Friday, November 30, 2018

*** 11月のまとめ***

11月にWSJ(ウォールストリートジャーナル)に掲載された日本関係の記事は10件だった。1月から10月までの月あたり掲載数が、平均6.5件だったので、掲載数として平均を上回った。

テーマ別では、政治関係が0件、経済関係が9件、社会関係が1件。

1120日までは、日本関係の記事の掲載件数は1件しかなく(若者の自殺者数がここ30年で最高を記録)、掲載回数の最低記録更新かと思っていが、1119日にゴーン氏が逮捕されると、翌20日からこの関係の記事を9件も掲載した。

9件のうち、実に6件が1面掲載(うち、1件は1面トップ)、社説掲載が2件で、このニュースが米国でも大きな関心を集めたことが覗える。この時期は、米国は感謝祭の休暇時期で、新聞発行日数が少なかったことを考慮するとなおさらだ。

19日にゴーン氏逮捕、22日に会長職解任、24日には未記載報酬のうち50億円が退職後の支払いになっていることが明るみにと、この事件は、連日のように大きな進捗があり、そのたびにWSJは、1面で大きくかつ詳細に報道した。

まさにゴーン氏一色だったが、9件の記事では、下記の5つの点が、日本のマスコミとは少し切り口が異なっていて面白いと感じた。

(1)  ゴーン氏の経営手法は時代遅れ
ゴーン氏は、グローバルに規模の拡大を追求しているが、自動運転、電気自動車へとシフトする中、自動車業界の競争力の源泉は「規模」から「知の蓄積」へとシフトしている。今回の事件で失脚しなくても、ゴーン氏の経営は行き詰まり、遅かれ早かれ失脚していただろう。

(2)  ルノーが主導権を握ってもフランスは雇用を守れない
今回の事件の背景には、ルノーと日産の主導権争いがあるとされる。ルノーの背後には、フランスの雇用を守りたいフランス政府がいる。しかし、フランスは、最近のイエロー・ジャケット運動などを見ても分かる様に、労働者が強く、人件費が高い。この様な状況では、いくらルノーが主導権を握っても、フランスでの雇用を維持するのは難しいだろう。

(3)   日産の対応の不可解さ
仮にゴーン氏への容疑が裏付けられたとしても、何故、日産幹部がこれらの点ついて知らなかったのかが大きな疑問として残る。本当に知らなかったのならば、コーポレートガバナンス上の大問題。実は日産はもっと大きな疑惑を握っていて、検察と裏取引しているではないかとも思えてくる。東芝やオリンパスが同様の問題を起こした時には、幹部は逮捕されておらず、どうしてゴーン氏だけがこんなにひとい扱いをされるのかも疑問。

(4)  ゴーン氏が報酬を隠そうとした背景に民主党政権
ゴーン氏が高報酬を隠そうとした理由は、多くの従業員の解雇を実施した企業トップがあまりに高報酬を得ることに、日本国民の理解を得られないと考えたからという理由に加えて、当時の左寄りの民主党政権からの高報酬に対する暗黙の圧力があったらしい。

(5)  司法制度の特殊性による情報の欠如
検察がゴーン氏を長期にわたって拘束しており、ゴーン氏本人口から主張が聞くことが出来ない、弁護士も日本人だからか、また取調べに同席出来ないからか、弁護士からの情報提供も無い。日本の習慣なのか、検察からの情報提供もない。本人、弁護士、検察いずれからも情報提供がない中、マスコミは憶測情報に基づいて、興味本位の報道を繰り返さざるを得ない。

批判の矛先が、フランス人であるゴーン氏の経営手法、フランス政府、日本企業である日産、日本の政治、司法、マスコミにまで及んでおり、一味違う。


なお、掲載箇所では、1面が6回、社説が1回、国際面が3回だった。日本関係の記事がこれだけ1面に掲載されるのは異例のことだ。

Thursday, November 29, 2018

日産はゴーン氏が数百万ドルの繰延報酬を得ていたと主張【A1面】

1119日のゴーン氏逮捕のニュースは世界を駆け巡ったが、WSJ29日のA1面でゴーン氏が報酬の一部を退職後に受け取ることになっていたとする記事を掲載した。


 多くの人々を解雇したゴーン社長が多額の報酬を得ることには、解雇された人たちばかりでなく日本国民全体の怒りを買うだろうという配慮から、何とか報酬を少なく見せようとする苦肉の策だったとしている。特に時の政権は左寄りの民主党で、そこからの暗黙の圧力もあったのではないかとしている。
日本の司法制度が世界的に見て非常に厳しいものになっていることを指摘。このために、ゴーン氏はジェット機で逮捕されてすぐに収監され、外部に対してコメントも出来ないまま、既に収監期間は2週目に入っている。ゴーン氏本人からコメントを取ろうにも、日本の司法制度ではそれは叶わず、非常に限られた情報での推測報道が蔓延せざるを得ない。この、不可解さに当惑していることが行間から読み取れる。

