Thursday, December 29, 2016

東芝は原子力事業への賭けが高価だったと分かり難しい状況に【A1面】

12月27日に東芝は2017年3月期に米国の原子力発電事業で数千億円(数十億ドル)規模の減損損失が出る可能性があると発表したが、WSJは29日の1面でこの記事を大きく報じた。



米国子会社のウェステインハウス(Westinghouse)が、納期遅れとコスト高で多額の損失を発生させる可能性が大きいと報じているが、この問題はAreva SA, GEなどを含む原発産業全体に共通して発生している問題だとしている。現在、世界で建設中の54の原子炉のうち33でスケジュール遅れが発生しているし、コストを下げようとする様々な取組みもうまくいっていないそうだ。また、コスト増のリスクを電力会社とベンダー(ウェスティンハウスなど)の間でどう分担するかという難しい問題もある。多くのステークホルダーが絡む原発ビジネスの難しさについて考えさせられる記事だ。

***** 以下本文 *****

2006年にウェスティンハウスの54億ドルでの買収に成功した時、東芝は世界的な原子力発電の復活から大きな利益を得られるはずだった。
今日、この買収が、長年繁栄してきたこの日本の巨大企業を沈ませる脅威となっている。コストがかかり過ぎ、世界中で原発を納期通りに納められず、投資家たちに近い内に数十億ドル単位での損失を計上するかもしれないと警告せめならない状況になっている。
東芝は、パニックとなった投資家たちが株を急ぎ売ったため、水曜日に市場価値の1/5を失い、株価は東京市場で午前中に16%下落した。
原子力事業の損失計上のニュースは、東芝が先に起きた会計スキャンダルから立ち直りかけた矢先に発生した。
「懸念がようやく静まりだしたところで、この予想しなかった事態が発生した。」と岡三証券のストラテジストのオガワヨシノリ氏は述べた。
セミコンダクタービジネスと、2017年3月に終わる今会計年度の最終利益の計上が確実という楽観的な見方から、東芝の株価は2月以降上昇していた。東芝のスポークスマンは株価の下落に関するコメントを拒否した。火曜日に東芝の幹部は、原子力ビジネスについて楽観的な見方を取っていた。
ウェスティンハウスの問題は、何故原子力ビジネスの世界的な成長の夢が減速しているのかを説明している。最近まで、同社は同産業のフロントランナーだと見られてきた。米国と中国の両方で、次世代原子炉の契約を獲得した唯一のサプライヤーだったからだ。
しかし、間違えと予期せぬ問題が、ウェスティンハウスとその競合であるAreva SAとGEによるプロジェクトをダメにした。
現在、13ヵ国で、54の原子炉が建設中だが、独立系の年次評価である世界原子力産業状況レポートによれば、33のプロジェクトが大きく遅れている。失敗が、場所、原子炉デザイン、建設コンソーシャムにかかわらず、プロジェクトに悪い影響を与えている。
建設費を下げ、建設のスピードを上げるために、ウェスティンハウスとその競合業者たちは、金太郎飴(Cookie-cutter)の原子炉デザインを採用した。このデザインでは、主要な部品は工場で作られ、原子炉建設現場に最終組み立てのために送られてくる。経費を増大させるカスタム化は行われない。
この戦略が逆効果となった。「サプライチェーンの問題が、ただ単に、原子炉建設現場から工場に移されただけだった。品質問題の根本的問題は解決されなかった。」とパリの原子炉専門家のマイクルシュナイダーは述べた。また、金太郎飴方式が意味するところは、欠陥が重複されることだった。
フランスではアレバが重要な部材をめぐって記録をごまかし、その部材がフランスやアメリカなどに使われたため、スキャンダルの対応に追われている。科学者は「原発のプロジェクトマネージャーは建設にかかる時間とコストをあまりに少なく見積もり過ぎていた。」と語る。
ウェスティンハウスは去年12月に、CB&I Stone & Websterを2億2,900万ドル(約3,300億円)で買収。
ウェスティンハウスと下請け会社は最近、CB&Iストーン・アンド・ウェブスターが手がけていた南部ジョージア州とサウスカロライナ州の原発建設現場で、建設の責任を引き取った。東芝の説明によると、関連会社の人員の作業効率が予想以上に悪かったことなどが、コストを膨らませた。
ウェスティンハウスは、原子力発電所に使われるユニットを構成する大きなモジュールを南部ルイジアナ州のレイクチャールズにある施設で作っていたが、それがうまくいかないため、CB&Iストーン・アンド・ウェブスターを買収した。
しかし、熟練の建設作業員の確保、品質の管理、さらに様々な厳しい原子力規制をクリアするための部材調達に必要なサプライチェーンの利用がうまくできなかった。
東芝の綱川智社長は会見で、この問題により数千億円の損失が発生する可能性があると述べた。東芝はアメリカと中国で現在、8つの原子力発電所を建設している。財政事情の悪化が完成に影響するのかどうかは明らかになっていないが、今回の発表では予想よりも状況が悪化していることが示された。
このうちアメリカでは、ウェスティンハウスはジョージア州とサウスカロライナ州で、電力会社のSouthernとSCANAが建設している原子力発電所に部材を納めてきた。
ジョージア州で進められているSouthernのVogtle3号機と4号機の現場では何ヶ月も前ら賃金が問題になっていたと、労働組合のIBEW (International Brotherhood of Electrical Workers) 第1,579支部の代表は指摘する。
彼によると組合員のうち約500人の電気技術者が現場で働いているが。組合は最近、これ以上雇用を増やさないこと、適正な人員を検証するという通知を受けたという。
Vogtleの原発をめぐって、電力会社のSouthernのTom Fanning最高経営責任者は、過去の過ちを繰り返さないことを強調していた。過去の過ちとは、膨らんだコストを原発のベンダーに代わって補償するというコストプラス契約をベンダーと締結してきたことだ。
代わりに、価格を固定する契約を通じて、自らが負担するコストを抑える努力をした。その結果、コスト増加のリスクの幾分かはベンダーに転嫁することができるという。
Sourhernの広報担当者は、この知恵は今週明らかになったと強調した。巨額の建設リスクをコントラクターに転嫁することで、電力会社のお客様を守ったというのだ。
一方、ペンシルバニア州ピッツバーグが拠点の電力会社SCANAは、電力発電所の建設に対する金銭的な影響を精査していて、近く報告するという。ウェスティンハウスはコメントを控えると回答した。