2月17~18日に開催されたG20蔵相会議について、WSJは20日の1面で取り上げたが、安倍首相とメルケル首相がハノーバーで会談した写真を大きく掲載し、日本が米国と他国の橋渡し役とになろうとしていることに触れた。
日本は、G20関係諸国と貿易について対抗する意思はないし、米国についての他国の過熱した態度に賛成する意思もないとしている。WSJ自身が、トランプ氏の保護主義的な動きに批判的で、米国の新聞を読んでいる感じがしない。一方で、米国にかわって自由主義の盟主的な発言をする中国に対しては、実質が伴っていないと手厳しい。そんな中、日本には米国と他国の橋渡し役になって欲しいという気持ちが読み取れるがどうだろうか?
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米国のムニューチン財務長官は、関係国による協調した対応を拒否し、先進20ヶ国の蔵相を説得して、かれらが注意深く準備した合意文の中から、保護主義反対の文言を削除させた。
米国にとって、最終的に合意書に表記された文章は、米国が貿易相手国を懲らしめるために制裁などの政策を実施することを可能にしているし、トランプ政権は公正では無いとしている経済政策を無効にさせることも可能だ。
ムニューチン氏が直面するプレシャーにもかかわらず、米国は最後の拠り所となる世界の消費者として大きな力を維持していることを示した。
G20の参加者たちは、米国に対し、あまり攻撃的になりすぎると、報復を受けると警告したが、ムニューチン氏は、米国はいかなる貿易戦争も回避したいが、同時に好ましくない貿易関係は調整したいと述べた。
今年のG20開催国であるドイツのメルケル首相は、トランプ大統領と会談した2日後の日曜日に、貿易に関する世界的な緊張についてフラストレーションを表明した。トランプ氏は自由で公正な貿易を支持すると述べたが、米国と欧州の大西洋を越えた話合いは止まったままだ。
「多くの人々と自由貿易や開かれた国境、民主主義の価値などについて戦わねばならない時に、日本とドイツが戦わないのは良いサインだ。」とドイツのハノーバーでの日本の安倍首相との会談後に彼女は語った。
米国やトランプ氏の名指しは避けたが、彼女のコメントは明らかに彼らに向けられている。「我々は、自由でオープンな市場を望んでいる。いかなる壁も作り出したくない。」とメルケル氏は述べた。
トランプ氏は、貿易を彼の経済政策の中心に据えており、ドイツ、中国、メキシコなどの国々からより良い条件を引き出すことを公約している。
「米国は、多くの国々から何年にもわたって、とても不公正に扱われてきた。」と、トランプ氏はメルケル氏と会談する前の金曜日に述べた。「それは止めなければならない。」
しかし、トランプ大統領は、有利な貿易条件を引き出すために、どの程度真剣に戦うつもりなのか、どういった戦術を使うのかといった点について明らかにしていないので、米国の貿易相手国は、よく理解できないし、フラストレーションをすら感じている。
トランプ氏は、貿易における米国の地位を改善させるために、NAFTA条約を書換えることを公約し、米国への輸入品への関税や、海外にアウトソーシングする企業に対する罰金などの、これまでと違った方策を導入するといって脅している。
日曜日に出されたG20の宣言文からは、これまでの公約であった「あらゆる形の保護主義に対抗する。」という文言が削除された。昨年7月に各国蔵相が中国に集まった際に合意した文章には、この文言が含まれていたのにもかかわらず。
G20高官によれば、米国以外のG20出席者の殆どが、この文言を残すように会議でムニューチン氏に迫ったが失敗した。
「明らかに、今回の合意書は、これまでG20が作ってきた合意書の中で最善のものではない。」とEU蔵相のピエールモスコヴィッチ氏はインタビューに答えて述べた。
G20の公約は拘束力は無いが、メンバーの国々は外交を通じたグループの力にさらされることになる。例えば、過去の米国政権は、G20は中国に為替レートを尊重する様に仕向けるのに効果的だったし、EUにソヴェリン債へのリスクへのより良い金融的なファイヤーウォールを築かせる様に仕向けるのにも効果的だったと考えてきた。
土曜日の記者会見で、ムニューチン氏は、過去の保護主義についての文言について「私の見方では、必ずしも適切ではない。」と述べた。彼はまた、幾つかのグローバルな貿易協定は実行されていないし、新政権はそうすることに積極的だとも述べた。
国境を越えた貿易協定は、米国にも他に国々にとっても有益だと、トランプ政権の経済使節団代表は述べた。「我々は、米国の労働者、米国自身、そしてその相手国にとって有益になる様に、協定を締結していくつもりだ。」と彼は言った。
バーデンバーデンでの会議を主催したドイツのウルフギャングショーブル蔵相は、トランプ経済使節団代表が貿易政策についてのヴィジョンを語ってくれることを望んでいた。トランプ政権の貿易政策は、大統領とホワイトハウスによる最も攻撃的な脅しで、貿易相手国に対する一方的な関税や、罰則的な制裁を含んでいる。
しかし、G20の議長は障害に突き当たった。
ショーブル氏は記者会見で、ムニューチン氏は、貿易に関する新しい公約や創造的な公約を交渉しようという気持ちは無いようだと述べた。
「時には、こうした会議では、一国についてあまり聞きすぎない様に自制すべきだ。いずれにしても、あまり要求しないことだ。要求すれば、単純に合意しないだけなのだから。」とショーブル氏は述べた。
過去にG20が公約してきた保護主義への反対を再び宣言することへの文章での合意を米国から得ること失敗して、多くの国々はトランプ政権が最終的に貿易についてどこへ向かおうとしているのか良く分からないままに、会議会場から去っていった。
財務長官は、自由で公正な貿易を推進する彼のボスの見方を展開した。
元フランスの財務大臣であるモスコヴィッチ氏は、ムニューチンを「建設的な関与を望み」「人の話を聞く姿勢で」欧州にやってきた人と評した。彼は、会議は参加国同士がぶつかるものではなく、「新政権の見方を確認しようと努力すること」に時間が費やされたと述べた。
それでもモスコヴィッチ氏は、保護主義や天候変化と戦うというより鮮明な言明が無かったことを残念がった。そして、EUはオープンで機能する市場の価値を損なうようないかなる手段も押し返すつもりだと公約した。
会議において、ブラジルのエンリケメイレリス蔵相は、G20諸国に彼の国が保護主義によって経験したことを語った。ブラジルは、最近史上最悪のリセッションを経験したのだ。
「我々は、ここ数年、経済の一部のセクターで保護主義的な政策を導入しましたが、結果ははかばかしいものではありませんでした。」とメイレリス氏はインタビューに応えて述べた。「最終的に、物価は上昇し、ブラジルの競争力は低下しました。ブラジルでは今、よりオープンな貿易政策へと動き出しています。」
中国は、保護主義反対の文言を残すように最も強く働きかけた国の一つだった。中国では、産業や国境を超えるフロー、為替レートなどは、今でも共産党によって管理されているにもかかわらずだ。
「中国は自らを、自由でオープンな貿易の推進者と位置づけようとしている。」と米国の元財務関係外交官のトップだったナサンシーツ氏は言う。「しかし、中国を信用するためには、中国はその経済を開かれたものとし、自由化するために、本当の意味での一歩を踏み出さねばならない。」
米国の代表団は、日本が米国に同調するという貴重な態度を示してくれたことに感謝した。日本はミュニーチン氏の擁護に回り、米国の保護主義についての言動は加熱気味だと述べた。