***** 以下本文*****
日産の調査とその関係者によれば、ゴーン氏は日産から8,000万ドルにのぼる繰延報酬を得ていたが、どの様に支払われるかについては決まっていなかった。
今までに分かったことから判断すると、ゴーン氏は役員報酬が公衆の目に晒される時には、そのうちの一部を後払いにしたようだ。ゴーン氏の弁護人はこれは法的に問題ないとしているが、検察は日本の証券法に違反している疑いがあるとしている。
日産の調査に詳しい関係者によれば、ゴーン氏への繰延報酬が積み上がる一方で、日産は、ジェット機でと飛び回るゴーン氏のために、1,800万ドルの住居費を支出していた。
ゴーン氏は、プライベートジェットで逮捕された後、東京拘置所に収容されているが、拘置所での暮らしも2週目に入った。彼は、日産の財務報告書の中で、報酬を過少申告した疑いで逮捕された。
この逮捕は、日産、ルノー、三菱による世界最大の自動車メーカーアライアンスを揺るがせた。また、何故、多くの人の尊敬を集めた自動車メーカートップが、日本の厳しい司法システムに捕まってしまったのかという点で、世界中の人々を当惑させた。日本の司法システムでは、容疑者を、起訴しないまま、3週間も取り調べをすることが出来る。ゴーン氏は日産と三菱で会長職を解かれたが、ルノーではCEOに留まっている。#2のボレーレ氏が暫定的に代行しているが。
ゴーン氏はいかなる罪でも起訴されていない。彼にコメントを求めようにもコンタクト出来ない。日本人弁護人である大鶴基成氏の事務所もコメントを拒んでいる。日本の公共放送であるNHKによれば、ゴーン氏は容疑を否認している。
331日に終わる最も最近の会計年度に、日産はゴーン氏が73,500万円の報酬を得たと報告した。これは、今日の為替レートで650万ドルにあたる。しかし、関係者によれば、日産はまた書類ベースで、退職した後に追加で報酬を支払うことを約束しており、その額は合計で2,200万ドルにのぼる。
その関係者によれば、全てを合計すると、9年間の間に、ゴーン氏は8,200万ドルの繰延報酬を得ていたことになる。
また別の関係者によれば、ゴーン氏とその片腕であるケリー氏は、そうした報酬を退職後に受け取るための様々な手段について検討していた。例えば、コンサルティング契約という名目や非競合業務などが検討された。しかし、具体的な手段は決定されなかった。
この点は、検察側と弁護側が戦いを繰り広げる際の、非常に重要なポイントになる。ケリー氏も東京で逮捕され、収監されているが、彼の弁護人によれば、ケリー氏も将来の支払い額は確定しておらず、従って財務報告書に含める必要は無いと信じている。
日産ルートを使い、彼は外部の専門家の意見を求めたが、この繰延報酬を開示しないことに問題はないとと言われたとケリー氏の弁護士は言っている。ケリー氏の弁護人はキタムラ・ヨウイチ氏だ。ケリー氏もいかなる罪でも起訴されていない。
検察は、特定の容疑についてコメントすることを拒否している。しかし、外部の弁護士によれば、検察は、支払を約束した文書など、証拠を示し、ゴーン氏とケリー氏が繰延報酬を報告しなければならないことを理解していたにもかかわらず、していなかったことを主張するつもりだ。
ゴーン氏にかかわる今回の事件は、2020年の日本の法律変更に端を発する。この法律変更によって、役員報酬が1億円(現在の為替レートで約88万ドル)を越える場合、企業はその役員報酬額を開示しなければならなくなった。
捜査に詳しい関係者によれば、20093月期会計年度で、ゴーン氏は、日産で約175,000万円(約1,500万ドル少し超える額)の報酬を得ていた。
しかし、その金額をそのまま開示してしまうと、国民から大抗議が巻き起こる懸念があった。その頃、世界は2008年の金融危機から回復しつつあった。ゴーン氏は、その10年程前に、殆ど倒産状態だった日産を救済したことで尊敬を得ていたが、それに伴うリストラで多くの従業員やサプライヤーが職を失っていた。
日産の調査によれば、20103月期の会計年度にゴーン氏がやったことは、約780万ドルだけ彼に支払い、残りの約750万ドルは後で支払う様にという部下に対する命令だった。日産のコーポレートガバナンスルールでは、会長として、自分の報酬を決定する権限を有していた。
もしもっと額が少なかったとしても、当時の日本で権力を握っていた左寄りの政権の怒りをかっていただろう。
「何故ゴーン氏の給与はそんなに高いのか従業員を解雇するのが上手いからか?」当時の首相だった菅直人氏は、20106月のスピーチで言った。「もし従業員を解雇することが上手い社長が全ての企業で尊敬されたら、日本は失業者で一杯になってしまう。」
その後数年は、ゴーン氏が開示した報酬はほんの少ししか増えなかった。日産に調査によれば、代わりに、繰延報酬の部分が増加した。他の取締役には知らせないままで。最も最近の会計年度においては、彼の報酬の総額は2,200万円にまで膨れ上がった。
捜査によれば、ゴーン氏とケリー氏が一度は作成したものの実行しなかった案は、繰延報酬を、ルノー・日産BVの会長職への報酬として支払うという案だ。ルノー・日産BVは日産とルノーのオペレーションを調整することを目的にした会社だ。

Tuesday, November 27, 2018

ゴーン氏に対する人権無視の厳しい取調べ【A16面(社説)】

WSJは、ゴーン氏逮捕のニュースを発生以来連日報道しており、27日には社説で取り上げた。




今回の日産のやり方は不意打ち的で卑怯、日本の司法制度は前近代的、日本のマスコミの報道は無責任、西川氏は裏切り者と切り捨て、この事件が中国で起きたのなら分かるが、近代国家日本で起きている事件とは信じがたいとして、痛烈に批判している様に読める。仮にゴーン氏とケリー氏が日産が言う様な悪事を働いていたとしても、日産幹部がその悪事に全く気付いていなかったのだとしたら、そのことの方が大きな問題で、日産の監査役やCFOこそが責めを負うべきではないかともしている。また、同じ会計処理で不正を働いた東芝やオリンパスの幹部は、警察の独房に何日も拘束されるということは無かったとして、いかに今回の東芝や検察の対応が理不尽かということを詳しく報じている。

