Saturday, December 31, 2016

スプリントの会長はトランプからの好意を求める【A1面】

12月28日にトランプ次期大統領は、スプリントが5,000人の雇用を米国に戻すと述べ、オーナーであるソフトバンクグループの孫正義社長を称賛したが、WSJはこのニュースを31日の1面で詳細に報道した。



孫正義氏が、トランプ大統領に近づいてその野望を実現させようとする姿が描かれている。
孫氏は2004年に米規制当局に阻まれ失敗に終わったT-Mobile買収に再度挑戦するために、権力者の指名権を握っているトランプ氏に近づいていると考えられるが、トランプ氏は買収への賛否について自身の考えを明確にしていない。
一方、トランプ氏は、孫氏が米国内で雇用を創出して、彼の選挙公約実現を助けてくれることを望んでいる。孫氏は50,000人の雇用を創出するとトランプ氏に約束したと言われており、今回の5,000人がその手始めになる。孫氏はその見返りにT-Mobile買収をトランプ氏にもちかけると考えれるが、孫氏も表向きはスプリントの再建に全精力を注いていて、買収に興味が無いフリをしている様見える。
日米のビジネス界の大物同士の腹の探り合いが面白く描かれた記事だ。

***** 以下本文 *****

スプリントの会長である孫正義が前回米国のテレコム規制から何かを得ようとした際には、うまくいかなかった。今回は、米国の権力者の交代によって、日本の大物は新しい機会があると見ている。
日本のビルゲイツと称される孫氏は、2014年にスプリントとそのライバルであるT-Mobileの合併を試みた際に、規制当局から冷たい扱いを受けた。この合併はその一年前にスプリントを買収する際の重要な判断要素だったが、彼はこの合併を諦めざるを得なかった。
59歳のソフトバンクグループを率い、数々の合併を実現させてきた彼は、ドナルドトランプ次期大統領という味方を得た。彼はトランプ氏に、500億ドルの投資を行い、50,000人の仕事を米国に創出すると約束した。この約束が実現すれば、トランプ氏は公約の一つを実現させることが出来る。スプリントは水曜日に5,000人分の仕事を創出し、孫氏が支援する衛星会社がアメリカに3,000人分の仕事を持ち込むと発表したが、この公約が実現に近づいたかたちだ。
「これはマサによってなされた。彼は凄い奴だ。感謝している。」とトランプ氏はフロリダ州パームビーチの自宅前で、孫氏のニックネームを使って言った。
ホワイトハウスに好意的な見方を作っておけば、スプリントやその親会社のソフトバンクは大きな便益を得ることが出来る。スプリントやソフトバンクはより大きな野望の実現を追求している。大統領として、トランプ氏は、孫氏が提案している合併を含むテレコム産業を監視する機関のトップを任命する。大統領は、海外からの投資を評価する機関のトップも指名する。海外からの投資は、国の安全保障についての懸念を増加させる。
トランプ氏は合併についてどの様な反トラストの基準を適用するかについて、幾つかの異なった考えを示している。彼は、選挙運動中に、AT&Tによるタイムワーナーの買収を阻止すると約束した。しかし、テレコム業界内では、経営幹部たちは、トランプ政府は合併により寛容だろうという楽観論を示している。こうした異なった考え方が、孫氏がT-Mobile買収に再度挑戦し、AT&Tとベライゾンというトップ2社の携帯会社に戦いを挑むことが出来るかという問いを頻発させている。
孫氏に近い何人かの人々は、新たにT-Mobileの買収について動いてはいないと言っているが、同時に将来そうする可能性を排除してはいない。今のところ、孫氏はトランプ氏に好印象をもってもらうために懸命になっているだけだ。
「何を失うっていうんだ。」とこのうちの一人は言う。「トランプ氏は我々が得たものほど、オープンではないだろう。」
関係者によれば、12月のトランプタワーでのミーティングの前に、孫氏はアドバイザーに対して、トランプ氏には次のように語ると伝えた。2014年にアメリカの携帯業界に投資をしてT-Mobileを買収することにより仕事を創出しようとしたが、規制に阻まれた。
孫氏のアドバイザーによれば、トランプ氏はFCC長官のトムウィーラー氏に比べて、彼を暖かく迎え入れてくれた。トムウィーラー氏は4社によって独占されている携帯業界での更なる合併には明確に反対している。民主党によって指名されたウィーラー氏は、トランプ氏が就任した際には、退任するつもりだと述べている。
孫氏のアドバイザーによれば、彼は将来のT-Mobile買収について、トランプ氏に提案する予定は無いと語っていた。ミーティングにおいて、2人の間にどんな会話があったのかは、明らかにされていない。
2014年のT-Mobile買収に失敗して落胆した孫氏はスプリントの売却も考えた。しかし、買手を見つけられないと語った。そのかわりに、彼はスプリントをより良い会社にすることに集中した。当時、スプリントは契約者の減少、大きな負債、8年連続の損失計上に苦しんでいた。
こうした努力が実って、スプリントはいまや買収しなくても生きていける様になった。11月末にCFOのテレックロビアティは、スプリントはまず自分自身のビジネス立て直しに集中すべきだと述べた。「我々は、より大きな合併を許容する政策の変更がなされるか注視しています。」とロビアッティ氏は述べた。更に、「経営陣は、スプリントの立て直しに全精力を注いでます。」とも述べた。