安倍首相は日本時間12月28日真珠湾を訪問したが、WSJは同日、この訪問に関連して、安倍首相の実績を絶賛し、トランプ次期大統領に日本との友好関係を維持する様に強く迫る社説を掲げた。
アジアの同盟国5ヶ国の中で、日本が最も優れた軍事力を持っているし、戦略的な思考をもつリーダーを擁しているとして、安倍首相の政治姿勢を絶賛している。安倍首相は、GDPの1%と極めて少ない軍事費を5年連続軍事費を増やしてくれているし、国民の大反対にもかかわらず、有事に同盟国を守れるように、集団的自衛権を行使可能にする法制を整えてくれた。さらに、インド、韓国、フィリピン、台湾など地域の民主主義の担い手と積極的外交を進めているとしている。その上で、今回の訪問により日本の価値をトランプ次期大統領に示すことができたとして、トランプ次期大統領に安倍首相の実績の評価を迫っている様に読める。(下記の和訳はWSJ日本語版に掲載された同じ記事から引用させて頂きました。)
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安倍晋三首相による27日の真珠湾訪問は和解の象徴だ。日米関係の重要性が増している現下の情勢が、今回の訪問をとりわけ劇的にしている。真珠湾攻撃から75年が経過し、北朝鮮の核兵器と中国の修正主義的な野望が太平洋地域に脅威を与えるなか、日本は米国にとって安全保障上の最重要パートナーだ。
アジア太平洋地域で米国が同盟を結ぶ5カ国のうち、日本は経済規模が突出して大きく、最も優れた軍事力を持ち、最も戦略的思考を持つ政治的リーダーシップも有している。安倍首相は今回の真珠湾訪問でバラク・オバマ大統領による広島訪問に応えただけでなく、ドナルド・トランプ次期米大統領に対して日本の価値を示すことができた。トランプ氏は選挙期間中、日本が米国の安全保障にただ乗りしているかのように聞こえる主張をしていた。しかし、それに十分反論できる成果をあげていることを、安倍氏は自ら理解している。
安倍氏は2012年に政権に返り咲いて以降、自国の防衛力を継続的に強化し、米国が両国共通の利益を追求しやすくなる環境を作った。抗議デモが道を埋め、国会では乱闘騒ぎが起こるなか、昨年には「集団的自衛権」を行使できるようにする安全保障関連法を成立させた。これは日本が攻撃の標的となっていなくても、自衛隊が武力を使って米軍や他の友好国を守れることを意味する。
トランプ氏は選挙期間中、日本は米国が攻撃されても「自宅で座ってソニー製のテレビを見ているだけ」と批判したが、それはもう事実ではない。今や自衛隊は、米国を狙って発射された北朝鮮のミサイルを撃ち落とすことも可能だ。英国海軍よりも規模が大きい海上自衛隊は、アジアの海で中国から手を出されそうな米国の船を護衛することもできる。
日本はここ数十年にわたって防衛費を対国内総生産(GDP)比で1%程度に抑えている。その額は依然として少なすぎるが、安倍政権は防衛費を5年連続で増額させている。先週発表された2017年度予算案の防衛費は過去最大の5兆1000億円となり、2016年度当初予算比で1.4%増となった。この予算は米国と開発した新たなミサイル防衛システムや、潜水艦の数を現在の17隻から2021年までに22隻に増やす財源となる。海上保安庁の予算も16年度当初比12%増の20億ドル近く(約2350億円)に増額されている。
日本はこれ以外にも、在日米軍5万4000人に年間17億ドルを支出している。これは駐留コストの約半分だが、仮にこの5万4000人を米国に戻せば費用はさらにかかる。また太平洋における米軍最大の建設プロジェクトの一部に対しても、日本は約180億ドルの支出を約束している。こうしたプロジェクトには尖閣諸島や台湾にも近い日本南部での新たな施設のほか、グアムの施設も含まれる。
これらの意義をさらに高めているのが、安倍氏の精力的な地域外交だ。ナレンドラ・モディ印首相との友好関係は、アジアの強力な民主国家同士の戦略的関係を強化させた。また韓国との慰安婦問題をめぐる合意は、ミサイル防衛システムなど日米韓3カ国による前例のない協力関係に道筋を開いた。東南アジアへの働きかけは、中国からの脅威に弱い国々の経済面・軍事面での近代化を支援した。安倍氏は過激な発言で知られるフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領とも良好な関係を保っている。
他にもまだある。安倍氏は台湾に好意を寄せている。また、長期にわたって保護されてきた国内産業への外資参入にも前向きだ。米国がどのようなアジア戦略を描くとしても、日本はそれに積極的に協力し、手を差し伸べられる状態にある。
昨年の米議会での演説や今回の真珠湾への訪問を持って、安倍氏はこの事実を高らかに見せつけた。このことは称賛に値するだろう。11月のトランプ氏との会談も友好的なものに見えた。アジアの平和と発展にとって明るい兆しだ。