***** 以下本文 *****
かつてはビジネスの救世主として賞賛されたCEOが、空港で逮捕され、罪が確定しないまま何日も拘束され、弁護士の同席が許されない中で検察の尋問を受け、メディアが彼は悪事を働いたとはやし立てる中で会社での地位を奪われた。
これは、共産主義の中国での出来事か?いや、資本主義の日本で起きたことだ。かつての日産のCEOであるカルロス・ゴーンは苛酷な取り調べに耐えているのだ。公にされている事実は曖昧なものばかりだ。しかし、この事件は、日本で正しい法の手続きやコーポレートガバナンスに関与している全ての人たちにとって面倒な事態となるだろう。
つい最近まで、ゴーン氏は、倒産寸前の日産を救ったとして、日本で非常に人気があった。しかし、いまや彼は、期間の確定のないまま警察に拘束され、家族との面会は許されず、自分の評判を守ることすら出来ない。彼は、社有機で到着してすぐに、その後に待ち受ける運命を知らされないままに逮捕された。彼は、数回だけ、日本人弁護士と、レバノンとフランスの外交官と話すことができただけだ。
日本の法律によれば、容疑者はまず48時間拘束され、その後10日間拘束される。必要であれば、拘束期間はさらに10日間延長される。罪が確定しなくてもだ。警察はその後も、容疑者を別件で逮捕することが出来る。その様な扱いは、やくざや犯罪組織員に対しては適切かもしれないが、過去に詐欺や利権搾取の前科がない世界的に活躍するCEOには適切だろうか?日本の検察は、会計処理を粉飾したで東芝やオリンパスの悪事をその様なやり方で裁かなかったではないか。
マスコミが犯罪だとしている行為は、日産自身がとっくに知っていなければならない行為で、この点からも奇妙だ。マスコミによれば、ゴーン氏は5年間で4,400万ドルに上る後払報酬を申告していなかったということだ。しかし、それを有価証券報告書で開始する義務を負っているのは日産だ。一体、日産の内部監査人や外部監査人、そしてCFOはどこにいるのか?
日産は、日産の元取締役でアメリカ人のグレッグケリーがこの報酬計画立案の首謀者だとしている。しかしそのケリー氏も逮捕され、外部との接触を絶たれている。しかし、もし彼とゴーン氏が日産に気づかれることなくこの計画を実行出来たのなら、日産は、内部コントロールに大きな問題を抱えていることになる。この問題の深刻さに比べれば、報酬が開示されなかったことなど問題ではない。
報道によればもうひとつの問題がある。これは検察ではなく、日産が言っていることだが。ゴーン氏がリオデジャネイロとベイルートで使っていた住居の購入に、会社のお金が使われたというのだ。しかし、日産は、当然のことながら、これらの住居が会社の住居か個人の住居か知っていたはずだ。ゴーン氏の家族と親しい関係者によれば、ゴーン氏はこの住居を所有していなかった。
多分、この容疑を実証する証拠が出で来るのだろう。しかし、逮捕の詳細や罪状の内容を見る限り、疑問を持たさるを得ない。先週、日産は突然ゴーン氏の会長職を解いた。日産の提携先である三菱自動車も月曜日にゴーン氏の会長職を解いた。いずれも、ゴーン氏の出席が無い場でだ。
日産の現CEOである西川廣人は、かつではゴーンの盟友だった。しかし、今や、彼はゴーン氏は、権力を握り過ぎたとしている。2000年代に日産をV字回復させたことによって、あまりに多くの信頼を集めてしまったというのだ。西川氏は、ゴーン氏が逮捕されて以来、厳しい言葉でゴーン氏を批判している。
ゴーン氏は、日産を救ったことにより、日本人の多くが尊敬している。もし、国民に尊敬されている会長の評判を貶めようとするならば、証拠もない主張により、彼を逮捕させ、彼を黙らせることが、確かに最善の方法だろう。
貴方が陰謀策略家でなくても、今回の事件の一連の流れをみれば、ゴーン氏が描く日産とルノーの合併計画を終わらせるというより大きなシナリオの中で起きているのではないかと思うだろう。フランスの自動車メーカーであるルノーでは、ゴーン氏は未だCEOの地位にとどまっている。ルノーは日産の救済に乗り出したし、今でも日産とルノーは株式を持ち合っている。
しかし、日産は成長し、いまやルノーよりも多くの利益を稼ぎ出している。ルノーの株式の15%はフランス政府が保有している。西川氏は、フランス企業の関与を快く思っていないし、今回の逮捕劇は両社の関係を修復不可能なレベルまで悪化させてしまうかもしれない。

日本は常に島国的な企業文化を持ち続けてきた。ゴーン氏は、竹のカーテンをこじ開けた類まれなる外国人経営者だ。安倍首相は、会計スキャンダル以降、コーポレートガバナンスの改革を推し進めてきた。しかし、彼は、それ以上に、日本のナショナリズムを推し進めた。より大きな透明性、逮捕理由の十分な説明、ゴーン氏とケリー氏が自分自身を弁護する機会が無くては、日産の不意打ち攻撃は日本のビジネスにとって、大きなマイナス点となるだろう。

Monday, November 26, 2018

ゴーン氏は同僚に支払いは適切だったと言明【A1面】

50億円の報酬の虚偽記載の疑いで逮捕されたゴーン社長だが、24日に朝日新聞が、実はこの50億円は「後払報酬」でまだ支払われていなかったとする記事を掲載した。WSJはこのニュースを26日の1面で速報した。これで、WSJはゴーン氏逮捕関連のニュースを4日連続で1面で取り上げたことになる。逮捕された一人であるケリー氏が米国人だからか、非常に関心が高い。



この記事、逮捕されたケリー氏が米国人ということもあり、どちらかというと、ゴーン氏、ケリー氏を擁護するトーンに読めるかどうだろう?
まず、「後払報酬」についての報告書記載義務について、米国証券法の規定は極めて明確だが、日本の金融商品取引法の規定は曖昧だとした上で、ゴーン氏が報告書に記載しなかったことに違法性があるとは断定できないとしている。
そもそも、日産社内のコーポレートガバナンス規定によれば、役員報酬は、代表取締役に相談の上、会長であるゴーン氏が決定することになっている。従って、代表取締役である西川氏は、この「後払報酬」について知っていたはずで、その西川氏が開催した取締役会でゴーン氏の会長職が解かれたという矛盾についても指摘している。
ゴーン氏は、これまでもケリー氏という米国人弁護士を片腕として使っていたこと、また今回のこの事件後に、さらに米国の超一流の弁護士を雇ったことも詳細に報じており、「グローバルな難しい事件では(日本人やフランス人ではなく)やはり米国人の一流弁護士でなくては!」という自負も感じられる。


