Tuesday, November 27, 2018

ゴーン氏に対する人権無視の厳しい取調べ【A16面(社説)】

WSJは、ゴーン氏逮捕のニュースを発生以来連日報道しており、27日には社説で取り上げた。




今回の日産のやり方は不意打ち的で卑怯、日本の司法制度は前近代的、日本のマスコミの報道は無責任、西川氏は裏切り者と切り捨て、この事件が中国で起きたのなら分かるが、近代国家日本で起きている事件とは信じがたいとして、痛烈に批判している様に読める。仮にゴーン氏とケリー氏が日産が言う様な悪事を働いていたとしても、日産幹部がその悪事に全く気付いていなかったのだとしたら、そのことの方が大きな問題で、日産の監査役やCFOこそが責めを負うべきではないかともしている。また、同じ会計処理で不正を働いた東芝やオリンパスの幹部は、警察の独房に何日も拘束されるということは無かったとして、いかに今回の東芝や検察の対応が理不尽かということを詳しく報じている。

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かつてはビジネスの救世主として賞賛されたCEOが、空港で逮捕され、罪が確定しないまま何日も拘束され、弁護士の同席が許されない中で検察の尋問を受け、メディアが彼は悪事を働いたとはやし立てる中で会社での地位を奪われた。
これは、共産主義の中国での出来事か?いや、資本主義の日本で起きたことだ。かつての日産のCEOであるカルロス・ゴーンは苛酷な取り調べに耐えているのだ。公にされている事実は曖昧なものばかりだ。しかし、この事件は、日本で正しい法の手続きやコーポレートガバナンスに関与している全ての人たちにとって面倒な事態となるだろう。
つい最近まで、ゴーン氏は、倒産寸前の日産を救ったとして、日本で非常に人気があった。しかし、いまや彼は、期間の確定のないまま警察に拘束され、家族との面会は許されず、自分の評判を守ることすら出来ない。彼は、社有機で到着してすぐに、その後に待ち受ける運命を知らされないままに逮捕された。彼は、数回だけ、日本人弁護士と、レバノンとフランスの外交官と話すことができただけだ。
日本の法律によれば、容疑者はまず48時間拘束され、その後10日間拘束される。必要であれば、拘束期間はさらに10日間延長される。罪が確定しなくてもだ。警察はその後も、容疑者を別件で逮捕することが出来る。その様な扱いは、やくざや犯罪組織員に対しては適切かもしれないが、過去に詐欺や利権搾取の前科がない世界的に活躍するCEOには適切だろうか?日本の検察は、会計処理を粉飾したで東芝やオリンパスの悪事をその様なやり方で裁かなかったではないか。
マスコミが犯罪だとしている行為は、日産自身がとっくに知っていなければならない行為で、この点からも奇妙だ。マスコミによれば、ゴーン氏は5年間で4,400万ドルに上る後払報酬を申告していなかったということだ。しかし、それを有価証券報告書で開始する義務を負っているのは日産だ。一体、日産の内部監査人や外部監査人、そしてCFOはどこにいるのか?
日産は、日産の元取締役でアメリカ人のグレッグケリーがこの報酬計画立案の首謀者だとしている。しかしそのケリー氏も逮捕され、外部との接触を絶たれている。しかし、もし彼とゴーン氏が日産に気づかれることなくこの計画を実行出来たのなら、日産は、内部コントロールに大きな問題を抱えていることになる。この問題の深刻さに比べれば、報酬が開示されなかったことなど問題ではない。
報道によればもうひとつの問題がある。これは検察ではなく、日産が言っていることだが。ゴーン氏がリオデジャネイロとベイルートで使っていた住居の購入に、会社のお金が使われたというのだ。しかし、日産は、当然のことながら、これらの住居が会社の住居か個人の住居か知っていたはずだ。ゴーン氏の家族と親しい関係者によれば、ゴーン氏はこの住居を所有していなかった。
多分、この容疑を実証する証拠が出で来るのだろう。しかし、逮捕の詳細や罪状の内容を見る限り、疑問を持たさるを得ない。先週、日産は突然ゴーン氏の会長職を解いた。日産の提携先である三菱自動車も月曜日にゴーン氏の会長職を解いた。いずれも、ゴーン氏の出席が無い場でだ。
日産の現CEOである西川廣人は、かつではゴーンの盟友だった。しかし、今や、彼はゴーン氏は、権力を握り過ぎたとしている。2000年代に日産をV字回復させたことによって、あまりに多くの信頼を集めてしまったというのだ。西川氏は、ゴーン氏が逮捕されて以来、厳しい言葉でゴーン氏を批判している。
ゴーン氏は、日産を救ったことにより、日本人の多くが尊敬している。もし、国民に尊敬されている会長の評判を貶めようとするならば、証拠もない主張により、彼を逮捕させ、彼を黙らせることが、確かに最善の方法だろう。
貴方が陰謀策略家でなくても、今回の事件の一連の流れをみれば、ゴーン氏が描く日産とルノーの合併計画を終わらせるというより大きなシナリオの中で起きているのではないかと思うだろう。フランスの自動車メーカーであるルノーでは、ゴーン氏は未だCEOの地位にとどまっている。ルノーは日産の救済に乗り出したし、今でも日産とルノーは株式を持ち合っている。
しかし、日産は成長し、いまやルノーよりも多くの利益を稼ぎ出している。ルノーの株式の15%はフランス政府が保有している。西川氏は、フランス企業の関与を快く思っていないし、今回の逮捕劇は両社の関係を修復不可能なレベルまで悪化させてしまうかもしれない。

日本は常に島国的な企業文化を持ち続けてきた。ゴーン氏は、竹のカーテンをこじ開けた類まれなる外国人経営者だ。安倍首相は、会計スキャンダル以降、コーポレートガバナンスの改革を推し進めてきた。しかし、彼は、それ以上に、日本のナショナリズムを推し進めた。より大きな透明性、逮捕理由の十分な説明、ゴーン氏とケリー氏が自分自身を弁護する機会が無くては、日産の不意打ち攻撃は日本のビジネスにとって、大きなマイナス点となるだろう。