつつあった。ゴーン氏は、その10年程前に、殆ど倒産状態だった日産を救済したことで尊敬を得ていたが、それに伴うリストラで多くの従業員やサプライヤーが職を失っていた。
日産の調査によれば、20103月期の会計年度にゴーン氏がやったことは、約780万ドルだけ彼に支払い、残りの約750万ドルは後で支払う様にという部下に対する命令だった。日産のコーポレートガバナンスルールでは、会長として、自分の報酬を決定する権限を有していた。
もしもっと額が少なかったとしても、当時の日本で権力を握っていた左寄りの政権の怒りをかっていただろう。
「何故ゴーン氏の給与はそんなに高いのか従業員を解雇するのが上手いからか?」当時の首相だった菅直人氏は、20106月のスピーチで言った。「もし従業員を解雇することが上手い社長が全ての企業で尊敬されたら、日本は失業者で一杯になってしまう。」
その後数年は、ゴーン氏が開示した報酬はほんの少ししか増えなかった。日産に調査によれば、代わりに、繰延報酬の部分が増加した。他の取締役には知らせないままで。最も最近の会計年度においては、彼の報酬の総額は2,200万円にまで膨れ上がった。
捜査によれば、ゴーン氏とケリー氏が一度は作成したものの実行しなかった案は、繰延報酬を、ルノー・日産BVの会長職への報酬として支払うという案だ。ルノー・日産BVは日産とルノーのオペレーションを調整することを目的にした会社だ。