***** 以下同文 ***** 
 カルロスゴーンは、日産自動車で数千億ドルの後払報酬を受け取っていたが、日産の調査に詳しい関係者によれば、彼が有価証券報告書でそのことを開示しなかったことについて、彼は適切に処理していたと同僚に伝えていた。
ゴーン氏は、20153月期会計年度までの5年間にわたって、報告書に約50 億円(約4,400万ドル)を記載しなかった疑いで、1119日に東京で逮捕されたが、この新事実はゴーン氏にとっては弁護のための有力な主張になるだろう。
日産の有価証券報告書によれば、ゴーン氏は、この5年間に毎年約10 億円(約890億ドル)を受け取っていた。日産の調査に詳しい関係者によれば、彼は、ほぼ同額を退職時に支払われる後払報酬として得ていた。
これらの関係者によれば、ゴーン氏は、日産の言う記載されなかった後払報酬として、20183月期会計年度までの8年間で、合わせて約80億円(約7,086万ドル)を得ていた。これらの金額の詳しい条件や支払期間についてはよく分かっていない。
このスキームは、日産幹部であるグレッグケリー氏と相談の上、作成された。関係者の一人によれば、日産は、ケリー氏をこの計画の首謀者と公言している。
ゴーン氏は同僚に対し、もし、彼が退職後に後払報酬を受け取るとしても、日本の有価証券報告書には記載する必要がないと述べていた。一方、日産は報告すべきだったと述べていると、この関係者は述べた。
ゴーン氏は、検察に対し、悪いことはしていないと述べたと、日本の公共放送であるNHKは報じた。ケリー氏も、19日に逮捕されたが、逮捕後、悪いことはしていないと出張している。NHKによれば、ケリー氏は、ゴーン氏の報酬は、日産と相談して決定したと主張している。
この事件に詳しい関係者によれば、元東京地検で現在は個人で仕事をしている大鶴基成氏が、ゴーン氏の弁護に当たる。大鶴氏の事務所は、コメントを拒否しており、彼の事務所へ日曜日に電話を入れたが、コールバックはなかった。
同じ人物によれば、ゴーン氏はまた、米国の弁護士事務所であるポール・ワイス・リフキンド・ワートン&ギャリソンを雇った。この事務所の会長で、ウォールストリートの大手銀行の弁護士をやっていたブラッド・カープ氏と同事務所の別の弁護士であるマイケル・ゲルツマン氏がゴーン容疑者を担当する予定だ。
ケリー氏の家族は、テネシー州ナッシュヴィルを本拠とする弁護士であるオーブリー・ハーウェル氏を雇った。電話でのインタビューでハーウェル氏は、ケリー氏にまだコンタクトしていないが、ケリー氏の家族は彼が何も悪いことはしていないと信じている。ケリー氏の家族は、日本を本拠とする弁護士を雇う予定だとハーウェル氏は述べた。
検察による主張に加えて、日産もその捜査により、ゴーン氏が、会社のお金を使って、ベイルートやリオデジャネイロで彼が使っていた家を購入したり改造したりしていたと主張していると、日産の捜査に詳しい関係者が述べた。検察はこれまでのところ、この件について調査をしているかどうか、明らかにしていない。
ゴーン氏の家族と親しい関係者によれば、ゴーン氏の家族は、リオデジャネイロやベイルートなどの家は、会社の資産で、その購入は日産の承認による通常の手続きを通して行われたと信じている。
米国証券法では、経営幹部に対するあらゆる種類の後払報酬の開示を義務付けている。年金、ストックオプション、退職時に支払われる一時金などいかなる方法の場合でもだ。日本の検察がゴーン氏逮捕の根拠としている日本の法律は、米国の法律ほど明確ではない。
2010年に日本は、企業幹部に値する1億円(約890万ドル)以上の年俸について開示を義務付けた。
この法律は、開示すべき点についての記述が不明確だ。企業が有価証券報告書を作成する際には、作成時に支払金額が「明確になっていれば」、将来の報酬も報告書の中に含めねばならないとしている。
この事件に関与していない日本の弁護士によれば、もし幹部が過去の年に行われた業務に対する報酬を受け取っている場合、いつお金が支払われるかにかかわらず、開示されなければならない。しかし、企業弁護士であるアカツカ・ヒロノブ氏は、もし支払額に退職後のサービスに対する支払いが含まれている場合には、状況が不明確な部分もあると言う。
ゴーン氏は、昨年まで、日産の会長とCEO を兼務していた。1年前にCEOをやめたが、会長職は続けていた。日産の企業ガバナンス規定によれば、会長は、全取締役の報酬を決定することができる。つまり、実質的に、会長であるゴーン氏が、自分自身の報酬を決定することができる。
この規定は、会長は、その他の代表取締役に相談した後に、支払額を決定するとしている。代表取締役とは、企業を代表して行動するための特別な権利を持った取締役だ。先週まで、日産には3名の代表取締役がいた。ゴーン氏、ケリー氏と、CEOである西川廣人氏だ。
木曜日に、西川氏が主導する取締役の投票によって、ゴーン氏とケリー氏は、代表権を解かれ、ゴーン氏は会長職を失った。

Friday, November 23, 2018

トップの逮捕が日産・ルノーのアライアンスを試す【A1面】

1119日にゴーン氏が逮捕されたが、WSJ23日の1面で、ゴーン氏がいなくなると、ルノー・日産連合を維持していくのが難しいとする記事を掲載した。


 この記事は、まず、ゴーン氏が羽田空港で逮捕された瞬間を詳細に描いている。その日、羽田に着いたゴーン氏はお嬢さんとお寿司を食べにいく約束をしていたのだが、お嬢さんは約束を反故にされる。そして、逮捕後の東京拘置所でのゴーン氏の一日の暮らしに着いても詳細に描いている。(ちなみに有罪なら、懲役10年程度とも報じている。)
また、ルノーは、日産に対し、検察からゴーン氏の容疑が裏付けられる説明があるまでは、ゴーン氏の会長解任決議を行わない様に要請したが、日産はこれを無視して、22日に会長職を解いた。ここまで、日産とルノーの溝が深まるに至る経緯についても具体例を交えながら、詳細に描き出し、そうした状況でもなんとかアライアンスが持ちこたえてきたことには、ゴーン氏の貢献が大きいとしている。

***** 以下本文 *****
自動車業界で最も知られたリーダーの一人、カルロス・ゴーン氏の逮捕は突然で、劇的だった。しかし、これにより、ゴーン氏が10年以上かけて構築し、支配してきた日産とルノーのアライアンスに亀裂が入った。
ルノーのCEOで会長であるゴーン氏は、日産での4,400万ドルの報酬を報告しなかった容疑をかけられている。ゴーン氏は日産の会長も兼務している。木曜日に日産の取締役は、無記名投票により、ゴーン氏の会長職を解いた。
また関係者によれば、日産の内部調査では、ゴーン氏が数100万ドルの不明瞭な日産の資金を使って、豪華な家を購入し改装したことが分かっている。
ゴーン氏は日本の拘置所の抑留されている。月曜日に東京に到着してから数時間後に逮捕されたので、ゴーン氏からの公の説明は聞けていない。また、コメントを得るために、ゴーン氏に接触することも出来ない。日本の公共放送であるNHKは、元検察官で現在は弁護士の大鶴基成がゴーン氏の代理人となっていると伝えた。弁護士事務所にコメントを求めたが拒否された。
ゴーン氏が不在の間に、長い間心にわだかまっていたストレスが表面化しつつあり、ルノー・日産のアライアンスが以前思われていたよりももっと問題をはらんだものだったことが分かってきた。フランスと日本の自動車メーカーの時代を先取りする様な結婚に関係した10名以上の人達にインタビューした結果分かったことだ。
売上が日産より少ないルノーの労働組合幹部たちは、忍び寄る「日産化」に飲み込まれてしまうのではないかと懸念している。日産では、多くの日本人従業員が、外国人が早く昇進し給与も良いことに不満を持っている。ベテラン従業員が会社をその設立時の精神に戻すために、外国人の駆逐を企てていると密かに話す従業員もいる。
ゴーン氏の逮捕の数時間後、ルノーの取締役会は、パリの本社に急遽集まり、非公式の会議を持った。取締役達はセーヌ河のほとりにある事務所のU字型のテーブルに座った。一部の取締役は電話で参加した。日産出身の取締役は参加しなかった。
ゴーン氏は長い間日産のリーダーとして君臨したが、日産は声明を発表し、ゴーン氏がトップだった期間は不正に満ちていたとして非難した。日産の西川廣人CEOは記者会見を行い、ゴーン氏は会社の金を個人目的で使い込んだと発言した。ゴーン氏はまだ起訴されていない。もし報酬を開示しなかったことが裏付けられれば、ゴーン氏は10年程度刑務所に収監されるだろう。
ルノーの取締役は、日産によるこの事件の取扱いに、ショックを受けている。

