11月19日にゴーン氏逮捕という衝撃的なニュースが世界中を駆け巡ったが、WSJは21日のA1面でこのニュースで右往左往する関係者の様子をまとめた記事を掲載した。
20日に続いて2日連続でゴーン氏逮捕のニュースが1面を飾り、このニュースへの関心の高さが示された。全体のトーンとしては、日産や検察に批判的だ。例えば、仮に日本の検察が言っているゴーン氏への容疑が裏付けられたとしても、何故日産がそのことに気が付かなかったのかという疑問が残るとしている。また、日本の司法制度では、全く前科の無いゴーン氏も、最長20日独房に収監され、弁護士無しでの連日の取調べに耐えねばならないとし、暗に前近代的な検察のやり方を批判している。また、オランダにあるルノーと日産の合弁会社であるルノー・日産BVが今回の事件で果たした役割について、独自の視点から注目している。
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自動車メーカー幹部のカルロスゴーン氏が日本で不適切な財務処理の疑いで拘束されてから2日が経過した。ゴーン氏が率いてきたグローバル規模のアライアンスメンバーは、この逮捕劇について理解するための対応、そして彼が不在の間の対応に追われている。
この事件の関係者によれば、日本の検察はゴーン氏が会長を務める日産の株に関連した支払いとそれらが有価証券報告書の中で適切に開示されていたかどうかににフォーカスしている。
ゴーン氏はルノーの会長とCEOも兼任しているが、日産はルノーの取締役会に対して、オランダに本社を置くルノーと日産の合弁会社においてゴーン氏が不正を働いた可能性があるとする証拠を掴んでいることを伝えた。
火曜日の午後にルノーは、ゴーン氏の職務を暫定的に引継ぎためにCEO代理と暫定会長を指名したと表明した。ルノーは、日産から、日産と日本の検察はゴーンが不正を働いたとしているが、ルノーはその証拠を日産に対して求めているとも発言した。
64才のビジネスマンであるゴーン氏は今週初めに日本で逮捕された。日産は検察に対し、内部調査によって、ゴーン氏の報酬が同社の財務報告書で過小に報告されたいてことが分かったと報告していた。
ゴーン氏の代理人や家族からコメントをもらおうとしたが、コンタクト出来なかった。
ゴーン氏逮捕のニュースが駆け巡った後の最初の取引日である火曜日に日産の株は5.5%近く下落した。逮捕後2日で、ルノーの株式は10%近く下落した。
ルノーのトップエグゼクティブとして、後にルノー・日産両社のリーダーとして、ゴーン氏はルノー・日産のアライアンスを築きあげた。このアライアンスは自動車産業では珍しく成功しているが、これはゴーン氏に負うところが大きい。彼は最近、日産のCEOを退任した。日産、ルノーでの役割に加えて、ゴーン氏はもう一つのアライアンスメンバーである三菱自動車の会長も務めている。彼はまた、オランダのベンチャー企業の会長とCEOでもある。この企業は、20年近くに及ぶアライアンスの中で、2社の橋渡しの役割を果たしてきたが、いまや日産の社内調査の対象となっている。
ゴーン氏のこうした役割が、緊張を高める一つの要因となってきた。日産とルノーの幹部は、長い間噂されてきた完全合併も含めて、将来を見据えているので。ウォールストリートジャーナルは5月に両社の幹部が非公式にそうした関係について検討していると報じた。日産の日本人上級幹部は、完全合併案には反対してきた。ゴーン氏は公の場では、そうした合併は最善の手段では無いと言ってきた。しかし、関係者がウォールストリートジャーナルに語ったところでは、実は彼にとってはそうした案も選択肢のひとつだ。
関係者によれば、月曜日に日産のCEOの西川廣人氏は、オランダの会社について分かっていることを、ルノーの主要な外部取締役であるフィリップ・ラガイエット氏に送付した。日産がどういう内容を伝えたかは分かっていない。
その会社は、ルノー・日産BVという名前の会社だが、ルノーと日産が共同所有している。車は一切作っていないが、ルノーと日産のパートナーシップの広範な分野での調整役を担っている。
オランダの登記簿によれば、日産の取締役でゴーン氏と共に日本で逮捕されたグレッグ・ケリーもまた、オランダに本社を置く、別の持ち株会社の主要な取締役だ。この会社は、別の日産の部門の子会社として、2010年に設立された。関係者によれば、この会社は、スタートアップ企業への投資を目的に設立されたが、ここ数年は休眠状態だったという。
月曜日にゴーン氏が逮捕された後、日本の検察は、ゴーン氏は所得を過少申告していていた疑いが発言した。その結果、日産が2015年3月期までの5会計年度に渡って、不正確な財務諸表を作成することになった。
検察は、ゴーン氏がこの5年間にほぼ100億円(約8,900万ドル)と見ているが、実際に日産が東京証券取引所に提出した報告書では50億円になっていた。
この期間に、日産は、幹部の数名が、株式評価益権(SAR)を受領したと報告している。株式評価益権とは、ストックオプションに似た仕組みで、株式価格がある一定のレベルを超えた場合に、幹部が報酬を得られる。日産の報告書によれば、ゴーン氏は株式評価権益を受領していない。
関係者によれば、検察は、実際には、ゴーン氏はその様な報酬を得ていたが、日産がその報告を怠ったとみている。こうした動きは、もし、裏付けが取れれば、検察が申告漏れになっているとする報酬の説明になるだろう。
しかし、そうした疑いが裏付けられたとしても、どうしてこの事実が日産の報告書に盛り込まれなかったのか、何故日産の経理部門はこのことについてアラームを上げられなかったのかなど、疑問の点も多い。日産が言うには、内部通告が今回の内部調査に繋がり、その結果を検察に伝えたということだ。
日産はまた、ゴーン氏は経費を不正支出し、会社の資産を個人使用したとしている。
ゴーン氏はフランス国籍を持っているが、前科はない。もし、ゴーン氏が日本人の収監者と同じ様に取り扱われるならば、数週間独房に入れられ、弁護士無しで連日取り調べが行われる。
検察は、今週、最高20日まで収監期間を延長するかどうか決定しなければならない。通常、そうした要求は認められる。この期間、容疑者は保釈請求を許されていない。
ルノーの取締役会は、火曜日午後に召集され、ルノー第2位の幹部であるボローレ氏がCEO代行に、ルノー社外取締役のラガイェッテ氏が会長代行に、それぞれ暫定的に指名された。
関係者によれば、ボローレ氏を代行に指名することにより、ルノーの取締役会は、ボローレ氏にルノー・日産BVの議決権を行使する権限を与えた。このジョイントベンチャーにおけるルノーと日産のパワーバランスを維持するために、この動きは重要だ。
月曜日の午後、ルノーのイントラネットにアップされたメモによれば、現COOであるボローレ氏は、上司であるゴーン氏をしっかり支援することを表明した。同時に、ルノーの統治機構は、ルノーグループの利益を守るために、その役割をしっかりと果たすとも発言した。