震災から4年経過した飯館村の農家の実情を国際面で報道している。
この記事は次の様な書き出しで始まる。
「壊滅的な被害を及ぼした原発事故から4年が経過し、カンノムネオさんは福島第一原子炉から25マイル離れた畑で田植えをする準備をしている。昨年秋の試験によれば、カンノさんの作物の放射能レベルは、試験機で察知できない程に低かった。」
「しかし、カンノさんは彼が作ったコメを販売することはないだろう。飯館村の殆どの地域では商業目的の農業が未だに禁じられているからだ。そんな中、彼は、通常とは異なる手段を取った。彼の土地の一部を彼自身で汚染除去し、米の栽培を行い、作物を消費のために寄付しているのだ。福島県の他の地域では、原子炉から遠くても、汚染の風評により、農家の人々は作物を市場価格より安く売らねばならない。」
暫く要約する。
福島県の農作物の生産量は、震災以前のレベルには戻していないものの、増加の傾向にある。但し、人々は福島の農作物を避ける傾向にあり、価格は安いままだ。
しかし、福島の人々が問題としているのは貧困ではない。農業が出来ない地域には東京電力が補償金を支払っている。本当の問題は、地域住民が自らの力で立ち上がれるのか、それともいつまでも東京電力の補償金に頼っていくのかということだ。補助金は、政府が管理しており、国民の税金によって賄われている。東京電力は昨年12月に、2016年2月に震災で被害を受けたビジネスへの補償金支払いを打ち切ると発表したが、猛烈な反対に会い、延長を決めた。
カンノさんは回復が可能であることを示そうとしている。原発事故で、農地はセシウムに汚染されている。セシウムを除去するためには、土地の表面の土を除去し、作物がセシウムを吸収しない様に残りの土に化学薬品を加える必要がある。政府は、飯館村全域に対してそうした除去作業を行い2016年までに完了させるとしているが、2014年末現在で18%しか完了していない。
いつまでも待っていられないカンノさんは、東京大学の科学者と協力して、2012年に自力で自分の土地の一部の汚染除去を行った。昨年の秋、彼が栽培した作物から放射能は検出されなかった。収穫された950ポンドの米は、販売出来なので、ボランティアの集会や福島の農作物を拡販するためのイベント等に寄付した。「科学的なデータによって評判が回復することを願っています。人々の感情に訴えることによる評判回復は狙っていません。」とカンノさんは言う。
福島県はコネチカット州と同じ位の広さだが、その殆どの地域で、農作物の栽培・販売は禁止されていないし、その農作物からセシウムは検出されていない。それでも、福島の農産物の販売先を見つけるのは難しい。いまや、福島の食材の買手には、低価格を売り物にし、米の生産地を表示しない安売りレストランチェーンの様な、ちょっと胡散臭い買手もいる。
この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「原発反対派として知られる京都大学助教授のイマムラテツジ氏によれば、彼自身はキノコの様な野生農産物を除き、殆どの福島産農作物に安全上の問題は無いと考えている。しかし、彼は福島産の農産物を食べることを薦めてはいない。放射能が検出されないことが、放射能が全くないことの証拠とはならないし、人によってはより敏感だからだ。」
「カタログ販売会社のカタログハウスは、東京本社に福島の農産物展示フロアを設けている。『福島の人々をサポートするためにやっています。でも購入されるのはほんの数人です。』と会社役員のフクマトシヒコさんは言う。彼によれば、福島の農家や加工食品業者は、彼に、製品を販売するためにいつまでセシウムの計量をせねばならないのかと訪ねてくるそうだ。彼の答はこうだ。原子力発電所の廃炉に向けた作業が安全に完了するまで。それには何十年もかかるのだ。」
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原発事故によって汚染された農地の国による汚染除去作業が遅れる中、いつまでも東京電力からの補償金に頼って生活している訳にはいかないと考える農民が、自らの手で汚染除去作業をし、農作物が安全であることを数値で示して、福島の農産物の悪評を断ち切ろうと努力する姿が絵が描かれている。
それでも、福島では、土地が汚染していない地域の農産物ですら、通常の価格よりかなり安くしないと売れない状況が続く。福島の農産物を食べることを薦めないし、数十年後にもなる廃炉までは福島の農産物の安全は保証出来ないとする専門家の意見も紹介しており、福島の厳しい現状を生々しく報道している。