「とても乱暴だ。」
緊急会議に参加したあるルノーの取締役は、他の取締役に「これは、とてもとても乱暴だと思う。」と言った。
その会議で、ルノーの筆頭外部取締役のラガイエット氏は西川氏からのメッセージを大きな声で読み上げた。日産は、ルノーと日産のジョイントヴェンチャーでありオランダに本社を置くルノー・日産BVで不正が行われた可能性があるという証拠を持っている。
この話にルノーの取締役たちは驚いた。ルノー・日産BVはゴーン氏が連合を組むのを助けた日産・ルノーという2つの会社を繋ぐための会社だからだ。取締役は、日産、ルノーから同数が派遣されていて、ゴーン氏が会長、西川氏が副会長を務めている。ルノーの取締役は、ゴーン氏が日本の刑務所に収監されている限り、パワーバランスが西川氏や日産に有利に働くのではないかと心配している。
ルノーの取締役たちは、日本の捜査官が、ルノーの関与無しにアライアンスの記録を調査することに反対だ。「我々は、彼らだけで調査させることはしない。」と取締役の一人は他の取締役たちに言った。
次の夜は火曜日だが、ルノーの取締役会は公式の会議を招集した。関係者によれば、今回は、日産から派遣されている取締役は、参加してはならないと告げられた。何故なら、彼らには利益相反があると見做されるからだ。
2日後、日産の取締役会は4時間にわたる会議を開催した。そこで取締役たちは、ゴーン氏に対する容疑についてサマリーを受けた。
ルノーの取締役会に詳しい人によれば、日本の検察からもっと多くの情報が得られるまで、ゴーン氏についての決定を延ばして欲しいと要請した。

日産の対応
日産の取締役会は、(ルノーの要請にもかかわらず)ゴーン氏の会長職を解くことを決定した。
ウォールストリートジャーナルは、日産の取締役会からルノーの取締役会へのレターをレビューしたが、日産の取締役会は、ルノーにゴーン氏の交代となる取締役の指名をさせないと明言した。理由としては、ゴーン氏は日産の取締役としての地位は解かれていないし、日産から見れば、ルノーは日産の取締役会にこれ以上の取締役を送る権利をもっていないからだ。日産のスポークスマンは、ゴーン氏の取締役の地位を解くためには、株主総会の決議が必要だと述べた。
ルノーが日産に要請した情報の提供は、進展しなかった。日産の取締役会のレターによれば、東京地検による操作を妨害していると見做されるので、日産は情報は提示出来ないとなっている。
この件について、ルノーの広報官にコメントを求めたが拒否された。
木曜日に開催された取締役会の後、日産は声明を出したが、そこにはゴーン氏は3つの重大な不正を犯したと記載されている。長年にわたる報酬の不正申告、会社の資金の私的使用、経費の不適切な申告の3つだ。
ルノーと日産は1999年にアライアンスを組んだ。この年、ルノーは苦境に陥った日産を支援し、再建を指揮させるためにゴーン氏を#2として送り込んだ。ゴーン氏は日産を赤字から転換させ、数年の内に、世界で最も大きな利益を生み出す企業へと育てあげた。しかし、彼のコストカットのやり方に対しては、日本では憎しみも生み出した。

気まずいアライアンス
「日産とルノーのアライアンスは、外部には綺麗な協力関係として見せられているが、実際には日産幹部にとっても、ルノー幹部にとっても好ましいものではなかった。」と元日産の幹部社員は言った。彼は、西川氏のゴーン氏への動きを、ブルータスのシーザーに対する裏切りに例えた。
西川氏は、記者会見で、ゴーン氏の解任はクーデターかと聞かれ、「そうではないと思います。」と答えた。
フランスのルメール経済財務大臣は今週、ルノーの15%の株式を保有しているフランス政府は、法の支配の原則を重んじており、ゴーン氏に向けられた嫌疑を裏付けるいかなる証拠も見ていないと述べた。
木曜日にルメール氏は、日本の世耕経済産業大臣とパリで1時間にわたって会談した。会談の後2人の大臣は、ルノーと日産のアライアンスに対する強いサポートと、両国に利益をもたらすこのアライアンスを維持したいという共通の思いを再確認した。
関係者によれば、ゴーン氏の家族は彼に会うことが出来ていない。フランス大使館によれば、ブラジル生まれでフランス国籍を持つゴーン氏は、在日本フランス大使の訪問を受けた。
東京拘置所に詳しい弁護士によれば、収監者は地位にかかわらず、同様の扱いを受ける。彼が経験していることが他の人達と同じであれば、80スクエア平米の広さの部屋で過ごし、午前7時に起きて、午後9時に就寝する。収監者は、週に2-3回の入浴を許され、米、麦、おかずからなる食事を3回食べられる。
その弁護士によれば、昼の間は主に検察の取り調べを受ける。そこでは、弁護士の出席は許されていない。但し、弁護士は短時間の訪問をすることは出来る。
これは、ゴーン氏にとっては、秒刻みの生活からの決別だ。彼は、東京とパリの自宅を行ったり来たりし、会社のジェット機で移動していた。2017年に、タウンアンドカントリー誌は、ゴーン氏とその妻の、マリー・アントワネットをテーマにしたヴェルサイユでの結婚式について大きく取り上げた。18世紀の衣装とかつらをつけた俳優が出席し、テーブルにはケーキやペイストリーが高々と積み上げられていた。
逮捕された月曜日には、ゴーン氏はガルフストリームのジェット機で、東京の羽田空港に午後341分に到着した。ベイルートからの5,500マイルの旅の後だった。彼は、娘と寿司ディナーを楽しむ約束だった。しかし、娘の代わりに、日本の検察官たちが機内に入ってきた。5時間も経たないうちに、彼は東京のど真ん中で逮捕された。
ゴーン氏の他に、日産取締役で長い間ゴーン氏の補佐をしてきたグレッグ・ケリーも逮捕されたが、検察は、2人が少なくとも5年にわたって、ゴーン氏の報酬を少なく申告してきたという疑いも持っている。関係者によれば、検察は、申告されたなかった報酬の中には、インセンティブ報酬の1種である株式評価益権が含まれるとみている。株式評価益権は、株式がある価格を越えたら支払われるものだ。ゴーン氏同様、ケリー氏も起訴されていない。
ケリー氏にコンタクトしてコメントをもらおうとしたが、出来なかった。
西川氏は、記者会見で、ゴーン氏の決然として実践的な経営スタイルは権力が集中し過ぎた時に、マイナスに働いたとの考えを示した。
「同じ人があまりに長く権力の座にいると、問題が発生し始めると思う。ガバナンスの観点ばかりでなく、オペレーションの観点からもだ。」と西川氏は述べた。
日産の多くの社員にとって、西川氏は、日産が今やルノーとのアライアンスをリードする地位を得るチャンスを象徴する人だ。日産社員は、日産がアライアンスをリードするに値すると感じている。昨年、日産の売上は、日産・ルノー連合の実に60%を占めた。ここ数年、日産には、日産のルノーへの出資比率15%を増やすとか、ルノーの日産への出資比率43%を減らすとかいった案が浮上した。

キー・プレーヤー
「我々は、自分たちをアライアンスにおけるキー・プレーヤーだと認識すべきだ。」と西川氏は、20179月のウォールストリートジャーナルとのインタビューで発言した。その時、彼は、ゴーンの後継として指名されてから、4ヶ月が経っていた。「私たちは、アライアンスの成長と統合の主要な推進役になるべきです。」 2016年以降、アライアンスには、第3の自動車会社である三菱自動車が加わった。
日産とルノーは技術でも対立した。日産の技術者の中には、日産の方が先端技術では優れていると言って、ルノーのコスト主体のアプローチに不満を表明するものもいる。
こう言ったケースの一つが、電気自動車用バッテリーでのせめぎ合いだ。
2010年頃、日産は電気自動車であるリーフの充電用に自社製のバッテリーを開発した。ルノーは、ルノーが韓国のLGシェムから調達している安いバッテリーに切り替える様に圧力をかけてきた。
ルノーのチームは、日産のバッテリーは高すぎると言った。日産は、自分たちのバッテリーはより安全だとして、それに固執した。
しかし、安価な中国製のバッテリーが出現し、日産は8月に自動車用バッテリー事業を売却することに合意した。
ゴーン氏はこうした緊張関係によって、2社間の溝が取り返しがつかない程大きくならない様に、2社をうまく率いていた。
ゴーン氏の娘は、月曜日に東京でディナーを取りながら父とのデートを楽しむ予定だったが、結局父とは会えなかった。
彼女は、ゴーン氏のマンションで待っていた。その時、携帯がニュースアラートを受信し、父の逮捕を知ったのだった。

日産取締役会ゴーン氏の会長職を解く【A1面】

1122日に日産の取締役会はゴーン氏の解任を決議したが、WSJは翌23日の1面でこのニュースを速報した。これで、ゴーン氏関係のニュースは、3日連続で1面に掲載されたことになる。


 検察が、有価証券報告書への虚偽の記載の疑いだけで、企業トップを逮捕するのは異例であり、検察はもっと大きな容疑を掴んでいるのはないかとしている。また、日産側も、彼らが知っている全てのことを外部公開していない可能性があることを示唆している。ウォールストリートジャーナルの記者が、ゴーン氏に会うために東京拘置所を訪れたが断られたことも紹介。アメリカでは収監されている容疑者にマスコミが簡単に会えるのだろうか?

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ゴーン氏が会社のお金を使って、個人の家を購入したり、姉に便宜を図ったという疑いが浮上する中で、日産の取締役会は、木曜日に無記名で、ゴーン会長をその職から解くことを決議した。
関係者によれば、日産は、ゴーン氏がオランダの子会社を使って1,800万ドルを支出させ、個人の家を購入し、改修したことをつきとめた。リオデジャネイロのコンドミニアムやベイルートの一戸建てなどだ。ゴーン氏はブラジルで生まれ、レバノンで育った。
この関係者によれば、それに加えて、ゴーン氏はオランダの子会社を使って、彼女の姉にコンサルタント料と称して、数回の支払いを行っていた。例を挙げれば、彼女は、リオデジャネイロの家についてのアドバイス料として6万ドルを受け取っていたが、日産は、姉が実際にこうした行為をしたという証拠が得られなかったとした。ゴーン氏の姉にコメントをもらおうとしたが、コンタクト出来なかった。
ゴーン氏は、月曜日に日本の検察に逮捕された。5年間で得た報酬を4,400万ドルと申告したが、これが虚偽の報告だとの嫌疑がかけられている。日本の法律・会計の専門家によれば、会計申告で幹部が逮捕されるのは極めて異例で、もっと大きな容疑があるのではないかとみている。
ゴーン氏には前科がない。それでも、彼は拘束されており、コメントを求めることは出来ない。公共放送であるNHKは、元東京地検特捜部長で現在は個人事業を営んでいる大鶴基成氏が、64才のゴーン氏の弁護士となると報じた。弁護士事務所にコメントを求めたが、断られた。
日産は、ゴーン氏が会長を務める三菱自動車、会長とCEOを務める仏ルノー社とアライアンスを組んでいる。日産は、ルノーとその株式を保有するフランス政府から、ゴーン氏の解任の理由を示す様に強く要求されている。ゴーン氏は2000年代にルノーを再生させた。
「我々は、現時点で、ゴーン氏にかけられている容疑を正当化するいかなる証拠も持ち合わせていない。」と水曜日にフランスのメール経済財務大臣は述べた。
関係者によれば、ゴーン氏の家族は、リオデジャネイロ、ベイルートなどのにある彼の家は社宅であり、その購入は、日産の通常の承認ルートを経ていると信じている。
日産からルノーへのレターをウォールストリートジャーナルがレビューしたところ、日産の取締役会は、東京地検によって行われている別の捜査を邪魔していると見られてしまうので、その情報共有は出来ないとしている。日産の西川CEOは、もし、ゴーン氏が取った行動について西川氏が知っていることを人々が知ったら、彼らも日産の動きを擁護するだろうと述べた。
ルノーのスポークマンはコメントを拒否した。
日産が木曜日の取締役会の後に出した声明には、ゴーン氏による3つの分野での容疑が記載されている。彼の報酬を数年にわたって過少に報告していたこと、日産の投資基金を私用目的で私用したこと、経費を不適切に申告したことの3つだ。また、長年に渡ってゴーン氏の補佐を務めてきたグレッグケリー氏がこの事件の首謀者だとしている。
彼は、代表取締役の職を解かれた。彼も収監されており、コメントを取ることは出来ない。彼が弁護士を雇ったかどうかは不明だ。
関係者によれば、日産は、ゴーン氏の行動を網羅したドキュメントを準備している。ある電子メールには、ベイルートの彼の家の回収を進めるために、オランダのZi-AキャピタルBVという日産子会社から早急に送金する様に、日産の従業員に強く求めたことが記載されている。
Zi-Aキャピタルは、2010年にテクノロジースタートアップに投資する目的で、5,100万ドルの資本金で設立された。ケリー氏が筆頭取締役だ。
水曜日に東京地方裁判所は、ゴーン氏の拘留の10日間の延長を認めた。
ウォールストリートジャーナルの記者は、木曜日に刑務所を訪問したが、ゴーン氏とケリー氏は訪問者と会うことを禁じられていると、刑務所係官から伝えられた。

Wednesday, November 21, 2018

ゴーンの逮捕は自動車帝国を揺るがす【A1面】

1119日にゴーン氏逮捕という衝撃的なニュースが世界中を駆け巡ったが、WSJ21日のA1面でこのニュースで右往左往する関係者の様子をまとめた記事を掲載した。



20日に続いて2日連続でゴーン氏逮捕のニュースが1面を飾り、このニュースへの関心の高さが示された。全体のトーンとしては、日産や検察に批判的だ。例えば、仮に日本の検察が言っているゴーン氏への容疑が裏付けられたとしても、何故日産がそのことに気が付かなかったのかという疑問が残るとしている。また、日本の司法制度では、全く前科の無いゴーン氏も、最長20日独房に収監され、弁護士無しでの連日の取調べに耐えねばならないとし、暗に前近代的な検察のやり方を批判している。また、オランダにあるルノーと日産の合弁会社であるルノー・日産BVが今回の事件で果たした役割について、独自の視点から注目している。

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自動車メーカー幹部のカルロスゴーン氏が日本で不適切な財務処理の疑いで拘束されてから2日が経過した。ゴーン氏が率いてきたグローバル規模のアライアンスメンバーは、この逮捕劇について理解するための対応、そして彼が不在の間の対応に追われている。
この事件の関係者によれば、日本の検察はゴーン氏が会長を務める日産の株に関連した支払いとそれらが有価証券報告書の中で適切に開示されていたかどうかににフォーカスしている。
ゴーン氏はルノーの会長とCEOも兼任しているが、日産はルノーの取締役会に対して、オランダに本社を置くルノーと日産の合弁会社においてゴーン氏が不正を働いた可能性があるとする証拠を掴んでいることを伝えた。
火曜日の午後にルノーは、ゴーン氏の職務を暫定的に引継ぎためにCEO代理と暫定会長を指名したと表明した。ルノーは、日産から、日産と日本の検察はゴーンが不正を働いたとしているが、ルノーはその証拠を日産に対して求めているとも発言した。
64才のビジネスマンであるゴーン氏は今週初めに日本で逮捕された。日産は検察に対し、内部調査によって、ゴーン氏の報酬が同社の財務報告書で過小に報告されたいてことが分かったと報告していた。
ゴーン氏の代理人や家族からコメントをもらおうとしたが、コンタクト出来なかった。
ゴーン氏逮捕のニュースが駆け巡った後の最初の取引日である火曜日に日産の株は5.5%近く下落した。逮捕後2日で、ルノーの株式は10%近く下落した。
ルノーのトップエグゼクティブとして、後にルノー・日産両社のリーダーとして、ゴーン氏はルノー・日産のアライアンスを築きあげた。このアライアンスは自動車産業では珍しく成功しているが、これはゴーン氏に負うところが大きい。彼は最近、日産のCEOを退任した。日産、ルノーでの役割に加えて、ゴーン氏はもう一つのアライアンスメンバーである三菱自動車の会長も務めている。彼はまた、オランダのベンチャー企業の会長とCEOでもある。この企業は、20年近くに及ぶアライアンスの中で、2社の橋渡しの役割を果たしてきたが、いまや日産の社内調査の対象となっている。
ゴーン氏のこうした役割が、緊張を高める一つの要因となってきた。日産とルノーの幹部は、長い間噂されてきた完全合併も含めて、将来を見据えているので。ウォールストリートジャーナルは5月に両社の幹部が非公式にそうした関係について検討していると報じた。日産の日本人上級幹部は、完全合併案には反対してきた。ゴーン氏は公の場では、そうした合併は最善の手段では無いと言ってきた。しかし、関係者がウォールストリートジャーナルに語ったところでは、実は彼にとってはそうした案も選択肢のひとつだ。
関係者によれば、月曜日に日産のCEOの西川廣人氏は、オランダの会社について分かっていることを、ルノーの主要な外部取締役であるフィリップ・ラガイエット氏に送付した。日産がどういう内容を伝えたかは分かっていない。
その会社は、ルノー・日産BVという名前の会社だが、ルノーと日産が共同所有している。車は一切作っていないが、ルノーと日産のパートナーシップの広範な分野での調整役を担っている。
オランダの登記簿によれば、日産の取締役でゴーン氏と共に日本で逮捕されたグレッグ・ケリーもまた、オランダに本社を置く、別の持ち株会社の主要な取締役だ。この会社は、別の日産の部門の子会社として、2010年に設立された。関係者によれば、この会社は、スタートアップ企業への投資を目的に設立されたが、ここ数年は休眠状態だったという。
月曜日にゴーン氏が逮捕された後、日本の検察は、ゴーン氏は所得を過少申告していていた疑いが発言した。その結果、日産が20153月期までの5会計年度に渡って、不正確な財務諸表を作成することになった。
検察は、ゴーン氏がこの5年間にほぼ100億円(約8,900万ドル)と見ているが、実際に日産が東京証券取引所に提出した報告書では50億円になっていた。
この期間に、日産は、幹部の数名が、株式評価益権(SAR)を受領したと報告している。株式評価益権とは、ストックオプションに似た仕組みで、株式価格がある一定のレベルを超えた場合に、幹部が報酬を得られる。日産の報告書によれば、ゴーン氏は株式評価権益を受領していない。
関係者によれば、検察は、実際には、ゴーン氏はその様な報酬を得ていたが、日産がその報告を怠ったとみている。こうした動きは、もし、裏付けが取れれば、検察が申告漏れになっているとする報酬の説明になるだろう。
しかし、そうした疑いが裏付けられたとしても、どうしてこの事実が日産の報告書に盛り込まれなかったのか、何故日産の経理部門はこのことについてアラームを上げられなかったのかなど、疑問の点も多い。日産が言うには、内部通告が今回の内部調査に繋がり、その結果を検察に伝えたということだ。
日産はまた、ゴーン氏は経費を不正支出し、会社の資産を個人使用したとしている。
ゴーン氏はフランス国籍を持っているが、前科はない。もし、ゴーン氏が日本人の収監者と同じ様に取り扱われるならば、数週間独房に入れられ、弁護士無しで連日取り調べが行われる。
検察は、今週、最高20日まで収監期間を延長するかどうか決定しなければならない。通常、そうした要求は認められる。この期間、容疑者は保釈請求を許されていない。
ルノーの取締役会は、火曜日午後に召集され、ルノー第2位の幹部であるボローレ氏がCEO代行に、ルノー社外取締役のラガイェッテ氏が会長代行に、それぞれ暫定的に指名された。
関係者によれば、ボローレ氏を代行に指名することにより、ルノーの取締役会は、ボローレ氏にルノー・日産BVの議決権を行使する権限を与えた。このジョイントベンチャーにおけるルノーと日産のパワーバランスを維持するために、この動きは重要だ。
月曜日の午後、ルノーのイントラネットにアップされたメモによれば、現COOであるボローレ氏は、上司であるゴーン氏をしっかり支援することを表明した。同時に、ルノーの統治機構は、ルノーグループの利益を守るために、その役割をしっかりと果たすとも発言した。

Tuesday, November 20, 2018

ゴーン氏の様な経営手法は、グローバルな自動車産業では衰退しつつある【A9面(国際面)】

19日にゴーン氏逮捕のニュースが世界中を駆け巡ったが、WSJは翌20日の国際面に、ゴーン氏の経営手法に関する記事を掲載した。




グローバルに規模拡大を追求するゴーン氏の経営手法は、既に時代遅れとなっており、今回の事件がなくても、遅かれ早かれ失脚していただろうと言っている様に読めるがどうだろうか。自動運転や電気自動車などの出現で、自動車業界の競争のルールが変わる中、新しい経営者たちは、規模を追い求めるのではなく、知の蓄積を求めはじめたことを、具体的な経営者の名前と共に紹介している。その上で、ゴーン氏の様なグローバル主義経営者が、ここ10年で失脚した例を幾つかあげている。また、そんな時代遅れのゴーン氏を日本のマスコミがスーパースターとして取り扱ってきたことも揶揄している。


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過去20年間、もしゴーン氏を捕まえたければ、飛行機に乗ることがベストな方法だっただろう。
レバノン人の両親のもとにブラジルで生まれた64才の自動車会社幹部は10,000マイル離れた所に本社を持つ2つの会社を結びつけ、大きな評価を獲得した。昨年、彼は、1年先までスケジュールが一杯だと私に言っていた。
「私は4つの職場を持っています。」とニューヨークでのインタビューで語った。タイトなスケジュールの中、多くの側近を連れて彼はインタビューに現れた。彼は、アムステルダム、パリ、東京の2ヶ所に本拠地を置いていた。それに加えて、現実に起きていることから乖離しない様に、分刻みでの仕事をこなしていた。
超多忙な生活は月曜日に突然停止した。東京で虚偽の申告の疑いで逮捕されたのだ。彼は1990年代に救済した日産は、彼を追い出そうとしている。日産は、ゴーン氏が築きリードしてきたアライアンスでルノーと連合を組んでいる。
自動車会社の幹部と言えば、以前は、フェースブックのマーク・ザッカーバーグやアマゾンのジェフ・ベゾスなどのシリコンヴァレーの創設者たちが今日果たしている様な役割を果たしていた。アイア・コッカやヘンリー・ザ・ドゥース・フォード2世、フィアットのジアンニ・アグネリらの様な象徴的な大物たちは、華やかな生活や精力的な経営スタイル、よく引き合いに出される様な上手いコメントなどで注目されていた。
ゴーン氏はこうした時代の大物たちの再来だ。その功績により、日本のマスコミは彼をスーパースターとして扱ってきた。彼はコミックブックでもヒーローとして描かれた。主要新聞の協力により自伝も出版した。2006年には私と同僚で「地球上で最も熱い自動車業界の人物」としてウォールストリートジャーナルでも取り上げた。
「こうした通常よりも偉大な人物というのが、すごいことを成し遂げるためには必要だ。しかしこうした人々は同時に大きなマイナス面ももたらす。」とボブ・ルッツは月曜日に私に言った。彼は、GMの副会長などの幹部職を歴任して長い間自動車業界で活躍した人物だ。葉巻をくわえたルッツ氏もいつもスポットライトを浴びていた。
ゴーン氏の突然の失脚は、彼が経営する一企業という枠を越えた、グローバルな自動車ビジネス全体の変化の当然の帰結だ。彼は、自動車業界で頑張っている最後のグローバル主義者だの一人だ。いまや、多くの自動車業界のリーダーたちは、自動車業界は、地域毎に特性が異なり、統合することは困難だと考えている。
ゴーン氏と同じ様な考え方を持った人たちは、ここ数年、道端にどんどん倒れてきた。複数の頭を持った巨人であるフォルクスワーゲンのアーキテクトの一人だったマーチン・ウィンターコーン氏は2015年の排気量操作スキャンダルで失脚した。チェインスモーカーでフィアットとクライスラーの提携を主導したセルジオ・マルキオーネは7月に亡くなった。ゴーン氏の盟友でもあったダイムラーのCEOであるディーター・ゼッシェ氏は6ヶ月後に退任する。
ゴーン氏とマルキオーネ氏は、循環的で多くの資金を必要とする自動車事業には大きな規模が必要だとの見方を共有していた。この原則に従えば、バッテリーの開発やAIの研究にかかるコストをシェアするためにアライアンスが形成される。
しかし、合併はいまや自動車産業ではその効果が疑問視されている。今世紀頭のクライスラーとダイムラーの合併の失敗が、合併はうまくいかないという例になっている。
ゴーン氏が最も大きな希望を抱いてから長い時間が経過した。10年程前に、彼は日産・ルノー連合にGMを加えようとした。しかし、それはGMの幹部に拒否された。当時、GMは、利益を求めて規模の拡大は犠牲にしていたが、それでも売上はナンバー1だった。
トヨタの豊田章夫やフォードのビル・フォードのような他の幹部も、自動車業界の将来が益々不透明になる中で、守りの姿勢を取った。「より小さく、よりリーンで、よりシンプルなベンチャーが必要だ。」とルッツ氏は言った。
マルキオーネ氏は2010年代初めにGMとの合併を試みたが、GMCEOのメリー・バーバラはその申し出を拒否し、必ずしも大きくなることが必要なのではなく、より賢くなることに投資していく必要があると指摘した。
一方、ゴーン氏は、拡大の野望を捨てていない。最近も、スキャンダルまみれの三菱自動車を買収し、世界で売上高トップの自動車メーカーに躍り出た。
彼はまた、過去の自動車産業と将来起こることを結びつける橋を築こうとしている。日産・ルノー連合の殆どの自動車は、120年前のテクノロジーに頼っているが、一方で、ゴーン氏は、自動運転や電池自動車の推進者でもある。日産のリーフは、業界発の電気自動車で、今でも売上トップの地位を維持している。
日産とルノーは持ちこたえるだろう。しかし、もしこの2社が今回のゴーン氏の事件で別れてしまったら、自動車会社のグローバル化への動きは大きく後退することになるだろう。